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プロローグ1 〜夜吹相談所〜

今は一つだけですが、二つの事務所をそれぞれの視点で描くストーリーです。明確な先の無い作品ですので、ファンタジーなのかコメディーなのか、今の段階ではあやふやですが、とりあえずは、バトルありのファンタジー系作品です。読んでいただければ幸いです。

「なっ、何じゃこりゃああぁぁぁっ!」

 アフロは外せない主義。

 女に手は上げない主義。

 朝食は目玉焼き(両面焼き・コショウ限定)主義。

 コーヒーに角砂糖三個とミルクは入れる主義。

 お金持ちは持ち上げる主義。

 パンツは使い捨て主義。

 午後八時には仕事を止め、残業はしない主義。

 マッチは常に三本着火主義(ライターは常時最大火力主義)。

 占い絶対信仰主義。

 決まり事は大抵破る主義。

 の多くの主に偏った主義を持ち、水虫、虫歯、痔の虫を飼い慣らし、仕事はスーツにソフト帽、ノーネクタイ、寝間着はピンクパジャマと抱き枕、 タバコはメンソール入り、極度の乗り物酔い、週一に一人でケンタッキィーで店内食事、新聞はテレビ欄と四コマしか読まない、好きなビデオは最低三回はレンタルの買取なし。などの主義なのか子供なのか、よく分からないこだわりを持つ男、夜吹(やぶき)双剣(そうけん)

 今日もまた、鏡の前で己の姿に酔いしれる―――はずだった。

「なっ、何じゃこりゃああぁぁぁっ!」

 向こう三件両隣の四方八方を時代の流れとともに、高層ビル化に日照権を剥奪された、築四十三年の二階建てボロビルながらも不動産価値は意外と上昇している、二階は倉庫、一階は夜吹総合生体環境順応解決相談所、通称夜吹相談所であり、その所長を務める双剣は、鏡を前に髪を掻き揚げた櫛を持つ手が、固まった顔色は、絶望。

「何さ? その年代はみんなそう言わないとすまないもんなん? ってか、何で二回ゆーたん?」

 日中は目が悪くなるから仕事はしない。

 猫の集会は必ず参加。

 陽だまりで昼寝が日課。

 縁側には目がない。

 捨て猫は拾う主義。

 三毛猫を見ると確認せずにはいられない。

 身体能力とスレンダーボディには自信あり。

 おいしいものが好き。

 小型薄型レンズ眼鏡を愛用。

 スーツは着ない、ラフファッション重視。

 の主に猫に偏ったこだわりのあるのは猫女(ねね)。人間ではなく猫又。自称は(せん)()。猫の物の怪の美人。猫耳と二本の尾は隠さずに常に体現している。その美貌と言葉使いの不一致だけは、彼女の魅力を邪魔しているが、当人はまるで気にせず、人間の男だろうとオス猫だろうとよく捕食(・・)する。

「相手にして欲しいだけですよ。無視するに越したことはないでしょう。ちなみに別作品ですから、混同しないでください」

 双剣を見る猫女とは違い、淡々と机に積み上げられる書類を片付けていく、スカートスーツのポニーテールの女、言埜(ことの)

 所内唯一の常識人を自称。

 仕事はまじめ。

 初見の相手には、まずボディタッチ。

 スカートスーツ姿の自分がエロくて、勝手に興奮する時あり。

 資格を六十九個持っている。

 怒ると対象をとんでもない所へ飛ばす癖あり。

 自身の雷で町を停電させるのがストレス蔓延時の発散方法。

 の人間であり、相談所の受付兼事務担当の触れた対象の心を知ることの出来るサイコメトリスト。超感覚的知覚の持ち主であり、物質転送、エレクトロマスターの超能力の発現者。最近はサイコキネシスとパイロキネシスの発現に、勤務時間外を利用しては開発に勤しむ努力家。

「そう言えばぁ、トリカブトの花の蜜を〜、蜂が蜜にして食べれるとぉ、人為的にならないで、殺せちゃうんだよぉ?」

「あんたは脈絡なさすぎさぁ」

「いきなり持論を展開しないで下さい」

「本当のことなんだよぉ〜? 試すぅ?」

「遠慮するさぁ。あたしゃ死なんけんど」

「私は一発ですから謹んで遠慮します」

「残念ですぅ〜」

 所内は日光が指さないために空気が悪くなりがちだが、デスク一角にある森のような植物の配置から漂う森林浴のような清涼感の光合成に所内の空気が常時清掃され、それらの中に埋もれるように咲く、淡いピンクの花を模す姫ファッションに身を包み、スズランを愛でている女は()()

