大魔王様はお留守です!
第2回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞への応募作です。ちゃんと完結してます。
よろしくお願いします。
私は大魔王、あらゆる魔族の頂点に立つ存在。だが望んでなったのではない。一人で気ままな暮らしが好きなのに、ちょっかいかけてくる魔物や魔族をひねり潰していたら、いつの間にかこうなっていたのだ。それでも大きな城に住み、惰眠とみつぎ物をむさぼりながら報告を聞くだけの毎日は楽チンで、それなりに気に入ってはいた。
なのに、勇者が私を倒しに来ただと? ひねり潰すのは簡単だが、相手をするのも面倒で、執事のふりをして、大魔王は留守だと言ってやった。なのに勇者は頑固であきらめない。待っている間、手合わせしろというから付き合ったが、こいつ勇者のくせにまったく私に歯が立たない。ま、本当は大魔王だからな。ついでに、大魔王は私なんかより何倍も強い、私にすら勝てないお前がかなうわけがないと忠告してやったが、聞きゃあしない。どこまで頑固なんだ。
しかしこの男、さすが勇者というだけあって、伸び代がすごい。毎日手合わせしていたら、たちまち互角になり、とうとう私に土をつけるまでになった。
そこで私は決心した。
「勇者よ、大魔王になれ」
私は勇者に全てを明かし、大魔王の座を譲って旅に出ることにした。
勇者があれだけ強くなったのだ。私に出来ぬわけがない。もっともっと強くなって、必ず再び勇者を上回ってみせる。
形は違うが、結果的に目的を果たした勇者は私の言葉を受け入れた。私が戻るまで、この城で待っていてくれるとも約束してくれた。
ありがとう、勇者よ。我が最大のライバルよ。
さらば、また会う日まで。
お読み頂きありがとうございました。
楽しんで頂けましたでしょうか。
『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』でも「タイトルは面白そう!」のコーナーで毎回投稿してますので、そちらもよろしくして頂けますと幸いです。これまでの採用率は5割弱ですが。
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