表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/194

第10話

 

「では、午後の錬成を始めますね。先ほど用意してもらった材料を机に並べてくれますか?」


「はい!まずはさっき話題に出た『木炭』『ホーンラビットの革袋』『錬成紙』に『通常の紙』と『防火布』、『麻紐』に『サルサの幹(竹に似た節を持つ植物)』それと錬成道具の『薬研(ヤゲン)』と『すり鉢』、それに『秤』ですね。ちゃんと倉庫からもってきましたよっと」



 そう言って、アキナは順番に倉庫から持ってきた物を机の上に順番に置いていった。ちなみに、今日はあまり数をこなすつもりはないので、個数は少なめに用意してもらった。全部持ってこられると、流石に机の上が素材であふれ返ってしまうからだ。



「ありがとうございます、それでは残りの素材を出しますね。まずは『白砂糖』に『チカの実(唐辛子)』、それから『灰乳石(硝石)』に『匂黄石(硫黄)』と・・・・。まぁ、今日は作り方を憶えてもらうためなのでこれくらいの量でいいでしょう。これで素材は揃いましたね」


「あのぉ、なんか調味料まで含まれている気がするんですが?」


「というか、俺が持っていた素材は全部食品加工なんかに使えます。最初の二つは勿論のこと、灰・・『硝石』は精製して生肉などの防腐剤に、匂黄石は向こうの世界でいう『硫黄』で乾燥剤の材料になりますからね。


 それで、此方の素材を使って本日作るのは『催涙煙幕』の作製になります。等級は4~3の錬金術で、このレベル帯でもっとも経験値が美味しい錬成になるので、しばらくは此方を作製したいと思います」


「煙幕ですか。しかし、なんで“催涙”なんですか?」


「通常の煙幕はもう少し下のレベル帯のレシピになるんですが、そこはポーション作製で上げきってしまうので、態々作る必要がないんですよ。等級4のポーションと等級3のポーションとの繋ぎの練成としては、この『催涙煙幕』が丁度いいんですよ。


 もちろん、俺みたいに強引に“マニュアル錬成”を使って作製すれば一足先に等級3のポーションを作ることは可能ですけど、そうすると難易度も桁違いですし、せっかくの基礎も学べませんからね。


 まぁ、勉強も兼ねて今回はこの『催涙煙幕』を作製していきましょう」


「了解です。しかし火気厳禁って煙幕を作るからなんですか。確かに室内で煙幕に火がついたら大変なことになりますもんね。いったいどんな危ない物を作らされるのかとヒヤヒヤしていましたよ」


「いや・・・・話しておいた方が良さそうかな?確かにそういった意味もあったのですが、実はここにある素材、分量を正確に測りながら調合すると火薬の原料になります。でも、今回は配合比率が違うので火薬にはならないんですけどね、一応爆発物の材料という事で注意して錬成してください」


「なななっ・・・・私に爆弾を作らせる気だったんですか!」


「違いますって、煙幕です。え・ん・ま・く!素材が一緒なだけで配合比率が違いますから、いきなり爆発することはないので安心してください。言うなれば、今から作るのは『良く燃える粉』の作製になります。


 それに一応防護策も用意して、尚且つ俺も一緒に作製するんですから、そこは安心して付いてきてください。配合さえ間違えなければ、比較的に安全に作製可能なアイテムなので、そんなに恐がらなくても大丈夫ですよ」


「そうなんですか?いきなりドカーンとかなりません?」


「なりませんって。そのために結界を用意しているんですから」


「うぅ、わかりました。恐いですが頑張ります・・・・」



 本当は、頃合を見計らって後ろから『ドォーーン』と脅かす悪戯も考えていたが、この調子だとそれをやったら後が恐そうなので止めておく。下手に脅かして、二人しかいない実験室で暫くの間無言の日々が続いたりしたら堪らないからである。


 先ほども言った通り、この錬成は等級4~3への繋ぎとしてはかなり優秀なので是非ともこれで錬成を進めて欲しかったのだ。しかも、程よく他の職業の錬成素材も絡んでくるので、これからの中位での錬成するに当たり、良い予行練習にもなる。


 問題があるとすれば、普通の煙幕に比べて用途が限られるため、あまり売れないことだ。その煙幕をこれから数百個単位で作成予定なので、結構赤字がかさみそうだが、ポーションでも中々の収益を上げているのと、直にだいこんの栽培も開始されるので金欠になることはなさそうである。余った在庫の処分は悩みどころではあるのだが、こちらについては追々考えることにしよう。最悪、錬成で分解して他のアイテムを作ってもよいだろう。



「それでは、お手本に一つ作製して見せますので、良く観察していてください」


「はいっ!先生、よろしくお願いします」



 (よし、どうやらアキの気合も入ったようなので錬成の準備に取り掛かるとしますか)



「まずは錬成陣の作製から入りますが、今回もガイド付きの物を作りますので、変化を見逃さないでください」


「分かりました。しかし、この錬成でもガイド付きの錬成陣を用意できるんですね」


「錬金術を人に教えるのは初めてではありませんしね。それなりに培ってきたものがありますので。・・・・よし、描けました。これは最後の錬成で使うので、まずは置いておくとして。


 次に材料を『薬研(ヤゲン)』で細粉する作業に入るのですが、まさかアキが一発でこの道具を持ってこれるとは思ってませんでしたよ。聞きなれない道具なのによく知っていましたね」


「そこはかとなくバカにされているような・・・・。知っていたというより、わからない道具を片っ端に鑑定をかけて探したんですよ。先生、コロコロのヤツって書いといてください。これ探すの一番時間かかったんですからね!」


