第27話 転生4日目1-6
実験室に戻り、まずだいこんの成育状況の確認をしてみると、まだ一時間ぐらいはかかりそうであったので、他の作業をして待つことにした。
「さて、今夜中に『彫金作業台』『革細工作業台』『魔導ミシン』は作ってしまいたいのですが、結構金属パーツを作らなくてはいけないので、まずは彫金作業台でも作りますか」
ゲーム時代であれば職業の鍛冶を使って金属加工をしていたのだが、大掛かりな炉が必要になる為、今回は選択することができなかった。そこで、バーナー型の小型溶鉱炉を使って作業のできる、彫金細工師で今回は色々作っていく予定だ。ただ、小型のため大掛かりな加工には向かないので、大きな物は錬金術の形質変化で無理やり加工して作らなくてはならない。
「まったく、作れるはずの物を自由に作れないのは歯がゆいですね。はぁ、早く自分の鍛冶工房が欲しい・・・・」
そう一人愚痴りながらも、手は止めずに作業を進めていく。今から取り掛かる彫金作業台だが、ベースとなる作業台は実は先ほどの店舗巡りの最中に良さそうな大きさの作業机を見つけており、これを加工して作っていく予定である。
なので、作業台の錬成に必要な道具やパーツなど、色々作ってから一気に錬成陣で仕上げてしまうために、細々した物から作っていく。まずその中でも重要な、バーナー型の小型溶鉱炉の作成に取り掛かる。これは溶鉱炉と大げさな名前が付いてはいるが、卓上型のためそこまで大きなものではなく、三本のバーナーで金属を熱して加工するものになる。構造もシンプルな物なので、今回もサクっと作ってしまうことにした。
まずは、赤鉄鉱と言われる金属をバーナー型に加工していく。この赤鉄鉱とは鉄鉱石に属性石(火)を混ぜ合わせて作る金属になり、強い耐火性を持っている。主な用途としては、盾や鎧として使われることが良く知られているのだが、耐火性能に優れている性質上、錬成道具としても使われることもが非常に多い金属となる。
本来であればここも彫金細工師の錬成で加工する方が良いのだが、今は溶鉱炉がないため、今回は錬金術の『形質変化』を利用して加工することになるので、実はかなりの力業になる予定だ。ただ、複雑なイメージを形にする場合、最もイメージ通り精密に加工できるのは、実は錬金術による製法でもあるため、決して間違った使い方ではない。ただ、ひたすら硬く・燃料に魔石を多く必要とし、時間がかかることを除いては・・・・
錬成陣の上に、赤鉄鉱と属性石(火)をセットして追加燃料になる魔石を数個置いて錬成を開始する。とはいっても、筒状の奥に炎を発生させる属性石をはめ込み、筒の裏から魔力を流し込めるようにする魔導回路を組み込むだけなので、実は作業的にはそれほど難しくない。『形質変化』に時間はかかったが、無事に三つのバーナー部分のパーツが出来上がった。
次はバーナーを設置する土台作りだが、ここには熱を外に漏れ出さないようにする加工と、バーナーの火力を調整する機構を組み込まなくてはならないので、少し作業が難しくなってくる。ベースとなる土台には再度赤鉄鉱を錬金術で板状にした物を使い、そこにせっせと魔導回路を刻んでいく。
これは彫金細工専用の特殊な回路で、熱を炉の中に留めておける機構と、“少量の金属”の加工がしやすくなる機構を組み込んである。後は燃料となる魔石を投入する動力炉と制御基盤を作れば材料の完成だ。
これで作業台の小型溶鉱炉部分は大方完了したので、次はメインとなる作業台の加工に取り掛かる。とはいえ、買ってきた作業机の上に被せる金属板を加工するのと溶鉱炉部分を載せる箇所を加工すればいいだけなので、こちらはそれほど時間をかけずに準備が終了した。
最後に、大きめな錬成陣に机と小型溶鉱炉のパーツ、バーナー周辺に置くレンガ数枚、買ってきておいた万力や金床などの加工に使う道具をセットしたら準備完了である。錬成中にも色々な微調整を行い、ついに完成した作業台は機能美にもあふれる素晴らしいものが出来上がった。
アイテム名
『彫金細工師の作業台』(高品質)
金属加工に優れた作業台。
作成者:那戳
「ふぅ、なかなかの出来ですね。これでやっと金属パーツを錬金術で加工しなくても良くなりましたか。錬金術でもやれなくはないのですが、時間がかかるのと燃料代がバカにならないから、やはり専門の道具を使って加工したほうが効率がいいですからね。後は、このままハンマーを使って加工を開始すると、とんだ近所迷惑になるので、防音対策に消音結界の魔導具でも作ってしまいますか」
本来の消音結界の魔導具は、この建物にも使われているもので、限られた範囲よりも外に音を響かせない効果を持つものになる。調べてみると実験室にはもちろん設置されているのだが、倉庫エリアには設置されてはいなかった。
最初は実験室でそのまま設置して使うつもりであったが、アキもいることだし、一応炎を使っての加工作業になるので、フローリングの床の実験室で作業するよりも、石材で造られている倉庫エリアの一角を加工して設置した方がよいと判断したのだ。
