表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/194

第31話  転生5日目1-4

 

「やぁ、ナタク君!遊びに来たよ!」



 扉を開けてみると、そこには案の定ご機嫌そうな笑顔のアメリアが立っていた。



「こんにちは、アメリアさん。今日は特に錬金術の実験はしていませんよ?」


「えっ、そうなのかい!?今朝、ナタク君が泊まりで錬成してたって言ってたから、てっきり何か凄い薬を作っているんじゃないかと思って、期待して訪ねてきたのに。当てが外れてしまったか」


「取り敢えず、中へどうぞ。食事をしていたところなので、せっかくなのでお茶でも飲んでいってください」


「では、そうさせてもらおうか。しかし、それなら何故あんなに疲れた表情で、今朝は部屋から出てきたんだい?」


「あぁ、それはですね。この後使う予定の作業台と、アキのための魔導具を作っていたのですよ。魔導具の方は少し複雑な構造をしたものなので、時間が掛かってしまいましてね。昨日は泊りがけで部品を作っていたというわけです」


「おぉ、ナタク君は魔導具も作れるのか?本当に多芸だねぇ。やぁ、アキナ君もこんにちは!」



 丁度、ナタクとアメリアのやり取りを聞いていたアキナが、気を利かせてお茶を淹れて戻ってきたところであった。



「アメリアさん、こんにちはです。これが先生の作ってくれた、魔導ミシンのみぃ~ちゃんですよ!これからこの子で、先生と私の作業服を作るところだったんですよ!」


「何だい、その魔導ミシンってのは?聞かない名前だけど、ナタク君のオリジナルの魔導具なのかな?」



 そういえば、こちらに来てミシンなどの道具があるかを確認してはいなかった。確か、足踏みミシンであれば既存のレシピが存在していたはずなので、既にあるモノだと思っていたが、実はプレイヤーメイドで、まだ作られてはいなかったのであろうか?


 そう不思議に思い考え込んでいると、アキナが助け舟を出してくれた。



「先生、たぶんミシン自体を見る機会がないんだと思いますよ。足踏みミシンならギルドで見かけましたので。


 でも、本職の人以外は基本的に高価なモノなので使わない道具になりますから、知らなくても当然だと思いますよ。大抵の人は錬成もありますので、手縫いで事足りますからね」


「いや、すまない。足踏みミシンという機械は知ってはいるのだよ。ただ、私が知っているものより形が小さいし、機構部分が少なく感じてね。だから、てっきり違うアイテムなのかと思ってしまったんだ。裁縫関係の道具と考えでいいんだよね?」


「そうですね。その足踏みミシンを進化させたアイテムだと考えてください。動力を人から魔石に変更して、更に機能を充実させた物という考えで合っていますよ」


「成程ね。私は専門外だからさっぱりだけど、ばあちゃんが見たら是非分解させろって言いそうなアイテムだね」



 その話を聞いて、アキナが震えながら魔導ミシンにしがみつき始めた。



「あぁ、大丈夫。目つきが悪くて勘違いされやすいんだけど、あの人は眼が悪いだけで基本的に優しい人だから。人から物を奪ってまで分解したりしないから、そこまで恐がらなくて平気だよ」


「そうなんですか、てっきり少し恐い人なのかと思っていました。申し訳ないです・・・・」


「うんうん、ばあちゃんもその辺は慣れっこだから気にしていないさ。それに、あるとすればこれを作ったナタク君が、精々数時間問い詰められるぐらいで済むはずだから、安心していいよ」


「よかった、それを聞いて一安心です」


「俺はちっとも安心できないですけど!?」


「まぁ、しばらくは黙っておいてあげるよ!ただ、珍しい魔導具は価値の高いものが多いからね。盗難の恐れもあるから、管理はしっかりした方がいいと思うよ」


「分かりました!みぃ~ちゃんは全力で私が守ります!!」


「しかし、ガレットさんの眼ってどんな症状が出ているんですか?確かに眼を細めて、睨むように見つめていますが」


「ばあちゃんの眼かい?確か、元々は遠くの物が良く見えなかったらしいんだけど、最近は近くの物も白い靄がかかったように見えてるらしいんだよね。


 そのおかげで魔導具の研究が中々進まないらしくて、難儀しているらしくてね。眼を細めると、なんとか見えるらしいから、最近はあの顔つきになってるってわけだよ。


 私もばあちゃんのために、今の薬剤を研究しているんだけど、中々思った通りの効果が出る物ができなくてね。だからこうして息抜きに、色んな所へ足を向けて気分転換をしているというわけさ」



 (成程、元から近視だったのが白内障を併発して、更に見えづらくなってしまったということですか。それなら、あの薬等で治せると思いますけど、せっかくアメリアさんが研究しているのに、俺が作るのもなんだからなぁ)


 (いくら答えを知っているとはいえ、人が研究している物を横から掻っ攫う行為はあまりやりたくないし。よし、ここはヒントを出して、彼女に作ってもらうとしますか!)



