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第58話  転生7日目1-15

 

 豪腕がナタクの命を刈り取らんと振り下ろされた、まさにその瞬間。ナタクとサンドティガーの間に一人の人影が入り込み、重い一撃をその大きなシールドで見事防いでみせた。その人物こそナタクが命を張りながら戦い方を教えていた、モーリスその人であった。



「本当に3分間を一人で戦い抜くとは思いませんでしたよ。今行くと邪魔になると止められなければ、何度助けに飛び込もうとしたことか。どうやら助けに入ったタイミングは合っていたようですね。ここからは私が引き継ぎます!」


「ナイスタイミングです、後はよろしくお願いしますね。正直立っているのもつら・・・うわっぁと!」


「モーリスの旦那!この兄ちゃんは俺が安全なとこまで運んでおくから、安心して戦ってくれ!運び終わったらすぐに自慢の両手斧で加勢すっからよ!」


「ゴッツさん、頼みます。その人を必ず無事に皆の場所まで届けてください」


「おうともさ!それじゃ、暫くそいつの相手を頼みますぜ!」


「了解!それではいきます!スキル『アンカー・デスティネーション』発動!!」



 そう言ってモーリスが剣を高らかに掲げ、スキルを発動させると、今まで戦っていたナタクから淡い光があふれ出し、その光が全てモーリスの方へと流れていった。


 このスキルは中位職である“騎士(ナイト)”で覚えることができる技能スキルで、味方に向いた敵対心を自分に全て集めることができるといったものだ。今回はナタク1人でサンドティガーと対峙していたためそのスキルの効果は凄まじく、きっと奴はモーリスをナタクと誤認して、よほどの事がない限り無視することはできなくなったはずだ。


 その間に、ナタクはゴッツの肩に担がれて戦線を離脱する。先ほどの勇ましかった姿とは間逆な、実に滑稽な自身の姿に少し笑えてしまった。


 そのまま運ばれ、なんとか安全圏といえる場所まで連れてきてもらうと、そこにはアメリアがかなりお怒りの状態で待ち構えていた。てっきりアキもいるかと思ったが、辺りを見回すと、どうやら彼女は前線で指揮を執っているようだった。モーリスは約束通りアキに指揮権を渡してくれたみたいだ。


 ゴッツはその場の雰囲気を察したのか「じゃ、俺はこれで!」と、手早く自身の武器を手に持つと、すぐさま戦場に帰ってしまった。



 (そんな!今、サンドティガーより恐ろしいアメリアさんの前に俺を一人にするなんて!?)



「全く、君って奴は!一人で飛び込んでいった時は心臓が止まるかと思ったよ!なんで、あんな無茶なことをしたんだい!!」



 そう言われて『ゴンッ!』拳骨を落とされてしまった。ガントレット付きの拳骨は実に痛い!せっかくサンドティガーを完封したはずなのに、まさかここでダメージを食らうとは・・・・



「痛った!!うぅ・・・すいません。相談している時間も惜しかったので、アキとモーリスさんだけに必要なことだけ告げて向かってしまいました。それだけ切羽詰った状況だったので、許していただけると助かります・・・・」


「皆どれだけ心配していたと思っているんだい、帰ったらお説教だからね!アキナ君なんて泣きそうになりながら、それでも君に託された仕事を全うするために働いてくれていたんだからね!


 後で必ず彼女に謝るんだよ!正直、私も生きた心地がしなかったんだから。でも、本当に無事でよかった・・・・」


「分りました。ご心配お掛けして本当に申し訳ありません。それで、すぐに奴に勝負を挑みに行ってしまったので、こちらの状況がどうなったかまったく知らないのですが、詳しく教えてもらってもいいですか?」


「あぁ、確かにそうだね。それでは順を追って話すとするよ。まず・・・・




 SIDE:アキナ



 時間は巻き戻り、ナタクがサンドティガーに斬りかかりに行った頃。時を同じく、アキナも行動を開始していた。



「モーリスさん、先生がくれたこの時間を無駄にしないためにも、みんなをこの場に集めてくれませんか!先生の戦いを見ながら弱点や行動パターンの解説、皆の立ち回りのタイミングなどをお教えします!」


