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第46話  転生7日目1-3

 

 全員でギルド本館一階まで降りていくと、職員が数名お見送りをしてくれた。どうやらガレットへ渡す仕事のついでであったようだ。


 領主が用意してくれた馬車は、立派な毛並みの馬を二頭立てにした、少し大きめの馬車であった。外装も白を基調としたデザインになっており、細部に(わた)り職人による丁寧な彫刻が施されている。素人目には美しい馬車なだけに見えるだろうが、これが馬車の形をした魔導具であり、各所に目立たぬよう様々な魔導回路が仕込まれているのを、魔導具作りに長けているナタクはそれを見抜いていた。


 ただ、馬車を鑑賞するふりをしながら軽く回路を確認してみたところ悪い物ではなく、寧ろ防御面や乗り心地に対する工夫であったため、特に騒ぐこともなく大人しくしていることにした。御者(ぎょしゃ)の方に挨拶をして順番に中に入ると、内装も職人の拘りを各所に伺える、素晴らしい造りになっていた。



「まったく、この話が終わったらすぐに帰ると伝えておったのに、わざわざ出掛けに追加の仕事を押し付けおって。ワシはこれから他の仕事に行くというのに、なんて奴らじゃ!」


「まぁまぁ、今日が査定の締め切りだからしょうがないよ。そのせいで、彼らだって通常の決裁の書類が貯まって困ってるんだから大目に見ておやりよ。私達が早く商談をまとめて帰ってくればいいだけの話なんだからさぁ。まぁ、その書類を見る感じ、ばあちゃんは昼食はお預けでとんぼ返りになりそうだけどね」


「なんか忙しい時期に無理をさせてしまって、申し訳ありません」


「坊主が謝ることじゃないよ。運悪く都合が重なってしまっただけなんじゃから、気にするでない。それよりも、交渉中にあんまり無茶なことだけはしでかさんでくれよ?ワシはそっちの方が心配じゃ」


「・・・・アキ見てください!小さい子供が手を振ってくれてますよ。やはり大きい馬車は目立ちますね!」


「ばあちゃん、ナタク君が何もしないわけないじゃないか!信用しておやりよ、この顔は絶対何か企んでいる顔だよ」


「そんな信用したくないわい!」


「あはは・・・・ガレットさん、がんばです!」


「それにしても、随分といい馬車を手配してくれましたね。造りもいい物ですし、揺れもまったく感じません」


「あぁ、確かにのぅ。この馬車も括りで言えば魔導具じゃな。揺れの軽減と室内の温度調節、更に外部からの攻撃に対する防御機構も備わっておる。要人警護用の特別仕様といったところじゃな。中から鍵をかければ数時間は鉄壁の要塞と化すじゃろう」


「なるほど、しかし随分と詳しいですね」


「この馬車もばあちゃんの功績だからね。今じゃこの国の王侯貴族は勿論、外国の王族すらも愛用している代物さ!」


「そんな凄い馬車に私達が乗ってもいいのでしょうか・・・・」


「あぁ、問題ないじゃろ。というか、この馬車は坊主達というよりアメリアのために領主が用意したと思うから、気にせんでええ。昔っから、あいつはアメリアには甘かったからのぅ」


「「アメリアさんって、いったい・・・」」


「ふっふふ!それは秘密さ。それよりも、ほら!だんだんと城が見えてきたよ。あれが領主が住む“セシリア城”さ。観光名所としても有名で、この街に来たなら一度は是非眺めてもらいたい場所の一つだね」


「随分と立派なお城ですね。遠目からは何度も見たことがありましたが、ここまで近づいたのは初めてです」


「この城は初代領主が亡き妻を想って建てられた城じゃ。彼女が亡くなるまで二人は大層仲むつまじかったらしくてのぅ、未来永劫彼女の事を決して忘れぬようにと、彼女の名と好きだった純白の花をイメージして残りの生涯を掛けて拘り抜いて造られたんじゃ。ほれ、あそこに花の紋章が見えるじゃろ。あれがこの領主の印でもあり、彼女が愛した“セシリス”という花でもあるんじゃ」



