第2話
そんなこんなで自分の実験室までやってきた。今週は、ほぼ領主から戴いたお屋敷の改装工事ばかりをしていて、この部屋での作業は土いじりをしに顔を出す程度だったので、錬成をしにきたのは久しぶりだったりする。だが、昨日と今日の買出しで倉庫の空き状況も改善されたので、今日は思う存分錬成を楽しめそうでワクワクしていた。
アキナも呆れながら今日買ってきた錬成素材の搬入作業を手伝ってくれ、今日使う“レベル上げ用”の素材と、ミーシャに頼まれた金策用のポーション素材を手前に運び出してから、お茶を飲んで一息入れることにする。
「先生。この素材達、“レベル上げ用”って言っていましたが、このままだと売れないんですか?」
「売れなくはないのですがね、回復アイテムというより『デバフ・兵器』寄りのアイテムになるので、ちょこっと物騒なんですよ。一応領主様に今度会った時にでも商談を持ちかけてみますが、それまでは倉庫の肥やしになりそうです。まぁ、分解しても経験値にはなりますので、倉庫の状況を見て判断しようかと考えています」
「先生のレシピにしては、珍しく赤字錬成なんですね」
「売れたら黒字なんですけどね。ですが、レベル上げでかなりの数を作成する予定なので、普通に売っても絶対売れ残ってしまうはずなんですよ。まぁ、軍隊規模で使用してくれれば使い道もあるかもですが、戦争を望むのは間違っていますからね。分解したり死蔵しているぐらいが丁度いいんです」
「確かに、平和であることが一番ですよね。それで、この後の予定はどうしましょうか?」
「まずは、午前中にミーシャさんに頼まれたポーションの作製を終わらせて、昼食を挟んで今度は錬金術のレベル上げをしましょうか。素材もたっぷりあるので腕が鳴りますね」
「私は素材が傷む前に使いきれるかが心配でならないですよ。先生、次から次に新しい素材を買い漁るんですもん」
「まぁ、経験上この量ならば問題なく捌ききれると思いますので安心してください。いざとなったらインベントリに保管しますので」
「はぁ・・・・。それと、ついに“見習い”もカンストしてしまいましたが、次の“職業”はどうしたらいいでしょうか?」
「俺もこの前の戦闘でカンストしてしまいましたね。一応近いうちに戦闘職のレベル上げもしていく予定なので、今はまだそのままにしておいてください、流石に街中で戦闘職を上げるのは物騒ですしね。お屋敷が完成してから錬成炉を使ってレベル上げ用の武器を量産しますので、もう少しだけお待ちください」
「分りました。後、フィジカルの経験値もだいぶ蓄積されていますが、こちらも触らない方がいいですよね?」
「そうですね、まだ一度しか戦っていないのに一気に20くらいレベルが上がりそうなほどソールも堪っていますが、此方の上げるタイミングも考えているので、取り敢えず今は触らないで大丈夫です」
「了解です。それに今上げても見習いのままですもんね」
「そういうことです」
「さてと、ではでは私はティーカップを洗ってきますね」
「ありがとうございます。それが終わったらアキも等級5の各種ポーションの作製に取り掛かってください。俺の方は等級4のポーションの作製を担当して作り始めますので」
「はぁい」
アキナが給湯エリアにカップを持って向かったので、此方も作業の準備に取り掛かる。素材的には数日は錬成し続けることができるほど在庫を揃えたので、今日はどれだけポーションを量産できるかに挑戦してみる予定だ。
錬金術師のレベルもだいぶ上がってきており錬成も安定しているので、今日は同時に二つの作業をこなして、更なる作業効率アップを試みることにする。一見ただの無謀なことをしているようにも見えるかもしれないが、この方法は等級2以上の錬成の練習になるので、やっていて損はない。それだけ、等級の高い錬成は作業工程が複雑になるのだ。
手早く錬成陣を二枚描き上げるとそれを作業台の上に置き、他の必要な機材と材料を順番にその上に並べてゆき錬成を開始しする。今回はなるべく難易度を上げるために、異なったポーションを同時に仕上げていくことにした。
最初の数回は失敗も視野に入れて作業をしていたのだが、特に問題なく無事高品質でポーションが出来上がり、一先ず安心できたので、後はこの作業の錬度を上げていき、更なる時間短縮を目指すつもりだ。
それから時間を忘れて作業に没頭していると、正午の鐘が鳴ったので、ここでポーション作りを一旦ストップすることにした。
(集中しているとほんと時間の経つのが早く感じるな・・・・)
ふと、自分が使った機材の片づけをしながらアキナの様子を見てみると、彼女もだいぶ作業に慣れてきたようで、かなりの数のポーションが出荷箱に収められていた。
「アキもだいぶ手際が良くなりましたね。これなら間違いなく近日中にはブロンズに昇格できそうですよ」
「はい!もう等級5であれば高品質を維持しながら量産体制を取ることができそうです。これで、今日こそ先生に・・・・って、あれ?その出荷箱の量はいったい・・・・
先生、この短時間にいったい何本のポーションを作ったんですか!?」
「今回は、同時進行で複数ポーションを作製していましたからね。たぶん500~600本は作ったんじゃないでしょうか?いやぁ、我ながらいい仕事ができましたよ」
「今日こそは、先生と同じ位の量を作製できたと思ったのに・・・・」
「まぁ、これから等級2以上のポーションに手を出す事を考えると、これくらいは軽くできなくてはなりませんので、その練習みたいなものですよ。アキは今はまだしっかり一つ一つを大事に錬成して、できるだけ高品質を狙っていった方が良いので、慌てなくても平気ですよ」