「分りました。約束ですので指揮をお預けしますが、本当に大丈夫ですか?」


「はい!先生が信じてくれたからには、必ず応えてみせます。大人数の指揮もかなり経験しているので、任せてください!」



 そう言ってモーリスをみんなの所に送り届けると、アキナ自身はその間にできる限りナタクが引き出している行動パターンを記憶する作業に没頭する。これでもレイドバトルは常連であったし、指揮の経験も数多くこなしているので、油断さえしなければ大丈夫なはずなのだ。


 正直、このままナタクと一緒に戦ったとしても、皆を勝利に導く自信だってあった。ただ、これはゲームではなく一度死んでしまったらお終いの現実世界だからこそ、いつも以上に作戦を練る事が必要だった。その判断材料を、今まさに命がけで集めてくれている自分の師匠のためにも、些細な綻びすら出さないようしっかりと全ての動きを目に焼き付けていく。


 それからすぐに、アキナの近くまでモーリスが皆を引き連れてやって来た。どうやら、他の皆も急に戦闘を始めたナタクのことが気がかりのようだ。



「アキナ君!なんでナタク君が一人で戦っているんだい!早く皆で加勢をしないと、彼が死んでしまう!!」


「彼女の言う通りだ、戦闘準備ならすぐに整う。加勢しよう!モーリス指揮は君が取るんだろ、早く作戦を立てて行動をしろ!」


「待ってください!これは先生がくれたチャンスなんです。今から皆さんに、あのサンドティガーの攻略法についてご説明させていただきますので、行動を起こすのはそれからにしてください!それと、先生からの伝言で『3分間手出ししないでください』だそうです。下手に加勢をすると奴のターゲットが不安定になって先生の死亡率が上がってしまいますので、お願いですから、堪えて話を聞いてください」


「なっ!それでは、私達はその間見ていることしかできないのかい!もし、何かあったら私は・・・・」


「私だって先生を止めましたし、心配でどうにかなってしまいそうなんです!ですが、決断して実行に移ったのは先生の意思です。それに、あの人はここぞという時は必ず決めてくれる人です。ですから、今は信じて作戦を立てましょう!」


「確かに、彼ならとは思うが・・・・。う~ん、分った本当に3分だけだからね。モーリス!危なかったらすぐに助けに入ってやってくれよ!」


「勿論です、お嬢様!必ずお救いしてみせます」


「それでは、時間がないのでさっそく話を始めます。まず、先生が引き出してくれた情報をお話していきますね。


 先ほど、先生が奴の弱点である鼻頭に斬撃を当てましたが、事前情報の通り血液が沸騰したようになった後、傷が修復されました。これはキメラ型の魔物の再生の特徴で“超回復”といいます。内容は体内に蓄積された魔力(マナ)を消費して通常の何倍もの回復力を得るといったモノです。


 次に、先生は炎属性の斬撃に攻撃方法を変更して、次の弱点である横っ腹に攻撃をした際、今度は再生が見られませんでした。ここから言えることは、火傷の状態に陥ると再生能力を阻害できるようです。


 なので、この攻撃方法が現在もっとも有効だと考えられます。今いる人の中で炎属性の攻撃をできる人は何人ぐらいいますか?」


「私が連れてきた小隊には、魔法使いが三人いますのでその隊員に攻撃させましょう。他には・・・・」


「俺が属性矢を何本か持ってきているから、アテナと二人で狙撃しよう」


「・・・・分かった。パパ、後で渡してね」


「おっと、俺達を忘れちゃっては困るぜ!何てったて俺達は『サラマンダーの牙』って名乗っているんだ、各自何らかの炎属性攻撃は可能だぜ、嬢ちゃん!」


「解りました。それでは各自攻撃の際は、よろしくお願いします。属性攻撃ができない人も、火傷をすでに負っているところは攻撃が通るはずですので、そこを積極的に狙って攻撃を仕掛けてください。


 次に、奴の攻撃パターンですが。見ている限りどうも動きがぎこちなく見えます。まるで、『自分の身体の扱い方を知らない』ように。ほら、今先生が何度も(かわ)し続けていますが、明らかに“右前足”による引き裂き攻撃と、噛み付きぐらいしか使ってきていません。


 本来、サンドティガーはその駿脚を活かした機動戦が得意なはずなのに、あの個体は足を止めて攻撃を仕掛けてきています。あれなら思ったよりも脅威は高くないと考えられますので、そこを付いて戦いましょう」


