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第6話   転生2日目1-2

 

 一階の喧騒とは打って変わり、ナタクの待つ部屋の辺りは静寂に包まれていた。どうやら二階部分は研究施設になっているらしく、利用者が錬成に集中できる様に配慮され、何らかの魔導具で一階の音をある程度遮断しているようであった。


 廊下に設置された年季の入った柱時計から聞こえる『コツコツコツ』という小気味いいリズムを聞きながら待つこと数分、ナタクの座っているベンチ正面の扉が『ガチャリ』と音を立てて開かれた。


 中から現れたのは妙齢の女性で、少し大きめの白衣を腕まくりしながら身に纏い、胸元のポケットには銀色のモノクル(片眼鏡)を引っ掛けており、あまり手入れをしていないであろうダークブルーの髪は邪魔にならないようにだろうか、毛先の辺りで軽く縛られ、腰の辺りで揺れていた。


 ほっそりとした腰周りにはポーションホルダーが巻かれており、そこには数本の薬剤の詰まった試験管が刺さっていた。しかし、いくら白衣を纏っているからといっても、お年頃の美少女がチューブトップにホットパンツというスタイルはいかがなものであろうか。



 (誠に、けしからん!眼福である。)



 などとくだらない事を考えていると、件の女性から声を掛けられた。


「え~と、キミが試験を受けにした命しら・・・じゃなかった、受験生かい?ふぅん、てっきり偉そうなおっさんかと思ってたよ。名前はえっと・・・ってミーシャ聞き忘れたのか。取り敢えず、用意は出来ているから中入ってくれるかい?」



 促されるまま部屋の中へ入ると、入り口付近に詰まれた木箱があったので、上に背負い籠を下ろしてから筆記用具が置かれた机に着席した。



「それでは、自己紹介をするね!私の名前はアメリア・ローレンス。ここ“イグオール錬金ギルド”で二級研究員(ゴールドクラス)をしている、お姉さんだ!今回、私があなたの試験監督ね」


「本日は宜しくお願いします。お若いのにすごいですね。本日、研究員登録をしに来た那戳(ナタク)といいます」


「ナタク君ね、よろしく!しっかし、ほんと思ってたのと違うなぁ。まぁ、いいか・・・・。それじゃ試験を始めるから今から私語禁止ね。


 試験は二時間、その間の途中退出は認められないのでトイレとか行くなら今のうちに行って来てね。ただし、残り時間一時間前になって、解答が全て終わっているのであれば、問題用紙を提出して退出することはできるから、その時は声を掛けるように!」


「大丈夫です、そのままお願いします」


「りょうかい、それでは試験を開始するね。まぁ、程ほどに頑張ってくれたまえ!」



 アメリアから問題用紙を受け取り、ついにテストが開始された。



 (さて、どんな問題か楽しみですね。おっ、一問目からなかなかコアなとこを攻めてきますか!)


 (おぉ、こっちは奇病に関する問題ですね。これ材料集めしんどかったなぁ。しかもこのイベント一回きりで、その後使う機会がなくなるとは思ってもいなかったから、せっかく頑張って量産したのに倉庫の肥やしになったけ)


 (こっちは錬成陣についての間違い探しですか。ふっふふ、錬成陣の魔改造が趣味の俺には中級レシピの錬成陣なんて通じませんよっと)


 (この薬剤のレシピ・・・元々この世界に存在してたのか。だいぶ前にクラメンと苦労して探し当てたのに、もっとちゃんと古文書なり読んでおくべきでしたね。いやぁ、懐かしい)


 (って、あれ?こっちの問題、答えが二つあるな・・・あぁ、新レシピはまだ発見されてないんですかね。それじゃあ、こっちが正解ですね)


 (いやぁ、しかしこの出題者さん、中々分かっていらっしゃる。どれも施術者が処置を間違えたら危険な問題ばっかりだし、よっぽど医療事故を起こさせたくないんだろうなぁ)



 懐かしい思い出に浸りながらも順調に問題を解き続けていると、気がついた時には所要時間二時間のところ、三十分も使わないで全問解き終えてしまっていた。


 さて、どう時間潰しをしようかと顔を上げると、試験監のアメリアは難しい顔をしながら研究レポートを読んでいる最中で、非常に話しかけづらかった。というか今気が付いたのだが、この人レポートに集中しすぎてまったくこっちのこと見ていなかった。これって、試験監督としてどうなのであろうか。まぁ、不正なんてする気はないのだが・・・・・


 そもそも一時間はこの部屋にいるように言われているので、最低でもあと三十分は時間に余裕があるし、見直しをしたとしても、精々十分もかからないであろう。



 (そういえば答えが二つの問題がありましたね。それの新レシピを簡易レポートとして解答用紙のウラに書いて時間を潰しますか。こっちの方が即効性があって患者の負担も少ないし、何より材料が安いですしね!それに、いい時間潰しになるだろうし、まぁサービスって事で!)



