第47話 転生7日目1-4
※アレックスの瞳の色を、翡翠のような→ブルーサファイアのような に変更いたしました。
「お待たせしてしまって、申し訳ございませんでした。只今旦那様側の準備が整いましたので、これからお部屋にご案内させていただきたいと思います。お手数ですがもう暫くお付き合いください」
「クロード、あの人は執務室かい?」
「はい、アメリア様。旦那様は先ほどまで街の外で出没しているらしい、大型の魔物についての対策会議をなされておりました。直に錬金ギルドの方にも調査依頼の件でお話がいくと思いますので、その時はどうかよろしくお願いいたします」
「いいのかい?あの人の事だ、私が行こうとしたら全力で止めるだろうに」
「それでアメリア様が止まられないのも承知しておりますので、それならば万全を期して当たって頂いた方が賢明かと」
「流石だね、良く私達のことを理解してくれてるよ」
「ふぉほっほ、ありがとうございます。それではお手数ですが、此方について来てください。旦那様の待つお部屋までご案内させていただきます」
やはり、アメリアとガレットはここの領主と古くからの知り合いで間違いなさそうだ。クロードともかなり親しげであるし、彼の案内で城内の更に奥へと通されと、途中擦れ違う使用人や文官・領兵の方々にまで頭を下げていた。
(アメリアさんは内緒にしたがっていたけど、周りの反応からだいぶ予想がついてきましたね。どうやら彼女は中々の大物な気がしてきたぞ!)
交渉の場で心を乱す要因はできるだけ排除しておきたいので、色々と観察しながら予想を立てて心の準備だけはしておくことにした。しばらく歩くと、漸く目的地の部屋の前に到着した。やはり、大きなお城だけあって移動も大変なようだ。
「此方が旦那様の執務室になります。私は皆様がご到着されてことを伝えて参りますので、ここで少々お待ちください」
クロードはそう言って先に室内へ入っていった。いよいよ領主との初対面である。ここで失敗するわけにはいかないので、しっかりと気合を入れ直す。ふと隣に居るアキナの様子を伺うと、こちらは緊張でガチガチになって震えていた。彼女は、あまりこういった商談の経験などがないのであろう。ナタク自身は結構様々な会社の重役達と仕事柄接する機会が多かったので、今は比較的落ち着いていた。
アキナの頭をポンポンと叩きながら軽く合図を送っておく。
(大丈夫です、きっと上手くやってみせます!)
まもなくしてクロードが部屋の中から出てきて、ナタク達を室内へ招き入れてた。するとアメリアがまず先陣を切ってくれ、それに続いてナタク・アキナ・ガレットの順番で室内へと入っていった。
通された部屋には書物と書類がたくさん詰まった本棚が壁一面にびっしりと並べられ、部屋の奥に設置されている大きな執務机の向こうに、30~40代くらいの男性が此方を見つめながら座っていた。ブルーの頭髪をきれいに刈上げ、厳しそうな瞳はブルーサファイアのような色をしている。肌の張りもそこまで衰えていなかったが、眉間に深く刻まれたシワがこの男性の風格を更に際立たせていた。
顎の辺りには綺麗に整えられた髭を蓄えており、体格も贅沢を堪能して肥え太った様なだらしないものではなく、少し痩せ型ではあるが歴戦の戦士のように非常に鍛え抜かれた身体をしていおり、「この人が領軍の戦士長です」と紹介されたら、素直に信じてしまいそうなくらいの偉丈夫であった。
思っていた人物像とは多少違ってはいたが、皆が揃って彼を“聡明”と評価するのが見た目からも感じ取れるような、そんな威厳ある風格を兼ね備えていた。
「やぁ、父上!今日はナタク君の交渉の手伝いに来たから、よろしくね」
そう、アメリアが領主に向かって話しかける。ここまできたら彼女も隠すつもりはないのであろう。領主の何らかの関係者だとは思っていたが、まさか親子だったとは。覚悟もなしに聞かされていたら、ここで物凄い動揺をしてしまっていたであろう。勿論、今もかなり驚いてはいるが・・・・
「ア・・・・」
領主は、小さく何かを呟くと席を立ち上がり此方にゆっくり歩み寄ってきた。身長もだいぶ高いみたいで、本当に戦士のような見た目の人だなと黙って観察していると、
「アメリア~~~!!毎日忙しいパパのために会いに来てくれたんだな!仕事ばかりにかまけて一緒に居られなくてごめんよ~~!!」
と言いながら、アメリアに向かって大手を広げ、抱きしめようと駆け寄ってきた。体格のおかげで結構な迫力にその場の殆どの人が唖然として動けない中、アメリアだけは予想していたのか、その場で軽いステップを踏むと、綺麗に身体を回転させて領主に向かって渾身の回し蹴りをその顔面にぶちかました。
回し蹴りは見事に領主の左頬にクリンヒットして、彼は空中で二回転してから地面へと落下し、しばらくピクピクと痙攣していた。かなり綺麗に入ったけれど、彼は大丈夫なんだろうか・・・・
(あっ、むくっと起き上がった。思ったより平気そうでよかった)
「クロード!娘の愛が痛い!!」
「当然でございます、旦那様。だからあれだけ自重しろと、散々苦言を申しましたのに。本当にお嬢様が絡みますとポンコツに成り下がるんですから」
「いやですよ、父上。今日は可愛い後輩を連れてきているので、過度なスキンシップはお断りです。それより今日は仕事で来ているのですから、ちゃんと何時も通り領主らしく振舞ってください、まったく。ちなみに、今回は後輩の助っ人で来ていますから、交渉では相手方に付きますのでお手柔らかにお願いします」
「なんだと!!アメリアは今日は私の味方ではないのか!ぐぬぬぅ、ということは承認のサインをすれば私も仲間だよな。よし!クロードすぐに書類を準備しろ・・・ぐはっ!」
(今度はクロードさんに、お盆を使って結構な力で殴らた!?って、さっきまでの風格はどこへいったんだ!!)
