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第29話

 

『グラスカットマン』との戦闘を皮切りに、他のエリアも次々と制圧して回ったナタク達であったが、途中幾度(いくど)となく異なるタイプのゴーレム達が行く手を阻まんと立ちはだかるも、この階層で今のアルンと『キュプロクス』の黄金コンビを止めることができる者など皆無だったらしく、殆ど一方的に破壊しただけで戦闘が終わってしまい、彼らの尊い命は小さな魔石と僅かばかりのドロップアイテムに姿を変えるという悲しい結末を迎えていた。



「どうやら、アルン達のポテンシャルを見誤っていましたね。午後の予定は、もう少し考えた方が良さそうかなぁ・・・・」


「私達、ほとんど何もしてないのに制圧できちゃいましたからね」


『ふぅ、気分爽快。とってもスッキリしました!』


「そりゃ、あんだけ無双できればそうなるでしょう。ただまぁ、アルン達が暴れてくれたおかげで情報収集はわりと(はかど)りましたので、二周目以降はもっと効率よく回れると思いますよ」


「これ以上とか、相手からすればただの悪夢でしょうね。っと、そういえば途中でちょろっと確認してきましたが、最初に出会った敵さん達はもうちゃんと湧いてるみたいですよ。それに種類や強さも殆ど一緒でしたので、湧き時間も防衛型の平均より少し短めの20分弱ってところですかね」


「そちらも予想通りでしたか。後は宝箱に関してですが、こちらは残念ながら全てハズレていましたね。まぁ、最初はこんなもんでしょ」


「低等級のポーションがこんなにたくさんドロップしても、今じゃあんまり嬉しくありませんしね。ところで、ここでのレアドロップって何になるんですか?」


「えっと、確か第一層の宝箱からは『鑑定鏡』っていう小洒落(こじゃれ)たメガネと、魔物が稀に金鉱石を落としたはずですよ。ただ宝箱の本命は第三層からになりますので、鍛冶師としてはわりと出やすい鉄鉱石の方が嬉しいですね」


「『鑑定鏡』って、ちょっと微妙ですね。あれって結構色んなダンジョンでドロップしますから、買取価格もかなり低かったはずですし」


「確かに向こうだと供給過多で買い叩かれていましたが、この前リックさんのお店で買い物した時に銀貨5枚で売られていたので、今の環境下なら拾い集めるのも有りかもしれませんよ?」


「あのメガネに銀貨5枚って、本当ですか!?」


「プレイヤーにはあまり人気はありませんでしたが、鑑定能力のかさ増しも出来るはずなので、無理に売らずにミーシャさん達ギルド職員へのお土産にしてもいいかもしれませんね」


「あっ、それなら喜んでもらえそうですね!」


『マスター、そろそろ休憩をやめて二週目に行きませんか?スキルのクールタイムも、全て復活いたしました』


「おっと、結構ゆっくりしてしまいましたね。それではさっそく二週目に、っと行きたいところですが、ちょっとその前にアキとアルンに少し提案したいことがあるんですよ」


「『??』」



 顔を見合わせ首を傾げる二人に対して、ナタクの提案とは二週目以降の周回ついてであった。


 まず最初に回った方法だとナタクとアキナに殆ど出番が無く、このまま周回を重ねると二人のスキル上げが致命的に上手くいかなくなるので、二週目以降はアルン達には別行動で攻略を継続してもらい。その間にナタクとアキナで『クレイゴーレム』という『グラスカットマン』の隣の部屋に配置されていた鈍足のゴーレムを安全地帯まで引っ張り出し、そこで移動阻害系のデバフを使った動く的にできないかという作戦であった。


 ちなみにこの『クレイゴーレム』という魔物、名前の通り粘土のような外装で相手の攻撃を受け止め物理ダメージを抑えることができるとても優秀な防御能力が備わっているのだが、先ほど遭遇した際には有無も言わさず、まるで熟れたトマトを潰すかのようにアルンと『キュプロクス』にゴーレムの弱点であるコアごと粉砕され、せっかくの長所を活かすことなく腕力ゴリ押しで倒されてしまった、少し可哀想な相手であった。



「要するに、ボス戦なんかでよく使われる“マラソン”をすることですね」


「簡単に言えば、そういうことです。それに先ほどまでの戦闘でフィジカルも25までに必要な分が集まったようなので、レベル30ぐらいの個体であればレジストされずにデバフが入れられるじゃないかと思うんですよ」


「確かに、レベル上げのPT戦でもターゲットにする敵の強さって自分のレベルの+3~5くらいの相手を狩りますもんね。それに先生が用意してくれていたブーストアイテムもたくさんありますので、私的には大賛成です!」


『私としましては、お二人には危険な行動はなるべく控えて頂きたいのですが・・・・分かりました。それでは“ポーン”を置いていきますので、何か不測の事態が起こった際はこの子を盾に使ってください』


