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第16話

 

「ナタク君、条件に合う商人に心当たりがあるのかい?」


「えぇ。この街に来る途中で知り合った商人さんなんですが、中々のやり手で中央通りに大きな商会をお持ちの方ですね。ほら、この前アキと買い物に出かけた時に俺が買い物に行ってたお店ですよ」


「あぁ!確か、“ホームナー商会”って看板のお店でしたっけ?先生が大絶賛しいてたところですよね?」


「あそこは総合ショップらしいですけど、二階部分に衣類品を取り扱ってるブースもありましたし、大きさで言ったらこの辺の衣類を取り扱う店の三倍は確保されていたので、かなり好条件だと思いますよ。それに、衣類関係はオーナーの娘さんが一手に引き受けてるらしくて、俺が買い物に行った時も中々のセンスの良さと品揃えでした。


 それと、クロードさんとの打ち合わせで今度あそこの商会には『石鹸』などの販売契約で一度伺おうかと考えていたので、一緒に聞いてきましょうか?」


「ホームナー商会か!なるほど、そこは盲点だった。家とも取引している商会なんだが、あそこには食品関係を任せていたので、衣類を扱ってるのは知らなかったよ。確か大通りのかなり大きな店舗だったよね?」


「俺もまさか最初に会った商人さんがあそこまで大きなお店のオーナーだとは思いませんでしたので、お店を訪れた時には驚かされました」


「あそこのオーナーは大事な取引や昔からの付き合いがある場所には、必ず本人が取引に出向いているらしいからね。家にもよく来るから知っているよ。あそこなら私も口利きできると思うし、必ず商談のテーブルには着けそうだね!


 そうと決まったら、サンプルと資料作りをしないとだ。アキナ君、残りはどれくらいあるんだい?」


「えっとですね、ちょこっとお待ちを・・・・。確か自分用に数着とお試しで作ったものが5セット程度でしょうか?空き時間にちょちょいと作っただけなので数はあまりありませんが、型紙はすでに完成してるので、後はデザインとサイズをいくつか用意すればすぐに準備できますよ。


 それにみ~ちゃんもいるので、錬成を使えばそんなに時間をかけずに作れると思いますし、他にも少しタイプの違う物も用意できると思うので、時間さえいただければ種類も豊富にできると思います」


「では、今日はアキナ君は家に泊まって試作作業をやってしまおうか!あそこならサンプルに最適なメイド達がダース単位で常駐しているからね。せっかくだから、リズとミーシャも連れてって手伝わせよう!」


「えっ!私も行くんですか?」


「美味しい料理とお菓子も用意し「是非ご一緒させてください!頑張って働きます!!」よし、リズは確保っと」



 流石はアメリアと言ったところか、リズベットの扱い方が非常に上手い。このままだと、自分まで連れて行かれそうだったので、他の用事を入れて退散することにする。流石に領主が不在中にアメリアの家にお泊りとか、後でどんなひどい目にあわせられるか考えただけでも恐ろしい。



「では、さっそく今から商会の方に出かけてアポを取ってきますね。あんまり早すぎても資料やサンプルが間に合わないと思うので、一週間後で都合の良さそうな日を抑えてきますよ」


「あ・・・・、そっそうだね。それでお願いするよ。アキナ君もそれで大丈夫かい?」


「はい!先生、お手数ですがよろしくお願いします」


「いえいえ、それでは俺はこれで。宿屋の方には俺から伝えておきますね」


「はぁい、お願いします」


「ナタク君、また明日ね!」


「ナタクさん、お疲れ様です」



 挨拶を済ませてからアメリアの実験室を後にする。「さて、それではもう一仕事してくるとしよう」と気合を入れ直し、廊下を歩き始ると丁度向い側からミーシャが此方に向って歩いてきた。どうやらアメリアの実験室を訪れに来たようだ。



「あれ?ナタクさんだ!ギルマスとの面会はもう終わったんですね。今日はお仕事終りですか?」


「いえ、今度はこれから商人さんとお仕事の打ち合わせをしに行くところです。ミーシャさんはアメリアさんのところですか?」


「はい!仕事が終わったら部屋に来てくれって言われたので。でも、いったいなんの用事なんですかね?」


「あはは・・・・。ミーシャさん、頑張ってください!」


「うん?はい、私頑張っちゃいますよぉ!って、頑張らないといけない用事なんですか??」


「まぁ、着いてからのお楽しみで・・・・。あぁ、それとガレットさんに研究棟の温室の使用許可をいただけたので、明日の朝に立会いを頼んでもいいですか?明日から鉢植えを温室に移して本格的に品種改良を進めようかと思うので」


「りょうかいであります!それでは、準備してお待ちしていますね」


「お願いします。では、俺はこれで!」


「は~い!ナタクさん、また明日です♪」



 そう言って可愛らしく手を振った後、ミーシャは楽しそうにアメリアの実験室の扉を開けて中に入って行った。


 ちなみに、これは扉が閉まるまでに聞こえた彼女の肉声である。



『アメリアさ~ん、仕事終わったから来ましたよ~っと!あれれ、皆さんどうしたんですか、そんな恐い顔をして・・・・・。えっ!ちょっとアメリアさんなんで私の服を脱がしにかかるんですか!ちょ・・・やめ・・・リズ!助け・・・って凄い悪い笑顔!?それに、アキナさんが持ってるその小さい布は何ですか!?って、そんなところまで!?誰かたす・・・・いやぁ!!!』・・・パタン。がちゃり