 解答の見直しも一応してみたのだが特に間違えている箇所も無く、予定通り余った時間でレポートを仕上げる事にした。それからサラサラとレポートを書いていたのだが、書き終えてから顔を上げて時計を見ると、丁度開始時刻から一時間経過したところだったので、今度こそアメリアに声を掛けて退出することにした。



「アメリアさん、解答欄が全て埋まりましたので、退出してもよろしいでしょうか?」


「うん?もう二時間も経ってたかい?ごめんね、集中してこれ読んでたから分からなかったよ。って、あれ?まだ一時間しか経ってないじゃないか!?」


「はい。とても楽しめましたし、見直しもバッチリなので問題はありませんよ」


「りょうかい、すごい自信だな。じゃあ、問題用紙と解答用紙をこちらに持ってきて渡してくれたまえ。回収するよ」


「お願いします。後、ちょっと気になったことがあったので、解答用紙の裏にレポート書いておきましたので、もしよろしかったらそちらも読んでみてください」


「おろ?テスト中にレポート作成とは、これまた余裕だねぇ。これはお姉さん、採点が厳しくなるように言っておかないといけないかなぁ?」


「あはは、お手柔らかにお願いしますね。そういえば、実技試験はこの後すぐに開始するんですか?」


「そうだね、筆記試験が終わり次第、ちょこっと休憩挟んでから開始する予定だったんだけど。さすがにこっちが一時間で終わると思ってもなかったから、ちょっと確認してくるから外の廊下で待っててくれるかな?準備が出来次第呼ぶからさ」


「分かりました、それでは外で休ませてもらいますね」


「ごめんね、なるべく早く用意するからさ。ちなみに、次の会場はここの隣の部屋だからね!」


「了解です、それでは失礼します」



 一度お辞儀をしてから荷物を持って、先ほど座っていたベンチに腰掛け一息付く。


 中々の面白いテストにご満悦で、次の実技試験も楽しみで仕方ない。何かしらの薬剤を材料の中から選んで作ると受付の女性も言っていたので、素材から選んで好きに作ってもいいということだろう。


 現在“錬金術師”のスキルも“サブ職業”も何もない状態なのでぶっつけ本番で“マニュアル錬成”をすることになるのだが、ナタク本人はまったく慌てている様子はなく、むしろこの状況を楽しんでいた。



 (せっかくなので選べる中で一番高難易度物を作りたいですね。“自重”は昨日のお風呂でキレイに洗い流してきたので、できるだけぶっ飛んだ物を作りたいなぁ。どんな材料があるんでしょうか?)



 疲れるどころか筆記試験のおかげで更にやる気に満ちてウキウキ気分で待っていると、なにやら隣の部屋から話し声が聞こえてきた。どうやら扉が少しだけ開いているようである。




『あれ?アメリアさん、テストの監督をやってたんじゃないんですか?えっ、もう終わった?諦めたんじゃなくて??しかも全問埋まってるって!あ、ほんとだ。すごっ。


 まだ時間かかると思ったら、私こっちの準備終わっていませんよ?適当にって・・・またギルマスにどやされるのいやですよ私。いっつも、私にまでとばっちりくるんですから!


 ってその箱は違いますよ、そっちですって!あ~後はなんだけ?この包みでよかったのかな?他には、えっと・・・・ってあぁ!アメリアさん、それ私のオヤツなんですから食べないでください!!』



 なんかとっても忙しそうだし、そっとしておこう。


 暫くバタバタと騒いでる音が聞こえた後に、開いたドアからひょこっとアメリアが顔を出し、声を掛けられた。



「ナタク君おまたせ!いやぁ、案の定まだ用意が終わってなくてね、待たせちゃってごめんよ。たった今準備が完了したから、こっちに入ってさっそく試験を開始しよう♪」



 まさか「全部聞こえてましたよ」と言うわけもいかず、苦笑いをしながら部屋の中に入ることにした。


 入り口を抜け中に入ると、ほのかに薬品特有の香りが漂っており、部屋の中のいたるところに錬金術で使用する様々な機材が置かれていた。荷物を床に降ろし部屋の中央に置かれた机の前まで来ると、そこには先ほどアメリアと一緒に準備をしていたであろう少女が申し訳なさそうに立っていた。



「お待たせして申し訳ありませんでした。準備ができましたので存分に力を発揮して頑張ってください、応援しています!」


「いえいえ、そこまで待っていませんですし、大丈夫ですよ。こちらこそ急がせてしまったみたいで、すいませんでした」


「とんでもありません。私がゆっくりしていたのが悪いんです。ほんとごめんなさい!」


「ごほん!会って早々イチャついてるところ大変心苦しいのだが、そろそろ実技試験を始めてよろしいかい?


 あと、リズはさっさとこの答案用紙をギルマスのばあちゃんところまで持っていってくれないか?


 久しぶりの受講者だからって自分が採点するって言ってたから、たぶん首を長くして待ってると思うからさ」


「な!!イチャついてなんて・・・・・はぁ、分かりました。行ってきますよぉだ。アメリアさんのおたんこなす!」



 そう言って、彼女はこちらにぺこりと頭を下げてから、にやにやしているアメリアから解答用紙受け取ると、足早に部屋の外へと出ていってしまった。



「彼女は私の助手のリズベット・スターリングだ。優秀なんだが、ちょっとそそっかしいところがあってね。今回の実技室の準備を手伝ってもらっていたのだよ」


「なんか予定を前倒しにさせてしまったみたいで、申し訳ありませんでした」


「いいんだ、遅れたのはこちらの不手際なんだから、キミは気にしないで試験に集中してくれたまえ。


 それでは、試験内容について説明するね。今回はこの机の上にある材料を使って何かしらの薬剤、あるいはポーションなどを作ってもらう。


 制限時間は三時間、何品でも好きなだけ作ってもらって構わないが、提出するのはその中の一品だけとする。分かっているとは思うが、こちらの試験も持ち込み不可だからね。


 あぁ、後これは待たせちゃったお詫びといってはなんだが、錬成陣を書く道具は特別に私のを貸してやろう。できる限り良い物を錬成してくれることを期待しているよ。


 説明は以上かな。何か質問は・・・・って、なさそうだね。顔に早く錬成したいって書いてあるぞ。


 それでは、試験を開始するよ!」



 さぁ、待ちに待った実技試験開始だ。机の上に広がった様々な材料を相手に一番“ぶっ飛んだ品”は何ができるかを模索していく。大丈夫、時間はたっぷりあるんだ。飛び切り凄い物を作ってみせましょう!






このテストたのしぃ~!(*´∇`)b

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