不思議なことのはじまり
「もう冷え込むから、家に入って」
「はい」
「うん」
「はい」
「うん」
「ずっとこうしていたいです」
「ヤベェ」
イクタはロージィーから少し離れる。
「もう俺帰るから。君も素直に帰るんだ」
「あ、はい」
背を向けて数歩進み、ふりかえるイクタ。
再度ロージィーに近づいて、ほほにキスを贈って足早に帰って行った。
触れられたほほに手を当てて、イクタの姿が見えなくなった頃、ロージィーは気配に気づいて横を見た。そこには、一匹の灰色のネコ。ネコは溜息を吐いて言った。
「お帰りなさいませ、お嬢さん」
「あの・・・黙っていたのだけれど」
遮るようにネコは言う。
「ええ。ご両親に報告だ。明日にでも」
ロージィーは小さくうなずいた。
「分かりました。そろそろ話そうかと思ってたんです」
「はい。では、お家に入りましょう」
* * *
翌日、学校の中庭のベンチに腰掛けるふたり。
イクタの固い表情に、不思議そうな顔をするロージィー。
「あのね、大事な話があるんだ」
「はい」
「あのね、親友のアキのことなんだ」
「アキさんにご挨拶したいです」
「うん」
「はい」
「あのね・・・アキに会わせたいんだ」
「ん?はい・・・」
「あのね・・・アキについて、言っておきたいことがあるんだよ」
「はい・・・」
「アキは・・・」
数秒の間、イクタは眉間に深いしわを寄せた。
「どうか真剣に聞いて欲しい」
「はい」
居ずまいを改めるロージィー。
「アキは、未来が見えるんだ」