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第38話

 


「もう!二人して変な笑い方をしてたから、何事かと思いましたよ!!」


「すいません、つい第三層に来れたことが嬉しくて・・・・」


『こちらも、あまりに魔石が美味しそうで・・・・』



 ナタク達は現在、意図せず驚かしてしまったアキナから厳しいお叱りを受けている真っ最中である。そもそも、ダンジョン探索においてPTメンバーの命を預かるスカウトの仕事を邪魔するという行為は、向こうの世界であっても重大なマナー違反に当たるため、いくら悪気は無かったとはいえど、彼女が怒るのも無理は無かった。



「今後は気をつけてくださいね。もし罠の解除中とかだとホント洒落になりませんので!」


「『はい、以後気をつけます』」


「・・・・はぁ。それで逸れてしまった本題に戻りますけど、辺りをざっと探索してみた結果、どうやら他の罠や隠しギミック等は特に無さそうでしたよ。


 他にあったモノとしては、併走している通路への入り口と、隣の部屋へと続く扉くらいでしたね」


「なるほど・・・・、ちなみに罠の無効化はどれくらい持ちそうですか?」


「上層階と同じであれば二~三日は余裕で持つはずですが、少し経過観察は必要ですね。マーカーの方はミニマップに登録済みなので、防衛型ダンジョンであれば特に問題無いかと」


『それにしても、このミニマップっというのは本当に便利ですね。手書きのマッピングを必要としないのは、それだけでかなりのアドバンテージになるんじゃないですか?』


「実際に“書師(しょし)”というサブ職業で『速記』や『模写』などの便利スキルを覚えるだけで、十分な収入が見込めますからね。基本機能のわりにかなり優秀ですよ、このミニマップは」


「未踏破ダンジョンとかだと、入り口付近で地図屋さんをやってるプレイヤーもいましたもんね」


「未知の情報はそれだけでお金になりますからね。ただまぁ、出処が不明瞭(ふめいりょう)な場合、フェイクなんかもそれなりに多いですけど・・・・


 っと、雑談はこの辺にしておいて。今日はトコトン探索を楽しみたいので、さっそく手前の部屋から順番に攻略を始めると致しますか」


「『了解りょうかいです』」



 ナタク達が警戒しながら隣の部屋を覗いてみると、室内の構造はこれまた今までと異なった造りになっており、アルンの操る『キュプロクス』ですら余裕で暴れられそうな何も置かれていない広めの実験室と、それに併設する形で小規模な研究室が設置されていた。どうやら、この部屋は作製したゴーレム達の性能テストをおこなっていた場所のようである。



『稼動実験室ですか・・・・場所は私の記憶と一致していますが、ここも部屋の広さがだいぶ異なるようですね。それに、なにやら厄介そうなのも待ち構えているみたいですし』


「ゴーレム種“オートマタ”、名前は『メタルガーディアン』。レベルが41と43の二体編成ですか。アルンちゃん、“オートマタ”ってことは型番が存在する完成品ってことですよね?」


『肯定です。アイツは戦時中に主力兵器として戦場へ送られていた機体の一つですね。表面材質が硬化鋼(強化スチール)と魔鉄で構成された、防御特化の“オートマタ”になります。私の操る『キュプロクス』のプロトタイプともいえる個体ですね』


「やっと骨のありそうなのが出てきましたね。さすが第三層ってところですか」


「今までは殆ど“オートマトン”表記の実験機でしたもんね」


『私と『キュプロクス』で一体ずつターゲットを保持しますので、お好きな方から順番に殴り倒しちゃってください。ただし、この機体は物理攻撃に強い耐性がありますので、その点はご注意を。準備ができ次第、突貫して分断致します』


「それでは、俺はあれを試してみるとしますか・・・・


 優先順位はアルンが保持している方をメインターゲットとして、『キュプロクス』には暫く耐えてもらいましょう。アキは最初に『キュプロクス』と対峙しているゴーレムにデバフを付与してから、こちらの削りに参加してください。術構成はお任せします」


「りょうかいです。それとこの部屋には特にトラップの(たぐい)は見受けられませんでしたので、広くエリアを使っても大丈夫そうですよ!」


『ならば、敵を東西に分断しつつ戦うとしましょう。参ります!!』



 合図を出して、アルンと『キュプロクス』が二人同時に『メタルガーディアン』へと攻撃を開始した。本来、アルンと『キュプロクス』は接近している状態であると相互バフの効果でヘイトが共有されてしまうはずなのだが、どうやら今だけはその効果を無効化して運用しているようであった。


 ただし『キュプロクス』のモデルになっているだけあって、装甲剥がしを得意とする戦棍(メイス)を装備したアルン達であってもその凶悪な火力は半減されてしまっているらしく。先ほどまでの力任せのゴリ押し戦法が効き辛くなっていたため、最初は苦戦を強いられると思われのだが、なんと今回はそれ以外のメンバーが大いに活躍する結果が待っていた。



 まずナタクについてだが、彼もフィジカルと職業レベルの上昇に伴い、侍の新たな刀術スキルが次々と開放されており。その中でも取り分け金属鎧などの相手と相性が良いとされている【参の太刀『鳴雷(なるかみ)』】という雷属性のスキルを巧みに操り、切断強化とスタン効果が付与された強力な斬撃を次々と相手に叩き込んでいた。


