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第48話  転生7日目1-5

 

「まずは此方の等級2『四肢特化型・再生ポーション』について、母上からも言われているだろうが、私からも見事だと言わせてくれ。これほどのアイテムを、君が惜しむことなくレシピを公開してくれたおかげで、救われる者も多いはずだ。これは国を代表してお礼を言いたい、本当にありがとう」


「いえ、これを作った経緯には多少齟齬(そご)がありまして。俺はただ、自分の腕をギルドに認めてほしくて作製した物になりますので、そこまで畏まってお礼を言われてしまうと、正直困ってしまいます。


 ただ、この薬が困っている方の助けになるのでしたら、研究者として(ほま)れに思います。しかしながら、レシピの材料を集める難しさや作製する者の腕を問われるアイテムになるので、まだまだ安定して流通させるには時間がかかりそうなんですけどね」


「確かに、君のレポートを読む限り秘境でのみ入手可能な物や、高位の魔物の素材なども含まれているからして決して簡単ではないという事も理解はできる。だが、いつ発見できるかわからない発掘品の薬を待つよりは、よほど堅実的とも考えられるな。


 しかも、難しいだけで入手が不可能と言うわけでもないのだし。わが国の錬金術師達は他国にも負けないほど優秀と言えるのだから、是非彼らにも力をつけてもらって挑戦してもらいたいものだ」


「そういえば、こちらを領主様主催のオークションに出していただけるそうで。遅ればせながら、ご配慮ありがとうございます」


「いやいや、実はな此方としても助かっておるのだよ。このアイテムは今回のオークションの良い目玉になるであろうしな。しかもこのポーションは高品質であるし、何より薬瓶のデザインが素晴らしい。


 芸術品としての価値もありそうな物なので、貴族達も挙って此方の品に入札を入れることであろう。斯く(かく)言う私もこのアイテムを狙っていてな。大いに盛り上げさせていただくとするよ」


「もし必要でしたら、余っている方のポーションをお譲りいたしましょうか?」


「なっ!・・・・うぅむ。大変魅力的な申し出だが、ここは遠慮しておこう。せっかく競う場を設けたのに、こういう所で主催者の私が欲しい物を優先的に手に入れてしまうのは、自分の中では許せなくてな。正々堂々オークションで戦って勝ち取ることにするよ。


 ただ、もし・・・・いや。すまない、忘れてくれ」


「分りました。無粋なことを言ってしまい申し訳ありません。是非、このアイテムを勝ち取ってください」


「あぁ、そうさせてもらおう!」


「ナタク様、此方のポーションはお返ししておきますね。大変素晴らしい物を作り上げていただいたこと、国民の一人として、私からもお礼を言わせてください。ありがとうございました」


「いえ、それではこちらは持ち帰りますね」



 そう言って、クロードから再生ポーションを受け取ると、そのままインベントリの中にしまっておく事にした。



「ほう、アイテムボックスのスキルかアイテムを持っているのか」


「おかげ様で、買い物などには大変助かっております」



 あえて確言は避けて曖昧に答えておく。今は錬成用の指輪や各種アクセサリーを装備したままなので、いくらでも誤魔化しが利くためである。アイテムボックスの付与されたアイテムは、街の商人達を見る限りそこまで珍しいものではなさそうであるし、この後の交渉のためにも、このようなスキルを所持していることを知ってもらった方が、話がスムーズに進むと踏んでの行動であった。




「さて、それでは君との商談に入るとしようか。君も早くこれの話がしたそうだったしね」


「はい、よろしくお願いします!」


「まず、確認なのだが此方の三つのアイテム『アルカリ石鹸』『シャンプー』『リンス』だったか。此方の商品は君が始めて開発新レシピで間違いないね」


「はい、錬成時に『新レシピ解放』と明記されたので、まず間違いないと思います」


「了解した。それで、このアイテムの独占販売権と利権を今回の商談の品としてこの場に用意されていると聞いているが、こちらも間違いないな?」


「はい。相違ありません」


「うむ、了解した。では、商談に移る前にもう少し質問をさせて欲しい。はっきり言ってこのアイテム達は間違いなく莫大な富を生むであろう物になる。だから、どうしても最初に聞いておきたかったのだ。


