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第45話  転生7日目1-2

 

 お米様のサプライズとして新鮮なだいこん達もしっかり用意ができたので、これで準備は整った。それでは、ガレットの執務室へ向かうとしよう。アキナと一緒に部屋を出て、ギルド本館の長い階段を上っていく。今日は錬金術師の服装で交渉に臨むつもりだ。



「そういえば、ガレットさんとアメリアさんも一緒に来てくれるんでしたっけ?」


「えぇ、昨日そう聞きましたね。口添え人として参加するって言っていましたよ。あの二人が一緒なのは心強いですね」


「確かに。しかもギルドマスター自ら売り込みを手伝ってくれるなんて、これ凄いことなんじゃないですか?」


「交渉相手が領主様ですからね。もしかしたら、俺が無茶をしないように監視するのためという事もありそうですけど」


「あはは・・・十分にありえますね。てか、だいこんで無茶するつもりですから、ほぼ正解ですよね?」


「止められても困るので、だいこん達のことはギリギリまで秘密にしておきましょう。絶対領主様は食いつくはずなので」


「はい・・・・。それでしたら私はガレットさんの胃に穴が開かないよう祈っておきます」


「その時は、特製ポーションをプレゼントしますよ」


「あはは・・・・、ガレットさんふぁいと!」



 そんなこんなで、ガレットの仕事部屋の前まで到着した。魔導具を操作すると『在席中』と表示が出たので、インターフォンを鳴らし一言『ナタクです』と伝えると、すぐに部屋の鍵の解除音が聞こえた。扉を開けて部屋の中に入ると、既にアメリアもこちらに来ており、膨れっ面でソファーに腰掛けていた。



「お二人ともおはようございます。申し訳ありません、お待たせしてしまいましたか?」


「あぁ、おはよう。まだ時間にはなっていないさね」


「ナタク君、アキナ君聞いてくれたまえ!今日は何時もの格好で行こうと思っていたのに、ばあちゃんが駄目だと言うんだ!こんな窮屈な格好で一日過ごすのは嫌なのに!!」



 アメリアの格好は確かに普段と違っていて、上半身は白いブラウスに茶色いベストを着込んでおり、その上に何時もの白衣を羽織っている。さらに、いつもまぶしい生足を出していたホットパンツは黒の七分丈のボトムスへと変わっていた。ただ、ブラウスとベストの丈は両方とも短くヘソ出しは健在であり、ボトムスも一応ベルトで止められてはいるが、ボタンが外されていたため、何時もとはまた違った色気をかもしだしていた。



「後輩の二人がこんなしっかりした格好をしているのに、お前はまだそんなことを言うのかい!今の格好だってワシは認めたくないんじゃぞ!」


「だって、色んな箇所が窮屈で動きづらいんだよ。せめてシャツのボタンくらい外してもいいじゃないか!」


「それだと何時もの格好と変わらんじゃろ!どうせ半日なんじゃから我慢せい!!」


「ぶぅーぶぅー!」


「あはは・・・・アメリアさんが膨れてたのはそういう理由でしたか・・・・」


「そうだよ。店で売っている服は基本サイズが合わないし、仕立ててもらってもすぐに胸の辺りが窮屈になるから、こういった服は嫌いなんだ。みんな、よくいつもビシッとした服を着ていられるのが、私には不思議でならないよ!」


「あのぉ、それなら今度、私が洋服を仕立てましょうか?問題を解決できる服に幾つか心当たりがありますので」


「本当かい!そういえば、二人の服はアキナ君が仕立てたんだったね!うんうん、是非頼むよ!そうしたら、私もこんな可愛らしい服が着れるって事じゃないか!!」


「まったく同じ物も作れますけど、アメリアさんにもっと似合いそうなタイプの服も幾つかありますので、今度絵を描いて持って行きますね!」


「あはぁ!それは凄く楽しみだね、急にやる気が満ちてきたよ。今日の交渉は任せてくれたまえ、素晴らしい結果になるように全力でサポートして見せよう♪」



 (あはは・・・・、アキって凄いですね。一気にアメリアさんのやる気を回復させてしまった。しかも、ちゃっかり顧客ゲットまでしてるし、もしかして向こうではやり手のデザイナーさんだったのかもしれませんね)



 アキナの方を見るとこっちはこっちでやる気に満ちた顔をしている。どうやらこれは、単純に洋服を作りたいだけだのようだ。



「お前さん達、朝から元気じゃのう。アメリア、機嫌が直ったんならお茶でも入れてきておくれ」


「了解!すぐに美味しいのを用意してこようじゃないか」



 そう言ってアメリアはご機嫌に奥の部屋に向かって歩いていった。ナタク達も立ち話もなんだったので、ソファーに腰掛ける事にする。



「そういえば、ガレットさん。眼の方はあれから大丈夫ですか?二人の邪魔になると思って、昨日は途中で退室させてもらったのですが」


「だから気が付いたらおらんかったのか。あぁ、久しぶりにこんなにクリアに世界が見れて驚いておるよ。若干明るすぎると思ったが、直に慣れるじゃろうて」


「やはり、薬の効果は問題なかったみたいですね。しかし、これで錬金術師の世界でのアメリアさんの評価はだいぶ高くなるのではないですか?」


「今回はお前さんとアメリアがうちで大きな成果を上げたからねぇ。どちらか、もしくは両方に王都の錬金ギルドからのお誘いがありそうじゃな。ワシがこのギルドの長を務めて一番大きな功績じゃて、期待して待っておるとえぇ」


