作戦9. 最高の告白をしよう
イレギュラーはあったが、しっかりと切り替えて俺たちは遊園地を満喫した。俺が練りに練ったプランが上手くはまり、存分に楽しむことができた。
「そろそろ遅くなってきたわね」
もうそんな時間か。一ノ瀬の言葉で辺りを見渡してみると、日が落ち始めたのもあり、出口へ向かう客が増えてきた。
閉園の時間まではまだ余裕があるが、このタイミングしかない。
「じゃあ、最後にあれに乗らないか?」
俺が指差したのは観覧車。観覧車といえば、定番の告白スポットだろう。いや、俺に彼女がいたことはないので実際のところどうなのかは分からないが、とにかくそんなイメージがある。
そして、一ノ瀬ならここで俺が告白してくると考えるはずだ。俺はその裏をかく。
観覧車の中であえて告白をせず、油断したところで一気に決める!
「観覧車?別にいいけど…」
一ノ瀬は心なしか緊張しているような気がする。作戦通りだ。
幸い観覧車は混んでなかったので、まったく並ばずに乗ることができた。
「観覧車久しぶりだなー、テンション上がってきた!」
「子どもかっ。……私、観覧車って初めてなのよね」
「珍しいな。どうだ、乗ってみた感想は」
「まだ早いでしょ。せめて頂上まで待ちなさいよ」
「確かに…」
観覧車はゆっくりと頂上へ向かっていく。
「あ、頂上だ」
「これが…きれい…」
この遊園地の観覧車は頂上からの景色が一時期有名になっていた。一ノ瀬も楽しんでくれたようで何よりだ。
「あ…」
観覧車が下に降り始め、一ノ瀬が残念そうな声を漏らす。
「ははっ、観覧車の頂上ってすぐ終わっちゃうんだよな」
「そうなんだ……あれ?」
「どうかしたのか?」
「いや、なんでもない」
俺が何もアクションをかけなかったことに疑問を抱いている様子だ。
そうこうしているうちに観覧車は一周し、俺たちは地面に降りた。
「いやーかなり漫喫できたな、そろそろ帰るか」
「え、ええ。そうね」
出口に向かって歩いていく途中で噴水が目に入る。
ここだ。ここしかない。
「ちょっといいか?」
「どうしたの?」
右手を差し出し頭を下げる。
「好きですっ!付き合って下さい!!」
初めての告白と同じ、何の捻りもない台詞。これでいい。あとは一ノ瀬次第だ。
「えっ、あっ……」
最初に漏れたのは戸惑い。
「……」
「ご、めんなさい」
「……っ!」
だめだったか…
「私は…まだわからない。好きとか、付き合うとか…。こんな状態で付き合ってもあんたに迷惑だと思うから。」
「俺はっ!それでもかまわな――――
「駄目っ!!」
俺の言葉は被さるように遮られる。
「それは駄目。少し…時間をください。あまり長くは待たせないから。」
「わかった。一ノ瀬が納得する答えを出せるまでいつまででも待つよ。」
「ありがと…。あと、今日は楽しかった!それだけは確かだから」
「お、おう。それはよかった」
その後は、互いに気まずくなりながら遊園地を出て、帰路に就いた。
俺の告白は、成功と言えるのだろうか。結果が出るまでは何とも言えないが、やれることはすべてやったはずだ。
一ノ瀬がどんな答えを出したとしても、受け入れよう。
「――――――という感じだ」
『なるほどな。まあ、振られたわけではないから希望はあるよな。よく頑張ったんじゃないか?』
「お前にそう言ってもらえると気が楽だ」
俺は、今日のデートの顛末を電話で彰に報告していた。
『もうやれることもないだろうし、堂々と待っとけよ』
「ああ、そうだな。ありがとう」
『おう、また学校でな』
彰の言う通り、やれることは全部やったわけだし、気楽に待っていよう。
「とは言ってもなぁ」
やはりそう割り切れるものでもない。
「とりあえず、優鈴にも報告しておくか」
こうして俺のデートと、最後の告白は終わった。
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「私は……どうすれば……」