 まず、何故これを私に売ってくれようとしているんだ?自分で抱えていた方がもっと利益が得られるだろう。勿論、母や娘からも説明は受けているが、どうしても君の口から一度聞いてみたくてな」



 やはり、彼はこのアイテムの価値にちゃんと気がついているようである。ここは素直に話したほうが印象が良いであろう。



「分りました。それでは信用していただくために、俺の本音を話させていただきますね。


 まず、これらが大きな利益を生むことは俺も承知しております。正直に言いますと、最初は自分でもこれらを知り合いの商人の方の所に持ち込むつもりでいました。その方と組んで販売をすれば、きっと収入面ではもっとも大きく稼げて、贅沢ができたでしょうしね。


 ただ、この方法だと非常に目立つため利権を巡って多くの方から、俺や俺に関わりのある人の命を狙われたり、研究自体の妨害を受ける可能性が考えられました。それに、元々俺は金儲けをするためにここを訪れたわけではなく、ある方と約束をしてこの地へと赴きました。そのことを思い出した時、この方法を取ることは止める事にしました。



 次に、ギルドに此方の製法を公開する方法ですが。確かに、一番楽に名声を得られ確固たる地位を手に入れられる手段になるかもしれません。ですが余計なしがらみも共に多く集めてしまう結果になると思います。ただでさえポーションや薬剤で俺は現在目立っていますしね。


 まだまだ多くの研究を続けていきたいので、できればその様な事態は避けたいのですが、俺には現在特に後ろ盾などもありませんので、その内強欲な考えを持つ権力者達に使いまわされるか、良くて操り人形にされてしまう可能性が高くなります。


 なのでこの方法でも、俺の目的を果たす事ができません。



 では、どうすればこの商品を上手く活用し、尚且つ他の研究を続ける助けに繋がるかを考えたところ。この商品達の利権を領主様に買い取ってもらい、その取引を元に俺達の後ろ盾になっていただくことが一番理想へ近づけるだろうと結論に至り、今回此方の話を持って参りました。皆が声を揃えて“聡明”と言われる領主様ならきっと旨く采配なさると思いましたので。


 これならば、利権は既に領主様にお渡しているので狙われることもなく、また大きな後ろ盾を得られることによって、貴族などのトラブルに巻き込まれるリスクを回避できるようになります。


 このように俺達にとってリスクを回避しながら研究を続けられる環境を整えるのに、領主様との取引が一番都合が良かったのが本音ですね。なので、正直金額に対しての拘りはあまり持っていません。それに、ここで少しでも恩を売ることができれば、次へと繋げることもできますので」



「成程な、ちゃんと考えて私に話を持ってきたことは分かった。これだけ優秀な錬金術師ならば、後ろ盾の件も考えてもいい。して、私に金ではない“お願い”があるとは娘から聞いているのだが、それはいったいなんだ?」


「おぉ、そうだ!私も気になっていたんだよ。しかし、ナタク君は交渉も中々上手じゃないか!私が手を貸す場面が全然なくて、つまらなかったぐらいだよ」


「ありがとうございます、こういう交渉事は、ある事情で慣れていまして。それで、お願いに関してですが、実は二点ほどございます。


 まずは、俺の錬金術における専門分野に関わる話になります。錬金術とはご承知の通り様々な用途で活用できる学門なのですが、俺が今までに特に力を注いでいた分野は、植物における“品種改良”の研究になります。こちらは植物を掛け合わせたり、効果を高めることによって様々な食用作物や薬剤の材料になる草花を生み出す分野になります。


 この分野は本格的に実験をおこなおうとすると、時には広大な土地と多くの人手を必要とする場合が発生いたします。そこで、領主様にはその掛け渡しと、できれば税金のかからない実験作物用の畑を作る土地を用意していただきたいのです。


 それともう一点。こちらはできればでよいのですが、実は俺は以前いた場所で錬金術師以外にも鍛冶師として活動していたのですが、現在の状況ですと炉を持つことができないため非常に難儀しております。そこで、できれば畑の件と一緒に街の近くに炉を設置できる土地と拠点となる建物を融通していただけないでしょうか。畑の方は自分達で耕すことができますので、既存の物にこだわらず、それなりに面積がある土地を用意していただけると助かります」


