第54話 転生7日目1-11
クロードの案内で、城内の領兵訓練所までやってきた。そこには既にゲームの頃でいう2PT分に相当する12人の領兵と、それを指揮するモーリスが準備万端といった状態で整列していた。領兵といっても、装備を見るに全てが前衛職と言うわけではなく、後衛の服装をしている者も数多くいるようで、広場にナタク達が入って行くとモーリスは直ぐに気がつき、敬礼をした後に話しかけてきた。
「クロードさん、彼らはいったい・・・。って、アーネストさん!その足はどうしたのですか!!」
「この後旦那様からお話がございますので、詳細はその時に。彼らの事を頼みましたよ、モーリス」
「モーリス、俺も探索に加わることになった。足の事は、特殊な薬を使って錬金術師の彼が治療をしてくれたらしい。とにかく、詳しい話はアテナの無事を確かめてから話そう!」
「はっ!了解しました。この命に代えてもお守りいたします!アーネストさんも、後で家族と一緒に聞きますね」
そういえば、彼とはまだちゃんと挨拶をしたことがなかったので、この機会に話しかけることにする。
(こちらが一方的に知っているのも、何だかおかしいですしね)
「モーリスさん、お久しぶりです。一週間前に街のゲートでお世話になった那戳と申します。あの時は親切にしていただいて助かりました。今日はよろしくお願いします」
「おぉ、君はあの時の青年でしたか!先ほどは服装が違ったので気がつきませんでした。アルマからあの後、同じ背格好の男性が無事に宿屋を訪れてくれたことは聞いていましたが、中々預かり金を受け取りに来なかったので心配していたのですよ。元気そうで何よりです」
「そういえば、あの後ずっと街で活動していたので、すっかり忘れていました。お蔭様で、無事に身分証明書も作れましたので、今度、仮の通行手形をお返しに窺いますね」
「分かりました、お待ちしています。それと義父の足を治療していただき、ありがとうございました。また改めて家族と御礼を言わせていただきます。今日はどうか義妹のためにお力をお貸しください」
「はい、大抵の魔物のことなら殆ど生態から弱点まで解りますので任せてください。必ず無事に助け出しましょう」
挨拶を済ませて待っていると、暫くして領主が建物から姿を現した。
「皆、待たせてすまない。冒険者ギルドに使いを出そうとしていたら、丁度あちら側からの使者が訪れてな。救助のこともあるが、まずは彼女の話を聞いてくれ」
そう言うと、領主の後ろにいたギルド職員の制服に身を包んだ女性が現れた。
(って、彼女も知り合いじゃないですか!)
「“イグオール冒険者ギルド”所属、フィーリア・サークレッドですにゃ!今回お騒がせしている魔物の正体と、大まかな位置をうち所属の冒険者が発見したので是非討伐に協力して欲しいにゃ!って、もう皆さん、すでに完全武装なのにゃ!やっぱり、この街の領兵は皆優秀だにゃ」
(あはは、ほんと今日は知り合いに良く会いますね。随分軽い使者だけど、大丈夫でしょうか?)
「フィーリア殿、さっそく詳しい話を頼みます」
「にゃにゃ!そうでしたにゃ。それではさっそく魔物の種類なのですが、どうやらサンドティガーの亜種らしいですにゃ。ただ、一度戦闘を仕掛けた冒険者の話曰く、『防御力は殆どないが、再生能力が高すぎてダメージが出せない』らしいにゃ。
でも普通のサンドティガーなら結構防御力は高いはずだし、再生能力が高いとは聞いたことがないので、たぶん亜種固有の特徴なんだと思うにゃ。一応、戦闘をした冒険者PTは煙幕を使って戦線を離脱して、現在監視任務を継続中らしいけど、早く助けに行ってあげて欲しいにゃ」
「質問いいですか?個体の大きさと体表の特徴、再生スピードなど解ってたら教えてください」
「にゃ!あなたはこの前のお金持ちのお客様にゃ!!っと失礼、体長は3メートル前後で体表は全体的に黒色の毛並みに紫の模様が入ってるらしいにゃ。色は違うけど柄と特徴がサンドティガーに似ていたから、ギルドとしては亜種として認定したにゃ。それと、その再生スピードにゃんだけど、斬りつけてから数秒で傷口が塞がってしまうそうなので、中々に厄介そうだにゃ」
「アキ、ここまでで何かありますか?」
「そうですね・・・。体長は通常のサンドティガーよりも一回り大きいのと、色以外の特徴が一致しているのであれば、ネームドの可能性が高いと思います。ただ、ネームドだったとしてもそこまで高い再生能を持っているのは不可解ですね。実物を見てみなければなんとも言えませんが、何か特殊なカラクリがあるとして、それさえ解ればダメージを入れられると思います」
「俺の方もこの情報だけだと再生能力の正体を予想できるのは、
1つ、再生特化型のアンデッドの場合
2つ、変身能力を持つ竜種の場合
3つ、何らかの要因で起動した古代文明の機械生命体の場合