 (強く生きてください、ミーシャさん。そして、明日の鉢植え移動のお手伝い、よろしくお願いします。なむなむ)



 さて、あそこに戻っても自分には何も出来ないので、このまま中央通りに向ってしまおう。


 特に他に寄る用事もなかったので、真っ直ぐにリックの店の前までやってきた。道中の道はさすが街のメイン通りだけあって帰宅やこれから食事や飲みに出かける人でごった返していたが、都内の帰宅ラッシュよりはかなりマシだったので、難なくたどり着くことが出来た。というか、あっちの世界は狭いところに短時間で人が集中し過ぎなんだと思う。


 店の中に着くと一階の食料品売り場は夕飯の買出しの奥様方で込み合っていたので、まだ比較的空いていそうな二階のマリーの所に向うことにした。と言うか、パッと見た感じリックは店頭には見当たらなかったので、たぶん奥で作業をしているのかもしれない。


 二階に着くと、思っていた通り人もまばらで、場所によっては商品に白い布が掛けられていたので、どうやら店じまいの準備をしていたようだ。その中でマリーを探すと、奥のコーナーで手に持ったボードを見ながら、他の従業員に指示を出しているところであった。



「えっと、そっちの棚は今日中に空けちゃって。明日から新しい商品を置くことにするから。そっちは、もう少し明るい色を前に出して・・・・そう、そんな感じ。後は・・・・!


 お客様大変失礼しました。何かお探しでしょうか?って、あれ?ナタクさんじゃないですか、いらっしゃいませ!」


「マリーさん、こんにちは。今日はもう店じまいですか?」


「はい!二階と三階で扱ってる商品は夕方になると買いに来る人も少ないですからね。暗くなる前に、品出しなんかをしているんですよ。今日はお買い物ですか?必要な物がありましたらすぐにお出ししますよ?」


「いえ、今日はリックさんとマリーさんに商談のアポイントを取りにお伺いしました。この後ってお時間平気ですか?」


「パパだけじゃなく私にもです?って事は洋服関係ですね!?是非お話を聞かせてください!」


「えぇ、此方からも是非・・・って随分食いつきがいいですね?」


「ふふふっ。実は昨日の出来事なんですが、前から可愛いいと有名だった錬金ギルドの受付嬢の女の子が、この辺りでは見慣れない服装で街を歩き回っていたと小耳に挟みまして。確かナタクさんも錬金術師さんですよね。しかも、このタイミングで私に商談のお話が来るって事は、もしかしてその洋服を作った裁縫師さん関係ではないかと思いまして」


「恐ろしい洞察力ですね・・・・まさにその通りです」


「やったぁ!その辺はパパにかなり鍛えられましたからね。“手広く情報を仕入れるのは商売のコツ”と小さい頃から教わって育ちましたから、何時どこで商売の種が落ちてても見逃さないようにしてるんですよ」


「なんだか納得できました。と言いますか、そのセリフはリックさんに初めてあった時にも聞きましたね」


「そうでしょう、あれパパの口癖ですからね。それでは、詳しい話はここではあれなので、四階の事務所スペースまで来てもらってもいいですか?パパもこの時間は三階で品出しやらを従業員とやっていると思いますので。


 私も、もう少しだけここの作業が残っているので、終わりましたらすぐに向います。ノイちゃん、ちょこっと抜けてナタクさんを応接室までご案内頼める?」


「は~い、りょうかいです!それではお客様、ご案内いたしますので此方までお願いします」



 そんな訳で、マリーと一旦別れて従業員の女性の案内で四階の従業員スペースに行くことになった。



 (この、“関係者以外立ち入り禁止”の看板を越えて建物の奥に足を踏み入れるのは、この歳になってもなんかワクワクするな。って今は15歳か、どうも歳が半分くらいに若返ったのが未だになれないな)



 案内されて階段を上りきると、どうやら四階部分は他の階に比べて狭くなっているようで、階段からすぐの所に応接室が用意されていた。中に案内されると、そこには品の良いソファーとテーブル。そして窓の近くには観葉植物であろうか、数種類の鉢植えが置かれていた。



「此方でお待ちください、只今お茶をお持ちします」



 そう言って、案内してくれた女性は扉の奥に行ってしまった。何とか交渉のテーブルをアキナに用意してあげられそうでほっとした。というか、ミーシャも街の有名人だったようだ。確かに可愛らしいけど、昨日出歩いただけですぐに商人の耳に入っているのは、素直に凄いと思う。



 まぁその話題の彼女は、きっと今頃アメリアさんの実験室で大変なことになってると思うけど。


 明日、キャラメルでも差し入れしてあげますか・・・・・なむなむ。

・・・・・!!! |;゜Д゜)ノ


なむなむ 人(´-ω-`;)



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