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第6話

 

 食事も終わり、アメリアが追加で注文してくれたお茶を飲みながら一息つく。お茶菓子として出されたのは、甘さ控えめのシホンケーキのようなお菓子であった。だが値段をみるに、一カットのケーキでメイン料理一品分の値段はしていたので、やはり砂糖がそれだけ貴重品ということだろう。


 一応、領主が街に帰還してから最初の『テンサイだいこん』3代目の栽培が開始されるので、早ければ来年には市場に最初の砂糖達が並べられるかもしれない。そうすれば砂糖の値段も下がるので、街の人にも砂糖を使った料理やお菓子が気軽に手に入るようになるかもしれないと思うと、俄然やる気が湧いてきた。



「そういえば、アメリアさん。領主様って何時頃街に帰ってくる予定ですか?」


「うん?父上かい。確か、予定では来週中には帰還すると出かける前に話していたが、詳しい日にちは聞いていないね。ただ今回は出発を一日遅らせたから、先に王都に向かっていた母上に大目玉を食らっていそうかな。だから予定より数日遅れると思うよ。


 流石に、国王との謁見や貴族としての仕事に関して時間を削ることができないからね。きっと母上とのデートの時間を減らしたに違いないから、その穴埋めをしてから帰ってくるんじゃないかな」


「アメリアさんのお母様は、先に王都へ出発なされていたんですか?」


「向こうにも屋敷があるし、何より、今はそこに私のじいちゃんと弟が住んでいるからね。今回は先に出発して、二人の顔を見に行ったんだよ。それに、じいちゃんは軍務のお偉い様だし、弟は王子の御傍付きを任されているから、二人とも中々街に帰ってこれないんだよ。だから母上もなるべく父上の執務に同行して、王都に出かけるようにしているんだ。


 ただし、今回こっちでゴタゴタが続いてたから先に母上を送り出して、仕事を片付けてから王都で合流しようとしていたらしいんだけど、後は知っての通りさ。まぁ、今回は父上の自業自得なところもあるから、同情はしないけどね。


あっ、リリィ君お茶のおかわりを頼むよ。今度のは強めに淹れてほしいかな」


「ほへぇ、アメリアさんには弟さんがいらっしゃるんですね。なんか、凄く賢そうです」


「う~ん、確かに私から見ても優秀かなぁ。王都の学術院での成績は常にトップらしいし、剣術もかなりの腕前だって聞いてるよ。ただ、うちの家系特有というか・・・・あの子の場合は剣術にはまってしまっているらしくてね。


 今じゃあまりに強くなりすぎて、練習相手を探すのに苦労しているみたいだよ。だから、もし今回の出来事をあの子が知ったら、ナタク君に喜んで模擬戦を申し込んできそうかな。


 まぁ、嫡男としてしっかり貴族としての面倒ごとを私の分まで学んでくれているから、私は比較的自由に研究ができるし、その点はとっても助かっているけどね。


 ちなみに歳はナタク君達と同じで、今年で15歳だよ」



 (なんだろう、凄く嫌な予感しかしてこない)



 領主の護衛について行ったのはモーリスだったし、当事者として確実に事件についての詳細な報告をしているはずだ。それに、モーリスもあれだけ強いのだから、絶対弟さんに捕まっているはずだ。これは早めに戦闘職のレベル上げを開始した方が良いかもしれない。



「・・・・むぐむぐ、ハルっちか~。確かにお客さんの実力を聞いたら『模擬戦やらせろ~!』って言ってきそうだね。あの戦い、とっても凄かったし。モテモテだね?」


「あはは、アテナさんまでからかわないでください。自分でもそんな気がしてきたところなんですから」


「ハルっちって愛称で呼んでるってことは、アテナちゃんとも知り合いですか?」


「・・・・うん、幼なじみ~。昔は良くパパとの戦闘訓練にハルっちとアメリアも参加してたんだよ」


「父上や領兵との訓練だけでは、偏った戦い方しか身につかないと思ってね。頼み込んで私達姉弟も父上の親友であるアーネストさんに手ほどきをしてもらっていた時期があるんだよ。同じゴールドクラスの冒険者と言っても、父上の戦い方は騎士寄りのものだからね。


 ちなみに、弟の名前はラインハルト・フォン・ローレンス。家族や親しい者はライルって呼んでいるよ。ハルっちと呼んでいるのはアテナだけさ」


「・・・・むぅ。ハルっちの方が可愛いのに」


「そういえば、俺とアキのことも“お客さん”ってアテナさんは呼んでますけど、良かったら名前で呼んでもらってもいいですか?こういったお店なんかだと、全員お客さんですしね」


「あ!私からもお願いします。その方が仲良くお話できそうですもんね」


「・・・・わかった。じゃあ、ナタクとアッキーでいい?」


「えぇ、俺は構いませんよ」


「わぁ♪私は愛称ですね。是非それでお願いします!」


「・・・・りょうかい~」


「むむ。私ですらナタク君のことを呼び捨てで呼べていないのに。さすがアテナだ・・・・(ぼそ)」


「・・・・ふぅ。お腹いっぱい。リリィ~私にもお茶ちょうだい~」


「あんた、体小さいのにほんとによく食うわ。それで、皆さんと同じのでいいの?」


「・・・・お~け~」



『まったく~』と苦笑いしながらリリィは奥の方に下がっていった。この二人も実に仲が良さそうである。暫くしてお茶のおかわりを持った彼女が戻ってきて、アテナとアメリアに紅茶を注いでくれていたので、せっかくなので自分達ももおかわりをいただく事にした。



「そういえば、リリィさん。この店に入る前に変な男の人に声をかけられたのですが、心当たりってありますか?」


「えっ、またいたんですか!うぅ、たぶん向かいのレストランの関係者の方だと思います。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」


