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第16話  転生3日目1-3

 

「アキにはまず、等級外ポーションの『治癒のポーション』『スタミナポーション』これ等を各50本づつ作製してもらいます」



 本当は『毒消しのポーション』と『麻痺耐性ポーション』も一緒に作って欲しかったのだが、材料のヒカゲダケを昨日で全部使い切ってしまって、用意することができなかったのである。


 しかもこのキノコ、等級4ポーションの材料になるため買うと少々割高となっており、大量に取りすぎてしまった薬草先生の在庫処分を兼ねて、この二つに絞ってアキには錬成をしてもらうことにした。実は薬草先生は何ヶ所も大きな群生地を見つけてしまい、ついつい取り過ぎてしまっていたのだ。



「いきなりすごい数ですね・・・・。分りました、それではさっそく作業に取り掛かりますね」


「あ、ちょっとだけ待ってください。今改良型の錬成陣を用意しますので。その間に、奥の倉庫部屋に空瓶がたくさん置いてあるので、そちらを運んできてもらっていいですか?」


「はぁい。ちなみに、どれくらいの量を用意すればいいですか?先生も作りますよね」


「そうですね、それじゃぁ予備を含めて400本分お願いします」


「うぇ、結構往復しないとですね。よぉし!頑張るぞ!!」


「あっ、ちゃんとインベントリを使ってくださいね。俺は鬼じゃありませんよ!」


「そうでした。先生、賢いですね!」



 苦笑いしながらアキを倉庫へ送り出す。



 (さて、せっかく一から教えるならあれを描くとしますかね)



 昨日自分で使った錬成陣はナタク専用の“マニュアル錬成”用なので、今回は使いまわすことができなかった。なので新たな錬成陣を描いていくのだが、通常の錬成陣では描かれる事の無い、陣の5つある星の頂点付近に、特殊な模様を描きながら錬成陣を仕上げてゆく。


 描き終える頃にはアキも戻ってきており、不思議そうな顔をしながらナタクの描く錬成陣を眺めていた。



「通常の等級外専用の錬成陣とはどうやら形が違いますけど、これはどういったものなんですか?」


「これはゲーム時代に、クランの錬金術初心者達を育成するために作った特殊な陣なんですよ。やって見せた方が解りやすいので、ちょっと実演しますね」


「はい、お願いします!」



 そう言って、アキがぺこりと頭を下げる。こういった仕草は大人びた外見をしているアキナがすると、幼く見えて愛らしい。


 用意した錬成陣を机の上にセットして素材を順番に並べていく。ここまでは通常の錬成と変わらないのだが、ここで1つだけ違うのが、先ほど大量に買い込んできた小さな魔石を取り出し所定の位置に設置する。



「あれっ、等級外ポーションなのに魔石を使うんですか?通常錬成では確か使いませんでしたよね?」


「これは、あるギミックを起動させるためのエネルギー源に使うだけですね。たいした魔力は使わないので、ギミックを起動させるだけならこれ1つで100回は余裕で足りますよ。それでは良く陣を見ていてくださいね」



 そう言って錬成陣を起動させる。今回は『治癒のポーション』だ。通常と同じ手順でプログラム通りにポーションを完成させていくのだが、ただ途中である変化が作成中のポーションではなく錬成陣の方に現れ始めた。



「あれ?錬成陣の星のところの模様が違う色で光りましたね。あ、消えた。と思ったら次はこっちが・・・・」



 不思議そうに眺めるアキが少し面白かったが、この錬成陣の肝について説明していくことにする。



「実はこれ、錬成陣によって作られたプログラムに含まれるスキルを読み込むと、違った色で光るようになっています。


 この模様が光っている間は、何らかのスキルが発動しているので、その時の変化を詳しく観察していれば、効率よくスキルを習得できるといったモノになります。


 スキルを覚えるということは即ち『プログラムを読み取り理解する』といった行為になりますので。実は術者が全てを把握してないだけで、錬成にはスキルが結構使われているんですよ。


 その積み重ねが錬成という行為であって、ゲームの時に錬成で選択して使っていたスキルは、このプログラムをより安定させるために追加で付与していたものになるんですよ。


 ちなみに、似たような錬成陣を等級3までは開発していますので、普通にやるより断然にスキル習得が早くなりますよ」



 『あれ?やけに静かだな』と思って後ろを振り返ると、アキが口を開けたまま固まっていた。はて?なんか説明でおかしなところでもあったであろうか?



