幕間:とある少女の忘れ物
SIDE:アキナ
おはようございます。今日も太陽さんは勤勉ですね!
今だけは吸血鬼さんが日差しを浴びて灰になるのが、少し分かる気がします。
まぁ単純に、時間を忘れて作業に没頭し過ぎて完徹してしまっただけなんですけどね・・・・
昨夜はダンジョンから拠点へ戻って直ぐに、お昼に先生から渡されていた『化粧品』の研究レポートを紐解こうと自室にて黙々と読み進めていたのですが、あまりに集中していたためか、気が付いた時には普段就寝しているような時間になってしまい、慌てて身支度を整えベットに潜り込んだまでは良かったんです。
ですが・・・・お察しの通り。いくら寝ようと試みても、先ほどまで目を通していた資料がどうしても気になってしまい、「ちょっとだけなら」という軽い気持ちから枕元のランプを点灯し、再度読み始めてしまったのがそもそもの間違いでした。
まぁ研究レポート自体は、日をまたぐ前には何とか読み終えていたんですけどね。しかしながら、今度は覚えたての知識を今すぐ試したいという、強い行動欲求が膨らんでしまいまして・・・・
もちろん、今はダンジョン攻略の真っ最中ですので、明日のことを考えるならもう寝ないと駄目なのは十分に判ってはいたんですよ?
ですが、どうしてもこの欲求に抗うことが出来ずにいたので、「せめて一つだけでも作製してしまえば、この衝動も少しは・・・・」という甘い考えが頭をよぎり、試しに一番手頃そうな化粧水の錬成を始めてしまったが最後、結果的に外が薄明るくなるまで私の暴走は治まることはありませんでした。
ちなみに、私がここまでハマってしまったのにも、ちゃんとした理由がありまして・・・・
実は、私には向こうの世界で化粧水や美容液などを自作していた美のカリスマみたいな知り合いがおりまして、その方から色々アドバイスを頂きながら自分でも何度か挑戦してみたことがあったのですが、まさか此方の素材を使って、それらにまったく引けを取らないハイレベルな品々を“ポン!”と作れるようになるなんて、普通は夢にも思わないじゃないですか!
それにここ最近はお金に余裕も出来たので、淑女の嗜みとして街で此方の世界の化粧品をいくつか買い揃えていたところなんですが、その殆どが私から見てもあまり品質が優れない物が多いのにもかかわらず、購入に躊躇してしまうような高額商品ばっかりでしたので、そんな状況下で先生からこんな素敵レシピを渡されてしまったら、これはもう私じゃなくても完徹不可避なんじゃないかと思うんですよ!!
・・・・いえ、ただの言い訳です。本当にすいませんでした。
と言いますか、実は今頃になって心地よい眠気と疲労感が襲ってきてるんですよね。
これ、本当にどうしましょうか・・・・
取り敢えず、もうそろそろ日課の朝稽古の時間になるので、先生が起きてくる前に冷たいお水でしっかり顔を洗って目を覚まし、くっきりと現しているであろう目元のクマさんは、先ほど完成したばかりの新たな相棒達でどうにか隠すしかありません!
まずは、洗面所で洗顔をしてお化粧の下準備を済ませませんと。流石に徹夜明けの酷い顔は、先生だけには見られたくありませんからね。
って、そういえば直ぐ寝れるようにとパジャマのままで錬成をしていたんでした!!
えっと、確か普段着+αの戦闘用装備はセット番号の・・・・ほいっと、これで完璧です!!
とにかく残った時間は有効活用して、できるだけ素早く朝の準備をしなくては!
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時間に追われ慌しく自室を飛び出ていったアキナであったが、ここで一つ、普段の彼女であれば決してしないであろう些細なミスが起こっていたことに、この時の彼女はまだ気が付くことが出来ずにいた。
ちなみにそのミスとは、彼女が昨夜から賢明に読み耽っていたとある研究レポートの下敷きになっている、ナタクにとっても因縁深い、とある黒くて小さな布切れの存在が関係していた。
そもそも彼女が所持している洋服や装備の殆どには、ナタクによってエンチャント『クリーン』のようなとても便利な特殊機能が施されているのだが、例外として下着などの一部のアイテムにだけは、それらの付与はなされていなかった。
理由はまぁ、特に述べる必要もないであろう。
そしてそんな数少ない例外の中には、当然毎日履き替えるために『携帯型ドレッサー』のセット装備にもあえて組み込まれていなかった、アキナが下着を守るために欠かさず使用していた“とある肌着”も含まれていたわけで・・・・
この些細なミスが、この後起こるちょっとした騒動の切っ掛けに繋がるのだが、それはもう少しだけ先のお話である。
(社長、元気にしてるかなぁ)○。(*´﹀`*)




