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第65話 エピローグ1-3

 

 SIDE:ミーシャ


 遂にナタクさんとのデート当日となり、朝から高いテンションを必死に押さえながら、ニコニコ笑顔で日常業務をやり過ごし。まさかの残業を回避する為、先輩には少し高めのお菓子の差し入れ(ワイロ)アタックで、なんとか早番のまま仕事を切り上げてもらうことに成功しました!


 ここまで来ればもう私を止める者はいないので、ギルドを出たその足で近くにある共同浴場へと(おもむ)き、浮かれ気分で彼からもらったお風呂セットを使い、身体をピカピカになるまで磨きあげます。


 そして今度は家に帰ると、アキナさんに作ってもらったここ最近で一番のお気に入りである可愛い白のワンピースに着替えを済ませ、後は街で一目惚れしたデザインの美しい銀色の髪留めと気合の入ったお化粧を(ほどこ)せば、これでバッチリ準備完了です!


 いつも以上に可愛く仕上がった自分の姿を、家に唯一ある鏡で確認しながらニヤニヤしていると、家族からはかなり不審がられてしまいましたが、今日の私は気にしな~い!


 今夜は遅くなるとだけ母に告げて、期待に胸を高鳴らせながら家の近くにある指定されていた広場へ到着すると、そこには豪華な二頭引きの馬車の前で、まるでどこかの国の貴族のように、凛々しい格好をしたナタクさんの姿が目に飛び込んできました。


 というか、まさにその姿は絵本でしか見た事のない、私だけの王子様そのものです!!



 自分も楽しみにし過ぎて集合時間より早めに来た筈なのに、彼はそれよりも早くここを訪れ、私のことを考えながら待っていてくれていたのかと思うと、それだけで胸がキュンと苦しくなるくらい嬉しい気持ちが溢れかえってきます。


 そんな私に気が付いた彼は、直ぐに此方まで迎えに来てくれ、いつもと違う私の容姿についても優しく褒めながら、まるでお姫様をリードするかの様な完璧なエスコート!!


 はぁ・・・・ここまで百点満点の彼の案内で、まるで夢でも見ているのかと錯覚しそうになりながら、ゆっくりと彼の手を取りながら馬車へと乗り込むと、その先には・・・・




 夢なら覚めて欲しいと思うほど恐ろしい、不敵な笑みを浮かべた、美しき“魔王”が二名、先にお座りになられておりました。




「あぁぁ・・・・」


「抜け駆けはいけませんよ、ミーシャさん」


「ふっふふ、私達を出し抜こうとはいい度胸ではないか、ミーシャ!」



 えぇ、「やったぁ、一歩リードです!」とか「あの二人に勝った!」とか正直思って浮かれていましたよ、認めますとも。だって、普段からこんな美人と一緒にいる人を、少しの時間でも独占できると思ったら、そりゃ夢だって見たくなるじゃありませんか!!


 先ほどと打って変わり、今は出荷が決まった子牛の気分で、大人しく二人の美女に挟まれながらドナドナされています。


 なんでも、今から向かうレストランは昨日改装工事が終わったばかりの店舗らしく、そこの新しいオーナーシェフの方はこの街でもトップクラスの料理人なんだと、彼の口から楽しそうに説明を受けました。それに今日は他にもたくさんのゲストを招待しているので、彼自身はホストサイドで皆を持て成す予定なんだとか。


 うぅ、私の甘い愛のひと時が、音を立てて崩れてゆく・・・・


 そしてお店に到着してから案内されたテーブルには、なんとリズとギルマスまでもが同じ席に座っていました。ってもうこれ、もしかしなくても錬金ギルド専用のテーブル席ですよね?


 あのぉ、此方にロマンは取り扱ってはいらっしゃいますか?