 目の前に(そび)え立つ純白の城は確かに気品を感じるデザインをしており、初代領主の想いが伝わる素晴らしい完成度を誇っていた。まだ城壁の外にいるため詳しくは分らないが、きっと内部もかなり手の込んだ造りをしているのであろう。職人としては分野は違えど是非拝見して、その一流の職人が作り上げた技術の一端をこの目に焼き付けて帰りたいものである。



 城を眺めている間にも馬車は進み続け、いよいよ城門の前まで到着した。御者と領兵の方が軽くやり取りをした後、そのまま再度馬車は敷地内へと進み、暫くして建物正面の入り口付近で停車した。門からここまでもかなりの距離を有していたので、やはりこれだけ大きい街の領主だけあって庭園すらも桁違いの規模を誇っているようだ。


 感心しつつも先に馬車を降りて他の人達の手を取って下車を手伝っていると、建物の入り口付近で初老の男性と数名のメイド達が頭を下げて出迎えてくれているのに気がついた。



「ようこそいらっしゃいました。(わたくし)は旦那様より執事筆頭を任されております、クロード・ウィンチェスターと申します。本日は私が皆様の案内役を仰せつかっておりますので、どうかよろしくお願いいたします。ナタク様、アキナ様は初めましてですね、以後お見知りおきを。ガレット様、アメリア様もようこそお越しくださいました。旦那様も大変喜ぶでしょう」


「ご丁寧にありがとうございます。俺は那戳(ナタク)と申します。本日はよろしくお願いします」


「アキナと申しましゅ・・・・・先生の弟子をやらせてもらっています。今日はよろしくお願いします」



 (噛んだな・・・。アキ、頭を深く下げているけど耳まで真っ赤ですね。アメリアさんに至っては耐えられずに噴き出しているし)



「大変素晴らしい方達とお伺いしております。それでは中へご案内いたしますので、どうぞ此方へお越しください」



 (流石執事!華麗にスルーしてくれた。しかし、この人かなりの身のこなしだな・・・・)



 動きにまったく無駄がなく、立っているだけでとても品がある。白髪の混じった髪をオールバックに固め、着ている燕尾服にはシワなど一切なく、びしっと着こなしている。顔はとても優しそうだが、身体のシルエットから非常に鍛えられているのが感じ取れ、きっと戦闘面でも領主の護衛などを勤めている人なのであろう。


 クロードの案内で城内の奥へと進み、二階の“ある応接室”へと通された。室内にはかなり高そうな落ち着いた雰囲気の家具が設置されており、それだけであれば普通の応接室なのだろうが、その中でも異彩を放っていたのは壁に飾られた様々な武器達だ。ナタクも様々な武具をこれまで作ってきたが、中々のコレクションのセンスに、少し見て回りたい衝動に駆られてしまった。



「旦那様は只今別件の職務中のため、もうしばらく此方でお待ちください。すぐに、お茶とお菓子をお持ちさせていただきますが、何か苦手な物などはございませんか?」


「いえ、特にはありませんのでお任せします」


「わ!私も大丈夫です!」


「承りました。それではしばらく此方でお寛ぎ下さいませ」


「クロードさん、待っている間に此方の武器を拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」


「はい、構いませんよ。ですが、真剣の物も含まれますので取り扱いにはくれぐれもご注意ください。こちらは旦那様の趣味で集められた、様々な国々の珍しい武器になるそうです。


 それでは、私は一旦失礼させていただきます。もし何か御用がございましたら、此方のメアリーにお申しつけください」


「メアリーです。どうか、よろしくお願いします」



 そう言ってクロードは部屋を後にしていった。代わりに紹介されたメアリーというメイドがナタク達のお茶を用意してくれるようだ。



 (それよりも、今は壁にかかっている武器に興味津々です!しっかり、この地域では珍しい刀まで置いてあるのが凄いですね。メイン鍛冶師としては、ここは宝の山かもしれません!)



