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第26話

 

 アルンとオートマタ達との接続(リンク)も無事に繋がったようなので、PT編成を済ませたナタクとアキナ、そしてスラキチの三人はゲートキーパーから少し離れたところで戦闘の始まりを暫し見守ることになった。これはヘイト管理の関係で、初めにアルンとオートマタ達だけで戦う必要があったためだ。


 そして本日の作戦の要であるアルンだが、他の三人がゲートキーパーから離れたことを確認すると、以前にナタクから渡されていた“携帯型ドレッサー”を使って最近着慣れてきたメイド服から一転、彼女と最初に出合った時に着ていたダイバースーツのような薄手の衣装に着替えを済ませると、戦闘を始めるための最後のピースとして“ある魔法”の準備に取り掛かった。



「クリエイトマジカルアーマー:『キュプロクス』を発動。戦闘モード“ルーク”への完全移行:開始」



 アルンが右腕で空を横に斬るような動作をしながらそう告げると、今度は彼女の足元へ大きな魔方陣が展開され、陣から伸びた無数の光の柱がそのまま彼女を包み込むと、やがてその光が弾けて現れた彼女の身体には、先ほど召喚されたばかりのオートマタ『キュプロクス』をモデルにしたような、女性らしいフォルムに変化した漆黒の鎧が装備されていた。



『実際に身に付けるのは初めてですが、流石はマスターの作品ですね。適性レベルのペナルティせいか多少の重さは感じますが、それを抜きにしても中々の装備のようです』



 自身が纏った鎧を繁々と観察しながら満足げに頷くアルンの様子を見る限り、どうやら無事に用意していた装備を正しく最適化することができたようである。無論、この能力についてもナタク自身はゲームの頃から知っていたので別段驚くようなことではなかったのだが、つい説明を忘れてしまっていたアキナの方はそういう訳にはいかず、現在開いた口が塞がらなくなってしまっていた。



「先生、今のは“携帯型ドレッサー”ではありませんよね?」


「あれがモードチェンジの真の実力ですね。アルンはオートマタが身に着けている装備を、丸ごと再現(コピー)することができるんですよ。


 ただ、詳しいことは本人でも良く判ってはいないんだそうですが、たぶんこれには彼女の核として使われているダンジョンコアを利用しておこなっているのではないかと推測できます。ちなみに、オートマタ達の鎧や武具も全部俺の自信作ですので、ここのボス達よりも高性能な物であるのは保障しますよ」


「あ、あの大きな鎧まで先生のお手製だったんですか・・・・」


「作った当初はもう少しだけ小さい、2mちょっとの鎧だったんですがね。これには人形使い(ゴーレムマスター)が使えるアイテムボックスの類似スキルである“格納庫(バンカー)”というオートマタを格納するための特殊な機能を利用したんですが、不思議なことにその内部でオートマタに鎧や武具を装備させたりすると、なぜか装備適性の条件さえ満たしていれば勝手にサイズ変更や最適化までしてくれるんですよ。


 流石にあの大きさを魔鉄で作るとなると、出費もえらく(かさ)みますからね。お財布的には助かりました」


「2mでも十分巨大だとは思いますが、ってその魔鉄はいったいどこから?


 もしや、また私に隠れて高額なお買い物を・・・・」


「あれはこの前の領主様との取引で、報酬を鉄のインゴットで直接支払ってもらえた商談がありまして。そこで、錬金術師の等級2~3のレシピの中にレベル上げに使えそうな魔鉄精製のレシピがあったのを思い出したので、それを使ってパパッと鉄を魔鉄に変換してしまったんですよ」


「そんなレシピがあったんですか、初耳です」


「別に非公開レシピという訳ではないのですが、魔鉄自体がそんなに珍しい鉱石でもありませんし、尚且つ、錬成の要求難度が高過ぎたせいで自分で掘った方が楽だと言われていたので、あんまり知っている人も多くありませんでしたね。


 っと、それよりも。どうやらアルンが戦闘を開始するみたいなので、俺達もあちらに集中するとしましょう」


「りょ、りょうかいです!」



 再度視線をアルンに戻すと、どうやら彼女も新しい装備の動作チェックを済ませたところだったらしく。明らかに女性が軽々と持ち上げられるはずのない大きさの戦棍を、まるでその辺で拾った小枝でも扱うような自然な動作で肩へ担ぐと、まさに今からオートマタ達に指示出しをおこない、戦闘を開始しようとしていた。



『さぁ、私の可愛いオートマタ達!これが私達の初の実戦任務ですので、少々派手にいきますよ!!“ポーン”は敵のターゲットが確定するまでマスター達の護衛を。『キュプロクス』は渾身の一撃を持って、敵に己が強さを証明してしてやりなさい!!』



 アルンの号令と共にオートマタ達が命令通りに行動を開始し、ゲートキーパーの正面に立った『キュプロクス』が右手に装備されていた巨大な戦棍をその豪腕を使い一気に頭上高くへと振りかぶると、そのまま勢いを殺さずに、扉の中心部分へと目掛けて容赦無くその腕を振り下ろした。


 その激しい爆音と共に打ち出された破壊力は凄まじく、扉表面の材質が石材のような物質でできていたことも災いし、たった一回の攻撃にも関わらず、いたるところに大小無数の亀裂が四方八方へと深々と走り抜け、禍々しくはあったものの芸術作品と言って差し支えなかったその素晴らしい彫刻の施された扉は、最早見るも無残な状態へと変貌を遂げていた。



