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第55話  転生7日目1-12

 

 街の正門にあたる中央大通りのゲートしか訪れたことがなかったので、この西大通りのゲートには初めてやって来た。流石に正門であるあちらよりは若干小さいものの、それでも十分に立派だと言える門構えをしている。そのゲートの出入り口付近には先ほど分かれた小隊のPTが待っていてくれており、こちらを発見すると敬礼を返してくれた。



「待たせてすまない。アイテムボックス持ちはすぐに支給されたポーションを受け取り保管してください。それ以外の者も、動きに支障のない程度に受け取っておくように」


「「「はっ!!」」」



 流石は軍隊だけあって統率がしっかり取れている。それにしてもモーリスはだいぶ歳も若いと思うのだが、それでも年上の兵士がちゃんと命令通りに動いているのには素直に感心した。それだけ彼が皆から認められているという事だろう。


 すぐにポーションの受け渡しを終え、ついに街の外へとやってきた。ゲートのすぐ外は舗装された街道になっており、辺りは広大な平原となっていた。先ほど地図を見せてもらったのだが、ここから少し街道を進んだ先に(くだん)の森はあるらしい。


 森もかなり広いのだが目的地付近には良い石材が取れる岩盤地帯となっており、付近に採石場が設置されているため、そこまでの広くはないが、ちゃんと道も敷かれているらしい。そのおかげで、あまり時間をかけずに到着できるようだ。


 森へと向かう途中、街道の反対側から向かってくる行商人達にはぎょっとされたが、彼らが驚くのも無理もないであろう。なにせ完全武装の集団が正面から歩いてくるのだから。ただ、先頭を領軍の紋章をつけた盾を装備しているモーリスが歩いていたので、それに気がつくと今度は頭を下げられた後に応援までされてしまった。やはり、この街の領兵は領民からの信頼も厚く、また人気が高いことが感じ取れた。それだけ領主の敷いている政策がうまくいっているということだろう。兵士達もにこやかに対応していた。


 暫くすると件の森が姿を現し、ここから先は魔物も出没するらしいので注意するようにと言われた。気を引き締めて森に入ったが、今朝アキナの話で聞いた通り、魔物が現れる森にしては随分と静けさに包まれていた。



「噂通り、やはり森が静か過ぎますね。鳥の鳴き声さえ聞こえてこないとは」


「これは確かにおかしいね。ここの場所には良く採取や調査なんかにも来てるけど、ここまで静かなのは経験がないよ。まるで、森自体がなにかに怯えているようだ」


「私も先週こちらに訓練で訪れましたが、こんな雰囲気ではありませんでした。何があっても対応できるように注意して進みましょう。小隊は全方位警戒を!何かあったら直ぐに報告してください」


「「「はっ!」」」



 モーリスの指示の下、辺りを警戒しながら慎重に歩みを進めていると小声でアキナが話しかけてきた。



「先生、これって“あれ”に似てませんか?」


「アキもそう思いますか。俺もなんとなくですが、さっきからそんな気がしてきました。まさか、転生初の戦闘が“あれ”になりそうになるとは、思ってもいませんでしたよ」



 アキナが言っている“あれ”とは、ゲーム時代に各地で度々巻き起こった集団戦闘イベント“レイドバトル”のことだ。ゲーム時代、アルカディアではメインストーリーが無い代わりに不定期でこういった集団戦闘イベントが色々な場所で開催されていた。予告されて始まるものもあれば、こういった突発的に開催されるものも多く、普段のプレイヤーだけのPTだけではなく、現地にいるNPC達とも協力してバトルを楽しむ、結構人気のコンテンツであった。


 ゲーム時代であれば運よくレイドバトルに遭遇できれば一攫千金の大チャンスなので、非常に喜んでいたのだが、これが現実になればそうともいかない。なにせ、突如命を散らす可能性のあるイベントに放り込まれる訳だから素直に喜んでもいられない。


 “レイドバトル”では大体が特別に用意されたフィールドでの戦闘になるので、野外などのフィールドなどの場合、普段出てくるはずの魔物がその期間は出現しなくなるという特徴があったのだが、今の状態はそれに非常に酷似していた。