「旦那様、いい加減に目を覚ましてくださいませ。あなた様の肩には領地全ての民の未来が掛かっているのですから、お戯れも程ほどにしていただかないと、流石の私も力ずくで止めさせていただきますよ?」
「殴ってから言うんじゃない、殴ってから!んんっ、では改めて。
今日は良く来てくれた。君達がこの街に新たにやってきた凄腕の錬金術師君だな。母と娘から話しはよく聞いている。私がここ“メスティア王国リマリア領、領主アレックス・フォン・ローレンス”だ。一応この国で“公爵”の地位を任せられている。今日は君達に会えて大変嬉しく思うぞ」
色々と台無しな気もするが、取り敢えず挨拶を返すことにした。
「お初にお目にかかります。一週間前からこの街でお世話になっている、那戳と申します。本日は御多忙の中お会いしていただき、誠にありがとうございます」
「私は先生の助手のアキナと申します。私まで御招待いただいて、誠にありがとうございました」
「うむ、よろしく。しかし、アメリアよりも年下と聞いてはいたが実に礼儀正しい子達じゃないか。今日は待たせてしまってすまなかったな。君達に会うのは楽しみにしていたんだが、早急に当たらなくてはならない仕事が舞い込んできて、それの対応に時間を割かねばならなく、面会が遅れてしまったんだ」
「いえ、時間を作ってお会いしていただけでも有り難いです。今日は商談も用意させて頂いておりますので、どうぞお手柔らかにお願いします」
「うむ、あの三種類のアイテムの事だな。勿論話しは聞いている。ではさっそくといきたい所だが、まずはポーションについて話をさせてくれ。性格上順を追って物事を決めていかないと気がすまない性質でね。申し訳ないが、此方に付き合ってくれるかな?」
「はい、それではお願いします」
「では話を始めよう。とは言っても、立ち話でする様なことではないので此方のソファーに腰掛けて話をしようではないか。クロード、お茶と例のものを至急持ってきてくれ」
「畏まりました。すでにご用意させて頂いておりますので、暫くお待ちください」
そう言ってクロードは部屋の奥へと下がっていった。ナタク達もこのタイミングでソファーのあるエリアへと移動した。席順はアメリア・ナタク・アキナの順に座り、向かいにアレックスとガレットが座った。
「アメリア、せめて私の隣に座らないかい?パパは寂しいぞ・・・・」
「今日は交渉側に付くと先ほど言ったではありませんか・・・・。それより、ナタク君。なんでそんなに平然としているんだい?私、公爵令嬢だったんだよ!?そこまでスルーされるとドッキリを用意した側としては、実につまらないのだよ!」
「いえ、勿論驚いてますよ。ただ領主様と親しい間柄なのは道中でだいたい予想は出来ましたし、王様に意見できる立場と言いますと、結構限られてきますからね。その時点で公爵・侯爵・辺境伯のどれかだと当たりをつけていました。しかし、まさか一番位の高い公爵様だったとは。というか、公爵令嬢の普段着があの格好なのは、いかがなものかと思いますよ・・・・」
「むぅ!つまらない!!もっと『えぇ、アメリアさんが公爵令嬢だったなんて!俺はなんて人に恋焦がれていたんだ!!』ぐらいの反応が欲しかったのに!ぶぅぶぅー」
「お願いですから変な捏造やめてください!領主様に物凄く睨まれているじゃないですか!?」
「キミは・・・・随分と家の可愛いアメリアと親しげだな。もし手を出したらどうなるか・・・・はべし!」
「なに自分の子供の冗談を真に受けているんだい!明らかにアメリアが坊主をからかっているだけじゃないか!娘絡みになるとほんとポンコツになる癖、いい加減に治しな!!まったく」
「母上、あまり人の頭をガンガン殴らんでください!唯でさえさっきからダメージを負って痛いんですから」
「自業自得さね。それより交渉の方をはよ進めんかい!ワシはこの後も仕事が詰まっていて忙しいんじゃ!!」
内容はともかく、アメリアのおかげでだいぶ場は和んでいった。一応、もっと重い空気の中でも大丈夫なように色々プレゼンの準備を用意していたので、この誤算は正直有り難かった。そうこうしているうちに、クロードがカートにお茶のセットと再生ポーションの入っている薬瓶を持って戻ってきたので、ここからが交渉の本番である。
さぁ、ついに待ちに待った第一ラウンドの開演です!!
驚かないの、つまんない!ヾ(*`Д´*)ノ
あはは・・・(´・ω・`;)