 夜は九時に寝ないとお肌の大敵で、残業は不機嫌。

 部屋はピンクと緑のジャングル。

 家事は出来るけどしない派。

 毒には異常に興味を持つ。

 知らない毒は、まず自身で確かめる。

 薬学博学

 所長で三度実験経験あり。

 空気が悪いと風邪を引く。

 水がないと皺が増える。

 怒ると、トコトン壊す。

 そして、ポイズンプラントファクターとして、植物を自在に操り、毒知識に優れ、あらゆる免疫性を兼ね備えている人を模した異種生命体。場の空気を読めないことに気づかない天然でもあり、愛らしい姿にマスコット的な存在でもあるが、所内の食事版を兼ねているため、機嫌を損ねると、食中毒が起こる可能性が否定出来ない。かつて三度ほど双剣が救急病院へ搬送された伝説がある。

「うおぉっ! やっちまえっレッドッ!」

 そしてまた別の一角、おもちゃと戦隊ものが並ぶデスクでビデオに食い入る少年、(こう)()

 弱きを助け、悪を裁く。

 日曜七時三十分にはテレビの前へ行く。

 早寝早起き基本。

 将来の夢はもちろん戦隊ヒーロー。

 宿題は見せてもらう派。

 女の子が苦手。(所内の女は家族と思い、平気)

 孤独の人を放っておけない主義。

 おやつがないと駄々をこねる。

 所長を悪だと思い、喧嘩を売る遊びに夢中。 

 小学生の風体で戦隊ものが大好きな少年は、今日もヒーローの活躍を自分のように決めポーズを真似る。

「水神戦隊シーレンジャーッ! 母なる水がある限り、青き星は俺たちが守るっ!」

 テレビ音声と紅鬼の声が重なる。

「おー、今日も飛ばしてんさぁ、紅鬼。かっけーかっけー」

「戦隊ものも良いけれど、宿題もしないとダメよ」

「ヒーローもぉ、毒は一発だよねぇ?」

 双剣には大して見向きもしないが、紅鬼の無邪気には、大人の女たちからの微笑ましい自愛の視線が包む。

「おうっ! でも俺はヒーローだから、ピンチを救うんだっ! 毒だってへっちゃらなんだぞっ! 正義のヒーローなんだからなっ」

 しかし、紅鬼は分かっていない。だから大人は言わない。宿題でピンチになるのは自分だ―――ではなく、紅鬼は読んで字のごとく鬼だ。人に化け、小学校にも通っているが、その内に秘めるは強靭な肉体と圧倒的な力。若干赤みがかった髪は名残を残し、本来の力を発揮すれば、それこそまさしくの鬼と化す。それはつまり―――ヒーローにやられる側になってしまうということだ。

 この世界には、混乱がある。

 天世、魔世、異星のあらゆる生命体が世界を開き、世界に集った。天子に悪魔、異星人、特殊能力生命体など。ゆえに混乱は起きた。世界は大変革に追い込まれ、戦乱すら招くことになる。しかし、時を同じくしての地球では、人類により立ち上げられた複数の世界機関の迅速な整備において、いまだに制限こそあるが、異種人の地球への渡航が認可され、今では混乱も落ち着きを見せてきた。

 だが、それでもなくならない問題に、世界機関は新たな機関を創設し、各国で裁判所として機能していた機構が分解され、新たなものへと転換し、その末端組織も今ではあちこちに誕生した。

 その一つがここ、夜吹相談所である。

 受ける依頼は異種人間のトラブルが主。今までの弁護事務所や探偵事務所などとは異なり、通常任務の他にも、組織勢力を用いての代行執行としての能力を用いての制圧なども請け負っている。ゆえに、相談所には普通の人間はいない。

「なっ! なっ! なっ! 何じゃこりゃあああぁぁぁっ!」

 そして、双剣がついに吼えた。

「うーさいさぁ、所長」

「無視されて喚くだなんて、どれだけ子供なんですか」

「頭はぁ、おじーさんかなぁ?」

「出たな、はげはげ星人っ!」

 四者四様の反応。仮にも雇用主である。労わりの欠片もなくの注目度の集約。紅鬼と比較しての子供ップリの露呈にしかならないと、言埜、猫女、飛芽は視線を向け、紅鬼は戦闘のポーズをとっている。

「誰がはげじゃあっ! 俺ははげじゃねぇっ! キテルだけだこらっ!」

 

