表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/194

SS:戦いの後に

 

 あの戦いから二日ほど時間が進み、街はいつものような活気を取り戻していた。流石に、あの次の日は筋肉痛で体中が痛かったので、ナタクは完全な休養日として殆ど一日寝て過ごしていた。アキナは割りと元気だったので、いつもの実験室に一人で向かってそこで服作りをして過ごしたそうだ。


 朝に目が覚めると、体の方もだいぶ調子を取り戻していたので今日は自分も出かけることにする。アキナにはポーション作りは明日からと伝えて、今日は色々話しておかなければならない人達のところを訪れることにした。アキナも付いてきてくれようとしたが、自分の用事を優先してもらった。先ほど朝食で話していた感じだと、今日でミーシャとアメリアの洋服が完成しそうだったためだ。


 まず、ドロモンのことを伝えるためにガレットのところを訪れることにした。先ほど錬金ギルドの受付でミーシャに聞いたところ、今日も自身の仕事部屋で缶詰め状態らしかったので、そちらを訪れることにする。やはり、何度も城に呼ばれたせいで仕事が溜まってしまって身動きが取れなくなってしまったようだ。


 部屋の前の魔導具を操作すると、在席中と表示されたのでインターホンを鳴らして自分が来たことを伝える。その後すぐに部屋の施錠が解除されたので室内に入ると、作業机の上に大量の書類に囲まれたガレットが忙しそうに仕事をしていた。



「おぉ、坊主か。体はもう大丈夫かい?」


「はい、おかげさまでだいぶ調子が戻ってきました。明日からはまた普通の生活に戻れそうです」


「せっかくだからもう少し休めばよいものを。まぁ、お前さんらしいがな」


「お忙しい中、訪れてしまい申し訳ありません」


「かっかか!お前さんが気にせんでもええ、ワシも好きで仕事をしとるしのぅ。それに目がちゃんと見える様になったので、今はだいぶ仕事がやりやすくて助かっておるしな。して、今日はどうしたんじゃ?」


「はい、今日はドロモンさんについて分ったことがあったので、それを伝えにきました」


「・・・・そうかい。ワシも奴がどうなったか気になっていたんじゃ。長くなりそうじゃし、今お茶を用意するからそこに座って待っておれ」



 そう言って、ガレットは仕事の手を止め奥の部屋へと下がっていった。ナタクもお言葉に甘えてソファーに腰掛けて待っていると、すぐにガレットがカートを押して戻ってきた。



「さて、それで坊主はどんなことが分ったのじゃ?」



 お茶を受け取ると、さっそくガレットがこう切り出してきた。



「はい、まず最近話題になっていた大型の魔物・・・サンドティガーですが、あれの正体はドロモンさん本人です」


「なっ!あれは奴が創り上げた魔物だったわけじゃないのかい!ワシはてっきり実験が失敗して、自分が作ったキメラに食われたんだと思っとったよ」


「彼が創ったっというのは間違いありませんが、あれは間違いなく彼本人が変化してなった魔物ですね。これにはある“魔導書”が関係しているのですが、まずはそれについて話した方が良さそうですね」


「人間が魔物になるじゃと・・・・いったい」


「この話は、できれば領主様にもお伝えしたいので後で書面に起こしてお持ちしますね。まず、その魔導書ですが、私が以前いた場所では“希望の書”あるいは“悪魔の魔導書”と言われていまして、簡単に言うと以前滅んだ文明での戦争に使われた兵器になります。その内容は・・・・」



 それから時間をかけて魔導書について知っている内容を、全てガレットへと話した。内容があれなだけに最初は半信半疑だったガレットも、話が進むにつれて次第に理解してくれるようになっていった。



「ということは、ドロモンの奴はその魔導書に操られておかしくなっていったいうことかい?・・・・なんてことじゃ。確かに、アイツがおかしくなり始めたのも、それくらいの時期だったはずじゃ」


「本来であれば、早い人ならば一週間も持たずに魔物へ変異してしまうことを考えると、それだけの期間耐え続けた彼の精神は賞賛に値すると思います。しかも、魔物になってまでも『怠惰』ではなかったので、彼はかなり強い精神を持つ人物だったと思いますよ。俺も狂わされる前に彼に会って話がしてみたかった。本当に惜しい人を亡くしました・・・・」


「ワシも、アイツの部屋に残された私記と研究レポートをあれから少し読んだのじゃが・・・・そうか、途中で研究がおかしな方向に進んどったのは、そういうことじゃったのか・・・・」


「この魔導書のやらしいところは、すぐに性格を歪めるのではなく、徐々に変化してくるところです。周りの人からすれば、いきなり別人になったとかじゃなく、本性を現してきた?と錯覚させて発見を遅れさせるところにあります。本当、悪魔みたいな本ですよ」


「そうじゃったのか。せめてワシだけでも気がついていられたら・・・・。いや、過ぎたことをいっても仕方がないの」


「この本の被害者は家族でも気づけないケースが多いので、ガレットさんも自分を責めないでくださいね」


「言われると、成程と思えることが多いだけに悔しいのぅ。ドロモンじゃが、ここに来た当初は好青年でのぅ。若くして期待の錬金術師と皆から注目されていたのじゃよ。丁度今のお前さんの様な状態か。当時は、素晴らしい人材を確保できたと喜んでおったのじゃが。そうか、そんな本に狂わされておったのか・・・・。奴はな、昔は『自分の技術で多くの人を救いたい』とよく言っておったのじゃ。本当に・・・・。馬鹿もん、なんでもっと相談せんかったんじゃ・・・・」


「よろしければ後で彼の研究途中の資料を見せていただけないでしょうか?もし分ることがあれば、手直しをして彼の研究として発表させてください。せめて最後に手を下した者として、偉大な先輩に最後の手向けにしたいのです。この魔導書の被害者の多くは本来優しい人物だった人が多いんですよ。今日はそのお願いに来ました」


「資料を見せることは構わんが、何もアイツの名前で発表することもないだろうに・・・・。まぁ、それが坊主なりのケジメの付け方なら好きにするとえぇ。提出は査定期限前として処理しよう。ただし、あまり待てんからな?・・・・ほれ、これがアイツの残した資料じゃ」


「ありがとうございます。それでは“頑張って”資料を作ってきますね!」


「いや、ちょっと待て!坊主が頑張るとワシが酷いことになるのを忘れておった!頼むから、程ほどにするんじゃぞ!!」



 そう言って、ドロモンの研究資料を受け取って自分の実験室まで戻ってきた。部屋を出る前ガレットがかなり慌てていたが、あえて聞かなかったことにしよう。


 実験室に入ると、アキナが裁縫道具を広げて追い込み作業の真っ最中であった。



「あれ?先生も此方にいらしていたのですね。随分とご機嫌ですけど、何かいい事がありましたか?」


「はい、それがですね・・・・」



 それから暫くアキナと会話を楽しんだ後に、予定を変更して持って帰ってきた研究資料を広げ自身も作業に没頭するのであった。

ま!待て坊主!!やっぱりあんまり頑張るんじゃないぞ!Σ( ̄□ ̄;)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