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第7話

 


「っんだよ!飯時だって言うのに随分と空いてるじゃねぇか。今日はもう店終いでもしてんのか、この店は?」



 店内に乱暴に入ってきたのは、いかにも街のゴロツキですと言いたげな格好をした数名の男性客であった。入店するなり大きな声で怒鳴り散らし、へらへらと笑うその表情からして、明らかに普通に食事をしに来たようには見えなかった。


 それでも彼等へ対応をするために、リリィがすぐに近づき声を掛けに行った。普通なら恐怖で動けなくなってもおかしくないのに、彼女は随分と胆力があるみたいだ。



「いらっしゃいませ。“四名様”でご来店でしょうか?」


「なにぃ!見てわからねえのかよ。俺達は三人で店に来てんだよ、数も数えられねぇのかよこの店の従業員は!なぁ、お前た・・・ち・・・・?」



 確かに、店の中からだと四人組に見えるのだが、どうやら後ろの一人は別グループの客だったらしい。文句を言うために先頭の男が後ろを振り向いたのだが、最後の一人が店内に入ってきたところで、騒いでいた男達が急に大人しくなってしまった。


 彼に会うのは一週間振りであろうか。遅れて店に入ってきた人物は、自分がここ最近で知り合った人の中でもっとも“顔が恐い”男性であろう、ゴッツがその場に立っていた。



「よぉ、兄ちゃん達。いきがってるところ悪いんだが、俺達(・・)も“(あね)さんに呼ばれて”この店に用があるんだわぁ。お前達も飯食いに来たんなら、静かにさっさと席に座ってくんねぇかな?後が(つか)えてんだわ(凶悪な笑み)」


「「「ぼ・・・僕達、急用を思い出したので今日は帰ります!失礼しました!!!」」」



 そう言って、男達は物凄い勢いで店の外へと走り去ってしまった。男達が去った後、今度は不思議そうな顔をしたゴッツが此方に向かって歩いてきた。



「う~む、普通に笑顔で話しかけたつもりなんだがなぁ。あれはいったいなんだったんだ?


 って、姐さんお疲れ様です。言われた通り今日仕事がオフの若手連中を何人か連れてきました」


「・・・・うん、ご苦労様。今日は約束通り奢るから好きに飲み食いしていってね。ただし、リリィ達に迷惑をかけちゃダメだよ?」


「いつもありがとうございます!大丈夫でさぁ、そんな奴がいたら俺がこの鉄拳で大人しくさせますから!


 って、おぉ。誰かと思ったら隣にいるのは色男じゃねぇか。もう体の調子はでぇじょうぶなのか?」


「ゴッツさん、こんにちは。おかげさまで体調も回復したので、今ではまた錬金術師のお仕事を頑張っていますよ。ゴッツさん達もお変わりありませんか?」


「おうよ!って言いたいところだが、あの魔物の影響がなぁ。ここ数日魔物共が鳴りを潜めっちまったから、俺達も開店休業状態って感じなんだわ。でもまぁ、働き詰めもよくねぇから、今はしっかり休ませてもらってるがな」


「まぁ、あれだけ強力な個体が現れた後ですからしょうがないのかもしれませんね。また魔物が現れたらよろしくお願いします」


「そこは任せとけ!冒険者は魔物と戦ってなんぼだかんな。よし!てめーら、席について飯にすっぞ。今日は姐さんの奢りだから礼儀正しく食いやがれよ!」


「「「はい!!姐さん、ご馳走になります!!」」」


「・・・・うん。でも、暴れちゃダメだからね?」



 そう言って、ゴッツの後ろから結構な数の冒険者達が店に入って席に着いた。先ほど人を呼んでおいたというのは、こういうことだったのか。その対応にリリィも大忙しだ。



「ほえぇ、この方達みんなアテナちゃんの後輩さんなんですか?」


「・・・・うん。ゴッツも含め、みんなギルドの後輩だよ。たまにクエスト手伝ったり、食事を奢ってあげたりしてるの」


「俺は姐さんのすぐ下の代の冒険者なんだが、こいつらはここ数年で冒険者になったばっかりの連中だな。イグオールの冒険者ギルドは、代々先輩冒険者が後輩を指導する風習があって、良く面倒を見てやってるってわけだ。


 だから、他の街のギルドに比べても冒険者の質が良く、結束が固いって訳だ。まぁ、他所から来た奴とかには良く驚かれるが、姐さんを慕っている後輩団は特に仲がいいぞ」


「ナタク君、さっき言った彼女のファンクラブってやつだよ。アテナの場合は、手助けをしている間に自然と出来上がっていたらしいけどね。しかも、街でトップクラスの冒険者なのに、時間をみつけては戦闘訓練まで開いて熱心に指導してくれるって、かなりの人気者らしいよ」


「・・・・でも、私は別に特別なことは教えてないよ?パパから教わった冒険者に大切なことを、後輩に指導してるだけだもん」


「いやいや。俺も他所の街に仕事で出かけることがあるが、どこ行っても姐さん以上に熱心に後輩指導をしてくれるトップランカーなんて存在しませんって。本当に、皆感謝してるんですから」



 また照れてくねくねしている可愛らしいアテナも見れた事だし、そろそろ自分達は錬金ギルドに帰ることにするか。本当はもっと一緒に話をしていたいが、結構お店でくつろいでしまったので、そろそろ帰らないと午後の錬成の予定が遅くなってしまうからである。



