表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/38

*プロローグ*

 サッカー友達がだいぶそれた軌道で蹴った。位置関係でボールを拾いに行ったのは、俺だった。渡り廊下を通して、向こう側が見える。そこは中庭で、ベンチがある。そこに座って、幸せそうに読書をしている女子がいた。

 ベンチの側には木があって、風にそよいで木葉が舞い、それに気づいた彼女は髪の毛を押さえていた。なんとなく近づいて行ったのは、もう無意識とか本能ってやつなのかもしれない。近づいて来る俺に気づいて、彼女が顔あげた。不思議そうな顔をしている。


「葉っぱ、ついてるよ」

「え?え?」


 あわてて髪に触れた拍子に、彼女の膝の上の本のページがぱらぱらとめくれた。


「こっち」


 彼女の髪の毛にからまった楓の葉を取ってあげて、それを示した。


「あ、ありがとう」


 何故かそれを彼女が受け取ろうとしたので、今度はこちらが不思議そうな顔になったかもしれない。彼女は読みさした本のページを見つけて、そこに楓の葉をはさんで本を閉じた。彼女は俺に笑いかける。


「しおりにします」

「あ、うん。赤くなるんかね?」

「え?どうだろう」

「俺達、挨拶くらいしかしないよね」

「うんうん、そう言えばそうね」

「これから、ちょくちょく話しようよ?」

「喜んで」

「なに読んでるの?」

「今回は推理小説です」

「俺のおじぃちゃん、推理小説家だったんだよ」

「ええっ?誰?どなたですか?」

「あまつかしんいちろう、って言う」

「知ってます~。ぜひこれから、お友達になって下さい」

「マジで?」

「はい」

「おじぃちゃん、ありがとう」

「え?」

「いや、ううん、なんでもない。これからよろしく」

「はい」


 そんなことがきっかけで、

 俺達の仲はぐんと深くなっていった。


 運命の歯車が周りはじめたのは、

 この日だったのかもしれない。


 

                市川イクタ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