「あのぉ・・・・もしかして今の一撃で、ゲートキーパーを倒しちゃったりしてませんよね?」


「今のは扉の表面に盛られた装飾用の外部装甲を剥がしたに過ぎませんので、直にゲートキーパー本体がお目見えするはずですよ」



 ナタクが話した通りに、ボロボロと表面の石材が崩れ落ると、なにやら奥から赤黒い金属装甲のようなモノが徐々に見え始め。時間を置かずにけたたましい悲鳴のような産声を上げながら、扉から上半身だけを生やした山羊頭の悪魔のような魔物がついにその姿を現した。



「あれがゲートキーパーの本体ですね。種族はゴーレム亜種で、ダンジョンにいる他のボスと比べるとそれほど強くは無いのですが、それでも高い防御力と自己修復機能を兼ね備えた少々厄介な敵となっています」


「私達って、あんなおっかないのを毎日好き勝手に殴り倒していたんですか・・・・」


「アキの言いたいことは分からなくは無いですけどね。こういうのは気にしたら負けですよ」



 ナタク達が話している間にも、アルンと『キュプロクス』の猛攻は続いており。耳障りな奇声を上げながら一心不乱に襲い掛かってくるゲートキーパーの攻撃を上手く大盾で防ぎつつ、攻撃の隙を見つけてはその巨大な戦棍で殴り返すといったオーソドックスな戦い方をする『キュプロクス』とは対照的に、アルンの方は自分が狙われていないその状況を最大限活用して、相手の装甲をこれででもかといった具合にベコベコに歪ませながら、やりたい放題に連撃(コンボ)を叩き出していた。



「タンク以外があんなにダメージを入れてしまったら、ターゲットの固定に失敗してしませんか?」


「アルンの場合はあれで大丈夫なはずですよ。なにせオートマタは彼女がすぐ近くにいる場合、互いに恩恵(バフ)の効果を受けることができるみたいですからね。


 例えば“ルーク”の場合はオートマタ側に“自動回復機能上昇”と“防御力上昇”の能力が付与され、彼女の側にも同じく“防御力上昇”と自分が稼いだ敵対心(ヘイト)を全てオートマタに移すことができる“身代わり”というバフ効果が付くらしいので。


 それに、他のオートマタにもそれぞれの機体ごとに(こと)なったバフ効果があるみたいなので、アルンの人形が全シリーズ揃うと、本当洒落にならないくらい強くなりますからね」


「それであんな楽しそうに暴れているんですか。ってことは、そろそろ私達も攻撃に参加しても大丈夫じゃないですか?」


「そうですね・・・・では“ポーン”も護衛はもう大丈夫なので、向こうの戦闘に参加してきてください。こちらも攻撃を開始しましょう」


「りょうかいです!なにせ、本日の目標は一日で手裏剣を一箱消費することですからね。テンポよくやらないと絶対消費しきれませんので、全力でやらせてもらいますよ!」


「俺もこの日のために色々と準備を進めていましたからね。負けじと頑張らせてもらいます」



 互いに気合が入ったところで、各々今から攻撃をしようと得物を構え始めたのだが、ナタクが持っていた弓の形状が少し変わっていることに気が付いたアキナが、不思議そうに質問を投げかけてきた。



「あれ?先生は“侍”が良く使っている『和弓』ってヤツを使うんじゃないんですか?」


「あれを使いたいのは山々なんですけど、ここの大陸ではそもそも和弓の作製に必要な真竹が手に入りませんので、代替品を用意してみました。


 それにせっかく錬金術師と鍛冶師、そして彫金細工師のレベルが上がってきたので、少々構造が複雑ですが、小型でも高い威力が見込める『コンパウンドボウ』の作製に挑戦してみたんですよ」


「へぇ、そんな変わった形の弓もあるんですね」



 ちなみにこの『コンパウンドボウ』もプレイヤー達がアルカディアの世界に持ち込んだ新たな武器の一つなのだが、銃などの分かりやすい近代兵器に比べるとまだ弓の原型をある程度保っているため、あまり弓に詳しくないアキナにとっては「変わった形の弓」ぐらいの感想しか出てこなかったようだ。


 だが、実際のところはこの弓も滑車やテコの原理を応用し複雑な計算式の上に成り立つ立派な近代兵器であるのは言うまでも無く。アーネストやアテナのような一流の弓使いがこの弓を一度でも手にすれば、たちまちその素晴らしさの虜になるのは過去にクランの仲間達で立証済みである。


 なので今回ナタクが使う予定のこの弓も、実のところ領主へ新たに売り込むための試作テストも兼ねており、この機会に耐久性や射撃性能の実戦データも一緒に集めるつもりでいた。



 ただ実際に大量生産を考えると、色々着手しなくてはいけない項目が山積みなんですけどね。まぁ、その辺は街に帰ってからスポンサーのやる気に火をつけるところから始めるとして、今は此方での戦闘を存分に楽しませてもらうとしましょう!

どうしましたか、殴られ過ぎてお顔が歪んでますよ!((*´∀`)ノ


ブルブル(; ̄□ ̄)


(アキに変なトラウマができてそうだな....)(´・ω・`)

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