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第30話  転生5日目1-3

 

「お待たせしました。先生、私も少し食べ物を買ってきましたよ!・・・ってすごい量ですね」



 あれからそれほど待たずに、アキナが実験室にやって来た。見覚えのある屋台の包みを持っているので、どうやら彼女はサンドイッチを買ってきてくれたようだ。



「昨日の夕飯で懲りたので、ちょっと多めに買いこんでインベントリにしまっておこうかと思いまして。アキも好きなもの選んでください。残りは保管して非常食にしますので」


「こういう時インベントリは便利ですよね、いつでも暖かい食事が食べられますし」


「あまり出歩かない俺達よりも、冒険者達の方が恩恵は大きそうですけどね。便利なのでありがたく使わせてもらいましょう」


「そういえば、フィジカルで持てる数が増えるんでしたっけ?」


「正確には持てる枠が増えるですね。フィジカルが2上がるごとに1枠追加されます。まぁ、俺達は当分フィジカルは上げないので、しばらくは20枠のままですがね」


「枠も大事ですけどステータスの方がもっと大事ですからね、そこら辺の見極めは先生にお任せします」


「はい、損はさせないように考えておきますので、安心してください」


「さて、それではご飯にしましょう!先生は何を食べるか決めました?」


「俺が買ってきたのは惣菜系が多いですからね。アキが買ってきてくれたサンドイッチに、いくつか合わせて食べることにします」


「私はこの串焼きにしようかな。先生これ何の肉ですか?」


「これはステップボアですね。イノシシに似た魔物で、ここの街から東に行った所の草原に多く生息していたはずです」


「へぇ、ではこれとサンドイッチにしますね」


「俺はケーブフロッグにしてみます。カエルなんて現実で食べたことがないので、ちょっとドキドキしますね」


「おぉ、先生も中々攻めますね。もし美味しかったら、後で私にもください」


「あれ?アキはこういうの平気なんですか?もっと面白い反応期待してたんですが・・・・」


「流石に虫系は無理ですが、会社の飲み会でカエルの串焼きは食べたことありますので、割と平気ですよ。周りの女の子はキャーキャー言ってましたけど、鶏肉みたいでなかなかの美味でした」


「思った以上に逞しくてびっくりです」


「勘違いしないでくださいね!別にゲテモノ好きってわけではなくて、あの時もじゃんけんで負けたから食べただけなんですから!!」


「でも、美味しかったと・・・・」


「はい、正直そこのお店で一番美味しかったです・・・・」


「まぁ、そういった偏見がないのは、ここではいいのかもしれませんね。そうでないと、凄く生き辛そうですし」


「そ・・そういえば!だいこんの方はどうなりましたか?当たりは出ましたか!?」


「いえ、あの後全敗でおバカオンリーでしたね。終いには苦悶の表情の彼らに追い掛け回される夢まで見ましたよ・・・・今では呪いのアイテムなんじゃないのかと思い始めてきました」


「それはなんとも・・・。まぁ、ガチャなんてそんなもんなんですし、気長に見ていきましょうよ!」


「確かに1%一点狙いしてますからね。まだ金貨2枚分ですし、安い安い!」


「あの、それを聞くと何やってるんですかとツッコミたくなりますが。宿屋で50日ぐらい泊まれますよ、それ・・・・」


「大丈夫です、まだかかると思ったので1000個ほど小粒の魔石を仕入れてきたのでしばらくは買い足さなくて済みますよ!たくさんあるので、アキも錬成で使っていいですからね」


「・・・・先生?おいくら使ってきたんですか?」


「これだけで金貨20枚ですね。流石に袋1つに入りきらないので箱で貰いましたよ。そしたら専属の職員さんが付いてくれて、掘り出し物まで出してくれたのでかなりラッキーでした」


