作戦10. 好き
好きってなんだろう
遊園地から帰ってきて、私はずっとそのことについて考えていた。
少し前から、私は前田進に対してこれまでの人生で感じたことのない感情を抱いているということには気づいていた。今ではその感情は、遊園地に行く前よりもさらに大きくなっていた。
これは一体なんなのだろうか。
前田からの告白の返事は、できればあまり待たせたくない。とはいえ焦っても仕方がない。
そうだ、前田と恋人になった場合のシミュレーションをしてみよう。
手を繋ぎ、一緒にデートする私と前田。これはあんまり遊園地と大差がないな。
じゃあその先……その先?
一気に顔が熱くなってくる。
「何考えてんだろ……私」
しかし、一度脳裏に映ったその想像は私の頭から離れてくれない。食事中も入浴中も、私の頭の中には恋人になった前田と私の姿があった。
「寝よ…」
今日はこれ以上考えられる気がしない。一度体と頭を休めることにする。
あれ?これって……
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俺、前田進は珍しく学校に向かうことに恐怖を覚えていた。
「告白の返事怖すぎる」
今日中に返事が来ると決まったわけではないが、その可能性があるというだけで俺の頭は恐怖に支配されていた。
「おはよう進」
「ああ、おはよう彰…」
学校に着くと、待っていたように近づいてきた。
「ずいぶんと元気がないな」
「当然だ。いつ告白の返事が来るのか俺は怖くて怖くて…」
「今ならビビってるようじゃ持たないだろ」
「それはそうなんだけどさぁ」
それでも怖いものは怖いのだ。
「噂をすれば、一ノ瀬さん来たぞ」
平常心平常心…
俺は目を瞑り、心を落ち着けた。
「…ねえ」
落ち着け俺、落ち着くんだ…
「ねえってば!」
「はいい!」
いきなりの大声に、慌てて目を開ける。
「い、一ノ瀬!お、おはよう」
「おはよう。それで、ちょっと話があるんだけど」
「え、それって」
「そう、例の返事。ちょっとついてきてくれる?」
「ああ…」
いくらなんでも早すぎる。こっちはまだ心の準備ができていないというのに。
「まずはありがとう」
え、終わった?
「ありがとうって、何に対してのありがとうなんだ?」
負け確定の導入なセリフが飛び出してきて、俺は非常に焦っている。
「これまでの全部の告白に対してのお礼。前田は、何度私に振られても諦めずに真剣にアプローチをかけ続けてくれた。そんな人、初めてだった。だから、ありがとう」
「ああ…」
どう返せばいいのかわからず、中途半端な返事になってしまう。
「それで、告白の返事なんだけど、」
一ノ瀬は俺の目をじっと見つめて続ける。
「私、気づいたの。私があなたに向けていた感情の正体に。」
「最初は、面倒としか思ってなかった。でも、だんだんその真剣さが魅力的だと思えてきた。」
「テスト勝負の時から初めての感情があなたに向いているのに気づいて、ようやくそれが分かった。」
そこまで言うと一ノ瀬は、魅力的な笑みを浮かべた。そして、
「私、あなたのことが好き。恋人になりましょう」
その言葉は、一言一句はっきりと俺の耳に届いた。
「……」
「前田、それ……」
気づけば、俺の頬を涙が伝っていた。
「ごめん、嬉しくて…。これからよろしく」
「ええ。……とりあえず一旦落ち着きなさい?」
「ああ。俺、この瞬間をずっと夢見てて…だから本当に嬉しい。」
「そ、そう……それで、私たち付き合うんだし、お互いのことは名前で呼び合いましょう。」
「たしかにそうだな。じゃあ、えっと…み、未来」
自分の顔が熱くなっていくのが分かる。
「は、はい…」
未来も顔を赤らめながら返事をする。
「私も……進。」
「お、おう」
なんだこれ。幸せで仕方がない。
俺と未来が恋人になったという実感が強く湧いてくる。
「よし、今日は早速一緒に帰ろう!」
学生で恋人といえば、まずは一緒に下校だろう。
「いきなりね。まあ、別にいいけど」
「よし!楽しくなってきた!」
かくして、長いようで短い俺の一ノ瀬未来攻略作戦は終わりを迎えた。
だがこれは始まりにすぎない。必ず俺は、未来を幸せにして見せる。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。一ノ瀬と前田の物語は、もう少しだけ続きます。最後まで見守っていただければ幸いです。