 また、アキナもデバフで継続ダメージを与えつつ、こちらも攻撃忍術に該当する【忍法『稲妻(いなずま)』の術】を始めとする雷遁系の術を多用し、まるで“魔導師”並みの魔導アタッカーとして攻撃に参加していた。


 そして今回スラキチまでも最初から戦闘に加わっており、ナタクとアキナの雷属性攻撃に相乗効果をもたらす水属性の魔法を使用して、誰に教えてもらうでもなく積極的にサポート活動へ尽力していた。



 このように、まるで申し合わせたかのようなPTメンバーの働きによって、本来魔導アタッカーのいないがために苦戦を強いられるはずだった相手を難なく倒すことに成功したが、戦闘が終わると何故かアルンが一人だけ非常につまらなそうにしていた。



『・・・・私が一番レベルが高いはずなのに、全然活躍ができませんでした』


「いやいや、しっかりタンクの役割をこなしてくれていたじゃないですか」


「たまには私達も頑張らないと、タダ飯喰らいみたいで申し訳ありませんからね。それに、せっかくのバランス型の“忍者”なので、こういう時にこそお役に立ちませんと!」


『でも、今回は何時もの半分も削りに参加できませんでしたし・・・・


 マスター、何かよい解決方法とかありませんか?』


「う~ん。ならばいっそうのこと、この階層ではタンクを“オートマタ”達に全て任せてしまって、自分は魔導アタッカーをやってみたらどうですか?


 そもそも、アルンって雷属性の魔法が使えましたよね?」


『!?』



(ヘルムを装備しているので表情は窺えませんが、この様子だと本気で忘れていたっぽいですね)



「そういえば、アルンちゃんが魔導師のローブを着ているところって見たことありませんね。前にオーダーメイドの可愛らしい装備を一式縫って、プレゼントしていたはずなのですが・・・・」


「俺も魔鉄系の鎧などを渡した際に、一緒にミスリル製の杖を一本手渡していたような?」


『あっ・・・・あははは。てへっ♪』



 ゲンコツの一発でもくれてやりたい所ではあったが、殴ったとしても自分の手を傷めるだけだと考え直し、さっさとアルンに魔導師装備へ着替えるように指示を出しておいた。この間に、自分達は隣の研究室でも探索して時間をつぶすことにしようと思う。どうせ狭い部屋なので、それほど時間も掛からずに調査も終わるであろうし、何よりナタクがこの場に残ったところで、また要らぬトラブルに巻き込まれる気がしたためであった。



「ここには測定器のディスプレイが並んでいるくらいで、特に目ぼしい機材は無さそうですね」


「私には、相変わらずただのオブジェにしか見えませんけど・・・・


 っと、先生。奥に宝箱がありましたよ!」


「了解です、一応罠の確認をお願いします」


「えっと、トラップなんかは特に見受けられませんね。そのまま開けてしまっても構いませんか?」


「それじゃ、お願いしようかな。この階層からは宝箱も結構良い品が手に入りますからね」


「おっ、ということは久しぶりのガチャ体験が出来るんですね!」


「前回のアキの引きは素晴らしかったので、今回も大いに期待させてもらいますよ」


「うっ。あまり期待されると物欲センサーが働いちゃうので、程々にお願いします・・・・


 それでは、いきますよっ!オープン!!」



 アキナが気合を入れて宝箱を開封すると、中には小さな指輪が一つだけ無造作に収められていた。見た目もそれほど高価では無さそうだったため、彼女は内心ガッカリとしていたが、どうやら隣にいたナタクはそうでなかったようだ。



「なんか大きな箱から指輪が一個だけって、ちょっとガッカリした気分になりますね。えっと、アイテム名が『スプロール(虫食い)の指輪』。効果が『鑑定』などに対して能力の一部を誤魔化すことができる・・・・って書いてありますね」


「・・・・本当に、アキの運の良さには驚かされますね。それ、このダンジョンの宝箱で俺が一番欲しかったアイテムですよ」


「えっ!でも、能力的には微妙じゃありませんか?


 使われている台座の素材も銀製(シルバー)みたいですし、等級もそれほど高くありませんよね?」


「確かにそのままだと微妙な性能のアイテムなんですが、そこに付いてる石を素材にもう一度錬成し直すと『秘匿(ひとく)の指輪』という上位アイテムを作製することができるんですよ。


 ちなみに、そちらは『鑑定』や『看破』などを完全にブロックすることができますね」


「おぉ、それは凄い!」


「ただし、材料に高純度のミスリルと上位の魔石が要求されますけどね」


「・・・・」


「まぁ、材料は全部ありますので後で加工してお渡ししますね。このアイテムは最低三つは欲しいので、アキがまた引き当ててくれることを祈ってますよ」


「なるほど、人数分ってことですか・・・・」



 唯一の救いは元になる指輪の等級が低いため、結構宝箱から出現することなんですけどね。さてと、そろそろアルンの着替えも終わっている頃でしょうし、あちらの部屋へ戻るとしますか。


 この階層にはまだまだ欲しいアイテムなどがいっぱいありますからね。この調子で、ドンドン拾い集めてしまいましょう!!

いつの間にそんな服まで用意していたんですか?(´・ω・`)?


モデルが良いので頑張っちゃいました(*´Д`)ノ


ぬぎぬぎ(/ω\*)

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