「それは、商人でもないのに金貨20枚をポンと出すお客が来たら職員だって大喜びでしょうよ・・・・」


「いえ。その他にも買ったので魔石だけで合計金貨70枚ちょっとですね。我ながら我慢できた良い買い物でした」


「先生、ツッコミ待ちなんですか?それとも素でやってるんですか??毎回毎回先生のお金の使い方はおかしいです!必要なものだけ買いましょうよ!」


「あれ?これでもしっかり我慢して魔石買ったんですよ?余計なものも買おうか迷ったんですが、アキに怒られると思っていくつか諦めたんですから」


「はぁ・・・・、やっぱり今度から先生の買い物には私も付き合いますね。ちょっと目を離すと直ぐにとんでもない事ばっかりしでかしますし。一緒にいないとハラハラしますよ」


「なんか、ごめんね?」


「とは言っても、私も今回は大奮発したので先生のことはあまり強く言えないんですけどね。素材もかなり迷ったんですが、自分が扱った事のある素材で、もっとも良い物を選んで買ってきたので期待していてください。今なら裁縫のレベルが低かろうとゲームの時以上のアイテムが作れる気がします!」


「錬成はレベルよりもどちらかと言うと、どれだけ経験を積んだかによって出来が左右しますからね。今のアキなら、きっといい仕事ができると思いますよ」


「ありがとうございます。ご期待に沿えるように頑張ります!」


「そんなアキに俺からプレゼントです。そこの布の下にあるアイテムを差し上げますから、存分に腕を振るってください」


「あぁ、私の席に置いてあったから何かな?と思ってたんですよ。見てもいいですか?」


「どうぞ、先ほど完成したばかりのアイテムですけど、ゲーム時代の物より高性能に仕上がったんで、きっとアキも喜ぶ物のはずですよ」


「それは楽しみですね、なんだろ?では、拝見しますね!」



 そう言って、アキナは布をゆっくり魔導具から外していく。そこから現れた魔導ミシンを見て彼女は完全に固まってしまった。



「俺が所属していたクランで開発した魔導ミシンです。ゲーム時代にも販売していた物なんですが、かなりの高額商品にもかかわらず、飛ぶように売れて、販売開始してから数年たっても予約待ちが途切れることのなかった人気の魔導具になりますね。アキも裁縫師なら、もしかしたら使っていたんじゃないですか?それを再現させていただきました」


「ななな・・・・なんで憧れの魔導ミシンがここにあるんですか!!!!」


「昨晩、頑張って作ってました。なかなかパーツが多いので、作るのに苦労したので大事に使ってあげてくださいね」


「作ったって・・・・てか、この子先生のクランで作られてたんですか!私、このミシンが欲しくて一生懸命クエストやら生産頑張って、やっと買えるだけのお金を貯め終えて、順番待ちを申し込んでいたアイテムですよ。結局こちらに転生したので一度も触れることのなかった、あの憧れの魔導ミシンが目の前に・・・・先生、これは夢ではないですよね!!」


「夢ではないですよ、しかも燃費面でゲーム時代のミシンよりも性能は上がっている特別仕様なんで、存分に使ってあげてください。そこまで喜んでくれると作った甲斐があります」


「先生、ありがとうございます!一生大事に使っていきます!!はぁ~、やっと・・・やっとこの子と一緒に仕事ができる・・・・諦めてたのに、目の前に来てくれるなんて。・・・・はっ!先生、でもこの子すごく高いんじゃないですか!」


「いえ、手作りなので素材代はそんなに掛かっていませんよ。アイテム依頼の前金だと思ってください。あっ、でも俺もちょこっと使いたいので、その時は貸してくださいね」


「えぇ、是非使ってあげてください!この子は今日から、みぃ~ちゃんと名付けて一生の相棒にします!」


「そのミシンの性能だと上位くらいまでは付属品を換えればいけるはずなので、また今度素材が集まったらカスタマイズしてあげますね」


「はい!その時はお願いします。ねぇ~、みぃ~ちゃん♪」



 やはり、かなり喜んでくれたようだ。確かにかなりの量のミシンを仲間達と作っていたのだが、先ほども言ったが予約が途切れる事はなかった。どうやら販売対象にしていた中位~上位の裁縫師達全てに行き渡らせるだけの数はまだまだ足りていなかったみたいだ。それに、こればかりに構ってはいられなかったので、月に50台限定で発売していたから余計に手に入れづらかったのだろう。


