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第21話  転生3日目1-8

 

 ギルドマスターであるガレットとの交渉を無事に終えて、今は自分達の実験室へと戻ってきた。


 さっそく約束の品をアメリアに手渡すと、彼女は嬉しそうに自分の実験室に帰っていった。何でも、これから助手のリズベットに自慢しに行くんだそうだ。


 そう言いつつも、(しっか)り二セット持ち帰っていたので、散々からかった後にでも彼女へ渡すのであろう。そんな事より、『自分の研究はいいのであろうか』とも思うが、ガレットも気にする素振りがなかったので、きっと上手いことやってはいるのであろう。



「さて、そろそろいい時間ですし、俺達も帰るとしますか」


「りょうかいです。しかし、何だかんだでクッションを作るつもりが、すっかり忘れていましたよ。でも、お金は結構稼げましたので、今日は帰りに少し雑貨屋と服屋によってもいいですか?」


「構いませんよ。それなら俺も何か買おうかな?そういえば、こっちに来てから錬金術関連の素材やらしか買っていなかったので、身の回りの必要な物などまったく持っていないんですよね。今日はその辺を中心に見て回るとしましょうか」


「私も同じですね。昨日まで金欠だったので節約をしていましたけど、これでやっと細々した物を買い集めることができそうで嬉しいです!確か、中央大通りにそういったお店が多く立ち並んでいるんで、そっちの方に寄ってから帰りましょう!」


「分りました。それでは、しっかりお供を勤めましょう、お姫様」


「うむ!良きにはからえ♪」



 二人で笑いながら部屋を出ることにした。段々とアキナにも慣れてきただろうか。どうも初対面の女性と行動するのは苦手で、つい他人行儀になりがちになってしまうのだ。まぁ、アメリアのように容赦ない感じの人は例外ではあるのだけれど。


 どれくらいの口調でどの程度踏み込めばいいのか判断が難しくて、つい楽なので初対面の人には仕事モードを利用する癖が抜けなくなってしまったので、そこは早く直していきたいと考えている。


 反省しながらギルド本館の総合窓口のところへ行くと、ミーシャが死んだ魚の眼で受付に座っていたので、先ほどの三点セットを手渡したところ、いきなり大声で泣きながら感謝されてしまった。



「ふぇぇん。ありがとう・・ございます・・・ぐすん。お願いするのをわ・・忘れてで、もう今日は貰えないがどおもっ思っでいまじだ・・・・」


「ちゃんとあげますから、泣かないでください!周りの目が!!突き刺さるような視線が痛いですって!!」



 この後、泣き止まないミーシャをアキと一緒に慰めながら過ごし、しばらくしてからギルドを後にした。



「まさか、あそこまで気に入られているとは思いませんでしたよ」


「あはは・・・・でも気持ちはすごく分りますよ。私もこっちに来て初めてお風呂でアブルの実で身体を洗った時のあの残念な感じといったら。髪なんかも仕上がりがとってもゴワゴワしてましたからね。


 植物の油をお湯と割った物を軽く髪に馴染ませて何とかしていましたけど、これがあるなら、もうその心配はいりませんね。今からお風呂が楽しみです!」


「そういえば、まだ自分でも使ってはいないので、俺自身も楽しみですね。もし気になったことがあったら、言ってくださいね。領主様との交渉までにはなんとか改良してみますので」


「これといって、特に問題はありませんでしたよ。しいていえば、匂いを抑えた物があるといいかもですね。場所によっては匂いが邪魔になる場所もありますから。後、獣人さんの様に嗅覚の鋭い方もいますし」


「無香料ってやつですか、いいですね。さっそく、明日作ってみますよ」



 二人で話しながら中央大通りまで歩いてくると、アキナが照れながら「自分は服屋で買い物をするから」と言って、俺には先に雑貨屋に行くことを強く進められた。よく意味は分からなかったが、一旦別れて雑貨屋に向かうことにする。こういう時のミニマップのPTメンバー表示機能はいい仕事をする、待ち合わせで迷うことがない。


