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第18話

※今回は第三者視点となっています。

 

 SIDE:リック


 『自由貿易都市ラハン』


 メスティア王国南部に位置する国営領地であり、巨大な運河と海岸の両方に面したその地形の利便性は、国内に留まらず他国との貿易をするのにも都合がよく。この国随一の貿易都市として、多くの貿易品が一同に集う関係上、いつの日かこの街で出店することを夢見て、日夜、多くの商人達がしのぎを削り合あっている場所でもあり、一攫千金を夢見る商人達の憧れの地としても人気が高い。


 また、貿易をより活発におこなえるようにと、過度な関税を掛けさせないため、あえて貴族領にはしておらず。さらには、街やその周辺の警備もメスティア王国南軍が直接警戒に当たっているため、物流の一大拠点にも関わらず、比較的、盗賊被害の少ない安全な街としても有名であった。


 無論、リックもこの街のことも良く知っているし、商会を構える者としては憧れの地でもある。場所的にもイグオール東部に流れる運河を下り、海路を経由すれば片道二週間ほどでたどり着ける場所にあるため、決して輸送が困難な場所でもなかった。


 ただ不思議に思ったのは『なぜ錬金術師の彼がこの街を指定したのか』についてだ。この疑問が自分の中に大きく引っかかっていた。


 勿論、商売をするに当たって、ラハンはとても魅力的な市場と言えよう。ただ大きく稼ぎたいだけならば、王都に住む裕福な貴族連中を相手にした方が、楽に稼げて利益も得やすい。それに比べて、ラハンでの商いの相手は腕利きの商人達であり、此方もかなりの力量を見せなければ簡単に足をすくわれる、とても難しい市場(戦場)でもあるのだ。


 とても魅力的な話だし、すぐに飛びつきたい気持ちもあるのだが、ここはまずこの話を持ってきた錬金術師の青年の真意が知りたくなった。



「ラハンか。これは意外な・・・とまでは言わないが、随分と攻めた場所を指定してきたね。私はてっきり王都での商いを持ちかけられると思ったのだが、この街を指定した理由を聞いてもいいかね?」


「構いませんよ。それではまず、なぜ王都ではないかについてご説明いたします。ですが、これは結構簡単な話でして、この商品の魅力が知れ渡れば簡単に商品が売れてしまうことが予想できたからになります。


 そこに商人の腕はそこまで要らないでしょう。なにせ、仕入れれば仕入れるだけ売れてしまうのですから。貴族とのコネが無くても商品を抱えているだけで、逆に向こうから寄って来ることも予想ができます。


 なので、この商いを受け負った商人達が真っ先に向う場所は貴族が最も多く住まう王都になるでしょうから、そこで最初の争いが生まれると予想ができます。それでも、始めのうちは上手く稼げるでしょうが、徐々にこの街での事業が拡大していき生産性が向上すれば、需要が満たされ、次第に商売が上手く成り立たなくなっていくでしょう。


 その時、果たして何組の商会が生き残ることができるでしょうか?


 もし運よく生き残ったとしても、隣にはライバルだらけ。しかも激戦を潜り抜けた猛者ばかり。今度はお互いで激しい価格争いになることが予想されます。


 それはそうでしょう、あくまでこれは公爵家が興した公共事業、自分達で生産している訳ではないのだから仕入れ値を弄ることはできない。


 贋作を作るなどもっての他です。その場合は公爵家まで敵に回す事になりますからね。そうなると今度は卸値をいじる他なく、お互い足の引っ張り合いになるので利益はどんどんと落ち込んでいくでしょう。


 そんな骨肉の争いに態々参戦するくらいなら、最初から他の場所で地盤を固めてしまった方がいい。


 そこでラハンの街が候補に上がります。


 確かに、あそこの街では商売相手が腕利きの商人達になるので、楽に儲けたいという甘い考えの者は確実に淘汰されていくでしょうが、俺はリックさんがそこで生き残れると信じています。