 こんなことだったら、もっと早く見習いを上げきって戦闘職に着手しておけば良かったとも思ったが、それでも無理にフィジカルを上げる訳にもいかなかったはずなので、結局は間に合わずLv1の状態でここに来ることになっていたと割り切って考えないようにする事にした。今回はサポーターに徹した方が賢明であろう。


 採石場までの道を注意しながら進んでいると、ついに目的地付近まで到着した様だ。やはり魔物との遭遇は無かったので、いよいよレイドバトルの線が濃くなってきてしまった。



「冒険者ギルド職員の情報では、この辺りのはずです。一応採石場には魔除けの結界が張られていたはずですが、今回の相手では効果あるか微妙なところなので警戒は怠らないよう進みましょう。それでは「っ!モーリス、そこの木陰に何かの気配を感じるぞ。注意しろ!」解りました!皆私の後ろへ!」


「待ってくれ!俺は冒険者『サラマンダーの牙』のゴッツだ。武器を収めてくれ!」



 そう言って茂みの中から現れたのは、革と鉄の鎧に身を包んだ数人の冒険者達だった。



「お前さん達がギルドが寄越してくれた増援か。冒険者より領兵達の方が先に来るとは思っていなかったぜ。来てくれて感謝する。現在(やっこ)さんは少し離れたところで食事をしてる最中だ。今現在も、監視を継続中だぜ」


「リマリア軍所属、モーリス・ラングリッジです。あなたが監視任務の隊長でありますか?」


「いや、確かに『サラマンダーの牙』でリーダーをしているが、今日は(あね)さんが隊長だ。ほら、あそこの木の上にいるのがそうだよ」



 ゴッツが指をさした方向に視線を向けると、そこには一度宿屋で会ったことのある少女が望遠鏡片手に木の上で採石場の方を見つめていた。どうやら、アテナは無事だったようだ。



「アテナ!!無事か!!!」



 アーネストが堪らず大きな声を上げてしまうと、アテナは驚いてこちらに気が付いたみたいだ。すぐにモーリスがまた叫びだしそうな彼の口を塞いでいると、彼女は一緒に監視していた仲間に何やら指示を出した後、スルスルと木を降りてこちらまで歩いてきた。どうやらご立腹のようだ。


 なるほど、確かに明るいところで見るとアーネストとアンジュによく似ている。髪色は父親のアーネストと同じ銀髪であり、少し癖のかかった髪をショートへアしていてとても可愛らしい。瞼はこの前会った時同様に眠たそうではあるが、その奥にあるアンジュと同じ色の瞳は獲物を狩る狼の様に爛々と輝いていた。


 若干華奢な体格ではあるが、持っている弓はアーネストと同様の西洋弓タイプなので、この弓を選択しているという事はそれだけ筋力も高いということだろう。服装は、皮鎧の軽装であった。



「・・・・監視任務中に叫ぶってどういうこと。って、あれ?パパとモーリスだ、なんでここにいるの?」


「アテナ~!無事でよかった!!」


「・・・・パパ苦しい、それにお髭痛い。無事も何も監視の依頼をされただけだよ?・・ギルドから何も聞いて無い?」


「アテナ、本当に無事でよかったです。昨夜から自宅に帰られていなかったと聞いて皆とても心配していたんですよ。私達はあなたの捜索任務も兼ねてこちらに来たのです」


「・・・・それはおかしい、私はちゃんと家に連絡してくれるなら指名を受けると言ったはず。さてはあの馬鹿ネコ、また伝えるの忘れたな」



 アーネストのあの様子からして、絶対家族には伝わっていないだろう。脳裏にはあのフィーリアの顔が目に浮かんだ。猫人族はこの街では少ないので、馬鹿ネコとはきっと彼女の事だろう。



「件の虎は食事をしていると言っていましたが、今はどの辺りにいるのですか?」


「・・・・あれ?お客さんまでいる。虎さんは、さっきオークを仕留めて現在お食事中だよ。さっきの声にも反応していなかったら、まだ、食べていると思う。ほら、あそこの木に登れば見えるよ」



