表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/194

第13話

 

 知られたくない黒歴史がまた一つアキナに知られてしまったが、かと言ってこれからも自重する気はまったくないので気にしないことにした。



 (むしろ、開き直ってさらに堂々とやらかせるってもんだ!)



 アキナも漸く火薬モドキの恐怖心が薄れたみたいなので、後はガレットとの面会の時間までのんびりと『催涙煙幕』を作って過ごすそうと思い、新しい素材を用意し始めたところで、入り口のドアから来客を伝えるチャイムが鳴り響いた。今度こそ、予定を知らせに来たミーシャであろう。


 仕方ないので、休憩を挟みながら話を聞こうと、アキナにはお茶の用意を頼んでから自分で来客の対応をすることにした。ちなみに、アキナは中止になったクッキータイムの復活にえらくご機嫌みたいだ。ドアを開けると予想通りミーシャと、何故かさっき別れたアメリアがドアの前に立っていた。



「ナタクさん、お待たせしてすいませんでした。ギルマスとの面会の時間が決まりましたのでご報告にあがりました」


「やぁ、ナタク君さっきぶりだね。私は廊下を楽しそうに歩くこの子を見かけたから付いてきたよ、なんか面白そうだったしね」


「お二人ともいらっしゃい。今アキにお茶の準備をしてもらっているので、よかったら中に入ってお待ちください。今机の方を片しますので」


「では、お邪魔しますね」


「うむ。失礼するよ~」


「そういえばアメリアさん、リズベットさんの実験結果はどうなりましたか?」


「リズかい?彼女は実験の第一段階が成功したから、今度は次の実験で使う薬草の抽出作業をやってもらっているよ。本当はスキルでぱっと短時間でやってもいいのだけれど、何事も勉強だからね。今回は蒸留器を使った原始的な方法で、一滴一滴確認しながら抽出作業をやってもらっているよ。たまにスキルを使うと薬効が得られない物もあるからね、それの練習さ。


 そんな訳で、私はまた暇になってしまってね。何か一時間ぐらい時間を潰せることはないかと考えていたら、丁度よさそうなのが廊下を歩いていたから、捕まえて一緒に遊びにきたという訳だよ」


「暇つぶしってなんですか!私は仕事中なんですけど!?」


「じゃぁ、用件を伝えてすぐに受付に戻るかい?」


「アキナさ~ん、お茶の準備のお手伝いしますよ~」


「やれやれ」


「あはは・・・・。どうぞ、席に座ってゆっくりしていてください。こちらも次に作製する予定のアイテムの見本を作り終わったところでしたので」


「ほほぉ~。『薬研』があるという事は薬の調合でもしていたのかい?」


「いえ、アキとレベル上げ用の煙幕を作ろうかと思いまして、それの中身の調合に使っていたんですよ」


「あぁ、なるほどね。私は殆ど薬剤でレベルを上げてしまっているので他はさっぱりだよ。本当にナタク君は幅広く研究しているんだね、感心するよ」


「まぁ、できることが多いにこしたことはないですからね」


「この植物達も、その材料になるのかい?って、また随分とたくさん育てているみたいだけど」


「そっちは他の研究用ですね。さすがに手狭になってきたので、ガレットさんに温室を貸してもらえないかこの後相談しようかと考えていました」


「それだったら、ここの建物にも『温室』があるはずだから、そこを借りてみたらどうだい?こっちの方が向こうより近くて便利じゃないかな」


「ここの上にも温室があるんですか?」


「そういえば、まだ冊子に載せていなかったっけ?研究棟の建設に伴い、こちらにも温室を追加で増設したんだよ。しかも向こうの温室よりも広いし、まだ誰も使っていないはずだから、たぶん君なら使用許可も簡単に下りると思うよ。元々ギルドの研究者のために作った施設だしね」