 それに、自国の貴族や商人に売れなくなったら他国へ販路をシフトしてしまえばいいですし、あの街はそれに適しています。それに、商人にとって先駆者という『実績』と『信用』は重要なステータスになります。


 たとえ王都の販売が上手くいかなくなったからといって商人達がラハンに矛先を変えたとしても、すでに地盤を築き上げているリックさんに勝てる道理はありません。商売とはそんなに甘くありませんしね。


 それに、王都とは違い今度は腕利きの商人達が相手になります。甘い考えで鞍替えしてきた連中なんて、それこそカモにされて生き残れないでしょう。あそこはそういう街ですからね。


 それにリックさんは大商会の持ち主です。最初にリックさんが王都を選択せずにラハンを選べば、他の商会は勝手に王都に流れていくでしょう。


 なかなか魅力のあるお話を用意してきたと自負しているのですが、いかがでしょう。この商談(勝負)、商人として受けてみたくはありませんか?」



 そう言ってにっこりと私の顔を見ながら微笑むこの若き錬金術師の話を聞いて、正直鳥肌が立った。この成人して間もない青年は一体どこでそんな考えを学んできたのか、それとも自分で考え付いたものなのか。


 まさか娘より年下の彼に商売の何たるかを諭されるとは思ってもみなかった。間違いなく彼には商才がある、それも飛び切りでかい才能が。


 はたして自分が彼くらいの時にここまでのビジョンを描けていただろうか。しかも、今回商談を持ちかけてきたのは彼のはずなのに、今は明らかに自分の方が実力を試されている。いや、これは焚きつけられたと言った方が正しいかもしれない。


 自分だって現役の商人だ。駆け出しの頃から学んだ知識を大いに活かして、商会を大きくしようとしている最中にこんな話をされて、心が振るわないわけがない。確かに、ラハンの商人達の力量は聞き及んでいるし、夢を描いていた若かりし頃の自分では通用しなかったかもしれないが、今なら話が変わってくる。決して若い頃のように無様に負けることはないだろうし、対等に遣り合える実力は持っていると自負している。


 それに、彼がそこで戦うための強力な武器を用意してくれると言っているのだから、正直これで負けたら私は商人を引退した方が家族のためかもしれない。


 後はこの商品の魅力についてだが、“あの領主”が自ら主導で事業を起こすぐらいなのだから、それだけ領主もこの商品を高く評価していることが窺える。そんな商品を引っさげて戦いに行けるのであれば、夢でしかなかったラハン進出も現実の物になるかもしれない。



 (そういえば、彼はこの商品をあの街で流通させてほしいと言っていたが、そちらにはどんな意味があるのだろうか?)



「実に面白い、前向きに検討させてもらいたいと思うよ。詳しい値段交渉なんかはまた後日なんだよね?しっかりと準備をして、楽しみにさせてもらうとするよ。


 それと話を聞いて一つ気になったのだが、この商品をラハンで流通さる、君自身のメリットについても尋ねていいかな?」


「あぁ、それはですね。もし俺と同じ“同郷の者”がラハンにいたら、俺がイグオールの街にいることに気がついてくれるかなと思いまして。この商品には領主様にお願いして、箱にあるマークも付けてもらう予定なんですが、知り合いがそれを見つけてくれれば、高確率で俺がこの街にいると分かるようになっているんですよ。


 それに元々、俺はラハンの街に深い縁がありましてね。もし俺の仲間達がこの国に来ているとすれば、必ずあの街を目指すと思ったので。まぁ、いればいいなぁ程度のおまじないです」


「へぇ、君の同郷の人がラハンに。ちなみに、君が直接その街に探しに行ったりはしないのかい?」


「いつか自分で行ってもいいのですが、今は仕事が忙しいのと、ここの土地でまだやりたいことがたくさんあるので、残念ですが今はこの街を離れられません。それに自分は領主様のお抱え錬金術師でもありますからね」


