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第41話

 

 街での火急の問題が発生したため、お屋敷で荷解きをする予定をすっ飛ばし、ナタク達は急ぎ“イグオール”の街へ帰ることになった。フギンから伝え聞いた情報を(かんが)みても、これは早急に対処した方が得策であろう。(さいわ)い、現在地から街へはそう離れていないので、直ぐにたどり着くことが可能なはずだ。



『というわけで、みんなで一生懸命捜していたの!』


「どうやらリズベットさんは完全にやらかしちゃったみたいですね」


「リズさんって、たまにアメリアさんの地雷を天然で踏み抜くらしいですからね。きっと私達が街にいない間に、また何か失敗したんでしょうが・・・・」


「今回はそれに俺達まで巻き込まれそうってことですか、これは急いだ方が良さそうですね」


「激しく同意します」


「お二人がそんなに慌てるなんて、珍しいですね。私もそのアメリア様に、とても興味が湧いてきました」


「彼女はこれから向かう“イグオール”の街を治める、公爵家のご令嬢ですね」


「それでいて先生と同じゴールドクラスの錬金術師としても大活躍なさっていて、とても頼りになるみんなのお姉さん的な存在ですね。しかも、スタイル抜群の美人さんですよ!」


「ふむふむ。家柄も良く、賢くて、美しいと。話を聞く限り、非の打ち所もないお人柄のようですね。


 ・・・・って、どうなさいました?」


「いえ。何一つ間違ってはいないのですが、ちょっと違和感が・・・・」


「あははは・・・・右に同じく」


「??」



 そんな話をしているうちに目的地である“イグオール”の街が見えてきたので、街に入るために一般審査の列に並んでいると、その途中で以前に何度か顔を合わしたことのある領兵の方に、不意に声を掛けられた。


 最初は挨拶だけかと思いきや、よくよく彼の話を聞いてみると、どうやらナタク達が街に帰ってきたら直ぐにお城へ知らせるようにと、領主からの通達が各ゲートにあったらしい。というわけで、ナタク達は審査の列から一旦外れ、そのままゲートを(くぐ)り付近に併設された領軍待機施設の応接室へと案内された。


 なんでも、自分達がこの部屋で待っている間に早馬が放たれ、その連絡を受けてお城から迎えの馬車が用意される手筈となっているそうだ。



「な~んだ。マスター達が過去に何かしでかして、捕まったわけじゃないんですね」


「ご期待に応えられなくて申し訳ありませんが、普通に考えて指名手配犯をわざわざ応接室に案内してお茶菓子まで出したりしないでしょ。しかも先ほど笑顔で対応してくれた人、ここの部隊長さんですからね?」


「アルンちゃんは私達にどんな期待をしていたんですか・・・・」


『このお菓子もうまうまなの!』



 アルンの大変失礼な勘違いはさておき、そういう事情なら致し方ないと、迎えが来るまでこの部屋でゆっくりさせてもらうことにした。またこの待ち時間を利用して、身分証を持っていないアルンのために仮の交通手形の手配や、スラキチの契約獣登録まで済ませてくれた領兵の方々には感謝の言葉しかない。


 そんなこんなで、本日二度目のティータイムを取りながらナタクは窓際に立って静かに外の様子を眺めていると、暫くして街の中心部からこちらに向かって一台の“見慣れた馬車”が走ってくる姿が確認できた。しかもその馬車はそのまま建物の真横に停車したので、これが迎えの馬車で間違いないだろう。だがこの馬車が来たということは、つまり・・・・



「ナタク君達はここか!!!」



 何時ぞやのガレットの登場を彷彿させる見事な扉蹴りを披露しながら室内に入ってきたのは、言うまでも無く、つい先ほど話題に上がっていた公爵家ご令嬢のアメリアであった。



「アメリアさん、お久しぶりで・・・・ってうわぁ!?」


「君ってヤツは、君ってヤツは!!」



 彼女が部屋に入って直ぐにナタクが挨拶をしようとしたのだが、ガッチリと両肩をホールドされ前後左右に激しく揺さぶられてしまったために、殆どまともに喋ることができなかった。事前に紅茶の入ったカップをテーブルに置いていなければ、かなり悲惨なことになっていたであろう。アメリアに遅れて、顔見知りである精霊を肩に乗せた小柄な少女と、領軍の軍服に袖を通した一人の青年が室内へと入ってきた。