「いえ、しかし“また”って言うことは、似たようなことが以前にもあったんですね」


「はい・・・・。この店をオープンした時はそんなことはなかったんですが、約一ヶ月ぐらい前から段々と嫌がらせが続くようになって、とっても困っているんですよ。あ、ご挨拶が遅れました。私はこの店の娘のリリィ・バッカスと申します」


「・・・・あっちは、店がでかい事が唯一の取り柄のレストラン。一度食べに行ったけど、脂っこい料理ばっかしで、全然美味しくなかった。後、注文してから料理が出てくるのが凄く遅い」


「しかも、これは常連さんが教えてくれたのですが、最近向こうのレストランでうちのメニューと同じ料理を出し始めたらしく、(しき)りに此方の店を『メニューを盗んだこそ泥が経営する店』って真逆のことを喧伝しているらしいんですよ。


 元々、あちらは煮込み料理とステーキを主力で経営されていたので、麺料理は扱っていなかったはずなんですけど。うちが繁盛しだしたとたんいきなり麺料理を取り扱い始めて。


 事情を知っている方達は擁護してくれているんですが、真相を知らない人達を先導して嫌がらせをしてくるようになったんですよね。今はまだ直接的な被害はないのですが、最近ますます物騒になってきて恐いです」


「・・・・だから、暇な時は私がこの店に来るようにしてるの。えっへん!」


「不思議とアテナがいる時は、変なお客が入ってこなくて助かっているんですけどね。何気にうちの売り上げに一番貢献しているのもこの子ですし」


「・・・・後輩におごってあげる時、ここ凄く便利。実家だと客層が違うから呼べないし」


「それは、単にアテナが恥ずかしがってるだけでしょ!その関係で、うちの夜営業が最近ほとんど居酒屋みたいになってるんですけど!」


「・・・・えへへ♪」


「まぁ、でもおかげで午後は冒険者のお客様がたくさん増えて助かってるんですけどね。ただ、代わりに比較的にお客さんが少ないこの時間に、嫌がらせが多いんですよ」



 メニューに酒に合う一品料理がたくさん追加で記載されていたのは、アテナが後輩冒険者達を連れてこの店を訪れるようになったから、それに対応するために増えた物だったようだ。



 (しかし、アテナさんの歳で後輩って・・・・


 小柄なせいか、まだ見た目は中学生くらいにしか見えないんだけどなぁ)



「アテナさんって冒険者になってからどれくらいなんですか?」


「・・・・うん?えっと、登録できる八歳の誕生日にすぐに冒険者ギルドで登録して、今年で七年目かな?これでもこの街の冒険者で個人成績の稼ぎ頭なんだよ、すごいでしょ!」


「あぁ、ちなみにアテナもアイテムボックスのスキル保持者(ホルダー)だよ。しかも、魔力適性が高いくせに魔法の勉強を嫌がってちっとも憶えようとしないから、余った魔力は殆どそのスキルに転化されてるらしくてね。私が知っているスキルホルダーの中でも一番の容量を誇るのが彼女というわけさ。


 しかもこの子の場合、殆どの獲物を弓矢を使って一撃で仕留めちゃうからね。素材の状態や数もかなりいいもんだから、アテナが出品する素材はいつも高値が付くって話だよ。それに、それでいて面倒見も凄くいいから冒険者ギルドでも大人気で、彼女のファンクラブまであるくらいだよ」


「・・・・私は別に特別なことはしてないよ?『先輩は後輩の面倒を見るもんだ』って言うパパの教えを守ってるだけだもん」


「あぁ、それであんなに面倒見が良かったか。ちなみに、あまりに人気者過ぎて固定PTを組むとやっかみが酷いから、基本ソロでたまに手伝いで色んなPTに参加する今のスタイルになったんだよね」


「・・・・うん、人気者はつらいぜ!」


「アテナちゃんって同じ歳だったんですね。もう少し年下かと思ってました」


「・・・・よく言われるから、大丈夫。それに私は成長期だし、お姉ちゃんもママもスタイルいいから未来も明るい。目指せアメリア!」



 (おっと、この話は入ったら絶対碌なことにならなさそうだから黙っていよう。


 ふっふふ、甘い。俺には見えているのだ、女難の相さんが手ぐすね引いて待っている恐ろしい姿が!)



「確かに、お二人ともとてもスタイルいいですもんね。“ね!先生”」



 (って、アキーー!!なんてタイミングで俺に話を振るんですか!!!)


 (くっ、しょうがない。ここは適当に相槌を・・・・)


 (いや、それとも無難に話を流すか・・・・)


 (ダメだ、不自然すぎる・・・・)


 (よし、では、ここは・・・・)



「そうですね。でも俺はありのままのアテナさんも、とても素敵だと思いますよ。それに、今は今の自分にしかできない可愛らしい姿がありますから、それを活かしてあげる事も大切だと思います。(最大限の笑顔)」


「・・・・そ、そっかな。ありがとう、えへへ♪」



 (どうだ!これで乗り切ったか!?


 あっ、アキとアメリアさんが少しムッっとしたけど最悪ではない!)



 アテナも嬉しそうにくねくねしなががら照れているので、なんとか無難な正解を導き出せたようだ。


 なんとか、地雷原を命からがら抜け出しせたと思ってほっとしていたら、今度は入り口の方から大きな音と共にお客の来店を伝えるベルの音が乱暴に店内へと鳴り響いた。



 (もしや、この期に及んで、またトラブルか!?)



 すこぶる嫌な予感を感じながら、不安そうにそちらに視線を向けるナタクであった。


・・・えへへ♪(*´д`*)



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