第25話 転生4日目1-4
あれからしばらくの間、黙々と二人でポーション作製に励んでいたのだが、不意にセットしていたアラームが鳴ったので、視界の端に設置してある時計を確認してみると、丁度15時を知らせていたので一息入れることにした。
「アキ、そろそろ一回休憩を挟みましょう」
「あれ?先生もポーションの作製をしていたんですか?てっきり品種改良の方に付きっ切りかと思ってました」
「えぇ。あちらの方はだいぶ前に作業を終了させて、今は成育待ちの状態ですね。たぶん後30分くらいで一回目の結果が出るので、それまで少し休憩しましょう。今お茶の用意をしますね」
「あっ!さっき先生が鉢植え買いに行ってる間に、屋台でクッキー買っておきましたよ。これをお茶請けにしましょう」
「それはナイスな提案ですね。それじゃ、今日は少し渋めのお茶にしますね」
「お願いします。それでは、私がお湯を沸かしてきますので、先生はお茶の葉と茶器の用意をお願いします」
そう言ってアキナは給湯器のある場所へと向かって行った。お茶の葉の配合もなれたもので、アキナがお湯を持って戻ってくるまでには、全てセッティングを完了させていた。今日はお手軽の方で飲む予定だ。
「このお茶もこの前と違った味ですけどかなり美味しいですね。なんでこんなに色々な種類を知っているんですか?」
「この前話した通り、勉強したのもありますが、殆ど趣味みたいなものですね。後、クランのホームで良く仲間達とお茶を楽しんでいたので、自然と入れる回数も増えていきましたから。飽きないように、色んな種類を試していた時の副産物みたいなものです」
「成程、このほのかな渋みがクッキーに合いますね。今日も美味しくて大満足です」
「そういえば、錬成の方は順調ですか?まったく失敗してなさそうなので、さほど心配はしていなかったのですが」
「そうでした。先生、聞いてください!スキルもかなりたくさん覚えれましたし、高品質も今連続で成功中なんですよ!この錬成陣って本当に便利ですよね。これを使っていれば、ワザとポカでもしない限り失敗なんてしそうにありませんよ。このままいけば、帰る前には等級5は卒業できそうです!」
「錬成の流れが解りやすいですからね。きっと今から普通の錬成陣で作業しても、問題なく作業ができると思いますよ」
「はい!なんか少し苦手意識があった錬金術が、今では大好きになりました!」
「それでは明日は等級4系の錬成に入る前に、アキに別の作業をお願いしたいのですがよろしいですか?」
「あれ?ポーション作るんじゃないんですか?」
「丁度等級4から難易度が一気に高くなるので、作製作業をスムーズに行なえるようにするために、専用の作業着一式の作製依頼をしたいのですよ。裁縫師の腕の見せ所ってやつですね」
「おぉ!衣類の作製依頼ですか!!是非やらせてください!!!」
「勿論、お願いします。それで、俺が作ってもらいたい装備なんですが、『錬金術師の白衣』『作業用シャツ(汎用)』『作業用ズボン(汎用)』『鍛冶師の前掛け』『鍛冶師用の作業シャツ(タンクトップ型)』『鍛冶師用の作業ズボン』この6点になりますね。アキも自分用の物を用意してください。ここから先は作業着がないと結構きついので」
「りょうかいです!格好いいのを作ってご覧に入れますよ!!自分のはどうしようかな?私も錬金術師と裁縫師用の服を両方作っちゃうのもいいですね」
「それと、完成品のエンチャントは任せてください。高品質で仕上げてくれれば、追加でもう1つ性能が加算できますので、期待してますよ」
「職人魂が燃えてきますね!その依頼、見事成功させて見せますとも。私の本職の仕事ぶりをご覧に入れます!」
「お願いします。俺の方ではアクセサリー系と作業用の靴、ベルトなどの小物系を担当させてもらいますので期待していてください。こっちも装備関連を作るのは本職なので」
「かなりの作品をが出てきそうで、ちょこっと恐いですね。それでは、こちらは領主様の前でも一流研究者に見えるようなデザインの服でも考えて、対抗させていただきますね。今夜はデザイン画を書いているだけで寝られなくなりそうですね。ふっふふ♪」
「やはり、本職の作業を考えてる時間は楽しいですよね。俺も早く鍛冶を触りたいです。見習いが終わったら、全力で槌を振る準備をせてもらいましょうかね」
「見習いも結構あっという間でしたね。本当に街から一歩も出ないで終わりそうになるとは思いませんでしたよ」
「代わりに、戦闘職のスキルを発現させる時間がありませんでしたので、そこだけが残念ですけどね。まぁ、代案は用意しているので乞うご期待ってことで」
「そういえば、なんでしたら戦闘職の服も用意しますけど、どうしましょうか?どの職業の装備とか希望はありますか?」
「いえ、そちらは今の服装でしばらく大丈夫ですので特に問題ありませんよ。ある作業が終わりましたら、改めてお願いしますので、もう少し待っていてください」