「・・・・アメリア、少し落ち着いて。ナタクとアッキーもおひさ~」


「アテナちゃん、お久しぶりです!」


『あてな!お約束通り、なたく達を連れてきたの!ほめてほめてっ!!』


「・・・・フギンとムニンもおつかれさま。えらい子達には、このお菓子を全部あげるね」


『やったぁ!フギン、さっそく一緒に食べるの!』


『はいです。あてな、ありがとう』


「お嬢様、そろそろ放してあげないと本当にナタクさんが倒れてしまいますよ」


「うぅ・・・・だって!」


「先生、大丈夫ですか?」


「うっぷ。色々と・・・・シェイクされて出てきそうでしたが、なんとか・・・・


 モーリスさんもお久しぶりです。・・・・街に戻られていたんですね」


「えぇ、遅れながらつい先日に。アルマから聞きましたが、ナタクさんには色々とご配慮いただいたようで。後ほど改めて夫婦で御礼に伺わせていただきますね」


「面倒な矢面に立ってくれた、せめてもの罪滅ぼしなので・・・・あまりお気になさらずに。ふぅ、アルンも警戒を解いて大丈夫ですよ。こちらの方が、先ほど話していたアメリアさんです」


「了解いたしました」


「むむっ!アキナ君、またナタク君の周りに新しい女の子が!!」


「アメリアさん、その子はある意味無害なので大丈夫ですよ」



 流石に、この場でアルンのことを「実はヒューマノイドなんです」と馬鹿正直に紹介するわけにもいかないので、今回は『故郷でナタクの家に勤めていた家臣の娘が、自分達を心配して追いかけてきた』という設定でゴリ押しすることにした。以前から、ナタクはどこぞの国の貴族の子息ではないかと噂されていたので、それに便乗した形だ。



「それにしても、アメリアさんが貴族用のドレス姿って珍しいですね」


「うっ」


「本当ですね。私も色んな意味でびっくりしました」


「うぐぅ!」


「・・・・アメリア、自分のママが帰ってきてるの忘れて、半裸でお城の中を歩いて思いっきり叱られたの。今はその罰ゲーム中~」


「アテナ、半裸じゃないぞ!!あれは、実験室で着ていた普段着を寝巻きとして再利用していただけであってだね・・・・」


「・・・・いくら寝ぼけてたからって、あんな格好で食堂まで来たら、そりゃ誰だって怒られるよ。おばあちゃんなんか、それ見て頭抱えてたし」


「それでドレスを強制着用させられていたんですか」


「アメリアさん、今度楽に着られるネグリジェを作ってお渡ししますね」


「アキナ君・・・・よろしく頼むよ。あれを禁止されると、寝苦しくて本当に困っていたんだ」


「そういえばアテナさんは、アメリアさんの護衛ですか?」


「・・・・うん。アメリアのとこだとパパから外泊許可もでるし、給金もいいからずっと一緒にいたの。一応明日までの契約だよ」


「そうそう、今回は君達の捜索もあったからね。てっきり、アテナに頼めば直ぐに見つかると思ってたんだが・・・・」


「俺達は初日にアルンと合流してからは、日中はずっとダンジョンに挑戦していましたからね。見つからなかったのはそのせいじゃないかと」


「・・・・フギン達でも見つけられなかったから、たぶんそうじゃないかと思ってた。でも、おかげで何時もの早期達成ボーナスを逃しちゃった」


「アテナちゃんの能力からして、人探しで苦戦するのって中々無いですもんね」


「それはそれは・・・・、ではお詫びに俺からもアテナさんに指名依頼を出して構いませんか?