 そう言って望遠鏡を手渡されたので、受け取ってから木に登って一度様子を見てみることにした。アテナは現在アーネストの足についてモーリスから説明を受けていた。ちなみに、アーネストはアテナの無事な姿に泣いてしまっていて、受け答えができないようだ。


 木の上に登ると、先ほどアテナが指示を出していた冒険者の女性がいたので、詳しい場所を聞いてみると、どうやら岩陰の辺りで今も食事をしているらしい。


 望遠鏡で覗いて見ると、確かにそこにはかなり大型の虎型の魔物が捕らえた獲物を捕食中であった。姿を良く観察してみると、来る前に説明された通りサンドティガーの特徴を持つ魔物で間違いなさそうである。


 ただ、報告にあった大きさよりも一回り大きくなっていると感じたのと、何より本来持つ柄以外に紫色に光っている模様を見ることができて、漸く異常な回復速度の謎が解けた。


 これは、思っていたこと以上にだいぶ状況が悪そうだ。取り敢えず、監視を再び冒険者の彼女に任せてから下に降りて詳しく皆に説明をしなくてはいけないだろう。まずはアキナと相談しなくては。下まで降りると、アキナも気になっていたのであろう、木の根元まですでに来ていた。



「先生、何か解りましたか?」


「えぇ、しかもあまり悠長にしていられない事態のようです。アキは“希望の書”または“悪魔の魔導書”と言うクエストは受けたことがありますか?」


「はい!私は“悪魔の魔導書”の方を受けたことがあります。って、まさか!あのクエスト関係なんですかこれ!?」


「えぇ、どちらも同じ“魔導書”が関係するクエストなのですが、紫色に光る模様を確認できましたので、どうやら間違いなさそうです。となると、あの虎は元人間と言うことになりますね。


 しかも現在は“変化”の状態で留まっていますが、大きさと紋章から考えてもう少し育ってしまうと“進化”まで状態が進んでしまう可能性があります。どうにか今のうちに仕留めておかないと、後々では手が付けられなくなりそうですね。


 ちなみに、あの“魔導書”が原因となると研究者ないし魔術師が関わっていると思うのですが、どうやら状況判断的に今回はドロモンさんで間違いないでしょう。なので、再生能力はキメラの特性を引き継いでいる可能性が高いですね。


 体内に保有されている魔力(マナ)から無尽蔵に回復されるので、確かに厄介ですが、カラクリが解ったのであれば、対策をして奴の弱点を付けばダメージは入れられると思います。


 それで質問なんですが。アキはこういったレイドバトルではポジションはどこを担当していましたか?」


「私は意外だと思われるかもしれませんが指揮官(コマンダー)を担当していました。情報収集と分析が得意でしたので、いつも任せてもらっていましたね。先生はどこのポジションでしたか?」


「おぉ、それはよかった。俺は遊撃(フリーランス)ですね。侍系統だったのでどうしても敵の近くにいないといけませんでしたから、前線指揮はできてもレイド全体を把握して指示を飛ばすのは苦手だったんですよ。なので、アキには今回もそのポジションをお願いすることになりそうですが、頼めますか?」


「はい!レイドバトルは何度も経験していますし、サンドティガーの特徴や虎型の魔物の挙動もはっきり記憶していますので大丈夫のはずです。任せていただけるなら、精一杯頑張らせていただきます!」



 絶対できると言わない所が好感が持てた。レイドバトルと言っても今の“変化”の状態であれば特殊な特性を持っているだけで、難易度的には難しくないのはずなので、経験者だと言っているアキナに任せてしまって大丈夫なはずだ。後は、上手く指揮権をアキナに持たせてもらうことと、攻略法をみんなに説明しなくてはいけないのだが、どうやら誰かが身体を張って実演しなくてはいけなくなりそうだ。



 ほんと退屈させてくれませんね、この世界は。それでは、転生初のレイドバトルの準備を始めるとしましょうか!


うわぁ~ん、アテナ~。゜(゜´Д`゜)゜。


・・・パパ、うるさい!(*`⌒´*)

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