「そうだったんですか。それじゃ、後でガレットさんにお願いしてみます」


「うんうん。おっ、アキナ君が美味しそうな物を持って戻ってきたね」


「あれ?アメリアさんだ、いらっしゃ~い。どうですか、メリトーリのクッキーですよ~!」


「君もあそこのファンなのか。こっちの部屋にも一人愛好家がいるからね、私も良く一緒に食べているよ。あの店のクッキーは中々美味しいよね」


「おぉ、リズさんもお仲間でしたか。ではでは、後で小袋に詰めておきますので、お土産に渡してあげてください」


「ありがとう、きっと喜ぶと思うよ」


「それで先生、茶葉は何を使いましょうか?一応、もうすぐお湯は沸きそうですが・・・・」


「了解しました。そうですね、お茶請けが甘いお菓子なので渋めの紅茶にしますか。アメリアさんもよろしいですか?」


「もちろん♪」


「それでは、せっかくなのでクロードさんから分けてもらった茶葉を使いましょう。アキ、給仕を代わりますので席に座って待っていてください」


「わぁい、先生のお茶だ♪楽しみに待っていますね!」


「あれ、そういえばミーシャさんはどちらに?アキのお手伝いに行ったと思ったのですが」


「あぁ、ミーシャさんでしたら倉庫を見て固まってしまいました。朝の私と似たような顔してまいしたね」



 (それって、ドン引きしてるって事じゃないですか!)



 固まってるミーシャの対応はアキナに任せて、ナタクはさっさと給湯エリアに向うことにした。職人の倉庫ってあんなもんだと思うのだが、やっぱり此方の世界では違うようだ。


 気を取り直して、公爵家御用達の高級茶葉を本気モードで準備を進めてゆく。お湯の温度から淹れ方まで、拘りぬいた渾身の紅茶を淹れるとしよう。流石に、このレベルの茶葉をパック紅茶のノリで淹れてしまうのは勿体無さ過ぎる。


 今回は果物などは用意していなかったので、キャラメル作りの時に余った『生クリーム』と『ハチミツ』、それと『テンサイだいこん』からとった『白砂糖』をそれぞれ小瓶に詰めて、皆が待っている机までカートに乗せて運んでいった。



「また、変わった物が小瓶に入っているね。この白いのはなんだい?」


「こちらでは『生クリーム』をお茶に使いませんか?これはミルクから乳脂肪の比率を多く抽出して作った食品ですね。ミルクよりも濃厚な味わいが特徴です。紅茶にこれと砂糖を混ぜて飲むと中々美味しいですよ。お好みでハチミツもありますので是非試してみてください」


「へぇ、お茶にミルクは試したことがないね。ナタク君は中々面白い発想をするなぁ」


「とっても美味しいですよ、私はミルクティー大好きです!」


「私も試してみようかな、アメリアさんはどうしますか?」


「私も、お勧めの飲み方を試してみようかな。分量はどれくらいがいいんだい?」


「人によって様々ですね。甘みを強くしたければ砂糖やハチミツを多めに入れる方もいますし、マイルドにして飲みたい人はミルクを多く入れますね。ですが、今回はお茶請けが甘いお菓子なので砂糖少なめのミルク多めが合うかもしれません」


「では今日はお勧めの飲み方でお茶を楽しむとしよう」


「私も~♪」



 そう言って、アメリアとミーシャはアキナをマネて注ぎたての紅茶にティースプーンで砂糖二杯ミルク三杯を入れて紅茶を楽しむようだ。自分は紅茶の風味も楽しみたいので、両方ともスプーン一杯ずつ入れて飲むことにする。個人的には、この比率で飲む紅茶が一番好きだ。



「おぉ!確かにこの飲み方は美味しいね。紅茶にミルクが合うとは驚きだよ!」


「正確にはミルクを加工した物ですけどね。後で生クリームのレシピを紙に書いてお渡ししますよ」


「はぁ、幸せの味です~。ナタクさん、お家でリズに作ってもらうので、私にもレシピをください~」


「分かりました。では、ついでに砂糖も一緒にお渡ししますね」


「あ!そうか、この白いのはお砂糖でしたね。ぐぬぬぅ、毎日飲みたいですが大事に飲まないと。あ!でもでも、ハチミツっていう手もありますね」


「言ってくれればおすそ分けしますので、気軽に声をかけてください。それに、近いうちに砂糖の価格もだいぶ下がると思いますので、手に入れやすくなると思いますよ?」


「えっ、そうなんですか??」


「はい、そこは領主様の手腕にかかっていますので期待して待っていてください。ね、アメリアさん?」


「うむ。私からも父上の尻を蹴り上げてでも急かすつもりだから、安心して待っていたまえ」


「なんというか、自然とその映像が脳内で再生されたのですが、本当に蹴ったりしませんよね?」


「はっはは、アキナ君は心配性だなぁ。勿論言葉のあやってやつさ」



 たぶん、アキナが想像した映像と同じ物を俺まで想像できてしまった。



 (・・・・領主様、ファイトです!)