 さっそく一人でそちらの武器を眺めていると、お茶を持ったアメリアが近づいてきた。



「ナタク君は武器に興味があるのかい?」


「はい。ですが、どちらかと言うと扱うより作る方にですけどね。これでも向こうでは鍛冶師としても活動してましたので、余裕ができれば此方でも槌を振るいたいものです」


「おぉ、アキナ君もそうだけど、キミも錬金術師以外にも得意な分野があるのだね」


「俺の場合は、最初鍛冶で新しい金属を扱いたくて錬金術を学び始めたのですが、いつの間にか同じくらいのめり込んでしまっていましてね。おかげ様で、どちらもメインと言って差し支えないほどの知識を得ることができました。


 ただ、此方ではまだ炉の関係で鍛冶に手を出すことができないので、今日の交渉でその辺もお願いするつもりなんですよ」


「あぁ、確かにドワーフ連中は頑固で中々自分達以外の仕事を認めようとしない者が多いからね。一旦仲良くなれば親友のように接してくれるが、確かに新しい土地ですぐにとは難しいだろうね」


「それだけ彼等の技術力が高いということもあるんですけどね。なので、最初はギルド登録はせずに自分の工房を持つことを目標にしています」


「私からのアドバイスをするとすれば、良質の鉄と、とにかく度数の高い酒を樽で幾つか持って挨拶に行くといいよ。彼らは仕事と酒が大好きだからねぇ。きっと歓迎されると思うよ」


「えぇ、そちらも既に考えています。ですから、まずは今から始める交渉を無事成功させねば!錬金術もまだまだやりたいことがたくさんありますからね。そのためにも、今日は頑張らせていただきます」


「あはは、キミが本気で頑張ったら凄い結果になりそうだから楽しみにしてるよ。しかし、あの人はまたこんな部屋にお客を案内して・・・・。ちなみに、この部屋が気に入ったのなら、ナタク君と領主はかなり相性がいいと思うよ。


 なんていったって、彼の趣味は武器コレクターだからね。しかも、飾っているよりもそれを巧く扱える部下に持たせるのが好きなんだ。だから、うちの領兵の隊長格達は皆、結構変わった武具を装備している者が多いんだよ」


「成程、宝飾が多い物やレアリティの高い物より武器の種類に趣を置いているからこそ、この部屋の武器達は等級がまちまちなんですね」


「あぁ、でもこの部屋にあるのは特に癖の強い物ばかりだけどね。領主曰く『武器は使ってこそ価値があり、等級が低かろうと良い物は良い!』そうだよ。できるだけ色々な武器を持たせて、その人の適性を見出すのが、堪らなく楽しいらしい。


 まぁ、使用者の腕についていけなくなったら、何かのお祝いだとか言って、また鍛冶師に新しい物を作らせて渡してるみたいなんだけどね。私には解らない世界だよ」



 ほぼ全てに適性のあるプレイヤー達とは違い、自分に合った“職業”を見つけ出さねばならない彼等にとって、この考えはある意味有り難いかもしれない。何せ色々な武器を試せるならば、それだけ“職業”選択の幅が広がるのだから。もし上手く自分の特性を見出すことができれば、今後の成長率は大きく伸びることになるのだし。


 ゲーム時代にもNPCノンプレイヤーキャラクターに稽古をつけるクエストで、確かこんな感じで色々試させたことがあったな、とナタクは壁にかかる武器を見ながら思い出していた。


 こんな会話を楽しんでいると、それなりに時間が経っていたようで、クロードが領主の準備が整ったとナタク達を迎えに来た。どうやら領主は現在執務室に居られるそうで、ナタク達を今からそこに案内してくれるようだ。



 さぁ、いよいよ待ちに待った交渉のお時間です。楽しませていただきましょう!


ふふ~ん♪(*´∀`*)


アメリアさんって、いったい!?( ̄□ ̄;)

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