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第34話  転生6日目1-1

 

 やはり、しっかりと睡眠を取ると違うようで、昨日のあのダルさが嘘のように消え、スッキリとした目覚めにご満悦のナタクであった。


 流石に疲労が溜まった状態で錬成を続けていると集中力も乏しくなり、昔は良く仕事で疲れて帰ってきた時なんかに失敗を繰り返していたのだが、この若返った身体のおかげで、何とか昨日は魔石を割らずにカッティングができたのだろう。


 ちなみに、昨夜は気が気付かなかったが、部屋の机の上に昨日洗濯に出した服が綺麗に畳まれて置いてあったので、ありがたくそれに着替えさせもらった。


 休息の大切さを感じながら部屋の外に出ると、丁度アキナも部屋から出てきたところだったので、二人で顔を洗いに行き、そのまま食事に向かうことにした。



「昨日は流石に疲れてたらしくて、湯船で眠りそうになって溺れかけてしまいましたよ。帰ってきてからも全然記憶がないので、たぶん部屋に入ってから五分もしないで眠りに落ちていました」


「私も似たような感じですね。お風呂から出て髪が乾く前に眠ってしまって、起きたら寝癖がすごいことになっていて、クシで直すのに時間がかかりましたよ。でも、今日はしっかり寝れたので、これならいい仕事ができそうです。目もばっちり覚めていますしね!」



 もはや指定席になりつつある二人席で食事をしながらアキナと話していると、給仕の合間にアルマがこちらにやって来て、気になる情報を教えてくれた。



「お二人とも街の外に出る用事ってありますか?なんでも西の森に大型の魔物が現れたらしくて、冒険者ギルドで現在調査が行われているらしいので、なるべく近づかない方がいいですよ。アテナも駆り出されているらしいんで、詳しいことが分ったらまたお教えしますね」



 そう言って、アルマはまた給仕の仕事に戻っていった。



「先生、西の森ってすぐそこですよね。あそこって初心者が狩りをするような場所だから、大型の魔物なんていなかったと思うのですが。何か分ります?」


「いや、俺も分りませんね。ゲーム時代でもあそこに大型の魔物が出るなんて話は、聞いたことがありませんので。もしかしたら、どこからか迷い込んできたのでしょうか?」


「う~ん、何がいるのか気になりますねぇ。ゲームでしたら真っ先に調べに行ってそうな案件なのですが・・・・」


「『好奇心はネコをも殺す』と言いますし、今は止めておいた方がいいと思いますよ。ゲーム時代ならいざ知らず、今はまだ見習いのペーペーですからね。わざわざ危険に顔を突っ込むことはないと思いますよ」


「それもそうですね。今は上忍ではありませんし、何より戦闘系スキル1つも持っていませんからね。大人しく錬成に集中することにします」


「そういえば、実験室に行く前に一ヶ所寄りたいところがあるのですが、一緒に来ますか?たぶん、黙って行くとアキに怒られる用事になりそうなのですが・・・・」


「それを聞いたら一緒に行くしかありませんね。ちなみに、どちらに行かれるのですか?」


「彫金細工で使いたかった金属があるのですよ。ただ高価なので買おうか迷っていたのですが、昨日『便利系魔導具』用に磨いていた魔石がうまくいったので、せっかくなので高品質を狙おうかと思いまして。それと指輪のグレードも上げないとですしね」


「指輪の件は冗談なので気にしなくてもいいのですが、そっちの魔石を使った魔導具は気になりますね。金属って結構な量を買うんですか?」


「いえ、1kgも使いませんので量は問題ないのですが。一応貴重な金属になるのでお値段が張るのですよ」


「先生が躊躇する素材ってのが恐いのですが、一体何を買うつもりなんですか?」


「それは、異世界定番の貴金属『ミスリル』です!」



 『ミスリル』はこのアルカディアの世界に存在する鉱石の一つである。魔力と親和性があり、特に魔法を使う職業に人気の金属であるが、扱いが非常に繊細で加工難易度が高いため、腕利きの職人でないと扱うことのできない素材として有名であった。


 また、採掘量が金よりも少ないため値段も高く、ナタクもまだ必要性を感じていなかったため買うのを見送っていたのだが、確かに性能面でかなり優れた素材で、高品質のアイテムを作製するにはもってこいなので、せっかく魔石の研磨がいい感じに仕上がったので挑戦してみたくなったのだ。



「ミスリルですか、それはまたお高いアイテムの名前が出てきましたね。いくら分くらい買う予定なんですか?」


「昨日素材屋でちらっと見かけた物で1kgでだいたい金貨30枚でしたね。たぶん素材屋のインゴットでの最小単位があれになりそうなので、買うならその値段を覚悟しなくてはなりませんね。まぁ、たぶん今回は2人分でも半分以下しか使わないんですけどね。鉱石の状態で購入できればもう少し安く、更に少量で買えるのですが。あいにくと、今は専用の炉がないんですよ・・・・」


「流石のお値段ですね。てか、だんだん先生鍛冶関係をやりたくて禁断症状でてませんか?」


「分かりますか?アキが楽しそうに裁縫師の仕事をしてるのを見ていると、無性に私も鍛冶仕事がしたくて堪らなくなってきましてね。よくよく考えると、もう5日も鍛冶用の槌を握ってないので、ゲーム時代だったら考えられないことですよ。