 あぁ、ありませんよね。途中から薄々分かっていました・・・・



「なんじゃ、ミーシャも呼ばれとったんか?」


「はい・・・・この前の、トマトの取り扱い要望書集めを手伝った御礼だそうです。って、リズはなんでここにいるの?」


「なんでって、私はトマトの苗栽培の監督を任されていたから、その関係でお呼ばれしたの。アメリアさん、お疲れ様でした」


「リズは今週ずっとそっちに掛かりっきりだったからね。おかげで部屋が静かで寂しかったよ」


「またまた。新しい研究材料が見つかったから、暫くバイトでもしてこないかって、勧めてくれたのはアメリアさんじゃないですか。どうせ、小言を言われずに研究に打ち込みたかっただけでしょ?」


「なんじゃ、最近城に戻らんかったのは、また実験室で缶詰めをしておったからなのか」


「まぁね!おかげで結構いいレポートが書けそうだから近いうちに持っていくよ。そういえば、アキナ君もずっと研究棟にいたよね?何回か一階の入浴施設で一緒になったし」


「私の場合は、リズさんと一緒に他の錬金術師の方に混じって植え替えのお仕事をしていたのと、後は夜遅くまで新しい洋服の試作品を何着か作っていましたね。それに、先生はここ数日大忙しで、殆ど此方には来られていなかったので」


「あっ!っていう事はアキナ君、あそこの仮眠室を使っていたな!ずるいぞ!!」


「残念ながら、布団どころかベット一式新品に置き換わっていましたよ。どうやらあのベットは他の場所で使うらしいです・・・・」


「それは・・・・残念」


「って、アメリアさん!会った時から思っていたのですが、なんで私と同じ服装なんですか!しかも要所要所の丈が私より短いですし、これじゃ私、アメリアさんの引き立て役みたいじゃないですか!!」


「ふっふふ、これはアキナ君が作った商品の売り込みを手伝った際にもらった一品さ!それに、どうせミーシャはその格好を選んでここに来ると踏んでいたからね。私の作戦勝ちってヤツだよ!」


「アキナさんズルイです!私にもまた可愛い服を作ってください!!」


「喜んで!といいますか、実はこうなるんじゃないかと読んでいたので、既にデザインはいくつか仕上げてあるんですよね。ですので、後でその中から自由に選んでください。ちなみに、カッコ可愛いのと、ゆる可愛いのどっちがいいですか?」


「うぅ~ん。カッコ可愛いのだとアメリアさんには絶対勝てませんので、ゆる可愛いで勝負します!!」


「お前達は、本当にいつも楽しそうじゃな」


「そういえば、皆さん事件に巻き込まれて大変だったんですよね?結局それらの事件ってどうなったんですか?


 あの頃って、アメリアさん殆ど実験室に来なかったから聞きそびれていたんですよね。帰って来たらきたで、直ぐに実験室を追い出されましたし・・・・」


「事件と言うとここの“前”のオーナーがやらかしたヤツかな?」


「そう、それです!」


「あぁ、放火や人攫い。他にも色々やっていたらしいですね。私も受付でそんな噂を耳にしてました」


「もう粗方(あらかた)捕まえたって父上が話していたから、喋っても平気なのかな?」


「構わんのじゃないか?まぁ、あんまり噂を広めるのも良くはないがな」


「それじゃ話すけど。どうやらコンゴのヤツ、今回直接の原因になった事件以外にも、色んな悪事に手を出していたらしくてね。中には野盗と組んで近くの村で人攫いをして、捕まえた人達を奴隷として他国に売り払っていたりもしてたらしいよ。


 それで、怒った父上がアイツが父親だと言い張るハインリッヒ侯爵家に、言い逃れできない証拠の控えと共に書状で抗議文を送りつけたみたいなんだけど、返ってきた回答が『我がハインリッヒ家とコンゴという犯罪者とは、なんの血縁関係もございません』だったらしいね。


 まぁ、血縁者だと認めてしまうと後々面倒なことになるから、今回の件で完全に見限られたんじゃないかな?それに、あそこの家には確か正妻との間に嫡男と次男がいたはずだから、態々犯罪者を庇う必要も無かったんだろうね」


