ケビンが黄昏れる海。
漣の音。
ざぁざぁと音を立てる、そんな波の音。
車を止める。
真っ赤な車が夕陽のせいで更に赤みを帯びる。
ガードレールの前に立ち、前を見る
彼は見る。
下の浜を。
ところどころにある岩を。
広大な海を。
地平線を。
彼方を。
陽を。
雲を。
空を。
瞼に映る全ての景色を。
彼は見る。
少し伸びをする。
遥かから来る風。
潮風を運び、彼はそれを浴びる。
潮の匂いを嗅ぎ、くしゃみをする。
飛沫は風に運ばれ、自分にかかる。
再び黄昏れる。
彼は思う。
人生を。
そして海を。
多少憂鬱になる。
頭を横に振り、嫌なことから遠ざかる。
彼は見る。
陽の中に見る。
思い描く。
思いつく限りの人物を思い描く。
少し笑う。
そろそろいい時間。
自動車のエンジンをかけ、乗る。
窓に映る海の景色を見送りつつ、車を発進させる。
夕方。
世界が橙色に染まる。
そんな崖から見た風景。
急な曲がりのガードレールが一つ、赤い破片を撒き散らし、新たに道を作っていた。