素敵な感想文
数日後。
ロージィーがイクタのクラスをたずねた。奥手な彼女がイクタのクラスに顔を見せるのは、これが初めてのことだ。内側窓の席のイクタが、ロージィーに気づいて、窓を開ける。
「どうしたの?」
「あの、これ」
ロージィーは便箋に入った手紙を差し出す。イクタと雑談をしていた男子たちがいっきにほのめいた。便箋には、『ライオンとたんぽぽ』と書いてある。
「あの、感想文です」
「あ・・・ああ、うん。うん、ありがとう」
ラブレターじゃないのか、となぜか嬉しそうにイクタをひじで小突く男子と、ラブレターなのか、と半分冗談でイクタの首を腕でしめようとするクラスメイト達色々。
「ちーがーうーかーらー」
その様子を見て、ロージーは微笑んだ。
「うらやましいです」
首をしめられて苦しみながら、イクタは言う。
「君が好きだ」
「ありがとうございます」
「通じてる?」
予冷が鳴る。
「あ、もう行かないと。次、教室移動なんです」
家に帰って、イクタは手紙を開く。
【 ライオンさん、幸せでよかった。
感動しました。
イクタ君の作品のファンになりそうです。
あの小さな本、欲しいです。
もうすぐ引っ越してしまうのですが、
友達記念に下さい。
ロージィー】
「引っ越し・・・?」
翌日の放課後にお互いに時間ができた。
ロージィーは園芸部で、イクタは学校の敷地内にあるプラントハウスに遊びに行くことになった。そこはまるで別世界。おとぎの国のようだ、とイクタは思った。
「イクタ君、お待たせしました」
「これ、なんていうお花?」
「あ、アメリカンブルーですよ」
「ふぅん・・・」
たっぷりと間があって、ロージィーが困りだす。イクタはその様子を見て、苦笑した。