「金よりも“土地”が欲しいと申すか。それならば、確かに私が適任であろう、理解した。それに人手が欲しいと言ったが、話を聞く限り、別に貴族になって領地を得たいわけではないんだろ?」


「肯定です。できれば貴族にはなりたくないので、領主様の監修の下、実験に協力していただきたいのです。貴族になったら、それこそしがらみにやられて研究が遅れてしまいますので」


「お前は私の娘や母のようなことを言うのだな。まぁ、それだから気に入られているのだろうが。ちなみに、私はこの話最初から受けるつもりでいる。金額としては・・・・そうだな。クロード概算で構わん。領の運営資金から計算していくら出せるか教えてやってくれ」


「畏まりました。これを産業と考えて工事に着手し事業を進めるとして、そこから得られる価値から換算するに、ナタク様に支払える金額は最低でも金貨4000~7000枚程になると思われます。事業が軌道にのれば更にその価値は上がると思われますので、これでもだいぶ安く見積もっていますが、現在すぐにご用意できるのはそれぐらいになるかと」


「ほう、子爵領の平均年収よりも高い金額を安いと言うか。クロード、お前は随分この産業を高く買っているな」


「はい、此方の商品にはそれだけの価値があると思っております。事前にお預かりしていた資料を軽く拝見させていただきましたが、材料を高価な物に変えれば消耗品にもかかわらず、単体で金貨での取引をおこなえる力を持つアイテムになり得ます。


 さらに此方の良いところは、下にも幅が広いことですね。他の材料に変えるだけで、今度は貴族だけでなく一般の民草にも利用できるところが、評価が高くなるポイントとなります。間違いなく先ほどの金額以上の価値があると思われますよ」


「ふむ、そうなると土地をいくらか工面して金額を抑えるとして・・・・実験用の畑と言ったな、それは商業目的ではないということだな」


「はい、そちらは研究中の作物育成に使用する予定です。畑自体も自分で色々改良を加える予定なので、既存のものでなくても結構ですよ。ただ、できるだけ治安のよい場所が理想ですね。魔物や盗賊に邪魔されるのも困りますので」


「となると、領兵の巡回ルート上にあった方が良さそうだな。よし、街の北西の平原付近に領兵の第二訓練所がある。その付近に私が所有する屋敷があるから、そこならば条件に合うだろう、街からも近いしな。視察の時に少し寄る程度であまり使ってもいないが、そこそこ広さもあるから条件には合っているだろう。炉のほうは庭にでも工房を建設させるよう手配もしよう。しかし、鍛冶師でもあるのか君は。後でそちらについても詳しく話を聞かせてくれ。


 それで実験用の畑だが、屋敷周辺はまだ開拓されていないが、平原でそれなりのスペースを確保できるはずだからそこを自由に使ってくれて構わん。それと、もし新しい優秀な作物ができたら是非声をかけてもらいたい。新種の作物の購入を前向きに検討しようではないか。クロード、これでどのくらいの価値になる?」


「そうですね、あそこの建物ですと築年数も比較的新しいですし、城壁の外の土地ですが広いので金貨4000枚相当にはなるかと思われます。残り3000枚を現金で支払うのがよろしいのではないでしょうか?」


「なに?まだそこまで残っていたか。さっきは4000枚と言ったではないか。」


「あれは少なく見積もってです。7000枚でも安い買い物なんですから、ここは器の大きさをお見せになられてはいかがでしょうか?」


「まったく、よし判った。残りは現金で支払おう」



 ここまではかなり順調に交渉が進んでいる。元々領主様も乗り気だったこともあってかなりスムーズに交渉が進んでいったのは嬉しい誤算だ。助け舟を出す気満々だったアメリアもあまりに交渉が順調に進んでいるため、凄く退屈そうだ。きっと『石鹸』や『シャンプー』について熱く語るつもりだったのだろう。もしかすると、だいこん達も要らなかったかもしれないな。そう思っていると、



「ただ、人手や実験の手伝いについてだが、流石に実績もないのに人手を貸し与えるわけにはいかん。そこは成果を持ってきた時に改めて話し合うことにしようではないか」



 前言撤回。やはり、すぐにだいこん達の出番が回ってきたようだ。



 さぁ、お前達。皆の度肝を抜いてやりなさい!!


さぁ、お前達!出番ですよ!(`・ω・´)/

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