君と僕の境界線
その恋が叶わないものってことは、誰よりも自分が知ってる。だって君を想うこの気持ちは、君が知るはずのないもの。
だから僕はまた笑い、そっと隣で笑うんだ。悲しみを隠したこの仮面は、誰にも取らせはしない、したくない。取るのは君だけでいい。いいのに。
不器用な僕は、また笑って誤魔化すんだ。
*
「……でね、また流されちゃってさー、ひどくない?ね、聞いてる?」
「あ、あぁ聞いてるよ、聞いてる。確かにひどいね、俺はそんなことしないけど」
「さっすが、我が親友。男友達いるとやっぱ楽しいね」
「……そりゃ、よかった」
*
期待なんかしてない、してはいけないものだから。これ以上傷つきたくない、でもこれは、君が悪いわけじゃないんだ。
こんなにも想って、君の行動全てが僕自身に向けられていると感じる僕が。そう、僕の心を憎めばいい。でもこんなに辛いなら、
好きになりたくなかった。
*
『ねぇ、起きてる?聞いてほしいんだけど』
『起きてる。どうした?』
『それがさーー』
『ありがと、なんかスッキリしたよ。じゃ寝るね』
『あ、あのさ……』
『ん、何?』
『……なんでもない、おやすみ』
*
返ってくるはずのない返信を待ちながら、僕は何度も何度も画面を見る。わかっていながらもこうして待ち続ける自分が嫌で、でももう少しすれば……、なんて淡い期待をまた持って。
返信が来たとしても、僕には君を楽しませるだけの話題なんて、もちろん持ち合わせていない。きっと明日も、明後日も、これから先も――
*
叶わない恋は辛いと言うけれど、それはきっと君を想っているから辛いんだ。今まで過ごしてきた日々を無くすのも辛くて、そしてまた君を想えば、
涙は止まらない。
この記憶が、思い出がなくなればいい――そう願って空を見上げたけれど、空はただ僕の息で白く染まっただけ。
簡単に白に染まるように、僕の記憶も染まって、何もなかったようにしてくれればいいのに。
*
「……でさ、そ、私は……」
遠目で笑う君を見ているだけでいい。でもその笑顔は、また僕に期待を持たせて辛くなりそうで。それから逃げたくて、僕は君のスニーカーばかり見ていた。
親友。
それが僕らの距離で、唯一君と僕を繋いでいる糸。肩を貸せる、そんな僕らの微妙な距離は、
近づいては離れていく君を、笑ってくれる君を、それだけでまた期待する自分の心を、
辛いくらいに、憎めばいい。
好きに、なりたくなかったーー