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第5話

 

「・・・・うん?みんなは何を食べてるの?」



 今だ幸せそうにキャラメルを頬張る二人を見て、不思議そうに首をかしげてアテナがそう問いかけてきた。



 (まぁ、この状態の2人を見れば、そりゃ気にもなるか)



「昨日宿屋の厨房をお借りて作ったお菓子ですよ。アーネストさんにも厨房を貸してくれたお礼に同じ物をいくつかお渡ししたのですが、アテナさんは食べていませんか?」


「・・・ううん、知らない。貰ってもいい?」


「えぇ、どうぞ。ミルクとハチミツで作ったお菓子になりますね。飴ですのに噛まずに口の中に入れて転がして食べてください」


「・・・・わかった。あむっ!!」



 (ふむ、みんなの様子を見るに砂糖の安定供給ができるようになったらリックさんの所にでも売り込もうかな。なんかたくさん売れそうな気がしてきました)



「・・・・なにこれ、凄く美味しい!この飴パパにいくつあげたの??」


「今回は試作だったのでアーネストさんには10個ほどでしょうか?作り方もお教えしたので、頼めば作ってくれると思いますよ」


「・・・・失敗した。今日は抜け出さないで大人しくしていればよかった。きっと、ママとお姉ちゃんに全部食べられてる・・・・うぅ」


「あはは・・・・、まだ少しあるので帰りにお譲りしますよ。それと砂糖もあるので、ついでにアーネストさんに届けてあげてください。それ以外の材料は市場で揃うと思うので」


「・・・・いいの!ありがとう♪」


「いつも宿屋でお世話になっているのでそれくらいお安い御用ですよ」


「・・・・でも、お砂糖ってすっごく高くない?悪いからお金出すよ?」


「いえ、大丈夫ですよ。訳あっていくらでも砂糖が手に入るのでお気にせずに。それに砂糖は早ければ来年にも市場で安く並びだすと思いますよ」


「・・・・ありがとう。じゃ貰っておくね。お礼に、今度素材でなにか欲しい物あったら取ってきてあげる」



 ニコニコ幸せそうにキャラメルを食べる三人を眺めていると、どうやら料理が完成した様で厨房からリリィが順番に料理を運んできてくれた。



「お待たせしました、すぐに残りも運んできますね」



 そうして運び込まれた料理を目の前に、空腹を堪えながら使われている素材の観察をしていく。



 まずは、アキナとアテナの頼んだ『香草と干し肉のパスタ』から。


 使われている麺は、小麦粉と卵を使用した物を使っており、地球で食べていたあの細長いパスタ麺にかなり酷似している。気になる香草にはバジルを使用しているようで、とても食欲を誘う良いアクセントとなっている。また、そのバジルの匂いの中にほのかにニンニクの香りもするのだがスライスなども見られないのでも、もしかしたら油につけて保存し香りを移して使っているのかもしれない。


 ちなみに、バジルはこの街の市場でもよく見かける香草で、結構安価で購入が可能で、よくアーネストの料理にも使用されていた。そしてニンニクも錬金術師達によってスタミナポーションの材料としても良く使用されており、こちらも街で見かけることが多い品なのだが、殆どが乾燥した状態で日持ちするようにして売られていた。どうやら食用としてより薬剤の素材として認知されているみたいなのだが、この店では料理の材料としても使用しているようだ。


 干し肉も、ちゃんと丁寧に下処理がされているようで、見た感じ干し肉特有のあの硬さもみられなかった。



 次に運び込まれたのは、ナタクが注文した『六種の野菜と特性ハーブのスープパスタ』


 パスタと名前がついているが、アキナ達の麺に比べてこちらは程よく平らな太めの麺が使用されていた。

 器もお皿というより丼に近く、その底に麺が敷き詰められ、その上に炒めた野菜とスープがかけられている。どうやらハーブはスープの方に使用されているようで、黄金色に輝くスープからは食欲を誘うよい香りをかもし出していた。


 元日本人の自分から言わせてもらうと、これはパスタと言うよりラーメンに近いと思うのだが、中華麺には“かん水”というアルカリ性の溶液が欠かせないので、もしかしたら、まだこの世界では再現できないのかもしれない。


 一緒に運び込まれた『ホーンラビットのステーキ』はアーネストの店で食べた物と同じ物が出てきたので割愛する。



 (さすがお弟子さんだ、素晴らしい再現率ですね)



 そして最後に、アメリアが注文した『日替わりランチ』だが、小さめなマルパン2つにスープとサラダ、それにアキナ達の頼んだ『香草と干し肉のパスタ』の干し肉をアサリのような小さな二枚貝に変更したパスタが少し小さめなお皿に乗って運ばれてきた。



 全体的にとても美味しそうではあるが、やはり味付けは塩をベースにした物が殆どで、先ほどメニューを確認した時にトマトソースやクリームソースなどは存在していなかった。トマトはともかく、乳製品を使ったクリームソースなどは現状でも作れそうなものだが、やはりまだ調理法が確立していないのであろう。


 トマトも原種さえ見つけることができれば品種改良で生み出すことができるのだが。



 (あれ?そういえば、最近どこかでみた覚えがある気がするが、どこだったか・・・・


 だめだ、空腹で今はそれでころではない。食べた後にでもゆっくり思い出そう)