「なんか、哀れですね。まぁ、私達にしてきたことを考えると、同情はできませんが」


「なにせ、殆ど自業自得だからね。それに、他領にいた実家の商家も大荷物を抱えて国を出ていったとも聞いてるから、もう彼を助ける人は現れないんじゃないかな。


 むしろ、彼のせいで色んな犯罪ギルドが何かしらの被害を受けたみたいだから、逆に彼を殺そうと考えてる人も多いかもしれないね」


「結局、そのコンゴって人、この後どうなるのですか?」


「罪の重さによって刑罰は異なるけど、奴の場合放火と人攫いで十分極刑が確定してるからね。他にも色々やらかしてるから、累積で五~六回は死ねるんじゃないかな?まぁ、命は一つしかないから、父上の手が空くまでは、暫く牢獄暮らしなのは確定だね」


「その辺はアレックスが上手くやるじゃろうて」


「って、さっきからミーシャが大人しいけど、どうかしたの?」


「いやぁ、良く見ると凄い方達がいっぱい集まっているなぁと思って・・・・」


「あぁ、確かに。先生の顔の広さには驚愕(きょうがく)ですよね」


「えっ!ここの方達って、全員ナタクさんのお知り合いなんですか!?」


「たぶん殆どそうじゃないかな?一応、今回は『トマト』イベントの打ち上げってことになってるからね。流石に父上は仕事で参加できないみたいだけど、代わりにばあちゃんが参加してくれたから」


「なんか裏でもかなり動き回っていたみたいじゃしな。ワシのところにも調理用の魔導具の開発レポートを山のように持って来おって、えらい目にあったわい。しかも、その発注依頼まで大量に抱えてな」


「なんか、ナタクさんらしいですね。イキイキとした顔で持ち込んでる姿が目に浮かびます・・・・」


「実際、笑顔で持ち込んどったがな。渡されたこっちは堪ったもんじゃなかったぞ」


「っと、噂をすれば彼が奥から出てきたね。いよいよ打ち上げ開始かな?」



 アメリアさんに促されてそちらを見ると、そこには先ほどの貴族然とした衣装に凄くマッチしたエプロンを着用した姿のナタクさんが、料理人達と並んで挨拶を始めようとしているところでした。



「お集まりの皆様、本日は催し物(イベント)の打ち上げに参加いただき誠にありがとうございました!今宵は催し物(イベント)で振舞われた料理の他にも、新たに彼らが作り上げた様々な料理を同時に味わってもらう予定なので、存分にお楽しみください!


 それと、お酒の方も領主様とジョン・ターナー氏の計らいで、ドワーフの親方達でも飲み干せない程の量をご用意させてもらっていますよ!」


「おっ!嬉しい事を言ってくれるね。それじゃお前達、今日はドワーフの底なし加減をアイツにみせつけてやろうじゃねぇか!!」


「「「そうだそうだ!!追加で酒を買いに走らせてやるから覚悟しろ!!」」」


「望むところです!それでは、皆様。今日は心ゆくまで、楽しんでいってください!」



「「ふっふふ!!」」(´∀`*)(´∀` )


いやぁ!!!!。゜(゜´Д`゜)゜。


(`・ω・´)?



 ここまでのご愛読、誠にありがとうございました。

 また、第一章に引き続き、多くのアクセス・ブックマーク・評価・感想・レビューなど、皆様のたくさんの応援あってこそ、第二章を無事に完結させる事ができました。改めて御礼を言わせて下さい。


 本当に、ありがとうございました!!


 第二章はこの話で完結としますが、主人公達のお話はまだまだ続けていく予定なので、これからも是非応援宜しくお願いいたします。

 そして今後の予定ですが、告知しておりました第一章からの再編集を予定しておりまして、それが終わり次第、続きます第三章のお話を書き始めるので、暫く投稿がゆっくりになると思われます。取り敢えず、詳しい編集内容や日程の目安などは活動報告に後で記載しておきますので、そちらを確認していただけたら助かります。


 そして最後に少しだけ告知を!

 第三章ですが、遂に主人公達が戦闘訓練(レベル上げ)を開始いたしますので、是非楽しみにしていて下さい!


 それでは皆様、また次の投稿でもお会いできる事を楽しみにしておりますね!

 もしよろしかったら、感想なども是非宜しくお願いします!


 秋山 つかさ


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