 雑貨屋に入ると、さっそく必要そうなものを貸し出されたカゴの中に入れていく。



「ハブラシに、クシと髭剃り用の小型ナイフ。携帯用のコップに他には・・・・」



 そこで、自分が下着の替えを持っていないことに気がついた。だから先ほど彼女は恥ずかしそうに、先に服屋に入っていったのか。解かってちょっと自分でも恥ずかしくなってしまった。



「俺も違う服屋で、下着と着替えを何枚か買いますか。服も洗いたいしな」



 取り敢えず、カゴに入っている洗面用具だけ購入してから一旦お店の外へと出る。そこでステイタスボードのオプションにあるPTチャット機能を呼び出して、アキに自分も男性用の服屋で着替えを購入しに行ってくる旨を伝えておくことにした。




 PTチャット


 ナタク

『アキ、俺も着替えが何着か欲しいので、男性用の服屋を探して買ってきますね』


『そっちの買い物が終わったら合流しましょう』


 アキナ

『この機能まであったんですか、ほんとに便利ですね!』 


『分かりました。必要な買い物が終わりましたら、連絡入れますね』




 携帯の便利アプリみたいなやり取りができて、非常に便利である。確か電話みたいな機能もここにはあったはずだが、流石に今ここで使うと独り言を喋り続ける変な奴になりそうなので、止めておいた。


 服屋を探していると、初日にお世話になった人物の店であろう店舗を偶然発見することができた。


 “ホームナー商会”と大きく看板を掲げていたその店舗は、確かにやり手の商人のお店だけあって他の店の何倍もの大きさを誇っていた。店の場所を聞かなくてもこれだけ目立つ場所に大きく建っていれば、よほどの方向音痴でもない限り見つけることができるであろう。感心しながら店の中に入ってみると、入り口のすぐ脇でリックを見つけたので、挨拶がてら声を掛けてみた。



「リックさん、こんにちは。やはりとても大きな商会のオーナーさんでしたね」


「おぉ、誰かと思ったらナタク君じゃないか。どうだい、この街を楽しんでくれているかい?」


「えぇ、しばらくはこの街に留まって色々勉強させてもらうつもりです。今日は買い物がてらこの辺りを歩いていたのですが、丁度この店を発見したので思わず入ってしまいました。ここではどんな商品を扱っているんですか?」


「嬉しいね、是非うちでも買っていってくれ。オマケしとくよ!


 うちは総合ショップになるのだけど、一階は主に食品関連、二階は雑貨や衣類・冒険者用のお役立ちアイテム。そして三階が魔導具関連を扱っているね」


「丁度よかった、替えの下着や衣類を探していたので、そちらに寄らせてもらいますね」


「それなら二階になるね。二階はうちの娘が担当しているから色々聞いてみるといいよ。どうも私は衣類のセンスだけはなかったみたいでね、娘に全部任せているが、そっちの売り上げもかなりいいんだよ。


 二階で私の名前とナタク君の名前を出してくれれば色々計らってくれると思うよ。君と会ったことは家族全員に話しているからね」


「ありがとうございます、それでは行ってみますね。今度は商談できる物も用意できたらと思っているので、その時は是非よろしくお願いします」


「おぉ、それは楽しみにして待っていないとだね。期待しているよ、若き錬金術師君!」



 わっはっは!と笑いながら店の奥へと彼は歩いていった。さて、自分も衣類販売コーナーへ向かうとしよう。


 階段はすぐに見つかったので、二階へゆっくりと上がってゆく。向こうでいうデパートの先駆けのような店舗に驚きながらも辺りを見渡すと、なかなかカジュアルな服が並んでいる衣類コーナーを発見出来たので、そちらの店内を物色することにした。


 流石に今着ている服のようなデザインの物はなかったが、『地球でこれを着ていても違和感がないのではないか?』という品揃えに舌を巻きつつ、シャツ数枚にズボンと下着をいくつか。それとラフなサンダルと靴を選んで会計窓口まで持っていくと、どことなくリックに目元が似ている女性が座っていた。