 ―――シーン―――。


 絶対的静寂が所内を包み込んだ。そして、禿げていないことを証明するべく髪を大きく掻き上げた。蛍光灯の明かりが、そこには映る。

「うわぁ、M字さぁ、つるっべさんの前触れさな、所長」

「常時帽子など被るからです。蒸れは禿げの一因ですよ」

「禿げにはぁ、毒が効くかもしれないですねぇ。試しますぅ?」

「やーいはぁーげっ! えーいはぁげっ! 所〜長が禿げたぁっ!」

 またもやの四者四様の反応に静けさが喧騒へと変わっていく。

「うわあぁぁっ! うるせぇっ! うるせぇっ! 男はなっ、苦労の数だけ禿げんだよ、ちっくしょぉぉぉっ!」

 

 ―――しーーーん―――。


 更なる沈黙が訪れる。今度は長い。

「……所長さ苦労するっぺこた、したんべかさ?」

「するわけが無いでしょう、猫女。苦労しているのはこっちですよ」

「だからぁ、毒をもって禿げを制すぅだよぉ」

「エロいことばっか興味持つから禿げたんだっ! エロ禿げ星人めっ! 俺が成敗してくれるっ!」

 誰一人として心配することも無く、馬鹿にする。自分たちの雇い主を。

「えぇいっ、黙れ黙れ黙れっ! Mはな、つるっぱげにはなんねんだよっ!」

 全くの子供である。

「はいはい。所長。悲しいからと言って私たちに当たらないで下さいね。そんなに気になるんでしたら、アートネェチャンにご予約入れますか?」

「いるかっ! んなもん邪道だっ」

 育毛も植毛も嫌と来た。ではこのまま広がっていく額と付き合うのだろうか。

「んなら、リープ21さ?」

「一緒だっ。俺は旅立つ息子を見送ったやんだよ」

「ムスコ? 飛芽。何だ、ムスコって?」

 紅鬼が飛芽に首を傾げる。

「ムスコはねぇ、紅鬼も持ってるんだよぉ。私たち女はないけどねぇ」

 飛芽の視線が下がる。

「んん〜? 女になくて、男は持ってるのか?」

「そうよぉ。男はみぃんな、ムスコを持ってるのぉ……いたっ」

 飛芽の手が伸びた。紅鬼の方へ。しかし、言埜がそれを止める。

「紅鬼に妙なことを教えない。全く、何を考えているんですか?」

「何をってぇ、もちろん、ナニをだよぉ?」

 恥じることも無く平然と言ってのける飛芽。飛芽が言埜を見る。言埜埜顔は若干赤くなっていた。触れている以上、飛芽画創造していたものを見てしまったのだろう。

「あんたは真性の淫乱だんなぁ」

 そんな飛芽を猫女が笑う。

「なぁ、だから何だよ、ムスコって? 淫乱って何?」

「だからぁあ、それはぁ……もご」

「お黙りなさい。紅鬼、あなたはまだ知らなくて良いの。さっさと宿題をしないさい」

 飛芽が言埜に抑えられる。はぐらかそうとする言埜に紅鬼は不満げに頬を膨らませ、猫女を見る。

「まぁあれさぁ、学校帰りに草むらでも探せば分かる時が来るもんさぁ。男の子たるは、それが入り口ゆーもんさ」

「猫女、あなたまで何を言っているんですか」

 言埜が飛芽を抑えたまま猫女を睨む。

「おーこわこわ。人間様は怖かねぇ。あたしゃ仕事に戻りゃんす」

 怖がってはいないが、ややこしくする気もないらしく、猫女はおとなしくデスクに向かい直った。

「飛芽、あなたもです。片付いていない仕事があるんですから、まずはそっちに集中してく

れからにしてください」

「……ふぁーひ」

 うちを抑えられ、くぐもった声で返事をした。

「って、無視か? 俺を無視して楽しいかぁっ!? 聞けよっ! つーか聞いてくれよっ! 切実なんだよぉっ!」

 と、忘れていたそ双剣が身を乗り出す。仕事に戻ろうにも戻れない状況に、言埜は苛立ちを押さえ込み、ため息としてストレスを吐き出した。

「あ、お客様のようです」

「おっ、今日は来たんさ」

「久しぶりですぅ。とっておきでおもてなしするですぅ」

「おっしゃっ! 正義のヒーロー、レッド紅鬼様のお出ましだっ!」

 その時、入り口に浮いた人影が、静かに扉を押した。だらけきっていた雰囲気が、一変する。それを象徴するように業務計画表には、空白しかなく、あるのは、いつか書かれたのだろう。一人が配属されてくるという予定がうっすらと消えかかっているだけだった。

