恋の魔法?
「引っ越すって本当なの?」
「多分、そうなると思います」
「いつ頃なの?」
「元々この一年だけの約束で学校に通ってたんです。両親の仕事の都合で、遠くに引っ越します」
「遠くって、どこ?」
「えっと・・・秘密、です」
「俺のこと信用できない?」
「違うんです。私、イクタ君のこと好きですよ」
「じゃあ、付き合おう?」
ぎょっと目を見開くロージィー。
「ええっ?」
「俺、君が好きだ。付き合いたい。手をにぎったり、その先のこともしたいと思った」
顔を真っ赤にして、ロージィーはしばらく喋れずにいた。ほほを押さえ、かかとでリズムを刻みだす。そうすると、イクタの気づかないところで、アメリカンブルーがいつの間にか満開に咲きだした。
「う、嬉しいです」
「オーケーってこと?」
「はい」
「手、つないだり、するんだよ?」
「はい」
「うん、分かった」
「はい・・・」
「これからよろしく」
「よ、よろしく・・・」
「あ、なんて言ったっけこのお花?咲いてる」
「あっ。ああ、あの、はいっ」
そこに、園芸部らしき男子が現れる。
「新入り?」
「いえ、あの・・・あの・・・」
「先輩?」
「はい」
「あ、すいません。ロージィーさんの付き合うことになりました。市川イクタです。時々遊びに来てもいいですか?」
「ほーう、我らがアイドル、ロージィーの恋人宣言。丁重にもてなそう。お茶でも飲んでいきなさい」
先輩が促した場所は拓けていて、大きなテーブルがある。そこでお茶会が開かれていた。この学校は、成績上位者男女五名づつ十人を特別階級として色んな特典付き生活を許している。プラントハウスでお茶会も、その特権のひとつらしい。
香り高いオレンジペコ―でもてなされ、イクタがロージィーに言った。
「君のことアキに紹介したいな・・・」
「あ、親友さんですよね?」
「そう、寺の息子でね、紅茶が好きなんだ」
「なるほど」
「アキに会ってくれるかな?」
「嬉しいです」
空気が和やかになってきた頃、イクタをお茶に誘った先輩こと藤井が、ロージィーに耳打ちした。
「恋の魔法ってあるの?」
ロージィーは目をぱちくりとさせた。