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第33話  転生5日目1-6

 

 部屋の片付けも終り、後はだいこんのチェックをすれば、今日のここでの作業は終了である。部屋の明かりを落として、自分もアキナに続いて実験室の方へと移動する。



「さぁ、私のビギナーズラックやいかに!これで当たりを引いていたら、先生が美味しいものをご馳走してくれるんでしたよね?」


「えぇ、1%の方を引き当てたらですけどね。そうすれば、ある素材を作ることができるので、きっとアキの喜ぶ物を作ってご覧にいれますよ」


「それは楽しみですね。それでは『だいこんガチャタイム』スタートです!」



 そう言って、アキナは一本ずつだいこんを引き抜きながら、楽しそうに確認をしていった。



「まず、最初の子は・・・おバカさんですね。続いて二本目は・・・なんか見慣れてきたおバカさんです。三本目・・・・これもおバカさんでしたか。うぅ、当たりが出ませんね」


「まぁ、発生確率が低いですからね。出る時は『シュウサイだいこん』のようにポロっと出るのですが、あんまり期待しないで続けるのがこの錬成のコツですよ。まぁ、そのせいで『銭喰らい』なんて異名があるんですし」


「う~ん、こういう運はある方だと思うんですけどね、私。試しに買った宝くじで1万円とか当たったこともあるんですよ」


「おぉ、すごいですね。俺も毎年、年末に宝くじを1万円分買うんですが、だいたいハズレですね。最高で3000円でした」


「だから今回も!と思ってたんですけどね。最後の子は・・・・やっぱりハズレですね。しかも、舌まで出して、さらにバカっぽい顔してますし。あ~ぁ。先生の手料理はお預けか~」


「今なんて言いました!?」


「えっ?先生の手料理がお預けって話ですか?」


「いえ、だいこんの顔です!舌を出してたって言いませんでしたか??」


「はい・・・この子です。舌を出して更におバカっぽい顔しているでしょ?新しいバリエーションがあってびっくりですよね」


「それですよ、それ!大当たりの1%のだいこん!!『甜菜(テンサイ)だいこん』です。アキありがとうございます!!」



 あまりの嬉しさのせいで、だいこんを持つアキナを抱きしめて、その場でくるくると回してしまった。



「あわわわぁ!!先生、落ち着いてください!まだ心の準備が!!」


「はっ!すいません、つい嬉しくて・・・・。おほん、それが俺が作りたかった『テンサイだいこん』になります。いやぁ、まさか本当に一発で引き当てるとは思いませんでしたよ。アキの強運に感謝ですね」


「ふぅ・・・、突然だったので、びっくりしました。しかし、この子が大当たりのだいこんなんですか?殆ど他の『おバカだいこん』達と変わらない気がするんですけど?顔は『シュウサイだいこん』の方が賢そうでしたよ?」


「コイツには他の用途があるんですよ。ちなみに、これは種を収穫するためにいったん戻して枯らしてしまいますね」


「はい!どうぞです」


「これでセットよし、種も結構取れましたね。やっとガチャから解放されてほっとしましたよ。何とか大赤字まではいかなかったですね」


「それでも、結構な金額を溶かしてるので、私からは道楽にしか見えませんでしたけどね。・・・・よいしょっと、やっぱりこの子も枯れると苦悶の顔になるんですね」


「それはこの品種の宿命みたいなものですね。それでは手に入った種を合成しないで植えて、暫くは種の確保に専念しますか」


「まだ魔石は消費されていくんですね。流石は『銭喰らい』さんです・・・・」


「まぁ、普通に植えて育てて種を収穫すると時間がかかりますからね。これを後数回は繰り返して種を集める予定です。ただ、当たりを延々と待つよりずっと気分は楽ですからね」



「そういえば、この子はいったいどういった用途に使うんですか?麦の収穫量が更に上がるとか、薪の燃費が良いとかではないですよね?ここまでお金をかけて作り出しているんですし」


「はい、勿論ちゃんとこのだいこんだけの特徴が存在しますよ。というか、それがなかったらここまで頑張って栽培しませんって」


「それで、その特徴ってなんですか?そろそろ教えてくださいよ」



「それはですね、このだいこん。錬金術で精製すると『白砂糖』が作れるんですよ。しかも、中々の高レートで!」


「えっ!砂糖って、あの甘い砂糖ですか!?あれってサトウキビとかから作るんじゃないんですか?」


「えぇ、その方法でも作り出せますが、サトウキビの収穫量と取れる砂糖の量に比べても、圧倒的に『テンサイだいこん』の方がコスパ(コストパフォーマンス)がいいんですよ」


「そうだったんですか。私はてっきりサトウキビからだけ砂糖が取れる物だと思っていましたよ。ゲーム時代も砂糖は高価な品でしたもんね。あれは採取量が少なかったからなんですか?」


「それもあるのですが、元々サトウキビはもっと温暖な気候の地域でしか栽培できないのも高価になっていた理由の一つですね。あの品種は寒さに弱いんですよ。


 ですが、このだいこんは違います。『おバカだいこん』だった時の根性をそのまま受け継いでいて、とても寒さに強く。大抵の場所で栽培できる成育のしやすさと、畑の回復効果も引き継いでいますし、一応砂糖を精製した後の残りは薪材としても利用可能です。更に、見た目がほぼ『おバカだいこん』と一緒なので食い荒らされることも少ないという、かなり優秀な作物になります」