4つ、そういった再生能力を意図的に持たせたキメラ型の魔物の場合
ぐらいですかね。やはり、話だけだとこの辺が限界です。一度この目で確かめる必要が有りそうです」
「ほぉ、今の話でそこまで絞り込むことができるのか。流石、自分で魔物に詳しいと言うだけのことはあるな。モーリス、しっかり彼らを守りながら情報を集めてくれ」
「はっ!!了解であります!」
「ちなみに、偵察任務を継続してくれているのは臨時のPTで、『サラマンダーの牙』の5人と『鷹の目のアテナ』が共同で監視しているにゃ!お願いにゃ、早く行って手伝ってあげて欲しいにゃ!!」
「何だと!アテナがそこにいるのか!!!」
「にゃにゃ!!はいにゃ。彼女はこの街の中でも優秀な冒険者だから、昨夜帰りがけのところで声をかけて特別に指名依頼で仕事を請けてもらったにゃ。現在、西の森奥の採石場付近に居るそうだにゃ!」
「どうやら、目的地は決まったようだな。今回は私の親友のアーネストも救助隊に参加する。奴は私と同じ元ゴールドクラスの冒険者だ!皆、動きを良く見せてもらえ!それと、モーリス。今回はお前が隊長だ!現地での采配はお前に任せるが、責任は私が持つ。しっかり活躍して我が領軍の実力を見せ付けてこい!」
その後、細かい連絡事項や我々の紹介、PTの再編などをしてから城を後にすることにした。他に森へ捜索に入っている領兵の人達は、領主が手を回してくれて後で合流させるらしい。ナタク達は先発隊として発見情報があった現地へ向かうことにした。
「っと、そうだ。モーリス!ばあちゃんが錬金ギルドでポーションを用意して待っているそうだから、途中でよってくれないかい?寄らないと後でどやされてしまうからね」
「それは助かりますね。丁度西のゲートから森に入る予定でしたので、途中で寄ることにしましょう。全員では迷惑ですので私達だけで行きましょうか。各小隊はゲート前で待機していてください」
「「「はっ!了解であります」」」
途中で一旦小隊の人達と別れて錬金ギルドへ向かう。ちなみに、今いるPTメンバーは、『ナタク・アキナ・アメリア・アーネスト・モーリス』の5人だ。ナタクとアキナが最初からPTを組んでいたので、そこの中に皆が入る形をとった。どうやらモーリスはアーネストが無茶をしない様にお目付け役と、アメリアが怪我をしないよう必ず守るようにと、念入りに領主に言われていたので、このPTに入ることにしたようだ。
(この人もだいぶ苦労人だな・・・・)
ステイタスボードはプレイヤーにしか見えないので、ナタクとアキナにしか見えていないのだが、自分達以外の三人は中々の強さを誇っていた。特にアーネストとモーリスのステイタスは飛びぬけて高かったので、通常この辺りの魔物だったらこの二人で負けることはまずないだろう。普段はマナー違反になるので人物鑑定はしないのだが、やはりフィジカルが高いとその分ステイタスが高くなるので少し羨ましくなった。
ちなみに、ステイタスボードのPTメンバーの欄には
アーネスト 狩人F:Lv43
モーリス 騎士F:Lv36
アメリア 拳闘士F:Lv25
と表記されていた。勿論ナタクとアキナは見習いF:Lv1である。
ちょっと落ち込んでいると、すぐに錬金ギルドに到着したので、受付まで行くとそこにはミーシャが待っていた。休みだと思っていたのだが、どうやら今日も彼女は出勤していたようだ。
「御待ちしておりました。こちらがギルドマスターが用意するように言われたポーションになります。とは言っても、これ昨日ナタクさんが作ってくれた物なんですけどね。それと伝言で『御代はいいから、無事に帰ってきな』だそうです。ギルドマスターは他の作業が立て込んでまして、こちらには来れないのですが、どうか受け取っていってください」
「ばあちゃんも随分と気前がいいな。ナタク君が作ったってことは、全部高品質の物じゃないか。モーリス、このPTには回復職がいないから、お前は持てるだけ治癒のポーションを持っておきなよ」
「でしたら、こちらも持っていってください。数は少ないですが等級3の物もいくつかありますので」
「いくらヒーラーがいないからといって、これは流石に豪華すぎませんか?私は、今までに等級3の高品質のポーションなんて飲んだことないのですが・・・・」
「『薬は必要な時に使ってこそ』ですよ。それと、一応各自一本は必ず持っていってください」
ある程度ポーションの分配を終えてから錬金ギルドを後にした。結局遠慮がちだったモーリスにも持てるだけポーションを持たせて、後はアイテムボックスがあるメンバーで分けて持ち歩くことにした。残りは小隊の領兵達にでも配ることにしよう。
さぁ、街の外へは転生初日以来ですね。取り敢えずアテナさんはどうやら大丈夫そうですし、いったいどんな魔物がいるのか楽しみにしておきましょうか!
再登場だにゃん!(^・ω・^)♪