 もう、いっそうのことどこかの山に掘っ立て小屋でも建ててしまって精錬炉を作ってしまおうか、少し真剣に悩んでいるくらいでして・・・・」


「あはは・・・確かにメインの職業って思い入れがありますしね。分りました、ミスリルには私もお金出しますので、せめて彫金細工の槌で我慢してください」


「いえ、お金はあるので結構ですよ。ただ、無性に難易度の高いアイテムを作りたくなっただけですので」


「そういうわけにはいきません。いつもお金を出してもらってばっかりなので。しかも、私のアイテムも作ってもらうんだから、そこは素直に受け取ってください!」


「そ・・・そうですか?別にすぐに稼げるので問題はないのですが。分りました、それではアキにも少し出してもらって、さっそくアイテムを作ってしまいましょう」



 さっそく二人で西大通りの素材屋に向かうと、途中で結構な数の冒険者と道ですれ違った。



「冒険者の方達が結構いますね。皆さん西大通りに何しに来ているのでしょうか?」


「たぶん、朝の話関係じゃないですか?ここはポーションやら薬剤が安く買えますからね。準備をして森に入るのだと思いますよ」


「成程、そこで私達が作ったポーションが活躍するのですね」


「たぶん、ギルドの販売担当職員が今頃凄い事になってそうですね。ミーシャさんとかも駆り出されてそうです」


「ありえそうですね。私達も早く装備を更新して、ポーションの在庫を増やしてあげませんとね」


「ですね。あっ、ここが『ミスリル』が置かれていたお店になります」


「了解です!先生、今回は私が交渉してオマケをしてもらってきますので、見ていてください!」



 そう言ってアキナは勇んで店内に入っていき、店主と熱い値引き合戦を開始した。最初は金貨で交渉していたのだが、次第に銀貨・大銅貨と変わっていき、最後には銅貨1枚単位での交渉にもつれ込んでいき、最後にアキナの満面の笑みで勝負が決まり、結局『ミスリル』を金貨21枚・銀貨3枚・大銅貨4枚・銅貨2枚で購入することができてしまった。



「先生、見ていてくれましたか!だいぶお安く買えましたよ♪」


「え・・えぇ、あまりの見事さに見ていて呆然としてしまいました。この手のお店って割引してくれるものなんですね。いつも値札の通りに支払っていたので知りませんでした。しかも、買い物で拍手が起こるところも初めて見ましたよ・・・・」


「いやぁ、高額なアイテムなので頑張っちゃいましたよ。普段はここまではしないのですが、結構いろいろなところで割り引いてくれるお店があるので、絶対交渉した方がいいでよ。お得です!」



 ちょっと、自分の所属していたクランマスターの事を思い出してしまった。あの人も交渉事が非常に巧く、今回アキナと対戦した店主は苦笑いで済んでいるが、あの人が交渉すると相手が真っ青になるか真っ白になるかの二択だったので、今のですら可愛く見えてしまった。ちなみに、その場合拍手ではなく店主に同情の言葉が投げかけられることが殆どであった。


 ただ、アキナの活躍によって、安く『ミスリル』を手に入れることができたのは僥倖であったので、有り難く使わせてもらうことにする。お金を半分アキナに無理やり受け取ってもらってギルドへと向かう。どうやらアキナは全額自分で出してナタクにプレゼントするつもりだったようなのだが、無理をしないで、「今でも十分綺麗ですが、そのお金でさらに美しく自分を磨いてくれた方が、一緒にいる俺的には嬉しいですよ」と言ったら、何故か顔を赤らめて素直にお金を受け取ってくれた。



 (はて、どうしたのだろうか?)



 ギルドの一般販売エリアは、やはり予想通り大繁盛で、ポーションを買い求めてきた人達でごった返していた。遠目でミーシャの姿も人垣の向こうに見えたので、やはり駆り出されていたのであろう。まさか、あの中に入ってまで挨拶する訳にはいかないので、そのまま実験室へと向かうことにした。



「やっぱりとんでもないことになってましたね。職員さんは大変そうです」


「えぇ、俺も遠目でミーシャさんが駆り出されているのを確認できました。あれはしばらく休憩など取れそうにありませんので、辛そうですね。お昼に出かけた際に何か差し入れでも渡しておきましょうか」


「そうですね、私もクッキーか何かを買って差し入れしておきますね」


「それでは、午前の錬成をぱぱっと片付けていきましょうか」


「は~い!」



 お決まりのだいこんチェックは今日から種を回収だけで済むのでだいぶ楽になった。しかし、何代目の種か間違えると大変なので慎重に分けて保管することにする。今作ってる種は2代目の種なので、繁殖用の物をいくつか合成で初代の種に変換して分けて保存する。まだまだ数が必要なので、しばらく『銭喰らい』さんは絶賛稼働中になることだろう。一応タイマーをセットしてから、自分も昨日の作業の続きへと入ることにする。



 さぁ、せっかくの『ミスリル』だ、大いに活用させていただきましょう!



綺麗って・・・♪(/ω\*)


うん?(´・ω・`)

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