双剣だけが一人、誰も相手にしてくれず、鏡に向かって呆然としていた。

「あの、すみません……」

《いらっしゃいませぇっ! 夜吹相談所へようこそっ!》

 ついその瞬間までそれぞれのデスクにいたはずの四人が、扉が開いた瞬間に、両手を広げての歓迎ムードムンムンの笑顔で出迎える。

 元来相談所と言うものは、悩める人が来るのであって、ハイテンションで出迎えることは失礼に値する。しかし、みな笑顔。それも飛びっきりの。

奥では鏡に向かっていた双剣がソフト帽を被り、キテル頭を隠し、ひげを撫で揃える。

「あ、え? えっと……」

 当然の反応。驚きと困惑にたじろいでいる。

「ささ、入った入ったぁ。お客様一名様ごあんな〜い」

「ごあんなぁ〜い」

 猫女と飛芽が引き返えさせまいと腕を掴み、中へ引きずり込む。

「あっ、ちょっ、ちょっとっ?」

「紅鬼、お茶とお茶請けのよ〜い」

「ラジャーッ!」

 受付担当の言埜はそそくさと出迎えを終えると、契約書類の用意に入っていた。

「ささ、ここに座りんさい」

「ごゆっくり〜して下さいねぇ〜」

 応接用のソファに座らせると、猫女と飛芽はやはり逃がさないようにと、笑顔の中に飢えた獣のような光を宿したまま、男の両端を埋める。

「あ、あの、えっと……」

 両手に花に見えないことも無いが、困惑する男と笑顔の二人。場所が異なれば別のサービス業になるだろう。

「初めましてにゃん。あたい、猫女って言うにゃん」

 ものすごい愛想を振りまき、語尾まで返る猫女が男の顔に近づく。

「わたしはぁ、飛芽って言いますぅ。今日はぁ、よろしくお願いしますねぇ」

 こちらはこちらで、職業が明らかに異なっている。服装からそういう店に見えないことも無い。

「ほい、お待た。熱ぃから気をつけてな、兄ちゃん」

 そこへコーヒーとクッキーを差し出す紅鬼。

「ようこそ、夜吹相談所へ。初めまして、私は言埜と申します」

 そこへ数枚の書類を手にした言埜が対面のソファに腰を下ろす前に握手を求め、男もあわてて立ち上がり、握り返した。

「どうぞ、お座りください」

「あ、はい、どうも……」

 まともにみえる言埜に、男はどこか気恥ずかしげながらも頭を下げ返し、再び腰を下ろした。

「すみませんね、うちの社員は少々やる気に溢れてまして」

「さてさて、依頼は何さね? 青少年。お姉さんに腹を割って話してみやしゃんせ」

 猫女が男の腕に絡み、自分の胸に当てさせる。

「あっ、ちょっ……うぁ」

 男が顔を赤くして、猫女の胸元を見ては視線を逸らせる。

「どぉんな危ないことでもぉ、私に叶うものはないのでぇ、なぁんでもどうぞぉ?」

「ひぃっ! な、何ですか、それっ?」

 快楽がきたと思えば、恐怖がくる。不気味なとげをいくつも持つ植物を飛芽が男に近づける。

「二人とも、仕事の邪魔をしないで下さい」

 呆れたため息とともに、言埜がごめんなさいね、と苦笑した。

「さて、話を戻して、今回はどのようなご用件ですか?」

 言埜の言葉に、男が声を発す。

「あ、あの、依頼人じゃないんです、俺」


 ―――しーーん―――。


 沈黙。双剣が自分の中央のデスクに腰を下ろす音だけが響く。

「あ、あの、きょ、今日から着任することに……あ、あれ? あの、皆さん?」

 業務計画表に描かれていた予定。そこには仲間が加わるという印が、今日の日付にある。

「え? あ、あの? もしもし?」

 しかし、男が依頼人じゃないと分かるや否や、

「なぁんや、客やないんさ。つーまらんさ。あたい、昼寝してくっわ」

「せぇ〜っかく、とっておきをぉ、持ってきたのにぃ、無駄になっちゃったぁ〜」

「んだよ。じゃあ、コーヒー回収〜」

「ふぅ。せっかく書類を用意したのに、また整理しなおさないといけませんね」

 四人がそそくさとお琴から離れ、それぞれのデスクに戻っていく。孤独に残された男は、わけが分からずに右往左往していた。

「お前ら、反応が素直すぎんだろうがよ……」

 双剣だけが、入れ替わりに立ち上がり、男のほうへ歩き出した。


先日更新予定を修正しましたので、こちらでも改めて。


明後日にはsolaを更新するつもりです。


その後の展開は、今現在パソコンを修理に出しているので、戻って来次第になりますので、その都度solaに追記をしていきます。

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