 その後はアキナの買ってきたクッキーをつまみながら、たわいのない話をしていたのだが、そろそろガレットとの面談の時間が気になり始めたのでミーシャに聞いてみることにした。そもそも、彼女はその事を伝えに来たはずなのに、すっかり忘れて話し込んでしまっているようだ。



「ところでミーシャさん、ガレットさんとの面会の時間って結局何時頃になりましたか?それによってこの後の錬成を考えなくてはいけないので」


「すっかり忘れてた!!えっと、ギルマスはもう本館に帰ってきているのですが、少々他の仕事の対応をしなくてはいけないので、夕刻の鐘の時間頃に来て欲しいそうです。今からですと後30分後くら・・・・って!もうこんな時間!?すいません、そろそろ戻らないと先輩にめちゃくちゃ怒られそうなので先にお暇(おいとま)させてもらいますね。お茶ありがとうございました、とっても美味しかったです!!」


「分りました、了解です。では、レシピは帰りにでも寄ってお渡ししますね」


「ありがとうございます!ではでは、また後で!!」



 そう言って、ミーシャは駆け足で扉の外へと消えていった。確かに、彼女が訪れてから一時間近くは過ぎていたので、休憩にしては長すぎたようだ。



「さて、それじゃ私もリズの所に戻るとするかな。そろそろ抽出も終わっているだろうしね」


「了解です。では俺達も今日はこのまま錬成をお終いにして、帰り支度を済ませてしまいますか。なんか、今日の午後は脱線しすぎて全然練成が進みませんでしたね」


「ですねぇ。でも、たまにはこんなゆっくりした日があってもいいんじゃないですか?私は今日はとっても楽しかったです」


「それもそうですね。それでは、俺は準備をしてガレットさんの所に向うとしますが、アキはどうします?一緒に行きますか?」


「う~ん、ちなみに先生の用事ってどんな事なんですか?」


「用事は先ほどの温室の件と、借りていた資料の返却。それとレポートを一つ書き上げたので、それの提出がてら内容の説明ですかね。たぶん一時間くらいは掛かるんじゃないかと思います」


「それでしたら、私はアメリアさんの実験室にお邪魔して、リズさんの採寸と服のデザイン決めをしちゃおうかな?もちろん、アメリアさんがよろしければですけど」


「うん?私は全然構わないよ、寧ろ大歓迎さ。それに、アキナ君のレポートって確かもう少しだったろう?そっちも一緒にみてあげるよ」


「ありがとうございます!という訳で、アメリアさんの実験室に行ってくるので、帰る時に連絡をください。その時、私も一緒に宿に帰りますので」


「了解です。それでは、アメリアさん。アキのことをお願いします」


「うむ、任された!ナタク君もプレゼン頑張ってきたまえ。まぁ、ほぼ間違いなく温室は借りられると思うけどね」


「でないと、この部屋が植物園になってしまいますからね。それでは、時間つぶしに俺が片づけをしておくので、アキは先にアメリアさんと一緒に行っちゃってください。二人でやったら早く終わり過ぎてしまいますしね」


「なんか申し訳ないですが、そういう事でしたらよろしくお願いします」


「では、ナタク君またね」



 そう言って二人も部屋を後にしていった。まぁ、片付けと言っても茶器の洗い物以外は殆ど終わっているんだけども。それと、今日植えた種達はたぶん夜の8時過ぎに一回目の結果が出るので、次の回は明日の朝来た時でいいだろう。今回は別に急いでいるわけでもないのだし。


 それに、さすがにこれ以上この部屋に鉢植えを増やすわけにはいかないので、ガレットとの交渉をしっかり“気合を入れて”おこなうとしよう。



 このレポート、喜んでくれればいいなぁ!



っ!!なんじゃこの寒気は・・・( ゜Д゜;)!?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