「ここまでで解らない所がありましたか?説明不足なら、もっと詳しく教えることができますので、何でも聞いてくださいね?」


「あの・・・先生?これだけでも世紀の大発明なんじゃないんですか?さらっと等級3までと仰っていましたが、これを公表したら凄い事になりませんか?」


「うぅん、そこはあんまり考えないで作っていましたからね。しかもこれはお師匠との合作なので、俺一人の名前で発表するつもりは今のとこありませんので、内緒でお願いします。


 もし時が経って発表しても良いと判断できるまでは、秘密にしていてもらいたいんですよね。これで儲けるつもりは今のところないので」


「分かりました。それと、先生を常識で考えるのは良くない事が何となく理解できました。この錬成陣ついては他言無用をお約束します。しかし、よくこんなに凄いものを作れましたね。いったい先生の頭の中はどうなってるんですか・・・・」


「ただ、こういったものを研究をするのが好きなだけですよ。『より解りやすく』『より精巧に』『より無駄なく』そう心がけて色々作ってますからね。これはその副産物みたいなものですよ」


「そういえば、私が以前ゲーム時代に作った服で明らかに今まで存在していなかった形の服も作ったことありますけど、先生の説明だと新しい物って作ることはできなくないですか?」


「あぁ、いい質問ですね。それは錬成陣に完成品の情報がプログラムされているわけではなく、術者のイメージを元に錬成陣が最適解を導き出して錬成用のプログラムを瞬時に作り出しているからですね。


 これでお分かりだと思いますが、錬成陣とは地球で言うスーパーコンピューターのような高速で代理演算をしてくれる物に接続して、術者を手助けしてくれる端末機器みたいな物だと俺は考えています。


 たぶん龍脈(エーテルスポット)のエネルギーを供給元として成り立つ錬成の根幹は、その先に存在しているのではないというのが俺とお師匠の見解ですね。


 まだまだ仮説の域を出ませんけどね。これは錬金術だけではなく全ての錬成に共通して言えると思っていますよ」


「錬成陣はつまり、巨大なコンピューターに接続するためのアクセス機器ってことですか?」


「そういう物だと、俺は考えています」


「なんか、今日一日で理解が及ばない出来事がたくさんありすぎて混乱してしまいそうです。取り敢えず、先生に師事することを決めた昨日の私の英断を褒めてやりたい気持ちで一杯ですよ。先生にこの街で出会えて本当によかった・・・・」


「あはは・・・・。それでは、アキにはこれから残りの錬成をたくさんやってもらおうかな?あと、職業が発現したらセットするのを忘れないようにしてくださいね。


 この錬成陣を使えばスキルを早く取得できるのと、慣れてくれば錬成の安定性の見極めもできるようになるので、高品質を作りやすくなるはずですからガンガン作って、たくさん儲けてください。


 特にマージンなんかも取る気はないので、やればやるだけ儲けられますよ!」


「はい!頑張ってやらせていただきます!!」



 びしっ!と敬礼をしてからアキナは錬成作業に入っていった。うんうん、素直でよろしい!


 それでは、次は自分の用意を始めるとする。今日の予定は等級5系等のポーション作製と、今朝お風呂で考えていた『石鹸』『シャンプー』『リンス』辺りを作っていく予定だ。『ハチミツ』も手に入ったので貴族向けには名前を変えて『コンディショナー』として売り込むのもいいかもしれない。きっと商人のリックのところに持って行ったら高値で買ってくれるであろう。そう思うと初日に商人と出会えたことは幸運であった。


 (・・・・あれ、幸運って)


 そういえば、すっかり加護のことを忘れていたことを思い出す。たしかあれは自分だけではなくPTメンバーにも恩恵がある、かなりお得なものだったはずだ。



「アキ、今の錬成が終わったらちょっとだけいいですか?」


「はい!もうちょっとで・・・・よし、今終わりました。それで、いったいなんですか?」


「ちょっとPTを組みながら錬成をおこなってもらってもいいですか?俺が女神ユーミア様の加護を貰っていたのをすっかり忘れていましたよ。


 これがあると幸運値上昇とスキル習得率上昇がつくので非常に便利みたいなんですよ。しかもPTメンバーまでにもその恩恵があるらしいので」


「なんですかそのチート!その加護、いいな~!是非PTお願いします!」



 この世界では、お互いコブシを作りPT結成と念じながら軽くぶつけ合うとPTを組むことができる。逆に解散は任意でPT離脱と念じれば直ぐに解散できるので非常に簡単だ。



「よし、これでPT組めましたね。ミニマップにも表示されました」


「ずっとこのまま組んでいましょう!この加護の恩恵は凄過ぎます!」



 そういいながら、アキは目を輝かせながら錬成作業に戻っていった。


『それじゃぁプライベートなんてあったものではないが・・・・』と考えながらも今度こそ錬成作業に戻ることにした。まぁ、確かに便利なので彼女が嫌がるまではそのままでいいか。







私にもスキルが見える!(`・ω・´)キリッ

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