「アメリアさん、もしかしたら薬のヒントなら出せるかもしれないので、どの辺りで行き詰っているかを聞かせてもらって構いませんか?」


「本当かい!それなら研究ノートを今持っているから、これを読んでくれないかい?ある程度の症状の改善は見込めるんだけど、どうしても靄を消してやることができなくて困っていたんだよ」


「自分の研究ノートを、助手でもない俺に見せてしまっても?」


「構わないよ、私はばあちゃんの眼を治したいだけだからね。それに、キミには色々なレポートを読ませてもらっちゃってるし、これくらいどうってことないさ。ただ、上手くいっていない実験の記録だからちょっと恥ずかしいんだけどね」



 そう言って、彼女は少し照れながら研究ノートを見せてくれた。預かった物を読んでみると、そこにはいかに必死に薬の研究をしていたかが解るほどの膨大な書き込みと、薬効の試験結果のデータがびっしりと書き込まれていた。普段の行動とはかなりかけ離れていたその研究ノートを読ませてもらい、正直舌を巻いた。


 間違いなく、彼女は天才と言われる人物であろう。


 ゲーム時代はインターネットや医学書などに載っている研究データを参考に、似た薬効を調べていき、新しい効果を持つポーションや特殊な病気を治すための薬剤をプレイヤー達は作り上げていた。


 だが、彼女は独学で調べ上げてここまでの形にしている。先ほどは上手くいっていない実験と言っていたが、すでに近視や遠視ならばこの薬で問題なく治せるレベルのアイテムを既に作り上げていたのだ。



 (これならば、上手く研究が噛み合えばもう“一段階”上の薬までもが作りだせそうだぞ・・・・)



「どうだい?人に見せるように書いていたわけじゃないから、汚くて読みづらいかも知れないけど、改良点とか思いつきそうかな?」


「すいません、あまりの出来に驚いて、つい読み(ふけ)ってしまいました。この薬だけでも、近視や遠視の治療は十分完治が見込めそうですね」


「まぁ、なんとかそこまでは辿り着けたのだけどね。どうしても、これ以上の改良点が思いつかなかったんだよ。もうこのまま、ばあちゃんに渡そうかとも考えたのだけど、できれば完全に治療してやりたくてね。引き続き研究してみたのはいいんだけど、これ以上が中々上手くいかなくて困っていたんだ」


「それでは、俺からのヒントを出しますね。ここまで出来ているのであれば、後はもう一歩です」


「・・・・やはり、何かしらの答えを知っているみたいだね。君はいったいどこまで私を驚かせるつもりだい?」


「それは俺のお師匠が優秀だっただけですよ。俺もその人から教わっていなければ、ここまで知識を得ることは出来ませんでしたから」


「・・・・そういうことにしておくよ。しかし、答えは教えてくれないのかい?」


「そこを教えてしまっては、研究者としてはつまらないですからね。自分で最後の答えを見つけてこその錬金術師です」


「分かった、引き続き研究を頑張るとするよ。して、ヒントとはいったい何かな?」


「一つ目の魔物の眼球、そこから取れる『水晶体』と言うアイテムを分解して、『新月草』と合成してください。そうすると『月の雫』と言うアイテムが出来ますので、そこからは色々試してみてください。アメリアさんならきっといい結果が出ますよ」


「おぉ!!それは確かに知らないアイテムだ!そこまで解っていれば、研究を再開できるよ!さっそく戻って調べてみるね!ナタク君、本当にありがとう!!」


「ここから先も難しいとは思いますが、アメリアさんなら・・・うわっふ!!」



 喋っている最中に正面からアメリアに抱きしめられてしまった。良い香りのする目の前の特大メロンの感触ががたまら・・・・なんだろう?背中から突き刺さる視線が恐すぎてこれ以上感触を堪能している余裕がない!!



「大丈夫さ!これまで止まっていた研究が再開できることに比べたら、その困難もスパイスみたいなものさ!大いに楽しませてもらうね。それじゃ、失礼するよ。本当にありがとう!!」



 そう言って、彼女は嬉しそうに自分の実験室に帰って行った。扉が閉まると、先ほどまでの賑やかだった部屋が嘘のような静けさへと変わり、心なしか気温も5度近く下がった気がした。



 なぜだろう?恐くてアキナの方向が見れない!!



「先生、ずいぶんお顔がニヤけてましたよ?よかったですね。あんな美人のお姉様に抱きしめられて・・・・」


「いや・・・・、アキナさん?今のは不可抗力で・・・・って、そのメジャーはいったい?」


「あぁ、これですか?これは今から先生の寸法を測らせていただこうと思いまして。・・・・動かないでくださいね。直ぐに終わりますから・・・・・」


「あぁ、採寸ですね。分かりました。分かりましたが・・・・。あの、何でそんなに素敵な笑顔で近づいて来られるんですか?凄い笑顔なのに、なぜか悪寒がするのですが!?一旦落ち着いて話し合いましょう、ねっ?」


「だいじょうぶですよ~、痛くありませんからね~。ジッとしていてくれればすぐ済みますから~」


「あれ?もう後ろに壁が・・・・あの・・・アキナさん?おね・・・・やめ・・・・」


「問答無用です!天誅!!!!」


「ぎゃぁ~~~~~~!!!!!」




 この後、アキの機嫌が治るまでにえらい時間を要しました。おかしい、俺は今回何も悪いことはしていなかったはずなのですが、そのことは恐くてアキには言えませんでした。


 ちなみに、散々な目にあった後に、やっと機嫌が直ったアキによって、ちゃんとした採寸は確りとおこなわれました。


 どうやって機嫌が直ったかって?必死に謝った後に、アキに作る予定の指輪のランクが上がったのと、新たな魔導具の作製依頼が舞い込んできた。ただ、それだけの話ですよ・・・・



 ちなみに、この時のだいこんですが安定のおバカオンリーでした。心なしか、顔がバカにしたような笑顔に見えたのですが、これは気のせいですよね??



天誅!!ヾ(*`Д´*)ノ


ギャース!( ̄□ ̄;)!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