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幕間:1 とある錬金術師の憤り

注意:この話は真実とかなり異なる内容が含まれます。あくまで、彼の感情と認識のみで構成されていますのでご注意ください!

 

SIDE:ドロモン


 イグオール錬金ギルド2級研究員(ゴールドクラス)、ドロモン・コルセリス。


 彼は昔、若くして実力を認められ、瞬く間にゴールドクラスまで駆け上った新進気鋭の錬金術師であった。


 当時、生物学のキメラ研究の分野において実験が難航し、研究者離れが深刻化していた際、彼の研究レポートの成果によって滞っていた研究に一筋の光を導き出し、ギルドへ多大な貢献をしたことで一躍有名人となっていった。


 ゆくゆくは王都の錬金ギルドの名誉研究員として人生を謳歌する予定であった彼だったが、次第にその夢にも陰りが見え始める。


 あくまで一分野の一度の研究で大きな成果を出しただけで、それに続く成果がなかなか巧くいかなくなってきたのだ。勿論、彼自身は遊び呆けていたわけではなく、新たに様々な研究をおこなってはいたのだが、思っていた以上に状況もあまり芳しくもなかった。


 繰り返される実験も失敗が続き、中々成果を得られることが出来なくなっていった。そして数年もすると、当時の脚光が嘘の様に、周りからもあまり相手にはされなくなり始め、それに合わせるように次第に彼の心も荒んでいった。


 だが、それでも彼は足掻き続け、いくつかの成果を元にゴールドクラスをどうにか維持していたのだが、ついに今年で査定のポイントが足りなくなり、いよいよランク降格の足音がすぐ後ろまで聞こえ始めた矢先、ある新人錬金術師が世界的な大発見をし、それがまさか自分の所属している“イグオール錬金ギルド”であることを知った彼は、非常に憤った。



 しかも、それがまだ15歳の青年であったことに、更に腹を立てる結果となった。かつて自分が、周りを退けてこの地位に就いたのは25歳の頃。それでも、当時は天才若手研究員と持て囃されていたはずなのに、それよりも10歳も若くしてゴールドクラスまで上り詰められたのだ。


 以前にもアメリアという例外はいたが、アイツは所詮ギルドマスターの七光りでその地位に就いただけの錬金術師だったので、それほど気にはしなかったが、コイツは違う。“たまたま”失われた等級2の再生ポーションの再現に成功し、そのレシピを公開するという暴挙に出て、無理やりにゴールドクラスの地位に就いた不届き者でしかなかった。


 どうせ偶然遺跡で見つけた古文書か石碑を発見して、それを再現しただけに違いないのに、自分が必死にしがみ付こうとしている地位を、たいした努力もしないで、いとも容易(たやす)くその席を掴み取ったクソ餓鬼のことが、どうしても許せなかった。



 自分には時間が無い。後数日でゴールドクラスから降格してしまい、様々な特権も失われてしまう恐怖に駆り立てられながら、少しでも時間を稼ぐために行動を起こすことにした。


 実は、もう少しで完成させられる研究もあるのだが、あのババァに研究途中のレポートなどを見せては、研究を横取りされかねないので、そのまま見せるわけにはいかない。仕方がないので、以前の研究データを多少手直しした物を持ってギルドマスターの執務室に抗議しに向かったのだが、あの耄碌ババァ、確りとそこに気が付いて取り付く島さえ与えてはくれなかった。


 クソ餓鬼についても散々抗議をしたのだが、あのババァは聞く耳を持たず。奴のおこなったであろう不正をいくつも指摘してやったにもかかわらず、感謝すらしないで事も有ろうに私に対して退室を促してきた。あんな奴よりも、私の方がどれだけ優れている錬金術師であるかということが、コイツには理解ができないようだ。



 腹を立てていると、件の青年がギルドマスターの執務室を訪ねて来たので、一旦抗議を切り上げて帰ることにした。今はここにいても時間の無駄でしかない。最後にどんな顔をした奴かを見てやろうとそちらに目を向けると、中々に顔立ちが整っている青年に、再度怒りがこみ上げてきた。しかも、助手なのだろうか、美の女神を体現させたような少女を傍らに侍らしていることが更に腹立たしい。


 そんな碌でもない輩には不釣合いだと思い、実績と経験を兼ね備えた、ベテラン錬金術師である私自ら実験室に誘ってやったにもかかわらず、クソ餓鬼にべったりしがみ付いて私を見ようとしなかったその少女にも多少イラっとしたが、自分の女に手を出すなと抜かしたクソ餓鬼の台詞にも更に憤りを感じた。1秒でもこの空間に居たくなくなったので扉を激しく閉めて自分の実験室に帰ることにした。


 部屋に帰ってきても、先ほどの怒りが収まらず、辺りの物を蹴飛ばしながら、ひとりごちる。



「どいつもこいつも、私をバカにしやがって、今に見ておれ!!この研究が完成すれば、私は再度あの脚光の中に舞い戻ることができるのだからな。


 査定の日時にはギリギリになるやも知れないが、まぁいいだろう。どうせ、この研究で、すぐにでも返り咲くことができるのだからな。それにはまず、この流れの商人から購入した“魔導書”の解読が不可欠だ。


 この魔導書に書かれている情報が確かな物ならば、研究が完成さえすれば、私は世界初の“完全なるもの”へと昇華することが叶うのだからな。精々後になって自分達の先見の明の無さを悔しがればいいのだ。



 ふっはははははは!!!!!!」



( ゜∀゜)フッハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \


再注意:この話は真実とかなり異なる話が含まれます。あくまで彼の妄想です。

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