「コロコロって・・・・、まぁいいでしょう。この『薬研(ヤゲン)』は中に素材を入れ、それをこの薬研車という道具を前後に走らせることによって細粉する道具になります。今回はこれを使って、『チカの実』と『木炭』『硝石』『硫黄』を全て粉状になるまでよく磨り潰していきます。まぁ、これも錬成の力を借りておこなうのでかなり早く粉にできますけどね。


 こういった魔導具は自分で錬成陣を用意して使用する物と、すでに魔導具に錬成陣が刻まれており、そのまま使用できるタイプの物があるので憶えておいてください。こちらは後者になりますね。だいたい大型の機材なんかはこういったタイプの物が多いです」


「へぇ、そういえば『魔導ミシン』のみ~ちゃんは前者タイプですよね。あれはどうしてですか?」


「『魔導ミシン』ですか?あのタイプの魔導具は、使える錬成の幅がかなり広いため、あらかじめ錬成陣を刻んでしまうと、その等級専門でしか使用できない物になってしまうからですね。まぁ、カートリッジ式にして錬成陣をその都度交換してもいいのですが、売り物として『対応した物がない』と苦情がきても困るので、最終的にあの形になりました。


 用途によって錬成陣ってかなり変わりますからね。この薬研の様に目的が単一の物なんかは最初から刻んでおいた方が便利なんですけど、複雑な錬成をする物の場合はその都度錬成陣を用意した方が都合がいいんですよ」


「あぁ、そういう事だったんですね。なんか納得できました」


「他にも魔法陣の応用で、紙に書かないでイメージをそのまま手元や足元に陣を展開する『展開陣』という方法も存在しますが、こちらは緊急でもない限り使わない技法になりますね。


 職人さんって基本的に落ち着いた環境下で錬成作業をするので、態々そんな無駄な事に集中力を割いて駄作を作る意味がありませんしね。なので俺はゲームの時ですらあまり使用していませんでした。


 でも、何故かめんどくさがりな方や目立ちたがりの方なんかは挙って(こぞって)この方法を使用してましたね。しかも凄い自慢しながら。まぁ、ファンタジーっぽくて好きって使う人もいましたけど、ちゃんと使いこなせてる人を俺は数人しか知りませんでした」


「だから先生は『展開陣』を使わなかったんですね。上位の職人さんってみんなそれを使っているイメージだったから、なんで先生は使わないのか凄く不思議に思ってました」


「あぁ、たぶんそれは各職人ギルドに設置してある『共有設備』や街の広場なんかで使用してるのを見たんじゃないですか?


 あれは、単に目立ちたがりやのパフォーマーが人気取りでおこなっているか、もしくはクラン勧誘の一環とかに使用しているんだと思いますよ。少なくても、うちのクランでそんなことしてる人はいませんでした。


 というか、運営側から公開されている錬成陣ならともかく、せっかく自分達で苦労して創り上げた錬成陣を、大勢の前で見せびらかすとか、もしうちのクランでそれをやったら大目玉確定ですよ。物によって破門もありえます。それだけ錬成陣って秘匿情報が詰まっていますからね。


 それにこれは魔法陣なんかにも言える事なんですけど、魔法のスクロールや魔導書が高値で取引されているのも、そういった理由が関係しています。


 まぁ、ゲーム時代はそこまでプレイヤー側が防犯対策を取れないと判断したのか、運営側からの施しで、選択すれば自動で暗号化してくれたり、解読してくれるサービスもありましたけどね。しかも鍵付きの親切仕様で」


「それでプレイヤーメイキングのスクロールや魔導書ってあんなに高額で取引されていたんですね。私も何度かオリジナルの忍術に挑戦してみましたが、難しすぎて挫折しました。参考資料だけで頭が痛くなりましたよ」


「ちなみに、アキに教えている錬成陣は全て俺とお師匠のオリジナルになりますね。勿論“マニュアル錬成”の陣も含めてね。というか、等級2からは殆ど錬成陣が存在しなかったので、全て手探りで作るはめになりましたよ。


 他にも、たまに遺跡やダンジョンなんかでもそういった品が発見されてたんですけど、詳しく調べてみると、まだまだ改良の余地が多く残されていたので、そちらも魔改造したりして遊んでいましたね。あれもパズルみたいで楽しいですよ」


「なんか、それを聞くと自分がどれだけ特別待遇なのかが良くわかりますね。私はとっても果報者です。って、私が教えてもらった錬成陣って、オリジナルの物だったんですか!?」


「まぁ、ガイド付き機能は置いといて、元から存在する汎用型の錬成陣を目的のアイテムにあわせて特化させた物を毎回用意していました。確かに、等級が低いと余り違いが解りづらいですけどね。オリジナルの方が高品質を作りやすですからね。・・・・やっぱり気がついていませんでしたか」


「はぅ、すいません。やけに高品質が簡単にできると思ったら、そういうカラクリだったんですね」


「あくまで作りやすくはなりますけど、難易度自体は変わらないので、そこはアキの努力の賜物ですから誇って大丈夫ですよ」


「ありがとうございます。ですが、これからはより驕らずに精進したいと思います。しかし、先生のゲーム時代の遊びかたって、やっぱりどこかズレてません?本当に同じゲームで遊んでいたか疑問に感じてきましたよ」


「別に不正なことは何一つしていませんし、ルールにのっとって遊んでいただけですよ。まぁ、遊び方がおかしいのは認めますけど、楽しみ方は人それぞれ自由ですからね」



 ついつい話し込んでしまって、全く錬成に辿りつけていないな。このままだと本当に時間がなくなってしまいそうだし、そろそろ真面目に錬成作業を開始しましょうか。

ドッカーーン!!ヽ(´∀`*)ノ


\(・△・;)/ビックリ


(・・・だけではすまないか)

(´・ω・`;) (´・ω・`)?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