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月村麻耶

【思い込みが眼を曇らす。直感や先入観(思い込み)、恐怖心や願望が論理的な思考を妨げとなる。それが認知バイアスと言える,。】



星翔学園の屋上で一人の女子生徒がパンを右手に ネット通販で買った心理学の本を読んでいた。


「認知バイアスかぁ。なるほどね。やっぱりどんなことも否定から入っちゃだめってことよね」


彼女は左手を上空に掲げる。そして願う。


(蒼き(ほのお)よ。我が手に灯れ)


するとその手には小さな青い炎が灯る。

本当はその左の掌には何もないけれど、彼女にだけはそれが見える。そう思い込むことで彼女の魔法は存在する。ないものをあると思うことが希望のバイアスを産む。


そう、彼女は妄想の魔法使いである。

「私がおかしくなったのはいつからなんだろう?」


私は夕方の河川敷で一人、ぼぉーっとしていた。



周りを見渡したら人はいる。けれど自分の周りには誰もいない。

だからってそれを寂しいと感じるわけでもない。


小学生の頃に見た魔法少女もののアニメ。

最後には仲間たちが集まって友情の力で敵を退治する。その頃の私はそれを見て心からワクワクしたりドキドキしたりもしていた。

でも、今の私はそれを見てもなんとも感じない。


(またお約束の展開か……)


そう思うだけ。


周りの人たちは部活動や勉強を頑張ってやってなにかしらの成果を上げていたりする。けれど、私は何もなしてはいない。


だからって何かをしようとも思わないし、行動を起こそうって気持ちも湧かない。


でも本当は何かに期待している自分がいたりもする。


こんな私でも誰かが変えてくれるのではないか。


アニメや漫画に出てくる主人公のように、力を持った人が私の前に現れて、こんな私をどうにかしてくれるんじゃないかって。


とても受け身な姿勢だ。だから私はこうなんだと思う。そんな都合のいい展開が現実に起こるわけがない。仮に現実でそんなことが起きても私じゃない他の人のところで起きるに決まっている。


そもそもこの思考がだめなんだ。

どうして自分を否定する。

自分だから否定するのか。

この思い込みがどんどん自分自身を負に追い込んでいってるのに。それもわかっているのに。


小学生の時に読んだ漫画の主人公の女の子もこんなふうに葛藤していたのを思い出した。

当時の私にはその気持ちがよくわからなかったけれど、いまならそれがわかる。

その主人公の女の子は魔法使いのお姉さんに助けられて強くなっていって自分を変えていった。


でも私にはそんな人は現れない。

現実だもの。お話とは違う。

別の漫画では主人公の男の子が自分の中に眠っていた力を覚醒させて魔法みたいな力が使えるようになっていたりしていた。


現実には何もない。

私を助けてくれる魔法使いのお姉さんも、

自分の中に秘められた覚醒するような凄い力も。


私は川の水面に映る自分の顔をみる。



「ーー君は魔法が存在しない現実を知って悲しんだことはない?」


水面に映る自分に向かって問いかける。

水面に映る私は残念そうな顔をしている。


その時。


水面に映る自分から声がした気がした。


「存在しないのなら存在すると思い込むことにすれば

いいんじゃない?」


そう、そんな声がーー。














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