表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/194

第52話

 

「ナタク君、私もご挨拶してよろしいかな?」


「リックさん、お待たせしましてすいませんでした。こちらがこのお店の料理長のウィル・バッカス氏です」


「私は同じ中央大通りで商いをしている、リック・ホームナーといいます。今日はナタク君にお呼ばれしまして、何でも『トマト』料理を食べさせていただけるとか。とても楽しみにしていますので、今宵はよろしくお願いします」


「ウィルさん、この方が『トマト』の原種を見つけてきてくれた商人の方ですね。もし領主様との交渉が上手くいって栽培が開始されたら、『トマト』を卸してくれる方になると思いますので、是非仲良くしてくださいね」


「ホ・・・ホームナーってあの大型店舗のオーナーさんですか!は・・・初めまして、紹介に与りましたウィルと申します。精一杯料理を作らせていただきますので、此方こそ今後ともよろしくお願いします!」


「しかし、とても素敵なお店ですね。私も、もっと前から来ておけばよかった」


「いえ、内装から外装にかけて今が一番綺麗だと思います。私もまさか半日も掛からずに、ここまで見違えるとは思ってもいませんでしたので・・・・」


「親方さんもご無沙汰ですね。流石の仕事振り、御見それいたしました」


「おぉリックじゃねぇか、久しいな!また、仕事があったら依頼してくれよ!」


「えぇ、近いうちに必ず。ナタクさんのおかげでかなり儲けが出そうなので、改装する際は一番にお声掛けさせていただきますね」


「なんだ、お前さんのとこもか!うちもコイツと仕事をするようになってから、かなり利益が出ているからな。今日のはそのお礼も兼ねてんだ。なにせコイツの家はもう殆ど作り終わっちまって、手を加えるところが全然残ってなくて、つまらねぇからな!」


「えっ、もう完成してるんですか?」


「後は細かい仕上げをすれば終わりだ。だが、まだ領主預かりの物件だから、あの人が帰ってくるまでは受け渡しはできねぇんじゃないのか?」


「そうなんですよね。早く“鍛冶場”だけでも使わせてもらいたいんですけど」


「まっ、直に帰ってくるだろ」


「ところで、リックさんと親方も知り合いだったんですね」


「おぉよ。ってか、あんだけでかい建物を作れるのは俺達くらいなもんだからな」


「彼らには、私が店を構えた時から大変お世話になっているんだよ。もう知り合ってからかれこれ数十年は経ってるかな?」


「この街の新しい建物は大体うちの作品だな。ちなみに、この店も親父の代のモノみてぇだが、やっぱ今見てもいい腕してるわ。かなり年月が経っているのに土台に全くガタがきてなかったしな。大将、これからも大事に使ってやってくれよ!」


「もちろんです。今日は本当にありがとうございました!」


「今日はこの後、他の料理人もたくさん来るので、是非楽しんでいってくださいね。追加のお酒も注文しておきましたので」


「そいつはいいことを聞いたな。それじゃ、少しペースを抑えて待たせてもらうとするか!」



 がっははと笑い、親方達はまた豪快にお酒を(あお)り始めた。どうやら、抑えるのは食べるペースだけのようだ。しかし、今日は昨日以上に人が集まりそうである。リック達を空いているテーブルに案内してから、ウィルにはさっそく『ミートソースパスタ』を注文して作ってもらうことにした。


 彼には他の料理のレシピを渡しているので、頼めば作ってくれるとは思うのだが、もう暫くすると明日の準備で料理人達が集まってくるので、せっかくなので彼らにも協力してもらい、リック達へ存分に『トマト』料理をアピールしてもらおう。



 料理が出来るまでリック達と席に着いて談笑をしていると、店の入り口からさっそく約束していた料理人の一人であるアルヴェントがやって来た。パン屋なので、他の人より早く店仕舞いを終えたのであろう。



「うわぁ・・・・。修理するとは聞いていたけど、まるで別の店舗だね」


「アルさん、いらっしゃい」


「トーマスはもう少ししたら顔を出すってさ。丁度、新店舗を任せる予定のコックがいるから、その人に本店を任せて、もう1店舗の様子を見てからこっちに向かうんだってさ」


「了解です。って、トーマスさんってお店いくつ持ってるんですか?」


「今は確か二つかな?今度三店舗目を建てるって言ってたよ。両方ともかなり売り上げがいいから、グスタフの奴もだいぶ乗り気だったみたいだしね。本当に忌々しい・・・・」


「って事は二店舗目を建てる時に狙われたんですね」


「そうだね。うちの門下で今一番稼いでるのが彼だから、まだ被害が少なくて本当に良かったよ。それに、お金も領主様が帰ってきたら返却してもらえそうだし。なんか、細かく帳簿までつけてたらしいよ」


「流石は元会計主任ってことですか」


「そういえば、簡単に生地を回すだけなら出来るようになったから、後で食べて感想をくれないかい?それにソースも自分で作れるようになったし、何とか明日までには間に合いそうでよかったよ」


「丁度これからお願いしようと思っていたので、それではさっそく焼いてもらってもいいですか?此方のリックさんにも、是非食べてもらいたかったので」


「ナタク君、彼は?」


「こちらは西大通でパン屋を経営されている『メルトーリ』オーナーのアルヴェントさんです。彼にもトマト料理の研究をお願いしているんですよ」


「アルで結構ですよ、こちらは商人さんかな?」


「この方は商人のリックさんですね。この方には将来的に『トマト』を卸してもらう予定なので、今日は彼らに『トマト』の良さを存分に体験してもらおうと思いまして、こちらにご招待したんですよ」


