SS:とある少女の観察記
※このお話は『第二章第64話』と『第二章第65話エピローグ1-1』の間のお話しになります。
SIDE:リズベット
どうも皆様、こんにちは!アメリアさんの助手をしているリズベット・スターリンです。
ここ最近は、アメリアさんが外出気味だったので、一人実験室でのんびり過ごさせもらっていたのですが、そんなある日、いつも以上に扉を勢いよく開け放って彼女が部屋に入ってきたと思いきや、“割りの良いバイト”を見つけてきたので行ってこないかと急に誘われました。
何でも、勤務先はこの研究棟の屋上にある“第二温室”で、若手錬金術師と一緒になって鉢植えの植え替え作業をするのと、そこの現場監督をするのが私の主な仕事になるそうです。また、期間中に毎日商人さんが育った苗を回収しに来るみたいなので、そこまで一人で苗を運べるアイテムボックス持ちが条件らしく、話を聞く限り、まるで私を狙ったかのようなお仕事内容でした。
しかも依頼主が“領主様”らしく、たった十日間のアルバイトで金貨4枚と何とも破格な高額報酬。しかも、ギルドの仕事としてポイントまで加算されるので、査定にもバッチリ反映されるオマケ付き!
それに、初日はアメリアさんと同じ二級研究員の那戳さんが指導員として色々と教えてくれるらしいのです。
この高額バイトを、私は二つ返事で受けることにしたのですが、その間、アメリアさんは何をするのかと聞いてみると、どうやら彼女もナタクさんから新しい研究のヒントを貰ったらしいので、それをトコトン楽しむのだと言っていました。何でも、そこら辺にいるカビから取れる成分を分析して、細菌を撃退する薬を作るんだとか?
話を聞いてもよく解かりませんでしたが、カビで細菌を倒すって凄い発想ですね。まぁ、アメリアさんが楽しそうならいいのかな?
って、バイトを請け負ってから気が付いたのですが、これってアメリアさんが一人で研究室に篭もりたかったから、代わりにエサで私を釣り出しましたね!?
理解が追いついた時には、バイトの詳細が書かれている紙を渡されて、既に部屋から追い出された後でした。まぁ、仕事自体はおいしいのでいいんですけど、どうやら開始日時は今日からだったみたいですね。これ、私が断ったらどうするつもりだったのでしょうか?
たられば話はこの際置いておいて、時間もないのでさっそく階段を上って“第二温室”へ向かったのですが、集合時間ギリギリに到着した私が一番最後であったようで、そこにはアメリアさんの想い人であるナタクさん、彼の助手でアメリアさんの恋のライバルであるアキナさん、それと若手の錬金術師の“女の子達”が八人ほど、既に準備をしている最中でありました。
おぉ、流石このギルドで話題の若手男性筆頭のナタクさんと一緒に働ける仕事だけあって、見事に女性だけが集まりましたね。
私が到着したということで、ナタクさんから仕事内容の説明を受け、さっそく苗の育成準備に取り掛かったのですが、仕事はいたって簡単で、指定された鉢植えに土と種を入れて最後に小粒の魔石を一つセットすれば、後は一時間後に育った苗を『防水紙』と言うアイテムで根っこの部分を土と一緒に優しく包んで麻紐で軽く縛り、指定された木箱に納めれば完了らしいです。ただし、私は彼女達の監督任務があるので、種と魔石の管理をナタクさんから直接頼まれました。
というか、今まで挨拶程度で、ちゃんとお話をするのは今回が初めてだったのですが、流石“あの”アメリアさんをメロメロにした男性だけあって、他の女の子達からも大人気でした。物腰は柔らかく、言葉遣いも丁寧で、尚且つ顔も悪くない!更にお金持ちで、領主様のお抱え錬金術師と地位も高く、若くして研究者とし成功を収めているのだから、当然と言ったら当然かもしれませんけどね。
ただ、既にアキナさんの尻に敷かれているのか、少しでも鼻の下を伸ばそうモノなら直ぐにプレッシャーを掛けられているのは、見ていてとても面白かったです。
えっ?混ざらないのかって!?これは鑑賞してるから楽しいのであって、あそこに入っていく勇気は私にはありませんよ。それに、アキナさんとアメリアさんに戦いを挑むとか、そんなミーシャみたいな無謀なことはしませんって!私はこれからも傍観者として楽しませてもらいます!