「ご注文の料理は以上となります。只今お冷のおかわりを持って来ますね」


「よろしくお願いします。さて、料理が冷める前にいただくとしますか」


「そうですね。飴も全部溶けてしまったので、今度はご飯を楽しみましょう」


「あぁ、私も舌がやっと回復したから、これで料理が堪能できそうだ」


「・・・むぐむぐ。やっぱり、ここのパスタも至高♪」



 アテナはすでに食べ始めていたようだ。しかし、女性陣はかなりご機嫌だ。


 ラーメンのような食べ物なので箸を使って食べたかったが、生憎この街に転生して以来箸を扱っている店を見たことがなかったので、郷にしたがってフォークを使って食事を始める。


 まずは丼を持ってスープを一口。野菜とハーブからとった出汁はほのかに甘く、丹念に灰汁を取ったからであろうか、透き通ったスープには癖はなく、そこに少量の食塩を加えることでいくらでも飲めそうな優しい味付けがなされている。ただ、ラーメンに近いものを想像していたので個人的にはパンチの欠ける味わいではあった。たぶん、動物の骨や魚介などから出汁をとったら、さらに自分好みになっていたかもしれない。


 麺も卵麺を使用しているのでラーメンの様な味を想像していたのだが、平らな太めの麺のため、なんだかうどんとラーメンの中間の様な食感であった。ただ、不味いのかと言われたらそんなことはなく、なかなかの食べ応えが、優しいスープの味にとてもマッチしていた。


 ラーメンとして食べたならいまいちかもしれないが、こういう郷土料理として出されたなら悪くないかもしれない。ただ、アーネストの店や領主の所で食べた料理に比べると少し劣るかなというのが素直な感想であった。



 アキナの方を見ると、彼女も首をかしげながら食べているので、似たような感想なのかもしれない。バジルの使い方もペーストにして使うのではなく、細切りにした物を使用していたので、多少香りが弱く感じたのかもしれない。それに、薄っすらと皿に残る油が透き通っていたのでバターを使うのではなく植物性の油のみを使用していたのではないだろうか?


 確かに、その方がすっきりとした味わいにはなるのだが、今度はコクが足りなくなるはずだ。また、ニンニクは使っているが唐辛子がまだない世界なので、どうしても地球の料理を期待していくとがっかりしてしまうのかもしれない。


 たぶん、アルマやアテナがここの店の評価が高かった理由は、『今までに食べたことのない味』を提供してからなのかもしれない。ある程度改良点は思いつくのだが、あくまでここの店の味として楽しむ分には問題ないと判断して、ここはそのまま食事を楽しむことにした。特に味の改良を相談されたわけではないのだし、出しゃばる必要もないであろう。



「ふむ、中々美味しいじゃないか。独特の風味が癖になりそうだよ。バジルは判るのだが、この香りは他のハーブの効果かな?」


「あぁ、この香りはニンニクではないですかね?刻んだ物なども入っていないので、たぶん油に香りと味をしみこませて使ってるんだと思いますよ」


「へぇ、ニンニクってポーションの材料のかい?あれって料理に使うこともできたのか、それは初耳だよ」


「俺達の故郷では、生のニンニクをスライスした物やペースト状にした物を料理に使ったりしてましたね。元気のでる料理として良く話題にもなっていましたよ。勿論薬の素材としても優秀でしたね」


「しかし、香りだけでよく判断できるね」


「知っている香りというのもそうですが、単にニンニクを使った料理もわりと好きだったからかもしれません。向こうでは自分で料理もしていたので、必ず常備していた食材でもありますし」


「へぇ、先生ニンニク料理が好きだったんですか」


「正確には、“ニンニク料理も”ですね。仕事柄週末にしか食べられない食材だったので、休みの味として会社員になってから余計に好きになったかもしれません」


「あはは・・・・なるほど」


「何だい、二人だけに通じる話ってなんだか羨ましいね。良くわからない単語があったけど、要はこの味付けがナタク君の好みということだよね、覚えておくよ♪」


「はっ!あくまで、“ニンニク料理も”ですよ?過ぎた物は好きじゃないですからね!!」


「ちっ。後で大量のニンニクを街中からかき集めてきて、実験室にプレゼントとして持って行こうかと思ったのに」


「止めてください!匂いで暫く実験どころじゃなくなってしまいますよ!?」


「・・・・先生?たぶんアメリアさんは分かっててからかってますよ。今とっても楽しそうですし」


「なっ!!」


「ぷははは。久しぶりに慌てたナタク君の顔が見れたよ、今日は一緒にきてよかったさ。あ、食後のお茶を頼めるかな?品種は任せるよ」


「はぁ~い。只今お持ちしますね」


「・・・あ、私はもう一回おかわりね」



 そう言ってアメリアは満足げにリリィを呼び出して、お茶とお菓子を人数分追加で注文してくれた。



 うぅ、最近何故かからかわれていなかったから、完全に油断していた。また何時からかわれるか分らないから、今後は気をつけておこう・・・・

・・・むぐむぐ♪(*・~・*)



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