「分りました、では自分用の戦闘服もその時に作りますね」
「錬成道具なんかも作れますので、必要なものがあったら言ってくださいね。中位クラスまでは、大抵のモノが作れますので」
「う~ん、しいて言えばミシンは欲しいかもですが、今回はギリギリ中位くらいの作業内容の予定なので、手縫いで十分問題ないと思いますよ。錬成でおこなえば、それなりに早く縫うこともできますので」
「了解です。では、用意できたら作ってみますね。俺の方も彫金細工師関係でいくつか作らないといけない道具がありますので」
「作業はここでやってしまってもいいんですかね?思いっきり別の職業の作業をする予定ですが」
「アトリエだと思って使ってしまって構わないのではないでしょうか?特に施設を壊したりはしませんし、錬金術って色々なことをやるので、その延長だと思って割り切ってしまいましょう」
「分かりました。それでは明日は裁縫ギルドで生地や各種道具を揃えてからこちらに来ますね。それと、作業服ですが色とかデザインで希望とかありますか?できるだけ希望にそって作れますが」
「せっかくなのでお任せしますよ、あまり派手過ぎなければ問題ありませんので。ベルトや靴は革を使うので、なるべく何にでも合うような暗めで目立たない色を選んでおきますね」
「任せてもらえるなら、更にやる気が出てきますね!もう何パターンか頭の中でイメージが出来上がっているので、明日作る前にデザイン画を見せますので、その中から選んでください。色は全パターン同じにしておきますので」
「それでお願いします。それと、俺は今日ここに泊まって魔導具作りと品種改良の経過観察を行いますね。宿の方には外泊すると伝えてください」
「分かりました、伝えておきますね。そういえばここ仮眠室ありましたもんね」
「まだ一度も使っていませんからね。せっかくなので利用させていただきますよ」
明日の予定が決まったところで、丁度品種改良の1回目の結果を知らせる音が鳴り響いたので、様子を見に鉢植えの前へと移動する。
「どうやら、一回目では成功しなかったみたいですね」
「ということは、これが『おバカだいこん』ですか?」
「そうですね、引っこ抜いてみてください。ちょっと面白いですから」
「なんですか・・・変な事とか起きませんよね?」
「それは大丈夫ですよ。ささ、どうぞ見てやってください」
「それでは失礼をして・・・・なんか凄いバカ面の顔に見えるシワがありますね。名前の通りバカっぽいです」
「それ、乾燥させるともっと面白いですよ。種の収穫のために枯らしますのでちょっと見ててください」
そう言って鉢植えに戻し、止まっていた時間を進めて種が収穫できるぐらいまで『おバカだいこん』を枯らしてみせる。いい感じまで枯らしたものを、もう一度引き抜いてアキに見せてあげた。
「今度は苦悶の表情に見えますね。有名な絵画みたいな・・・って本当に何なんですか、この作物は!!」
「この状態の物を薪材として利用するんですが、少し罪悪感がわきますよね。慣れてくると気にしないで火にくべる事ができるのですが、最初はすごい抵抗感がありましたよ」
「これ以外用途がないのに、それすら罪悪感を与えてくるなんてすごい植物ですね・・・・」
「何故このような植物が生まれたのは分りませんが、ゲーム時代にも昔から存在していたみたいな話を聞いたことがありましたから、古くから人間と寄り添って生きてきた植物らしいですよ」
「でも、なんでこれを冬に畑に植えると麦の収穫量が上がるんですか?」
「これは憶測なのですが、豆科の植物同様に窒素化合物を生み出しているのではないでしょうか?
後、このだいこんは寒さに強いだけで、実はいつでも栽培が可能な植物になります。なので畑に何も植えることができない冬の時期に、畑を休ませるためにあえて植えられているのですよ。実際森なんかでも、コイツの自生したのがいつでも見つけることができますので、取ろうと思えばいつでも収穫できますよ。しかも、不味いせいで虫にすら食い荒らさせる心配がありませんから」
「ある意味森では最強なんですね。天敵がいないとは・・・・」
「それでは、もう一回合成した種を仕込んでまた放置しますね。アキが帰る前にもう一回ぐらいは結果が分ると思いますので」
「はい、先生!それでは私もポーション作りに戻りますね。明日のために資金を貯めねば!」
「俺もこれが終わったらポーション作製に戻りますね。こっちは早めに1%が出てきてくれれば嬉しいですがね」
それから、苦悶の表情を浮かべた特に今は使い道のないだいこん達を倉庫にしまって、またポーション作製に戻るナタクであった。そのうち、処分方法も検討しなければいけないな・・・・
【おバカだいこん】(๑⊙ロ⊙๑)
なんだこりゃ( ゜Д゜;)!?