 もちろん、ギルド経由の正式なヤツで発注しますよ」


「・・・・えっ、いいの!?どんなお仕事??」


「実は領主様に新しいタイプの弓を作って売り込もうと考えているのですが、短距離射撃の実戦データはそれなりに揃ったのですが、遠距離射撃の方がまだ全然試せていないくて。アテナさんには、そちらのテスターを頼みたいんですよ。成功報酬は、同型の強化モデルの進呈と金貨5枚でどうですか?」


「・・・・やるやる!要するに、ナタクの作った弓で魔物狩りをしてくればいいんだよね?」


「交渉成立ですね。得物の選定はアテナさんにお任せしますので、無理をしない程度でお願いします。こちらが報酬とテストをお願いする『コンパウンドボウ』になりますね」



 そう言ってナタクがインベントリから取り出したのは、何時ぞやナタクが射撃練習で使用していた金属製の『機械弓』と呼ばれる代物であった。しかも一緒に出された強化モデルに限ってはさらに変わった形をしており、心なしか使われている金属まで違った装いをしていた。



「最初に出したのがテストに使うプロトタイプで、こっちが趣味で作った強化モデルになります。こちらは、巷で『魔導弓』と呼ばれている品ですね」


「・・・・こんな高そうな武器、本当にもらちゃっていいの?」


「構いませんよ。そもそも、似た様な武器を作る際に出た余りで作っただけなので、元手も殆ど掛かっていませんしね」


「これ普通に趣味で作るレベルを、軽く超えてる気がするんだが・・・・」


「アメリアさん、あれは先生ですよ。常識で考えると疲れるだけです」


「それもそうだね」


「なんか今、とっても失礼な納得の仕方をされた気がするのですが・・・・」


「マスター、今更ですよ?」


「・・・・それじゃ、アメリアの依頼を完遂したらさっそく試しに行ってくるね」


「後でチェックシートを用意しますので、一週間くらい使ってみて感想をください。それと、モーリスさんにもプレゼントを用意しているので、後で楽しみにしていてくださいね」


「えっ、私にもあるんですか。なんかとんでもない物が出てきそうで、少し恐いですね・・・・」


「鍛冶師として、俺からの“ささやか”な叙爵(じょしゃく)祝いですよ」


「私からも裁縫師としてお祝いの品を用意しているので、先生と一緒のタイミングでお渡ししますね」


「ありがとうございます。それでは期待して待たせてもらうとしますね」



 その後、アメリア達が乗ってきた馬車に揺られ、一路領主の待つ“セシリア城”まで全員で向かうことになった。どうやら領主の用件とは、大方の予想通りナタクの担当分の仕事がだいぶ溜まっているかららしい。


 ちなみに、馬車の中ではナタクとアキナに何か進展があったかを根掘り葉掘りと質問攻めにあったのだが、ナタクの華麗な交渉術を披露し巧みに話を躱し続けていたところ、これまで猫を被って静かだったアルンが「アキナ様のスカートの中に顔を突っ込んだ事件はありましたけどね、ついでに私も着替えを見られました」というとんでもない爆弾を投下したおかげで、危うくアメリアにくびり殺されそうになったが、アキナがフォローに回ってくれたおかげで事なきを得たのであった。

そういえば、リズさんとミーシャさんはどちらへ?(´・ω・`)


あの二人なら、戦力外で錬金ギルドへ置いてきたよ( ー`дー´)


あははは・・・(´・ω・`;)


【祝!累計2,000,000PVを達成いたしました!】

皆様のたくさんの応援のおかげで、無事に累計2,000,000PVを達成する事ができました。私が小説を書き始めて、もうすぐ2年になるんですね。楽しく書かせてもらっていたので、体感ではあっという間の出来事のようでした。これからも応援してくれたたくさんの方達に楽しんでいただけるよう、全力で頑張っていきますので、変わらぬご愛読をどうかよろしくお願い致します!

本日は本当にありがとうございました!!


秋山 つかさ

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