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第32話  転生5日目1-5

 

 気を取り直して錬成作業へ入る。ちなみに、アキナは図面に先ほど採寸で得た数字を書きこんで、型紙の作成をおこなっている。ゲーム時代ではそのまますぐに生地の裁断作業を始めるプレイヤーが多かったのだが、何でも彼女は昔からこの段階を挟んで作業を開始していたらしい。


 どうやら地球での仕事を参考に作業工程を考えた方がイメージ通りのアイテムが作製できたらしいので、今回もこの方法で進めていくそうだ。


 流石は本職の裁縫師は違うなと感心しながら、倉庫エリアに移動して自分も作業を開始する。



 今回、『作業靴(汎用)』『革のベルト(汎用)』『鍛冶師の革手袋』『錬成サポート用の指輪2種類』『錬金術師の眼鏡』を二人分作る予定だ。


 まぁ、鍛冶関連は自分の分だけだが。


 それと、中位の魔石を多く仕入れてきたので、ある『便利系魔導具』も一緒に作ってしまう予定をしている。本来このアイテムは上位の魔石を使って作るのだが、グレードを少し抑えることで性能は落ちてしまうが、似た効果を持ったアイテムを作ることは可能なはずなので、この機会に挑戦してみることにした。



 それではまず、素材を加工をするための下準備として革の『軟化剤』と『ラバー』といわれるゴム材を錬金術で作っていく。軟化剤は、今回使用するなめし革が、そのまま使ってしまうと材質が少々硬すぎるため、一部のパーツで柔軟性を持たせる事を目的に使用する予定だ。


 とはいっても等級5相当の錬成なので、街で買ってきた素材を錬成陣に載せてあっという間に作り上げてしまった。後はこれを水に溶いてなめし革を漬け込み、程よい硬さになるまで放置するだけなので、さっさとセットしてから次の作業に移ることにした。



 続いて『ラバー』だが、こちらはまず流し込む型を作製する。今の環境だと、そのまま錬金術で作製してもいいのだが、少しでも彫金細工師のレベルを上げておきたかったので、今回はこちらで型を用意することにした。


 まずはブロンズでできた薄い板を取り出し、先ほどアキに採寸してもらった際、足裏の計測もしていたので、その数値にあった形に沿って板をハンマーで叩いていき、靴底を型作っていく。とはいっても、錬成を使いながらの作業になるので、そこまで時間を掛けることなく、細かい溝の入った2人分計4枚の靴底の型が完成した。



「ふぅ、取り敢えず型は出来ましたか。やはり錬成は便利ですね、普通に打って作っていたら1枚作るのに、いったい何時間かかっていたことやら」



 こういうところは、地球で作製するよりも技術面で大いに楽が出来るので非常に助かる。女神様に感謝しつつ、次の工程に着手していく。



 『ラバー』の作製だが、これは『錬金鍋』と言われる魔導具に樹脂と硫黄を適量加えて加熱しながら混ぜ込み、出来たものを型に流し込むことで作ることができる。『錬金鍋』は元々この部屋の備品として置かれていたので、今回はそれを有り難く利用させていただく事にした。攪拌(かくはん)作業も鍋の機能でやってくれるので、非常に便利な魔導具である。


 そこまで時間を掛けることなく液状のラバーも完成し、これを型に油を塗ってから流し込む。後は流したモノが冷え固まれば靴底の完成だ。



 道具を片付けた後に、漬け込んでいた革の様子を確認してみると、既に程よい柔軟性が出ていたので、革についた薬剤を水で綺麗に洗い流した後に、紐で吊るしてしばらく乾かす。これで後は、乾いた後に裁断をして、足型に合わせて加工していけば終りなのだが、乾くのに時間がかかるので、取り敢えず今日の革細工はここまでにして、残りは魔石や宝石のカッティング作業をすることにした。



 時計を見るとすでに16時を回っていたので、後2時間くらい作業したら今日は宿屋へ帰る予定だ。寝不足の状態でここに泊まって、今朝のような体験をするのはもう懲り懲りである。今日は早めに休んで、すっきりした状態でアイテムを仕上げた方がいい物が出来そうな気がするので、『きっとそうに違いない!』と自分へ言い聞かせる。正直、朝からヘビーな事が多かったため、メンタル面でだいぶダメージが蓄積していた。


 予定を伝えるために、実験室で作業しているアキナの元へ向かうと、丁度型紙の用意が終わったところであったみたいだ。



「アキ、今日は後2時間ぐらい作業したら帰って休みましょうか。今日は二人とも寝不足なので、無理をしないで、確り休息を取って明日に備えましょう」


「先生がいないと思ったら、倉庫エリアで作業していたんですね」


「えぇ、彫金細工はハンマーや研磨でどうしても音が大きく出てしまいますからね。一応、消音の魔導具もありますが、炎なんかも使いますので、石材の床でできている向こうの部屋を一部模様替えをして、作業エリアを作ってしまいました」


「成程、作業は結構進みましたか?私の方はたった今、型紙の作成が終わったところなので、続いて布材に印を書いていく作業に移ろうとしていたところでしたよ。後2時間ならその作業を終えれば丁度時間になりそうですね」


