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第48話

 

 SIDE:ナタク



「どうかしたのかい?突然後ろを振り向いたりして」


「いえ・・・・、失礼しました。話の続きを(いた)しましょう」



 (一瞬、これから凄くいい事が起こりそうな予感がしたのですが、今のは一体なんだったんでしょうか?)



 アキナ達と別れてリックの執務室を訪れたのだが、彼の急ぎの仕事が片付くまでの間、暫く執務室のソファーに腰掛けて待たせてもらい、先ほど漸く目処がついたので話を始めたばかりであった。



「待たせてしまって申し訳なかったね。今のは急ぎの書類で、部下にせっつかれていたんだよ。私も午前中は買い付けなどで店を空けている事が多いから、だいたい書類関係はこの時間にやっているのさ」


「此方こそ、お忙しい時間に押しかけてしまい、申し訳ありませんでした」


「いや、いいんだ。私も楽しみにしていたからね。それにしても、もう研究の結果出たとは本当かい?」


「はい、此方がリックさんからお預かりして『トトアの実』の研究を進めて作り出した『トマト』という新しい野菜になります。まだ領主様にもお見せできていないので勝手に栽培したりはできませんが、許可さえ下りれば直ぐに此方をお渡し出来ると思いますよ」


「おぉ、見た目は少し大きくなった感じかな?しかし、こんな短時間でどうやって植物を変化させたんだい?」


「錬金術にはそういったことに使える便利な道具があるんですよ。ですが、それを使うのに金貨を何枚も使わなければいけないほどコストがかかる研究ですので、あまり人気がない分野なんですけどね」


「そんなモノがあったとは。私の店でも魔導具を取り扱っているから、是非話を聞こうかと思ったのだが・・・・」


「それなら今度、もっと売れそうなモノを作ってお持ちしますよ。まぁ、そちらも一回ガレットさんにお見せしないといけなくなるとは思いますけどね」


「あぁ、魔導具と言ったら、あのお方の右に出る者はこの街にいないからね。それでは許可が下りるのを、楽しみにして待つとするよ」


「やっぱり、ガレットさんて有名人なんですね」


「そりゃそうさ。彼女の作品欲しさに、国のはずれの方から態々この街まで買い付けにくる商人までいるくらいだからね。それに、彼女の弟子をお抱えにしたいという貴族も結構多いんだよ。まぁ、あのお方は元公爵夫人でも在られるから、そんなお方を自分のお抱えに迎えることなんて出来ないし、当然といったら当然だけどね」


「『自称ガレットさんの弟子』の人も多いとこの前職員の方が話されていたのは、そういう事情だったんですね」


「まぁ、本物の弟子の場合は紹介状を書いてもらえるはずだから、偽の書類を作ったところで鑑定で一発でばれるだろうけどね」


「他人の功績で勝負しても、意味はないと思うんですけどね」


「それだけみんな必死ということじゃないかな。どんな研究をするにしても、それなりにお金が掛かるみたいだからね。それで、その『トマト』って野菜だけど、一つ食べてみてもいいかな?私はさっきからそれが気になっていてね」


「話が脱線してしまいましたね、どうぞ食べてみてください。味は保証しますよ」


「それではさっそく・・・・・おぉ、本当に美味しくなっているね。これは驚いた」


「此方は青臭さを取って甘みを強くしたタイプのモノで、生食や調理に向いたモノになります。もう一つ酸味を強めにしたタイプも作りましたが、此方はソースや調味料に加工するのに向いていますね」


「なんと、二つも違うタイプを作り出したのか!これは最早(もはや)『トトアの実』とは別物と言っていいほどだね。あの野菜がここまで美味しくなるとは、流石に思っていなかったよ」


「後はその土地に適した品種に改良すれば完成になります。ちなみに、この野菜は水分をあげ過ぎると味が落ちたり実が割れてしまいますので、適度な量を調整して与えた方がより良い味のモノを作り出すことができる野菜となっています。なので話を聞く限り、スイール村はとても栽培に適している環境だと思いますよ。それに、元々が山岳部に自生していた品種になりますしね」


「これは村長さんが泣いて喜びそうだ。後はこの野菜を領主様に気に入ってもらえればいいって話だね」


「そうなりますね。といいますか、実はその一環で、既に此方の野菜を使った料理の研究を調理ギルドのジョンさんに依頼して、明日の昼からある催し物(イベント)を企画しています。もしよろしければ、リックさんも商人としてそのイベントに参加してみませんか?宣伝や、材料なんかの提供を手伝っていただけると、とても助かるのですが」


「調理ギルドのジョンさんって・・・・まさかギルドマスターのジョン・ターナー氏のことかい!?」


「はい、そのジョンさんですね。昨日もこの野菜を使った料理研究会を開いたのですが、彼が作ったトマトソースは絶品でしたよ」


「もちろん参加させていただこう!彼まで引っ張り出して来るとは、君は本当にとんでもないね。普段、彼はそう簡単に話を引き受けてくれたりするような料理人ではないんだよ?なにせ、この街一番の料理人は間違いなく彼になるだろうからね。とてもお忙しい方なんだ」