「すいません、リックさんに紹介されて来たナタクと申しますが、この商品の会計お願いできますか?」


「いらっしゃいませ!へぇ、あなたがパパの言っていたナタクさんですか。初めまして、娘のマリーです。この前は美味しいパリムの実をありがとうございました。こちらの商品は全て新品になりますが、よろしいですか?」


「はい、お願いします。それとタオルと毛布のような物も欲しいのですが、置いてありますか?」


「取り扱っていますよ。そういった商品は冒険者関連のアイテムの奥のエリアで売っていたので、分りづらかったですね。こちらです、案内させていただきますね」



 案内してもらうと、そこには結構豊富な種類のタオルや毛布などが売っていたので、まとめて何組か購入することにした。



「ありがとうございます。なかなか新品をここまでまとめて買っていただける人も少ないので嬉しいですね。しっかりオマケさせていただきますね。お荷物は配送いたしましょうか?」


「いえ、アイテムボックスのスキルがあるので大丈夫ですよ。ただ大きめの箱にまとめて入れていただけると助かりますね」


「おぉ、うらやましいスキルをお持ちですね。畏まりました、では箱代もオマケしておきますね」



 合計で金貨8枚と銀貨4枚だったが、金貨8枚までオマケしてもらえた。やはりタオルと毛布を大量に買ったため高額になってしまったが、この後“山篭り”のようなことも予定しているので、二人分なら予備も含めてこれくらいは用意したかったので妥協せずに購入しておいた。それと、やはり衣服も新品は結構高かったのだが、普通の人は貴族じゃない限り中古品も合わせて買うようだ。



「いやぁ、お若いのに金貨でぱっとお買い物をされるのは凄いですね。またご贔屓に、よろしくお願いしますね」


「はい、まだまだ入用な物も多いので、何か足りなくなったらこちらにお邪魔させていただきますね」


「その時はよろしくお願いします。お買い上げありがとうございました!」



 確かに、日本で15歳の青年が80万円の買い物をしたら、それは驚かれると思う。店の外でそんなことを考えていると丁度良くアキナから連絡が入り、その後すぐに合流することができた。



「ここが先生が初日にお世話になった商人さんのお店ですか。かなり大きいですね」


「中もまるで日本のデパートの先駆けみたいな造りになっていて驚きました。しかも結構オマケしてもらえたので、今度からはここで色々買うことにしようかと思います」


「成程、私もここで買い物すればよかったですよ。何点か買いたいけど高くて手が出せなかった商品がありましたので、明日以降また儲けて買いに行きたいと思います!もしくは、自分で縫って作っちゃいますよ!」


「そうですね、明日はたぶん朝から一日錬成漬けの予定ですから、一気にお金稼ぎとレベルを上げてしまいましょう。上手くいけば、数日で見習いも終わりそうなので、そしたら次は街の外にも行きますからね」


「了解です!って、私達せっかく異世界に転生したのに、冒険しないで部屋仕事ばかりやってますね」


「確かに、物語などではすぐに街の外に繰り出して冒険なんてしますよね。最初に大怪我をしたらお終いだと思うのですが、勇気がありますよね」


「私は逆に、街から出ないで金貨を荒稼ぎしている先生の方が若干異様に見えますよ?」


「お、なかなか言いますね!」


「えぇ、先生の弟子ですからね♪」


「それでは、宿へ帰りますか」


「はい、先生!」



 時刻は夕刻を過ぎ、宿屋へと続くその道の途中には、これからが本番だと言わんばかりの人々が呼び込みの人の声などを聞きながら酒場方へと向かっていた。そんな人々の横を通り抜けながら、二人の長い影法師が彼らの後を追いかけてゆく。こうして平和な転生3日目の夜は、ゆっくりと過ぎていくのであった。




忘れられたかと思ってましたぁ。゜(゜´Д`゜)゜。


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