「前にも言いましたが、王都での研究にあまり興味がないので、誘われても行きませんけどね。アメリアさんも同じじゃないですか?」



 ナタクはタイミングよくカートを押しながら戻ってきたアメリアに、そう問いかけてみた。



「もちろん、移動する気はないね。ここ環境で十分満足しているし、あんな老いぼれの巣窟、誰が好き好んで行くもんか」



 そう言って、淹れたてのお茶をみんなに振舞ってくれた。



「分かった、もしそのような話がでたらワシの方で断っておくとしよう。二人とも本当にいいんじゃな?」


「「もちろん!」」


「かっかか!王都の自信家の爺共が目を丸くする姿が目に浮かぶわい!査定結果の資料を、王都の錬金ギルドに提出しに行くのが楽しみじゃの!」



 ガレットも、とてもイキイキとしている。よほど二人の残留の意思が強いことが嬉しいのか、はたまた王都の錬金術師達のプライドをへし折ることができることかは、定かではないが。



「そういえば、先ほどアキから聞いたのですがドロモン研究員と連絡が取れなくなっているとは本当ですか?」


「あぁ、坊主もその話を知っておったのか。どうやら一昨日ギルドを出たのを最後に消息が途絶えたそうじゃよ。今日が査定締め切りの最終日だというのに、新しい研究資料も届けられてはおらんから、ちと気になっておったんじゃ。


 てっきり、あやつなら研究をでっち上げてでもゴールドクラスにしがみ付くと思ったんじゃがな。噂じゃと、森に出た魔物に襲われたのではないかと言われておるしのぅ。ほれ、これが昨日届けられたあやつのギルドカードじゃ」


「血液なのかな?赤い液体がついた形跡がありますね」


「昨日、私の方で分析してみたけど、どうやら人間の物ではなくて魔物の血みたいねぇ。大方キメラの研究を森の中で行って、何らかの事故に巻き込まれたんじゃないかと私は思っているよ」


「ただ、これが落ちていた場所はかなり酷い有様だったらしいからね。一応後で領軍と冒険者の護衛の下、職員で調査に向かう予定さね」


「私も護衛で行くけど、ナタク君達も分析ができるなら一緒に来るかい?」


「気にはなりますけど、まずは領主様との交渉が第一ですかね。それが終わってから考えます」


「まぁ、そっちは問題ないと思うけどね。あの人がこの話を蹴るとは到底思えないし。ねぇ、ばあちゃん?」


「確かに。もし蹴ったらあやつの偽者を疑った方がええのぅ。ワシも蹴るという行為が想像できん」


「お二人は随分と領主様に詳しいですが、結構親しい間柄なのですか?」


「なんじゃ、坊主は知らんかったのかい?ワシとアメリアは「ばあちゃんストップ!!せっかくだから黙っておこう!」なんだい!いきなり大声を出して!」


「ナタク君、その話しは領主に会えば解るから、それまでは秘密にしておくよ。きっと驚くから楽しみにしていたまえ♪」



 (なんだろう?凄い気になる・・・・


 そういえば、アキがさっきから随分と静かだけど、どうしたんだろうか?)



 そう不思議に思って、横に座っているはずのアキナの方に目を向けると、何やら楽しそうに紙にアメリアの服の絵を書いていた。絵を見てみるとすでに何枚か書き終えており、まだまだデザインが溢れているみたいで黙々と作業に没頭しているようだった。自分が言うのもなんだが、こういう所はアキナも十分研究者へ向いているのではないだろうか。


 アキナをそのまま眺めていると、他の二人もナタクの視線に気がついたのか、彼女の方をジッと見つめている。暫くして、漸く皆に見られていることに気が付いたアキナは、かなり大げさに驚いていた。



「うわぁ!皆さんどうしたんですか??」


「いや、集中してるなと思いまして、しばらく観察させてもらっていました」


「何をしてるのかなと思ったら、さっそく絵を描いてくれていたんだね。見てもいいかい?」


「あぅ。それなら声をかけてくださいよ・・・・。絵の方は構いませんよ。まだラフ画ですけど、気に入ったのがあったら言ってください。それを元に本格的に仕上げてお見せしますので!」


「おぉ、どれも可愛いじゃないか!迷ってしまうね。って、こっちは格好良い系の服だね。これも中々に捨てがたい!」


「ほぉ、器用なもんじゃな。ここまで絵が上手いと嬢ちゃんの書くレポートも読んでみたくなるのぅ。坊主や、今度何か題材を与えてこの嬢ちゃんにレポートを書かせてみぃ。きっといい物を仕上げてきそうじゃて。出来栄えによって、そのままブロンズに上げてしまってもいいしのぅ」


「本当ですか!是非やってみます。先生、色々教えてくださいね」


「分りました、それでは今日帰ってきたら何かいい題材を見繕っておきますね。ちなみに、あくまでアキの研究になりますから、ヒントは出しますが、すべては教えれませんからね」


「はい!頑張ります」



 と、丁度話が終わったタイミングで、部屋に来訪を告げるベルが鳴った。どうやら部屋に来たのは職員の方のようで、下に馬車の迎えが着いたのを知らせに来てくれたようだ。



 さぁ、皆のやる気も十分整いましたし、それでは出陣と参りますか!!





ぶぅ~ぶぅ~(*`3´*)



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