「と言いますか・・・・この子もさっき、そのゴーレムをあっという間に切り刻んでいたような?」


「まぁネームド(機体名持ち)でないだけで、“ポーン”も十分強いですからね」


『ちなみに、スラキチさんは私達と一緒でいいんですよね?』


「えぇ、なにせこちらではポーターが必要なほど敵を倒すことができませんからね。そちらでしっかり働いてもらってください」


『畏まりました。それではスラキチさん、私達は三人で楽しく遊んで参りましょう!』



 今後の方針も決まったので休憩をしていたスタート地点を後にして、次の目的地である『クレイゴーレム』の待ち受けるエリアまで全員で移動することになったのだが、その手前を守護する『グラスカットマン』達はもはや何の見所も無くアルンとその配下のオートマタ達に討伐されてしまい、強いて語るとするならば、本日の討伐時間の最短記録を叩き出したぐらいであった。



「うわぁ、本当に効率よくなってますね」


「先ほどは様子を見ながら進んでいたので、周回するのに40分ほど時間が掛かっていましたが、この調子だと二週目以降は半分くらいの時間で回れそうですね」


『さてと、マスター達の準備ができましたら『キュプロクス』を次のエリアに突っ込ませますので、どれでも好きな個体を選んで持っていてください。釣り出しが終わり次第、残りを順次殲滅しますので』


「了解です。それではアキ、レベル30の個体がいたら教えてください。最初は、俺が弓で削って引き込みます」


「ちょっこっとお待ちくださいね。あの子は32で、あっちの子は34・・・・


 いました、一番左にいる子がレベル30です!」


「あれですね・・・・それではアキと“ポーン”は先に安全地帯まで後退をお願いします。ここでデバフを入れてしまうとアルン達の邪魔になってしまうので」


「それだと、残った先生が危険じゃありませんか?」


「それを見越して元々足が遅い種類を選びましたので、これだけ距離が離れていれば、余程の事故でもない限り追いつかれる心配はありませんよ」


「あっ、なるほど!」


「それとデバフに関しても、今回に限りスリップ系(継続ダメージ)も抜きで大丈夫です。なにせゴーレムの治癒能力よりダメージが上回ってしまうと、また釣ってこなくてはいけませんからね」


「りょうかいです。それでは投擲物も、手持ちで一番攻撃力の低い『千本(鉄製)』に変更しておきますね」


「俺も矢のグレードを二段階ほど下げるつもりです。それじゃアルン、よろしくお願いします」


『畏まりました。オーダーです、『キュプロクス』ちゃんは次の指示まで隣の部屋で防御体勢を維持しなさい!』



 アルンに従い、大盾を正面に構えて『キュプロクス』が魔物の集団へ突撃を敢行(かんこう)したのを確認しながら、ナタクも弓による遠距離射撃の態勢に入ったまま、まずは『キュプロクス』が敵全体のヘイトを稼ぐのを暫し待った。


 こういった場面で戦闘初心者にありがちなミスとして有名なのが、功を焦ったお調子者が敵の『感知タイプ』をちゃんと理解もせずにファーストアタックを奪ってしまい、運悪く部屋全体の魔物のヘイトを一身に集めてパニックに陥り、尻拭いに巻き込まれたPTメンバーも含めて全滅してしまうという笑話が昔からよくあるのだが、ゲームであれば笑って済ませるかもしれないが、流石にこの環境下でそんな事故は容認できないため、ベテランの“ハイジンさん”であるナタクといっても、そこには細心の注意を払って事に当たっていた。


 ちなみに今回のターゲットである『クレイゴーレム』の『感知タイプ』についてだが、まさに巻き込み事故を誘発しやすい『集団共有型』という集団で死角を補いながら探知をおこなう魔物になるため、仮にナタクが先に手を出してしまった場合は、大惨事になっていた可能性も否定できなかった。



『キュプロクス』が敵の集団に近づくと、案の定、一番近くにいた一体が反応を示した途端に部屋に散っていたゴーレムが一斉(いっせい)に『キュプロクス』へ殺到したので、頃合を見計らってターゲットであるレベル30の個体に対して正射を開始した。


 最初に放った矢はなんとか狙っていたゴーレムの右肩付近に命中したようであったが、たった一発ではヘイトリストの最上位にランクインはされないようなので、続けて二射三射と射撃を重ねてゆき、五射目にして漸く『キュプロクス』からターゲットを剥がすことに成功した。



「お待たせしました。それでは俺も向こうへ移動しますので、後はお任せします」


『任されました!『キュプロクス』ちゃん、今出て行くヤツ以外はもう反撃しちゃって構いませんよ。殴られた分は100倍にしてお返ししちゃいなさい!!』



 背中に『クレイゴーレム』の「ズシン・・・ズシン・・・」という鈍い足音を聞きながら、転ばぬように気をつけつつ、一目散にアキナ達が待ち構える安全地帯までひた走る。途中その更に後ろで大きな破壊音が度々聞こえてきたので、どうやら向こうも本格的な戦闘を開始したようだ。



 さぁて、これからいよいよ楽しい射撃大会の幕開けです!!


『キュプロクス』ちゃん、亀さんモード発動!(`・ω・´)


(浦島さんかな?)(´・ω・`)

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