一旦作製したばかりの作業台をインベントリにしまい込み、倉庫エリアに移動する。扉を開けて正面の窓際にある棚を退かせば丁度良いスペースが取れそうだったので、早速移動させて設置をしてみた。思った以上にぴったりとはまったので、ここに作業台は設置することにして、いったん戻って次は消音結界の魔導具を作ることにする。
「場所は決まりましたが、北側の窓なので明るさが足りませんし、スタンドタイプの照明器具も合わせて作ってしまいますか。こっちも構造はシンプルですしサクっと作っちゃいますかね」
両方とも魔導回路と動力炉が少し複雑な以外、構造は非常に簡単なものなので、特に時間をかけることなく作製し終えてしまった。
アイテム名
『消音結界魔導具』(高品質)
一定時間、本体から半径1.5mの音を遮断することが出来る。魔石を消費して稼動する。
作成者:那戳
アイテム名
『照明スタンド』(高品質)
魔石を消費して発光する照明。ある程度稼動範囲があるため照射位置の変更可能。
作成者:那戳
取り敢えず、これで彫金細工師に必要そうな設備を揃えることに成功したので、ひと息付くついでに、放置していただいこんの成育状況を見てみることにする。
どうやら今回はハズレだったようで、すべて『おバカだいこん』であった。まぁ、前回の『シュウサイだいこん』が運がよかっただけで実際はこんなものである。落ち込む間もなく、さっさと四巡目の準備を完了させて、晩御飯を食べて作業に戻ることにする。
女神様から貰ったパンとパリムの実、それとクッキーだけの夕飯をさっさと水で流し込んでしまい、残った作業を消化してゆく。
次は構造が簡単な革細工作業台を作製の予定だ。こちらもベースになる作業机は買ってあるのだが、彫金作業台の様に特別な機材を作る必要がないため、そこまで加工に時間はかからなかった。しいて言えば、作業しやすいように机の角度を調整したり、形を切り出し、最後に金属板を上に被せて終了なので、彫金作業台の3分の1程度の時間で作業が完了してしまった。
一応こちらもハンマーを使ったりはするで、彫金作業台の横に設置して、間に消音結界魔導具と照明スタンドを置いて両方で使えるようにしておいた。
さて、最後はアキのために魔導ミシンを作成してしまう。実は魔導具タイプのミシンは構造が複雑で制御基盤の作製が非常に困難なため、足踏みミシンという魔石を使わないで作業するタイプの物がゲーム時代に主流となっていた。
だが、そこに目をつけたナタクの所属していたクランの仲間達は、一丸となってこれの製造に着手し、見事基盤の製造を成功させていた。その基盤を他の者には解読できないよう様々な言語や配線を活用してこれを隠匿して、高額魔導具として販売をしていた過去がある。
その時の開発に携わっていたのがナタクであり、最も重要な基盤作製を任されていたので、構造にも明るい。ただ、必要なパーツが何種類もあり、形も複雑なため作製するのにはかなり時間のかかる根気の要りそうな作業であった。
「今日の残りは、彫金作業台に缶詰めになりそうですね。タイマーをセットしてだいこんを見に行くのを忘れないようにしないと」
その後、作業台の出来を確認しながら素材の切り出しや加工をおこない、作っては組み立て、また作っては組み立てを繰り返し、漸く形になった頃にはすでに深夜といっても差し支えない時間になっていた。
素材的には特別な材料は使ってはいなかったのだが、パーツの一つ一つが特殊な形をしているため、慣れているとはいえ、どうしても加工に時間がかかってしまったのだ。
後は基盤に特別な加工を施した魔石を填め込めば完成なのだが、その加工をするための“ある道具”が足りないことに気が付き、なくなく作業がストップしてしまった。
「昔は分担して仲間達と作っていたから、そこまで時間を掛けずに作れていましたが、やはり一人で全部の工程をこなすと時間が掛かりますね。少しは寝ておかないと明日の作業に差し支えますから、今日はもう休むことにしますか。
しかし、回転砥石の存在をすっかり忘れていました。機構は作れても、肝心の砥石になる硬い石がありませんので、明日はそちらも買い足さないと駄目ですね。それと魔石もこのペースで消費してたら、直ぐになくなってしまうので、早めに補充しておかないと」
ちなみに、あれからだいこんガチャは3回おこなったが、すべて『おバカだいこん』であった。やはり、1%の壁は高かったようだ。そもそも2巡目で『シュウサイだいこん』が収穫できたのが奇跡みたいな物なのであって、そうそう当たりが出ることはないのである。落ち込んでいてもしょうがないので、今日はもう1度合成した種をセットして、大人しく寝ることにした。
さて、そろそろ寝ますか(*―ω―*).zzZ
【おバカだいこん】(๑⊙ロ⊙๑)にやぁ