さてさて、それでお仕事の方なのですが、鉢植えの数が結構あるのと、各地から運ばれてくる畑の土と指定された種を間違えて植えてしまうと、直ぐに苗が枯れてしまうそうなので、これらの管理は私とアキナさんの二人で確認しながら作業することになりました。確認作業は大事ですからね!特に私は少し抜けているところがあるのを自覚しているので、アキナさんが手伝ってくれるのは、正直助かりました。
そういえばアキナさんですが、最初は見た目からして凄い美人さんで、どちらかと言うと気の強そうな顔立ちをしていたので、アメリアさんのようなタイプの女性なのかなと思っていましたが、話してみると、とても気さくで良い子だということが直ぐに分かりました。
それに洋服作りの天才で、ミーシャが見たこともない可愛らしい洋服を着ていたのを羨ましく思い、試しに私にも洋服を作ってくれないかと頼んでもらったところ、次の日には私のところまで来て洋服を作ってくれることを約束してくれた時は、本当に嬉しかったなぁ。
まぁ、その時ナタクさんに下着姿を見られたのは死ぬほど恥ずかしかったですが、顔面に椅子をぶつけられて痛がっていた彼の姿を見ては、怒るに怒れませんでした。それに、あれはアメリアさんが悪いですしね。
そして、作ってもらえたのが今私が着ている『フレアーチュニック』と『7分丈のレギンス』の二つです!
『フレアーチュニック』の方は、袖と裾の辺りがヒラヒラとした作りになっていて、こういった形のモノをフレアというらしいです。他にもスカートとかもあるそうなんですが、今回は実験室でも着れる服装ということでトップスとして此方を作ってもらいました。なんかふわふわしてて凄く可愛らしいお洋服で、私の今一番のお気に入りです。
『7分丈のレギンス』の方はトップスに合わせて作ってもらったのですが、私は普段スカートを穿くことが多いので、こういった服装は初めてのチャレンジだったのですが、中々に動きやすくていいものですね。それに、上がふわっとした服装なので、対比として脚が凄く細く見えるというのも大きなポイントです!それに裾の部分に付いているリボンが、これまた可愛い!本当にアキナさんのセンスには脱帽でした。
しかも、此方の洋服達はなんでもナタクさんの手によってエンチャントまで施されているらしく、毎日着ても汚れたり・痛むことが全くないとんでも装備になっているそうです。それをタダで戴けちゃってとても恐縮なのですが、この服で街を歩くだけでアキナさんの知名度がドンドン上がっていくらしいので、そういうことならばと、広告塔としてミーシャと共に休みのたびに街を練り歩くことをお約束しましたとも!
おっと、また話がそれてしまいましたね。それで、お仕事の話の続きなのですが。どうやら一日1000株を目標に育成するらしく、決められた箱に指定された個数を収納して最後に何処の村へ届けられる予定のモノなのかを箱に書いて、これを商人さんにお渡しすれば一日の仕事が終了なんだそうです。それに昼食代まで出るらしく、休憩時間までしっかりと設けられている至れり尽くせりなお仕事となっていました。しかも他の子達はどうやら一日銀貨1枚のお仕事らしいのですが、私は一日当たり銀貨4枚!やったぜ管理職、万歳♪
しかし、用意してある魔石の量には正直、ドン引きしましたね。大きな箱の中に、まるで土でも詰めているかのように魔石がぎっちり詰まってる光景は、私も生まれて初めて見ましたよ。そんな私を見て、アキナさんが「こんなの、いつものことです・・・・」と若干遠くを見つめながら言っていた姿は、とても印象に残りました。やっぱりゴールドクラスまで行く人って、何処かぶっ飛んでるのが普通なんですかね?うちのアメリアさんも中々ですし・・・・
それと、なんでナタクさんが初日しかここにいられないかと言うと、どうやら領主様からの依頼で他にも色々な仕事が立て込んでいるらしく、中々こっちまで手が回らないんだそうです。そのために、今回このお仕事が生まれたみたいですね。私より年下の方なのに、もう街のトップの人と一緒になってガンガン仕事ができるって本当に凄いと思います。
こりゃ、アメリアさんもやられるわけですね。だって今まで、同世代で彼女以上に仕事ができる人なんてこの街にはいませんでしたし、その彼女を驚かすような働きをしながら、尚且つあの領主様に全く引けを取らない手腕の持ち主ですからね。夢見て彼の回りに集まっている若手の子達には悪いですが、彼女達では全く釣り合いが取れていない殿方だと思います。
まぁ、夢見る少女は私の周りにも若干一名いるので、楽しく観察は続けさせていただきますけど!
そういえば、そのミーシャが『ナタクさんとのデート♪』って最近楽しそうに話していたけど、現在の彼の女性への対応の仕方から考えて、あれは勘違いとかではないだろうか?
どうも私には、特定の誰かを狙っているようには見えないのだけれど・・・・
うん、黙っていよう。そっちの方が面白そうだ!
私はリズベット・スターリン、恋する乙女達の傍観者であ~る。今日も楽しくお仕事頑張るぞ~!!
ふっふふ!私は恋の傍観者♪(* ̄∇ ̄*)