「しっかし、あの兄ちゃんはいったい何者なんだ?なんかすげー簡単に避けまくってくるが、俺じゃぜってぇ無理だぞ。まるで攻撃が全て見えているみたいじゃねぇか」


「俺から見てもあの動きは素晴らしいの一言だ。いったいどれだけ鍛錬すればあのような動きができるのやら・・・・」


「って!あなたは“蒼穹のアーネスト”!?引退したと噂のゴールドクラスの冒険者がなんでここに!!」


「・・・・ふっふふ。私自慢のパパです♪」


「な!(あね)さんのお父上でしたか!姐さんにはいつもギルドの皆が日頃大変お世話になっております。それに、うちのPTは皆、伝説の冒険者で在られるあなたのファンです。後でサインください!!」


「・・・あぁ(うちの娘はいったい外でどんな事をしているんだ?こんなに厳つい冒険者にまで慕われているとは・・・・)」


「しかし、先生って本当に凄いですね。避けながらちゃんと反撃を入れていますが、それも全てサンドティガーの弱点といわれている箇所に綺麗に当てています。皆さん、あの傷を目印に攻撃を入れれば、大きなダメージが期待できるはずですよ。しかも、ちゃっかりその場所に火傷まで負わせていますし・・・・。色々凄い人だとは思っていましたが、戦闘面でもここまで強かったとは思ってもみませんでした」


「アキナ君でも知らなかったのか・・・・」


「皆さん見てください。奴がナタクさんから距離を取りました!何か仕掛けてくるようです。加勢しますか!?」


「いえ、今行くと先生の邪魔になってしまいますので、まだ待ってください。たぶん、サンドティガーは亜種の特性であるブレス攻撃を仕掛けようとしているみたいです。先生の様子を見る限りワザと誘発を狙っているようですね。アーネストさんとアテナさんは良く見ていてください。今から先生がブレスの対処法を見せてくれるはずです。全員で戦闘になった場合お二人に対処をお任せすることになるはずですので」


「心得た。それで、対処法とは何をするんだ?」


「亜種のブレスは特殊で、魔法陣を展開して火球を作り出して相手に放つといった攻撃になるのですが、その火球が少し変わっていて、『発射されると最初に衝撃を受けた場所で大爆発を起こす』といった物になります。なので、2人には発射直後に火球を打ち抜いて欲しいんです。ほら、今先生がやりますのでみていてください」



 皆が目線をナタクに向けると、丁度彼が瓶を火球に向かって投げるところであった。そして放たれた空瓶は見事火球へと着弾し、サンドティガーを巻き込んで大爆発を巻き起こしていた。



「すごいすごい!大ダメージじゃないか!!見たまえ、虎が丸焼けになって転げまわっているじゃないか」


「タイミングは解りました。またあの攻撃が来た時にカウントダウンをしますのでその時はお願いします」


「承知した」


「・・・・うん。任せて」


「どうやら、ナタクさんはあの状態から更に追い討ちをかけるみたいですね。なにやら後ろ足を攻撃していますが、あそこも弱点なんですか?」


「たぶんですが、念を入れてサンドティガーの機動力を潰しているんだと思います。流石先生ですね、抜け目がない」


「あはは・・・・。絶対敵には回したくないですね。ひたすら弱点を攻撃された挙句、今度は長所まで潰されるとは。段々サンドティガーが哀れに感じてきました・・・・」


「どうやら鎮火したようですね。全身火傷塗れですので、さらに攻撃を入れやすくなりました」


「おぉ、今度は張り付いて攻撃するみたいですね。本当に、なんであそこまで攻撃を躱せるのでしょうか」


「・・・・まるで踊ってるみたい。凄く綺麗」


「ですが、先生は下級職のスキルしか使っていないはずですよ。単純に戦い慣れているんだと思います。それにしても凄い・・・・。っは!モーリスさん約束の時間まで後数十秒になりましたので用意してください。相手の攻撃パターンは大丈夫ですか?」


「了解です、流石にここまで上手いお手本を見せられて、できませんとは言えませんよ。きっと、今張り付いて戦っているのは、接近戦で奴と戦う事になる私に見せるためでしょうから、是非参考にさせてもらいます」


「では、お願いします。皆さんも戦闘中にも指示を飛ばしますので、各自対応お願いします!みんなで生きて帰りましょう!」


「「「はい!おう!!了解!!」」






 さぁ、先生此方は用意ができましたよ。お願いだから最後まで無事でいてください・・・・





先生・・・(> <。)



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