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第11話  転生2日目1-7

 

「大変お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ございませんでじたぁ・・・ずぴぃ」


「いやぁ、笑った笑った。明日はお腹が筋肉痛確定だねぇ♪」



 少女が再度アメリアを睨んでいるが、当のアメリアは涼しい顔でまったく気にしていなかった。あれから30分近くアメリアが少女をからかい続け、更に少女が泣く負のスパイラルに、状況理解が追いつかないナタクはただオロオロすることしかできなかった。



「アメリアさん、勘弁してくださいよ。いったい何を吹き込んだんですか」


「あぁ。昼過ぎに私が出かける前に、後でミーシャを謝らせに行くと伝えておいただろ?


 そこで臨場感を演出するために、君が『余計な時間を取らせやがって!ギルドを訴えてあの受付をクビにしてやる!!』ってかなり激怒してたよと真顔で伝えておいたのさ!


 実際受ける必要のないテストを受けさせたわけだしね。いやぁ、あの時のミーシャの顔は傑作だったな!伝えた直後に、顔面真っ青でオロオロしながら部屋を徘徊したり、部屋の隅で小さくなってブツブツ喋り始めたりと、ほんと見ていて飽きなかったよ!」


「もぉ!アメリアさん、もぉ!!」



 少女がついに怒ってポカポカとアメリアを殴り始めたが、攻撃力がまったくなさそうなそのコブシはマッサージをしているのと大差ないだろう。なんだか少女が哀れでこっちまで泣けてきた。



「あははは、イタイイタイって♪でも、ナタク君がいい人でよかったじゃないか。実際あの試験を受ける連中はそんな奴ばっかりなんだから、良い薬になったろ?まぁ、もしそんなこと実際言ってくる輩がいたら、私が“物理で”潰すけどね!それよりほらぁ、もう一つの仕事仕事!」


「はぅ!そうでした。ナタク様、ギルド入会及びゴールドクラス昇級おめでとうございます。こちらがナタク様のギルドカードになりますのでお納めください。それと、個人認証をしますのでギルドカードに魔力を流していただいてもよろしいでしょうか?」


「ありがとうございます。こんな感じでいいのかな?」


「はい。認証完了のマークが出ましたのでこれで登録完了です。では、カードを使って部屋の登録もやってみてください」



 受け取ったギルドカードを部屋の入り口にある魔導具に当てて登録を完了させる。こういう物はしっかり済ませておかないと性格上落ち着かなかったので、一先ずほっとする。



「こちらも登録完了しましたね。それではギルド規約とカードについての説明などをおこないたいのですが、よろしいでしょうか?」


「はい、では部屋の机で話しましょう。さっきまで錬成をしていたので、少し散らかっていますので少しだけお待ちいただいてもよろしいですか?」


「分かりました、ではこちらでお待ちしていますので、用意ができましたらお声掛けください」



 一旦一人で室内に戻り、錬成し終わったポーション達を空の薬瓶が詰まっていた箱に手早く移し変える。そして、残っていた材料や錬成で使った道具をインベントリにしまってから再度少女とアメリアを室内に招き入れた。



「お待たせしました、それではどうぞ中へ」


「お邪魔します、ってあれ?そんなに散らかっていませんね。確か、ポーションを作っていたのですよね?」


「そうですね。この木箱に入ってるのがそうです、後で買取をお願いしたいのですが、頼めますか?」


「承りました。それでは説明が終わり次第、査定をして買い取らせていただきますね」


「ナタク君のポーションか。いったいどんな物が飛び出すか楽しみだ!」


「変なものは作ってませんよ。材料の在庫処分と設備の確認をかねて等級外ポーションを大量に生産しただけですから。変り種を作るのはもう少しここに慣れてからにする予定です」


「ふむ、それではその時を楽しみにしておくよ。私の専攻は薬学だからね、ポーションには目がないんだよ」



 楽しそうにナタクの作ったポーションを見ているアメリアは置いておいて、少女と規約などについて話すことにする。



「自己紹介がまだでしたので、させていただきますね。私は“イグオール錬金ギルド”総務課職員のミーシャ・バードナーと申します。主に総合窓口や持ち込み品の査定などを担当させていただいております。本日は私の不手際で大変御迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございませんでした」


