ななちゃんの、初日の出
「はちゅひので?」
初めて耳にする単語に、ななちゃんは何のことだかさっぱりのご様子。
「たいようしゃんみたら、おめめいたいいたいでちゅよ?」
その一言に、家族の誰も初日の出を何故見るのか、ちゃんと説明することが出来ませんでした。
変な空気が一家に流れる中──
「なな、はちゅひのでみるでちゅ」
急な方針転換のななちゃんに、じゃあ明日朝早く見に行こうと約束をして数時間。
「ぐっすり眠ってるね」
「どうしよっか。起こすのもかわいそうよね」
パパとママは初日の出を見るなら、そろそろ家を出なきゃと思っていたのですが……。
「パパ、ママ、おはよう。あけましておめでとう」
かなちゃんが起きてきました。
「あれ? ななまだ寝てるの? 初日の出見るって言ってたのに。起こそうか?」
「ん? ちょっと待って。なな、起きるかも」
ママがななちゃんの寝顔を見ながら、かなちゃんを止めました。
そして……。
「……ん~。はちゅ……ひのでぇぇ」
どうやらななちゃん、夢の中で初日の出を見ていたようです。
パパがななちゃんを起こさないように抱き上げました。
「このまま連れて行こう。直前で起こせばいいよ」
ななちゃんに甘いパパが言いました。
外は暗くまだ寒いですが、初詣やななちゃん一家と同じく、初日の出を見るために外に出てきた人で、意外とざわざわしています。
見晴らしのいい場所にご近所さんたちも集まってきました。
「あらあら、ななちゃんは夢の中なのね」
ご近所の奥様がぐっすり眠っているななちゃんを微笑ましくみて話しかけてきてくれました。
「初日の出をみるって張り切ってましたけどね」
なんて会話に花が咲いていた。
「さぁ、そろそろ日の出の時間だよ」
東の空が明るくなってきた。
「なな、おはよう。もうすぐ日の出だよ」
パパが、ななちゃんに声をかける。
「……ん~。どちておしょとでちゅ」
「初日の出をみるんでしょ?」
その時、温かい光が射し込んできた。
「はちゅひので」
「なな、初日の出を見ながら心の中でお願い事をしてごらん」
ママがななちゃんに声をかけました。
「えっと、えっとぉぉ。あちたも、はちゅひのでみれまちゅように」
はっきりと大きな声でしたお願い事に、周囲の人達もニッコリ笑顔になりました。
初日の出と共にななちゃんの可愛らしいお願いに周囲は笑顔に包まれ、太陽は未来を光輝かせているようです。
皆様の未来にも幸あれ──