「おぉ、やっぱり君が噂の錬金術師だったんだね。商人達の間でも噂になっているよ」


「えっ、俺の噂ですか?」


「あぁ、『突如現れた天才錬金術師、公爵のお抱えに!』ってね。時期的にも君がこの街に来て少し経ったくらいにこの話を聞いたから、まさかとは思ったけど。いやはや、納得ができてスッキリしたよ」


「あはは・・・・、噂に負けないよう頑張ります」



 そう言って、彼はすっかり冷たくなったお茶を飲み始めた。どうやら褒められるは苦手なようだ。せっかくなので、もう一つ気になる噂もあのだが、ついでなのでそちらも聞いてみるとしよう。



「実は、これも巷で噂になっているんだが。その錬金術師と領主様の愛娘であるアメリア嬢が恋仲なんじゃないかって話もあるんだが、これは本当かい?」



 今度は物凄い咽て動揺し始めた。この辺は歳相応で可愛げがある。先ほどまでは、自分と同年代の商人と商談していた気分であったため、こういった姿は人間味を感じて、とても好感が持てた。



「げほっ。なんですか、その噂は・・・・」


「なんでも、お嬢様とその錬金術師が腕を組んでいた所を領主様に発見され、とび蹴りを喰らって吹っ飛んだって話を聞いたんだが。確か、その時お嬢様にも負けないくらいの美少女も一緒に侍らしていたって話も聞いているね」


「心当たりはありますが、詳しく話すと大変なことになりそうなのでノーコメントで。取り敢えず、彼女とは恋仲ではないですよ。職場の同僚みたいな関係です」


「ふむ、ではそういう事にしておこう。それに、あの領主様が簡単に娘を嫁に出すとは思えないしね。商人達の間でも、領主様の溺愛っぷりは有名だから。


 それなのに彼女からお菓子や宝石、ドレスの類の(たぐい)催促をされた商人は誰もいないから、よほど芯の強い方なんだろうね」


「確かに、同じ錬金術師として尊敬できる方ですし、立派な考えの持ち主だと思いますよ。それにとても優しい方なんだとも思います。大貴族のご令嬢にも拘らず、偉ぶってるところも見たことがありませんしね」


「そうかそうか、それは喜ばしいことだ。領主様の嫡男であられるラインハルト坊ちゃんもとても優秀だと聞いているからね。次の世代も安心してこの街を任せられそうで、住んでる民の一人としては実に誇らしい限りだよ。わっはっは」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 まだお互いに距離を取ってはいるが、互いの実力は認め合っているって感じかな?


 でもね、ナタク君。商人の情報収集能力を舐めてはいけないよ?


 お嬢様が君に好意を寄せているかもしれないという情報は、他にも少なからず私のもとにも届いているし、古くからあの家と付き合いのある者達には、あそこの家の者は惚れた相手に対してどこまでも情熱的なのを知られているからね。


 なにせ、あの前公爵様の孫娘でもあるんだから。もしかしたら降嫁(こうか)もありえるかもしれないかな?


 でもまぁ、今はもしかしたら程度で留めておいた方が良さそうか。茨の道かもしれないけど、今日の彼を見ているとなんだか成し遂げてしまいそうに感じるから不思議だ。彼がこれからどんな活躍するか、今からとても楽しみだ。


 さて、楽しい商談も今日はこれで終わりかな。一日の最後にこんなに気持ちのいい話が出来るとは思わなかった。今度のお城での商談の続きが今から楽しみでならないよ。あの時、彼を馬車に乗せていて本当によかった。


 うん、何かな?


 ナタク君はその鉢植えに興味があるのかい?


 あれは確か、この前イグオールに帰る時に隣村の村長に調理の研究依頼をされて持ち帰った物の苗だったか・・・・


 現物はすべて調理ギルドに渡してしまったが、彼は植物にも関心があるのかな?


げほげほ・・・Σ( ̄Д ̄;)


(まだ少し甘いね。)(´∀`*)

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