「いえいえ自分で試験を選んだわけですし、とても楽しめたので御気になさらないでください。改めて、俺は那戳(ナタク)と申します」


「お心遣い感謝します。それでは規約の説明とギルドカードについてご説明させていただきます。と言いましても、かなりの量がありますので掻い摘んで御説明させていただきますね。全文をお読みしたい場合は、こちらの冊子をお使いください」



 説明された規約について、まとめてみるとこんな感じだった。



 一つ ギルドには貢献ポイントがあり、それは各クラスで基準が異なりそのポイント数で1年間の査定がおこなわれる。ポイントは研究成果の発表や作製物・どのような行動をしたかによって決まり、規定ポイントまで達成しているかどうかで来年の『昇級』『残留』『降格』が決定されるらしい。それと査定では特にポイントは引かれないらしく、あくまで累計ポイントが規定のラインまで達成しているかどうかが問題なんだそうだ。


 ただ自分の場合、今回のポーションとレポート・特効薬のおかげで向こう5年はゴールドクラス残留決定らしい。ちなみに、ゴールドクラスの者は希望すれば昇級もできるそうなのだが、ゴールドクラス以上は研究者というより管理職になってしまうので、そもそも受けるつもりはない。



 一つ 各クラスによって利用できる設備が異なり、またクラスによって取り扱える素材の内容も変わってくるそうだ。また、ギルド提供の素材割引の額も変わるらしい。



 一つ ポイントを使って自分の実験室に新たな機材を導入してもらえるそうだ。ただ、消費ポイントもかなり多く設定されているので、簡単にポンポンと新しい機材を導入することは難しいらしい。



 一つ ゴールドクラスの錬金術師には年間研究費として金貨300枚まで出るそうだ。ただ、その金貨はあくまで研究費なので報告義務があり、豪遊などしてしまったのがばれるとかなり厳しい処罰が待っているそうである。


 アメリアの話によるとそれで身を滅ぼす輩も結構いるらしいが、「王都の老害共はそれを隠すのが非常にうまい」らしい。どこの世界でもそういうところは変わらないみたいだ。チラッと向こうの上司達の顔が浮かんで軽く殺意が湧いた。



 一つ 通常ギルドで作製した薬品などの買取ってもらう場合、税金として1割・ギルドの取り分が2割・残りが作成者の取り分になる。殆どの錬金術師はこれを利用している。


 また個人的に商人と契約してもかまわないそうだが、その場合、間にギルドを挟まないと公式製品として扱われないので信用が下がってしまい価格が下がるらしいのであまりする人もいないらしい。所謂“モグリ”というやつだ。


 ただ、やり手の錬金術師は専属の商人と契約して、間にギルドを挟んで販売している人もいる。というか、アメリアがそうらしい。



 一つ 各クラスよって異なるが、ギルドから融資も受けれるらしい。ただ貢献ポイントが少ないとその額も低くなってしまうのと、明らかに返済不可能な金額は借りられないらしい。まぁ、当然である。


 後、ギルドカードに貯金をすることもでき、各街のギルドで卸すことができるため利用している人も多いそうだ。自分の場合はインベントリ先生がいるのであんまり利用する必要もないが、手元に置いておくと使い込んでしまいそうなので利用するのも、もしかしたらありなのかもしれない。


 また、個人認証をしてあるので他人がカードを使って引き落とせたりは基本的にはできないらしい。例外は冊子に記載されてあるそうだ。



 残りはトラブル関係だったので省略させてもらう。だが、よほどアホな事をしない限りはお世話にはならなそうな内容であった。



「以上が規約とギルドカードについてになります。ご質問などはございますか?」


「いえ、特には大丈夫です。しかし、随分と待遇が良いのと、ギルドカードの性能の高さにビックリしましたよ」


「それだけゴールドクラスが貴重で有能だということだよ。だから是が非でもこのクラスに上がろうとする人間がいるというわけだ。それと、ギルドカードもばあちゃんの功績だね。このカードは各ギルドでも採用されているからね。錬金ギルドの潤沢な資金稼ぎ出す、金の卵を産む鳥ってところさ」


「ただ、ギルドカードはそれだけ貴重な物なので無くさないようにお願いしますね。再発行にもゴールドクラスだと金貨10枚は必要になりますので」


 (これは、ギルドカードはインベントリに保管が必須だな)


「それでは、御説明は以上となります。続いて査定のほうに移りますね、ポーションを鑑定させてもらってもよろしいでしょうか?」


「お願いします、ここの木箱に入っているポーション全部なんで結構な数なのですが宜しくお願いします。品種は等級外の『治癒のポーション』『スタミナポーション』『毒消しのポーション』『麻痺耐性ポーション』各30本になります」


