ep1.新たな仕事
新年明けましておめでとうございます。
仕事の関係で遅くなりましたが、少しずつ更新していきます。
「あ、あのぉ……」
男が一斉に元に戻っていく面々に、戸惑いの表情を浮かべるが、そこへ双剣が来る。しっかりと帽子を被り、すでに頭は隠している。「
「気にすんな。あいつらは俺たちにゃ冷てぇんだ」
双剣が男の肩を抱き、デスクにいる四人を僻むように見る。
「で、誰なんさ、それ?」
猫女が横目を流すように二人を見る。二本の尾が空に伸びうねっている。興味がないわけではないらしい。
「お前ら……前に言ったことくれぇ、覚えとけ」
双剣の言葉に、一同が顔を見合わせる。
「言埜、覚えてるさぁ?」
「そう言えば、仰ってましたね。人材不足を補う人材がいた、と」
言埜が思い出したようで、男を見る。
「でもでもぉ。そんなにお仕事ないよねぇ〜?」
飛芽の言葉が毒舌でもなんでもないのだが、室内に沈黙が漂った。事実上においてその言葉は全員の視線をスケジュール版に集めさせる。
「最後に働いたのって、一昨日だぜ。双剣、仕事取ってくれよな」
本日の予定表には空白。数日後には一件の裁判の仕事が入っているだけ。
「うるせぇな。立地が悪ぃんだよ、立地が」
「話が逸れてるさぁ。早く戻しんさいな」
双剣が自分の事務所だと言うのに経営は閑古鳥が鳴き続けている。そんなことはどうでも良いと、猫女が話に区切りを打つ。
「ったく、しょーがねぇな、お前らはよ。んじゃ、挨拶してくれ」
「あ、はい」
そこでようやく蚊帳の外だった男に注目が戻る。
「初めまして、ガイア・ドラクルです。所属はバンパイア。人血混合種です」
その挨拶に、大した反応はなかった。七種の世界が開かれ、バンパイアの属性は妖怪。夜吹相談所においては、猫女と種族は同じだった。
「バンパイアですか。その割には人間らしいですね」
一応人間に属する言埜。外見に特徴が見られないガイアに、眼鏡を上げた。
「あ、はい。僕は人血混合なので、純粋なバンパイアのように牙があったりはしないんです」
ガイアの紹介に、へぇ、と一向に反応があった。
「なぁ、血って吸うのか?」
紅鬼がもっともな所を聞く。
「いえ、基本的にはバンパイア専用に設立された血液銀行で輸血用血液を購入する決まりなんです。普段は血液に反応するわけじゃなく、血液中に含まれる赤血球の摂取が栄養源なんです」
「そうなんだぁ。じゃあじゃあ、古い血でも平気なのぉ?」
飛芽が興味深そうに聞いてくる。それでもその手はデスク上の謎の植物を弄っている。
「ええ。特に問題はありませんが、やはり新鮮な血液の方が鮮度が良いので、状況次第と言うことになりますね。バンパイアだけが輸血パックや血液製剤をどくせんできるわけではありませんから」
あらゆる生物はやはり鮮度が良いものを欲する。それは共通してのことだろう。
「普段の食事は血液だけですか?」
「そうですね。他の種族が食物とするものは、バンパイアにとっては味のないものでしかないので。あ、でも僕は大丈夫です。定期的に血液を採れば、普段の食事でも平気ですし。レバーなどもありますから」
「ま、バンパイアは味覚があるわけじゃねぇからな。んで、細かいことは後にしてくれ。仕事の話だ」
双剣がガイアの肩を抱いて全員を注目させる。
「ウチは生憎現場担当官ばかりで、基本的に事務を言埜一人が担当している現状だ」
「あたしもやってるさぁ」
言埜は現場と事務を担当する。それは疲労を大きく伴うが、この事務所ではそれが仕方がないことでしか成り立たない。猫女も夜間に関しては夜行性の猫の特性を活かし、昼夜逆の勤務をしているが、それでも言埜には及ばない。だが、言埜がそれでも疲労に仕事を休むようなことはない。それは簡単な理由だ。忙しくないから、両立したところで大して負担にならないという、経営危機の状態があった。
「それでも本職は現場担当だろ。んでもってSPDS支部庁からガイアを異動した。ガイアは現場も担当できるが条件がある。だから、ここでは事務を担当する。言埜、仕事を教えてやれ」
「よろしくお願いします」
双剣にあわせてガイアが一礼すると、言埜が立ち上がる。
「ええ。こちらこそ。ところでガイアさん。その、条件とは?」
現場に出るに当たっては一般人としての人間にはその権限がない。観察対象、保護対象など身の保全が前提条件による力の発動のみがSPDSには認められている以上、一定の能力がなければこの世界では誰かを守ることは難しい。その点において、夜吹相談所のスタッフは、全員が人間を超越した能力と種族であり、事務処理能力に長けた存在がいない。そこで双剣はガイアを引き入れたらしい。
「えっと、申し上げにくいんですが、バンパイア種族には特性があるので、戦闘や抗争には参加出来ないんです」
「何で? バンパイアって強いんだろ?」
強いことは正義だし、SPDS所属なんだから良いじゃん、と紅鬼が言うがガイアは苦笑いを浮かべる。
「ははーん。そう言うことさねぇ」
猫女が気づいたようで声を漏らす。それにガイアが、はい……と、少々気まずそうに頷いた。
「何々ぃ? どーゆーことぉ?」
飛芽が顔を上げる。
「流血、ですね」
「はい……それ以外の件に関しては問題ないんですが、血に関すると自我の抑制がバンパイアは弱いので」
「つーわけで、ガイアには書類作成を主に任せる」
双剣に肯く一同。
「でもさぁ、仕事もねぇのにどうすんだよ? 意味ないじゃん」
紅鬼の無垢な問いは核心であり、再び所内は静けさを増す。
「い、良いんだよ。アリスティックみてぇな忙しさはここにはいらねぇんだ」
「その比較は天地の差があるってもんさぁ」
「だよねぇ。でもぉ、私、いっつもリーディルに絡まれるからぁ、好きじゃないかなぁ」
「ですね。あそこのような多忙は私もごめんですが、ある程度の充実感は欲しい限りです」
この暇な仕事は退屈だが、アリスティック事務所のような忙しさはごめん。普通という忙しさが欲しいようだが、それほどの忙しさは夜吹相談所には滅多にないことだった。
「それは良かったわ。この仕事は退屈しないと思うわよ」
その時、たまにしか開かれることのない扉が開き、二人が姿を現した。
今回は少しでしたが、次回作よりは真面目に更新していきます。
次回作は「明日のキミへ」です。
更新予定日は、1月10日を予定してます。
本年もトモミツの作品をよろしくお願いします。