「先生、ちなみに味はどうなんですが?」


「甘苦くて食えたものではありません!なので生食用としては、終わっている作物になりますね」


「やはり、そうなんですね・・・・」


「はい、なので食用で育てるならば『シュウサイだいこん』の方が適していますね。ただ、砂糖が取れるだけでその価値は飛躍的に上がりますので、ある意味報われた作物とも言えます」


「先生が必死になって育てていた理由が分かりました。これはお金を栽培しているようなものなんですね」


「その通りです。これに食いつかない貴族はいないでしょう。何せ、痩せた土地を復活させ、なおかつその土地で砂糖を栽培できるのですから」


「お米様のための最大の武器になるんですね!」


「はい、これがあれば結構有利に商談を進めることができそうですからね」


「でも、こんなに優秀な作物なら、畑に植えているだいこんから種をよそに盗まれる可能性もあるんじゃないんですか?他の貴族の方々も喉から手が出るほど欲しい作物だと思うんですが?」


「その辺もある意味優秀なんですよ。というか、このだいこんの特徴というか。実はこの作物、5代目になると必ず『おバカだいこん』に戻ってしまうんですよ」


「え?ずっとテンサイのままじゃないんですか?」


「はい、何も手を加えないと5代目で必ずおバカに戻ってしまいます」


「また、ずいぶんな特徴をお持ちなんですね。せっかく報われた作物になれたのに・・・・。でも、処置を施せば大丈夫なんですよね?」


「そうですね。ただ、普通に育ててるだけでは絶対たどり着けない方法ですので、盗難対策もばっちりだと思いますよ」


「その方法ってどうすればいいんですか?」


「一応、この製法は極秘ですので誰にも言ってはいけませんよ。俺もアキと領主様ぐらいにしか伝える気がありませんので。


 まず、盗難対策ですが3代目の種をメインで流通させます。そうすれば、育つのは4代目となりますので砂糖を収穫できますが、その4代目から種を取り出しても、育つのは5代目になりますので砂糖を収穫することが出来なくなります。なので、また砂糖を収穫するためには、3代目の種をまた買わなくてはいけなくなります。苦労して盗み出しても意味がないんですよ。


 それで、種の確保ですが、今この鉢植えで育っている最中の2代目なんですが、実はここから取れる2代目の種同士を錬成で合成すると初代の種に戻すことができます。


 なので、初代の種をこの即栽鉢植えで栽培をして2代目の種をある程度確保。管理体制が敷かれた建物で2代目の種を発芽させ、それを畑で植えて3代目の種を採取し、それを流通させる。発芽させてしまえば合成はできなくなるので、絶対他に盗まれることがない仕組みの完成ですね。この方法で昔、クランの研究資金を荒稼ぎしていたんですよ」



「またとんでもない仕組みを考えましたね。信用してくれて、ありがとうございます。勿論誰にも話したりしませんよ」


「まぁ、命の危険がある場合は話しちゃってもいいですけどね。まだたくさん切り札もありますし。それに、もし製法を知られたとしても、それを独占させない方法も一緒に考えられていますから。


 ちなみに、この作物を発見したのは俺で、流通に関する仕組みを考えたのは俺の所属していたクランのリーダーですね。あの人にこういうことを考えさせたら、右に出る人はいませんから」


「なんか、本当にとんでもないところに所属していたんですね、先生は」


「最初は職人や友達の集まりだったんですけどね。気がついた時には、とんでも集団になっていましたよ。まぁ、最初から所属していた俺が言うのもなんですが」


「そこは激しく同意します!」


「あはは、それではアキには近いうちに美味しいお菓子をご馳走しますね。砂糖が手に入るなら色々作れる物があるので」


「先生お菓子も作れるんですか!?」


「むしろ、普通の料理よりも得意ですね。お菓子作りって錬金術に似ていて、決まった分量を、決まった製法でレシピ通りに仕上げていくと、必ず美味しいものが作れますから。料理関係のレベルは、むしろお菓子で上げていましたよ。


 それと、うちのクランだと料理部門と錬金術部門がタッグを組んで仕事をすることが多かったので、色々教えてもらえる機会がありましたしね」


「先生の女子力の高さにびっくりです!私、クッキーすらまともに作ったことありませんよ。なんか凄い負けた気がします・・・・」


「まぁ、スキルを覚えたりするために、色々な職業に手を出していましたからね。専門の職業以外でもある程度の物は作ることができますので、もし欲しい装備やアイテムがあったら言ってくださいね。ちなみに、裁縫関係は苦手なので、そこはアキを頼りにしてますよ」


「そうでした、私には裁縫がありました!お任せください、頑張りますよ!!」


「それでは、そろそろ帰りましょうか。予定よりだいぶ時間を超過していますから、外真っ暗ですしね」


「そういえばそうですね。だいこんのおかげですっかり話し込んでしまいましたし。実は私、お腹と眠気がもう限界に近いですよ」


「今日はお互いゆっくり寝ましょう。俺もずっと気がかりだった、だいこんガチャが終了したので、今日は何の気兼ねもなく寝れそうでほっとしてますよ。アキには本当に感謝ですね」


「いえいえ!でも、お菓子の方は期待していますね。では、宿屋に向かいましょう」



 その後、二人で宿屋の食事を楽しんだ後互いに別行動をし、ナタクは共同浴場の浴槽であまりの眠気で溺れかけたりもしたが、それでもなんとか無事に宿屋のベットに辿り着き、泥の様に深い眠りに就いた。



 流石にね、今日は疲れましたよ・・・・


・・・・もう眠気が限界です(*―ω―*)。zZZ


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