 微笑ましくアキナの方を見ると、彼女はさっそく楽しそうに魔導ミシンを試しているようだ。



「使い方はわかりますか?」


「はい!なんか地球で使っていたミシンに性能がかなり似ているので、凄く使いやすいです!これなら思っていたより早く色んなアイテムが作れそうで、今からとっても楽しみですね」


「それはよかった。地球のミシンに似てるのは、それを元にして作られているからですね。現実で中古のミシンを買ってきて、それを分解して研究しましたからね。一番大変だったのは構造よりも、それを動作させる基盤の再現の方が手こずりました」


「そこまでやってこの子は作られていたんですか。てか、先生は良く全部のパーツなんて覚えていましたね」


「毎月50個は仲間達と交代で作っていましたからね。教えるの込みで全ての工程を頭に入れておかなくてはいけなかったので、何度も作ってるうちに自然と覚えてしまっていましたよ」


「そうだったんですか。先生達の努力のおかげで、念願かなって魔導ミシンを触れているので、私は大満足です。あっ、そういえば!デザイン画を何枚か書いてきたので、確認お願いします!これでよければ仕上げていっちゃいますね。後、採寸させてください」


 そう言って、アキナがインベントリから取り出したデザイン画を見て、正直唖然とした。



「・・・アキってもの凄く絵が上手かったんですね。まさか、ここまで精巧に書き上げる物だとは思いませんでした」


「たぶん先生の思っていたのはラフ画の方じゃないですか?こちらは製品の元になる物なので、かなり細かく書き上げていますね。ここから多少はアレンジはしますが、殆どこれと同じものを作り上げていくんですよ」


「流石プロですね。この絵だけで売り物になりそうな出来です」


「本物はもっといい物にしてみせますよ~!期待していてくださいね。新しい洋服のデザインを考えるのは私の特技でしたし、ゲームでも色々作って遊んでいましたからね。しかも、こっちでは結構大胆な服を作っても買って着てくれる人が多かったので、創作意欲を掻き立てられましたよ」


「あぁ、確かに。俺もゲーム時代に頼まれて『ビキニアーマー』なる物を作らされたことがありました。あれ、地球じゃ絶対着ない服装ですよね」


「ですよね~、あれで何故防御力が高いのか謎でしたよ。私も似たような物を頼まれて作ったことあります」


「一応使用者の魔力を使って、魔法障壁みたいな物を発生させて防御力を得ていたみたいですよ。ただ、そのコストを考えるとフルプレートの鎧を着た方が断然性能は上でしたけどね。結局、最後には完全にお洒落アイテムとして使われていました」


「私の方もお洒落着扱いでしたね。その人は踊り子さんでしたし」


「それでは、これで進めてください。大変気に入りました」


「えっ!何種類か他にもパターンを用意してますがいいんですか?」


「これに一目ぼれしたので、この服でお願いしますね」


「分かりました、ではこれを作っていきますね。実は私もデザイン画でこれが一番のお気に入りで作ってみたかったので、最初に出しちゃいました」



 こうしてデザインも決まったことなので、後は採寸をして作製作業に取り掛かろうとした時に、扉の方から来客を告げるチャイムが鳴った。何でだろう、なぜか頭には今朝の出来事が甦り、扉を開けるとまた何かの騒ぎに巻き込まれそうな、そんな予感が止まらなかった。



これからよろしくね、みぃ~ちゃん♪(*´▽`*)


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