「あぁ、ナタク君。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」


「どうかしましたか?」


「ふむ。ミーシャが説明している間暇だったので、このポーションを鑑定していたのだけれど。これ高品質の物しかないんだが、これってどういう事だい?」


「えぇ、腕が鈍っていないのかの確認もあったので、すべて全力でやらせてもらいました。全て成功できてよかったですよ。一つ二つは失敗するかもと思っていたのですが、何とか全て成功できて安心しました。まだ腕は落ちていないみたいですね」


「えっ?いくら等級外だからといって一つも落とさずに高品質のみを作り上げたんですか!?」


「あははは、やっぱりキミはすごいね。ますます気に入ったよ。私でもこんなことできないと思うよ。精々失敗なしで8~9割が高品質ならいいほうだろう。それだけ基本ができているということだね。しかも、それをほんの数時間で錬成してみせるとは、本当に素晴らしい」


「いえいえ、運にもだいぶ助けられての結果ですから。それに、これはあくまで肩慣らしでしたので」


「よし、ミーシャ色つけて買い取っておやりよ。これはそれだけの価値があるポーションだよ。きっとすぐに売れてしまうさ」


「あっ、はい。では等級外ですが高品質とのことで、性能が1,5倍になっていますので、その分プラスで買い取らせていただきます。料金ですが、ギルドの店頭卸価格


 等級外治癒のポーション(高品質)通常が大銅貨4枚なので大銅貨6枚で30本、

 合計で金貨1枚 銀貨8枚に。


 等級外スタミナポーション(高品質)通常が大銅貨6枚なので大銅貨9枚で30本、

 合計で金貨2枚 銀貨7枚に。


 等級外毒消しのポーション(高品質)通常が大銅貨5枚銅貨4枚なので大銅貨8枚 銅貨1枚で30本、

 合計で金貨2枚 銀貨4枚 大銅貨3枚に


 等級外麻痺耐性ポーション(高品質)通常が大銅貨5枚なので大銅貨7枚 銅貨5枚で30本、

 合計で金貨2枚 銀貨2枚 大銅貨5枚


 全て合わせて金貨9枚銀貨1枚大銅貨8枚で、ここから税金とギルドの取り分を引くと、金貨6枚銀貨4枚大銅貨2枚銅貨6枚になります。


 ですが、ここで勉強させていただいて・・・・・うぅん、よし!金貨7枚でいかがでしょうか?」


 (日本円で考えると、これだけでザッと70万円ってところだろうか。そう考えるとすごい稼ぎだ。てか、だいぶ色をつけてもらっちゃってるけど大丈夫なのだろうか?)


「ありがとうございます、それでお願いします。しかし銀貨5枚以上も上乗せしてもらっちゃってよかったんですか?」


「本当はいけませんが、これだけ良い商品だと多少上乗せしてもはけるので大丈夫です。しかも今回ナタク様には大変ご迷惑をお掛けしましたので、これくらいはさせていただかないと申し訳ありませんので。今回限りの特別サービスをさせていただきます!」



 むん!と小さいこぶしを胸の前で握り締めて語るミーシャの姿は、少し子供っぽくて可愛らしかった。



「これで少しはミーシャの株も上がっただろう、よかったな♪」


「思いっきり下げる方向にからかったアメリアさんなんて知りません。っふんだぁ!」



 手続きをするためにギルド本館の入り口に移動することになったので、今日は色々あって精神的に疲れたので、このまま帰宅することにする。ポーションは台車を借りて運ぶことにした。あまり大勢の前でインベントリを使いたくはないためだ。


 移動中、そういえばもう一人お仕置きをされているはずの女性がいたことを思い出し、アメリアに聞いてみることにした。



「アメリアさん、リズベットさんを見かけませんが、あれからどうなったんですか?」


「うん、リズかい?彼女はアイテムボックス持ちだからね、先ほど限界までこき使ったから、今頃新しい実験室の床で転がってるんじゃないかな?」



 ミーシャは精神的に限界まで追い詰められて、リズベットは体力の限界までこき使われたのか。どっちも受けたくない。やっぱりアメリアは怒らせてはいけない人だと、再確認ができたナタクであった。








もぉ、うごけませしぇn・・・( ̄◇ ̄;)



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