「そうだったんですか。昨日たまたま知り合う切っ掛けがあったのでお誘いしたのですが、やはり声を掛けて正解でした」


「会ったその日に仕事を請けてもらったのかい・・・・・それは本当に凄い」


「運が良かったんだと思います。それでは、催し物の詳しい概要を説明させていただきますね。ちなみに、リックさんは夕食の御予定って何かあったりしますか?」


「夕食かい?今日は特に予定はないね。むしろ、君を誘ってどこか飲みにでも行こうかと思っていたところだよ」


「それでしたら、実は知り合いのシェフに『トマト』を使った新しい料理を作ってもらえるよう頼んでいますので、もし宜しければ今日はそちらへ招待させてください」


「なんと、もう料理まで完成しているのかい!それでは、是非連れてってもらおうかな」



 リックさんも乗り気になってくれたみたいで本当に良かった。この後、イベントの概要を説明したところ、こちらも快く参加を表明してくれたので、明日も実に楽しくなりそうですね。さて、此方の用事は大体片付きましたが、アキの方はどうなっていますかね?




 SIDE:アキナ



 さっそくサンプルを全員に試着してもらい、それぞれに性能を体感してもらっているのだが、皆とても気に入ってくれたみたいで、先ほどから楽しそうに商品について語り合ってた。それに、下着を着けている時とそうでない時の違いも確認してもらったので、これで明らかに身体のラインが整って見えるようになることは解かってもらえただろう。彼女達も自分達の変化の違いにとても満足してくれたみたいである。



「アキナさん、この下着は本当に凄いですね。自分でもここまで違って見えるとは思いませんでした」


「マリーさんが着けていらっしゃるのは、アメリアさんと同じ貴族向けに開発したワイヤー入りのモノになりますね。このタイプはホールドがしっかりしているので、集めてきたお肉がちゃんとお胸に留まるのを支えてくれるので、一番違いが分りやすいモノになりますね」


「私はワイヤーレスのモノのが良かったんだがね。サイズ的に此方じゃないと支えきれないと言われてしまったんだよ。そっちの方が楽そうなのに・・・・」


「アメリアさんの場合はボリュームがありますからね。しっかりしたモノでないと生地が負けてしまうんですよ。なので、此方のホールドがしっかりしたタイプを選ばせてもらっています」


「しかし、アメリアさんがその“ワンピース”という服を着ると凄い破壊力がありますよね。なんかこう・・・見るものを圧倒していく感じが素晴らしいです!!」


「それは服の感想としてはどうだんだろうね?まぁ、普段あんまりこういった服は着ないけど、ドレスよりはよっぽど過ごしやすそうで気に入ったよ。アキナ君、後でこれも貰って(買い取って)もいいかな?」


「どうぞどうぞ!といいますか、元々アメリアさん用に作ったモノになりますので差し上げますよ。今日のバイト代ということで!」


「そうかい、そういうことなら遠慮なく!せっかくだし、今日はこの格好で過ごそうかな」


「その洋服は先生に頼んでエンチャントも既に施してありますからね。かなりの一級品ですよ!」


「おぉ、そうなのかい?それなら二人には今度お礼をしないとだね」


「いえいえ、今日のお礼なのでお気になさらず。むしろ気に入ってもらえて大満足です!」


「しかしワイヤーレスタイプというのでしたっけ?此方でも十分にスタイルが良く見えますね」


「ワイヤーありに比べて包容力は少し下がりますが、それでもお胸がしっかり持ち上げてくれますからね。此方が皆さんの本来の姿になるんですよ」


「こんなに変わるということは、普段からそれだけ損をしていたという事ですか」


「それと、此方はアメリアさんのような方には必要ないのですが。例えば・・・・ノイさんでしたっけ?」


「はい、ノイは私です!!」


「ちょこっとご協力お願いしますね。此方の専用のパッドをこのように装着すると・・・・出来ました。着け心地はいかがでしょうか?」


「ままま・・・マリーさん!見てください、私に谷間が生まれましたよ!?」


「なっ!?」


「あまり詰め過ぎるのも良くはないのですが、こうやってより美しく見せることもできますね」


「アキナさん、私が断言します!これ確実に売れますよ。てか、売ってみせます!!確かにこれは魔法のアイテムと言っていい商品ですよ!」


「特に見た目を気にしだす年頃の貴族の女性なんかに人気が出るんじゃないかと思って作ってみたのですが、やはり販売のプロの目から見てもいけそうですか」


「私から見ても間違いなく売れると思うよ。それどころか、たぶん購入券の奪い合いになるんじゃないかな?」


「是非、王都でも試してみたい商品ですね。とっても夢が広がります!」


「あと気になるのは値段だけど、マリー君はこれからナタク君と商談をしないといけないわけか。彼は手強いからね、頑張ってよい条件を引き出してくれたまえ。期待しているよ」


「先生って、とても上手に交渉事を進めますからね。初めて会ったその日に領主様を商談で焦らせた時は、本当に凄いと思いました」


「えっ!私、今からそんな人と価格交渉しなくちゃいけないんですか!?」


「大丈夫さ、彼のことだからお互いに“利”のある丁度いい場所を見つけてくれるはずさ」



 さぁ、此方の準備は整いましたよ。どうにか練習通り上手く商品を説明できて本当に良かったです。マリーさんがこの後の値段交渉を考えて不安そうな顔をされていますが、先生ならきっと上手に話を纏めてくれるはずなので、お任せしちゃって大丈夫でしょう!

夢の王都進出が・・・うへへぇ♪(人*´∀`)


成功かな?やり過ぎた??(A;´・ω・)


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