「では、そこまでやったら帰る準備をして待っていてください。俺の方は研磨作業をいくつかやっていますので、時間になっても来なかったら声を掛けてくださいね」


「りょうかいです。って、先生。だいこんってそろそろ時間ではないですか?」


「忘れていました、確かにそうですね。こちらも、早めに当たりが引ければいいのですが」


「中々当たりませんよね、きっと運営が絞っているんですよ!」


「誰ですか、運営って。しかし、こればっかしは完全に運ですので」


「私も手伝いますね。えっと、・・・こっちは二つともハズレでしたね。先生の方はどうですか?」


「こちらも駄目ですね。二つともハズレです」


「むむむ、上手くいきませんね」


「まぁ、気長にやっていきましょう」


「あっ!それじゃあ、今回は私が植えてみてもいいですか?ビギナーズラックがあるかもしれませんし!」


「えぇ、構いませんよ。種を植えて魔石を動力炉に容れるだけなので、難しいことはありませんしね」


「それでは、当たりますよう願掛けして、チャレンジしてみます!むむむ・・・・えい!とりゃ!


 これで、準備は完了ですね。先生、期待していてくださいね、私のビギナーズラック♪」


「ありがとうございます。もしこれで当たりが引けたら、美味しい物を作って食べさせてあげますよ」


「それは期待大ですね!では、待ち時間にサクッと作業を終わらせてしまいましょう」


「了解です。俺の方も作業に戻りますね。消音の魔導具を使っているので、もし反応がなかったら肩でも叩いてください」


「分かりました。それではまた後で!」



 そう言ってアキナは自分の作業している机に戻っていった。自分の方も、彫金細工師で研磨の作業をおこなうとしよう。


 今日の最後の錬成は『便利魔導具』で使用する魔石の研磨をすることにした。先ほどミシンで使用した魔石よりは小さい物になるが、中位の魔石も材質は似ており、こちらもあまり研磨に向かない脆い性質をしている。そのため、注意して研磨作業をしなくてはいけないので、何時もより集中して作業をおこなう事となる。


 普段の状態であれば鼻歌交じりにこなせる自信はあるのだが、もうかなり疲弊しているため、集中力が乏しいのと、今回は宝石並みにカッティングの工程が多いので、いくらナタクと言えども失敗する可能性もあったので、気合を入れて取り掛かる。


 カッティングの種類だが、魔石の特徴として楕円形の石になるので、今回は『オーバル・ブリリアントカット』という物を選択していく。このカットは楕円形の宝石に用いられるもので、あまり石の大きさを変えることなくカットができるので、魔石の価値を下げずにカッティング作業ができるのが魅力の一つだ。ただ、最低でも二人分で八つは用意しなくてはならないので、いくら錬成を使っているとはいえ、時間が掛かりそうな作業ではある。


 そしてしばらく黙々と作業を続け、何とか集中力を切らさず、石も割れずに八つ全部を磨き終えたところで、アキナに肩を叩かれた。どうやら、思った以上に集中して加工を施していたため、完全に時間を気にすること無く作業をしてしまったようだ。



「すいません、もう約束の時間になっていましたか?」


「はい、30分ぐらいオーバーしていますね。先生があまりに集中しながら作業していたので、ちょっと見とれて声掛けるのを忘れてしまいました。すごく綺麗な宝石ですど、何の石を磨いていたのですか?」


「これは中位の魔石ですね。ちょっと作りたいアイテムの素材にこれが必要だったので、頑張って磨いてたんですよ。こうやって見ると本物の宝石みたいでしょう?」


「えっ?これって宝石じゃなかったんですか?魔石をここまで加工できるなんて知りませんでしたよ。そもそも魔石ってエネルギー源に使うものだと認識していましたし」


「アキに作った魔導ミシンにも似たような加工が施された魔石が収納されていますよ。魔石って実はエネルギー以外にも使い道がたくさんあるんですよ。特に魔導具関連では頻繁に加工された物が使われたりしていますね。流石に、宝石の様にここまで加工するのは珍しいですけどね」


「そうだったんですか。魔導具は昔から何個も使っていましたが、分解した事はなかったので、まったく知りませんでした。とっても綺麗ですけど、この石の加工はこれで終了なんですか?」


「いえ、最後に石に『ルーン』と言われる魔導文字を刻んで終了なんですけど、流石に今日は集中力が切れたので止めておきます。ここまで削りだすのに、結構時間と手間がかかってますからね。疲労困憊の状態でその作業をしたら、流石にいくつか割ってしまいそうで」


「確かに、私も今日は寝不足でそろそろ限界が近そうですよ。さっきからアクビが止まりませんでしたもん」


「朝、船漕ぎながら食事してましたもんね。そのまま椅子から落ちないか、冷や冷やしながら見ていましたよ」


「うぅ、本当に朝は弱いんですよ!ただ、この体になってからは前よりずっと楽にはなっているので、たぶん身体と言うより、魂に刻み込まれた体質なんだと思います!」


「あはは・・・・、随分難儀な魂をお持ちですね。さて、それでは帰るとしますか」


「先生、今少しバカにしていませんでしたか?」


「してませんって!さっ、早く宿の食事を食べて、今日はさっさと寝ちゃいましょう。今から帰って寝れば、今日の疲れも吹っ飛ぶでしょう」


「う~ん、なんか上手く言いくるめられた気がしますが。確かに、お腹もペコペコですしね。賛成です」



 こうして、二人で片付けを終わらせて、最後にだいこんのチェックを済ませてから帰ることにする。


 しかし、いったい何時になったらこのだいこんは当たりが出るのやら・・・・

じぃ・・・・(`・ω・´)


( ゜Д゜;)!?


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