「はい、分りました・・・・。よし、次こそ頑張ります!」
「それでは、戸締りをして食事に出かけるとしますか。アキは今日何か食べたい物はありますか?」
「う~ん。そうですね、それでしたら、先日アルマさんにお勧めしてもらった麺料理店が中央通りにあるので、ちょこっと遠いですがそこに行きませんか?」
「麺料理ですか、いいですね。なら今日はそこにしましょうか」
「はぁい!じゃぁ私も軽く片付けて準備しますね」
行き先も決まったので、出かける前に二人で軽く素材を片した後に戸締りをチェックしていると、部屋の外から来客を告げるベルが鳴った。もしかすると、ミーシャがガレットとの面会時間を知らせに来たのかもしれない。
「おっと、来客みたいですね。今開けますよっと!」
扉を開けると、そこには先日までとはまた服装の変わったアメリアが笑顔で扉の前に立っていた。きっと先日アキナが作製した衣装であろう。ノースリーブの白いシャツの上にダークブラウンのベストを羽織り、腰周りにはいつものポーションホルダーが巻かれ、その下にアキナの錬金術師用装備のスカートと同じ柄の物を穿いている。その上にいつもの白衣を羽織っているで、全体的にアキナの錬金術師装備とかなり酷似した服装に仕上がっているのだが、全体の丈の長さはアメリアの方が短めに作られていた。
まず白いシャツは胸の下辺りまでしかなく、ヘソ出しは健在であった。ベストもその丈に合わせて作られており、またアメリアの胸の形にあった採寸が取られているため、窮屈そうな印象は観られない。しかも、胸元のボタンもかなり開いているため、谷間までバッチリと確認できるので、もしかするとチューブトップの時に比べて布の面積は増えたがエロさは増したのではないだろうか?
スカートもアキナに比べて5cmは短い物を履いており、アキナと違ってスパッツを穿いているようには見えなかったので、その辺は流石アメリアである。
その下にアキナと同じニーソと膝丈のロングブーツを履いており、脛当てを付けられるジョイントも見られたので、戦闘時に装着可能になっているようだ。
髪の結い方も変えられており、リボンは止めてヘアピン型の髪留めを額の横に軽く留めているだけで、髪は自由に流している。ただ、白衣の胸ポケットにモノクルと髪留めのバレッタが付けられているので、仕事中はそれで後ろ髪を留めているのかもしれない。
「やぁ、ナタク君こんにちはだね」
「アメリアさん、こんにちは。服装を一新したんですね、アメリアさんらしくてとても素敵ですよ。髪留めも、とてもよくお似合いです」
「ありがとう!あれ以来、君達の服装が羨ましくてね、アキナ君に似たものを作ってもらったんだよ。アキナ君もこんにちは。この洋服ありがとね、とっても気に入ったさ!」
「アメリアさん、いらっしゃい!また、欲しい洋服があったら言ってくださいね。服を作るの大好きなので!」
「うんうん、ありがとう!近いうちに、絶対またお願いしに来るよ。あぁ、それと髪留めはリズから今日プレゼントされたのさ。なんでも、昨日ミーシャと一緒に最近話題の彫金細工師の作品の置いてある出店にショッピングに行ったらしくいてね、そこでこれを見つけてきたらしいんだ。値段もリーズナブルで、良い物がたくさんあったらしいよ」
「なるほど、中々いいデザインですね。華と蝶をモチーフにした作品ですか。細部の彫刻も丁寧ですし、削りだしのセンスもいいなぁ。材質を金や銀に変更して、宝石のグレードを上げれば貴族のご婦人達の目にも留まりそうな素晴らしい作品ですね。・・・・って、アメリアさんどうしました?顔が真っ赤ですよ」
中々興味深かったので、繁々とアメリアの髪留めを観察していると、何故か彼女は身体を硬直させて顔を真っ赤にしながら目をパチクリさせていた。
(はて、熱でもあるんだろうか?)
「ななな・・・なんでもないさ!(びびび・・びっくりした!ナタク君の顔があんな目の前に!!)」
「はぁ、体調が悪かったら無理はしないでくださいね?しかし、本当に素晴らしい作品ですね。少し製作者に興味が出ました。今度俺もお店に行ってみようかな?」
「なら!今度お店に案内するよ、詳しい場所はすでにリズから聞いてあるからね」
「おぉ、ありがとうございます。楽しみにしていますね。って、アキナさんはなんで怒っていらっしゃるんですか?笑顔だけどオーラがヤバイんですが・・・・」
「いえ、何でもありませんよ。朴念仁の那戳先生!!」
「??」
どうやら、気がつかない間に、またしてもアキナの地雷を踏み抜いてしまったようだ。しかたないので、こんな時のために昨晩用意したとっておきの秘密兵器を使って、後でご機嫌を取るとしよう。
「そういえば、アメリアさんは何か用事があって来たのでは?俺達は丁度ランチに出かけるところだったのですが」
「あぁ、特にこれといって用があったわけではないよ。ただ、一緒に食事でもどうかと誘いに来たのさ!それと、君にこの格好を自慢しようとも思っていたぐらいかな?」
「それでは、ランチをご一緒しませんか?これからアキが教えてもらった麺料理のお店に出かけるところだったので」
「いいのかい?」
「勿論です。ね、アキ?」
「・・・・そうですね。それでは、せっかくなので皆で出かけましょう」
「やった♪」
そうと決まったら、さっそく残りの戸締りを完了させて、話題の麺料理のお店へ三人で向かうとしましょう!
ほうほう(`・ω・´)
はわわわぁ(゜□゜*;)