「さて。楽しい時間を過ごせましたし、俺達はそろそろ仕事に戻るとしますね。またご一緒にお話をしましょう」


「そうだね。随分とゆっくりしてしまったし、私も帰ってリズの指導をしないとかな。たぶん、中々私が帰ってこないからって居眠りしてそうだし」


「・・・・わかった。また、一緒に食事しようね?」


「はい!アテナちゃん、是非に」



 先ほどの約束通りキャラメルの入った瓶と砂糖をアテナに渡すと、席を立ち入り口の方へと足を向ける。この店では、会計は食事が終わった後に受付で済ませるらしいので、三人で出入り口まで向かうと、それに気がついたリリィがすぐに此方に駆け寄ってきてくれた。



「お帰りですか?またのご来店お待ちしてます」


「えぇ、お会計をお願いします」


「あれ?アテナから聞いていませんでしたか?先ほどアテナから全員分の御代は戴いていますよ?」


「「えっ!」」



 ナタクとアキナは慌てて、自分の席でキャラメルをご機嫌にほおばりながらゴッツ達と談笑しているアテナの方を見ると、彼女も此方に気がついたのかにっこりと微笑みながら、サムズアップを返してくれた。



「先ほどアテナが『この人数にあと二~三人増えたところで変わらないから』って言ってまとめて御代を戴いていたのですが、その事を話していなかったんですね、あの子」


「さっきこっそりリリィ君と何か話していたと思ったら、そういうことか。ナタク君、あれがアテナさ。こういう格好良いことをスマートにこなせるから、あれだけ人気が出るんだろうね」


「すごい、男前ですね。あんなに可愛らしいのに」


「確かに。では、ここでお礼を言いに戻るのも無粋ですね。リリィさん、アテナさんに(ことづけ)をお願いします。『ご馳走様でした。今度は俺達にもアテナさんに美味しいものをご馳走させてください』とお伝えください」


「分りました、ちゃんと伝えておきますね。またのご来店お待ちしています」



 リリィに、そう頼んでからアテナの方に軽く頭を下げると、彼女も気がついてくれたようで、小さく手を振ってこたえてくれた。



 店の外に出るとお昼時のピークは過ぎたようで、噴水広場も先ほど来た時よりは人通りは減ったものの、さすが街の中心部なだけあって、まだそれなりの人の往来は健在であった。



「さてと、それじゃ帰るとするかね。ナタク君達もそのままギルドに向うのかい?」


「そのつもりだったんですが、俺は一ヵ所だけ寄り道したいところができましたね」


「ほほぅ、ちなみにどこに行くんだい?」


「錬金ギルド近くの園芸屋で植物の苗と種などを買っていこうかと。先ほどの料理で少し思いついたことがあって、研究材料をちょこっと買い足そうかなと」


「それは興味深いね、是非私も・・・と言いたいところだけど、流石に今日はゆっくりし過ぎたから、私は真っ直ぐギルドに行こうかな。リズの実験結果の第一弾がそろそろ出ているはずだから、師匠としては一緒にみていてあげたいしね」


「それなら途中まで一緒に帰りますか。お店もすぐ近所ですしね」


「そうさせてもらうよ、また面白い研究結果が出たら教えておくれ。必ず見に行くからさ」


「先生、園芸屋さんってこの前だいこんの種を買ったところですか?」


「えぇ、そうですよ。そういえば、あの時も昼食の帰りでしたね」


「ですです。それじゃ、私はその間に近くのパン屋さんでお茶菓子を買ってきますね。あれ以来、あそこのクッキーのファンになりました!」



 目的地も決まったので、三人で西通りを目指して歩いてゆく。その道中に、先ほどの料理の感想などを語り合いながら歩いていたのだが、やはりアメリアからみると変わった味付けで非常に楽しめたそうだ。


 ナタクやアキナからすると、どうしても元いた世界で食べていた馴染みの味に、一歩及ばない味付けに不満が残ったが、決して不味くはなかったので、今後の料理研究に期待したいところではある。だが、それには調味料が圧倒的に足りないので、そちらの方で力になれたらと思い、今からその準備をしに行くつもりだ。



 暫くして目的の園芸屋に到着したので、ここからはそれぞれ別行動を取ることになった。前回来た時はすぐに買い物を済ませて実験室に帰ってしまったので、今日はしっかりと苗のコーナーまで調べていく。


 ざっと店内を見回してみると街中の園芸屋だけあって花の種や苗が豊富に置いてあったが、それなりに食用の作物の種や苗も置いてあるみたいだ。また、錬金ギルド近くという事もあって薬剤で使う植物も思っている以上に揃っていた。


 薬剤研究用にそちらも非常に興味があったのだが、たくさん買って帰るとまたアキナに怒られそうなので、今回も必要な物だけを選んで購入しておいた。お屋敷が正式に自分達の所有物になったら、是非此方の栽培にも手を伸ばそうと思う。


 ただ、必要な分と言っても今回の品種改良は“配合”を目的にそれなりの数をこなす予定のため、手持ちの“即栽鉢植え(銭喰らい)”では足りなくなりそうだったので、追加で改造用の鉢植えもいくつか購入することにした。


 しかし増やすにしても、そろそろ此方も結構な数になり始めているので、近いうちに倉庫か栽培用の建物を用意する事が必要なのかもしれない。流石にいくら広い実験室といっても、すでに室内栽培の限界だろう。まぁ、その辺は今日の面会でガレットにでも相談してみるとしよう。




 さて、漸く買い物も終わったので錬金ギルドへ戻ることにする。さぁ、午後の錬成も頑張るぞ!

あちらのお客様からです。ヾ(´・ω・`)


きら~ん☆(´∀`*)b



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