「なるほどなるほど!それじゃ、僕にも格安で卸してもらえるように張り切ってピザを作らせてもらうよ。今日は自分で材料を持ってきたから、さっそく窯を借りて作ってくるね!」



 そう言ってアルヴェントは楽しそうに厨房の方へと突撃していった。しかし、一日でピザ回しが出来るようになるとは、彼の技術力も相当に凄い。自分は錬成のアシストを切って練習していたといっても、まともに回せるようになるまで、少なくとも三日は掛かっていたのだが・・・・



「そういえば、昨日は聞きそびれちゃったんですけど、彼ってもしかして・・・・」


「アルさんですか?そういえば自己紹介の時にアキはいませんでしたよね。彼はアキ達が好きなお菓子を作っているパン屋の職人さんですよ」


「やっぱりそうでしたか!って、あんなにお若いのにオーナーだったんですね」


「『メルトーリ』って言ったら今街の女性達の間でかなり有名なお店ですよ。ナタクさん、そこのオーナーさんともお知り合いだったんですか!?」


「元々よく差し入れなどを買い物に行っていたのですが、昨日ちょっと話す機会がありましてね」


「なんか、ナタクさんの顔の広さに驚愕です。それに、ここの従業員の女の子が着てる洋服もかなり可愛いのですが、もしかして・・・・」


「正解です。リリィさんが着ている服もアキの作品ですね。マリーさんなら喜んでくれると思ったのでお誘いしたんですよ」


「アキナさんの作る洋服は本当に垢抜けていますね。給仕服がここまで可愛くなるなんて、反則過ぎませんか!?」


「ちなみに、彼女のお母様も同じ服を着ていらっしゃいますよ。ほら、丁度お酒を運んでいる方がそうですね」


「えっ!って本当だ、言われるまで同じ人かと思っていましたよ・・・・」



 それから暫くすると、トーマスとアーネスト。そして最後にジョンが明日の催し物(イベント)を手伝ってくれる若手の料理人を数人引き連れてやって来て、リック達をかなり驚かせていた。やはり、ここにいる料理人の方達は街ではかなりの有名人だったようである。


 一通りリックに紹介を済ませてから、さっそく彼らに昨日作った料理をもう一度再現してもらいつつ、明日はどんな感じで料理を披露するかの話し合いをすることになった。


 それにしても、リックや親方達もかなり喜んで食べてくれている。やっぱり、新しい味というのは新鮮で受けが良いみたいである。後はどれだけ多くの人に美味く食べてもらうかだが・・・・



「屋台を出すなら、ギルドで確保してある噴水前の一等地を使うことが出来るが、問題はあそこでは火があまり使えないってことだな。これらの料理は出来立てが美味いから、それだけがもったいねぇぜ」


「一番近くでうちの店の厨房ですが、ここから毎回運ぶのも屋台としては少し残念な気がしますよね」


「パン自体は僕が朝のうちに全部焼いておけるんだけどね。『ハンバーガー』の切り口を焼くってのも試してみたら、かなり美味しかったから是非やるべきだと思うけど、それも時間が経つと湿気で残念な感じになるからなぁ」


「ある程度は妥協しなくてはならないんじゃないか?」



 どうやら、屋台での火の取り扱いには厳しいルールがあるみたいである。確かに、この世界だと未だに(かまど)が現役で活躍しているので、ガスや電気調理器なんて便利なモノはまだ開発されていないため、中々難しい問題である。七輪のようなモノなら使えるらしいのだが、大きさ的に圧倒的に足りないみたいである。



 (って、あれ?そういえば今朝、丁度いいモノの発注を受けたばかりじゃないですか!)



「親方、さっき注文してもらった魔導具を設置した屋台を急ぎで作ってもらうことってできませんか?三台ほど欲しいのですけど」


「魔導具って言うと鉄板を温めるってヤツか?屋台くらいなら直ぐに作れるが、もしかして今食ってるのを外でやるのか?」


「流石にピザやパスタは無理ですけどね。期間限定で『から揚げ』『ハンバーガー』『ホットドック』を屋台でやるつもりなんですよ」


「そういうことなら任せておけ!魔導具が入るスペースを空けるだけなら簡単にできるからな。それと、元々あるやつを改造するだけなら、もっと安くて早く作れるぞ?」


「それなら、ギルドで保管している屋台を三台ほど今日中に木工ギルドへ運んでおこう。それを改造してもらって構わないか?」


「では、俺も今日中に魔導具を作ってしまいますね。鉄板を加工して回路を組むだけで作れる簡単なモノなので。それに、ロッジさんがいるってことはアイテムボックスの心配もありませんしね」


「おうよ!作ってくれたら運んでやんぜぇ!」


「鉄板を温める魔導具?・・・・もしかして、今朝見せてもらった設計図って」


「なんだ、トーマスじゃねぇか!お前さんもここにいたのか」


「親方に依頼していた新しい飲食店のオーナーって、トーマスさんだったんですね」


「あぁ、今朝かなり良い設計図を持ってきてもらって喜んでいたのだが、まさかそこにも君のアイデアが使われていたとは・・・・。ありがとう、あれはかなり気に入った」



 なるほど、それなら屋台でのパフォーマンスも彼の新しい店の良い宣伝になりそうですし、ここは張り切って作らせてもらいましょう!せっかくなので、平らな鉄板と波打つ形の2種類用意するのもいいかもしれませんね。俺は網目が付いたハンバーグも結構好きなので、是非トーマスさんに上手く使いこなしてもらって、ハンバーグを一気にメジャーな食べ物にしてしまいましょう!


ハンバーグレストランの夢が広がります!(`・ω・´)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